許認可の基礎知識

軽貨物ドライバーとして個人事業主になるには?仕事内容・開業手続き・2025年法改正を解説

軽貨物ドライバーとして個人事業主になるには?仕事内容・開業手続き・2025年法改正を解説

EC(電子商取引)市場の拡大を背景に、軽貨物ドライバーとして個人事業主になる人が増えています。普通自動車免許があれば開業でき、宅配・企業配・フードデリバリーなど多様な働き方を選べる点が注目されています。

一方で、開業には黒ナンバーの取得や運輸支局への届出が必要であることに加え、2025年4月からは「貨物軽自動車安全管理者」の選任・講習受講が新たに義務化されました。開業前に手続きの全体像を把握しておくことで、事業開始後のつまずきを減らせます。

本記事では、軽貨物ドライバーの仕事内容や働き方のほか、開業に必要な手続き・2025年の法改正内容・個人事業主として知っておくべき情報を解説します。

目次

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軽貨物ドライバー(貨物軽自動車運送事業)とは

軽貨物ドライバーの正式名称は「貨物軽自動車運送事業(または軽貨物運送事業)」といい、軽トラックや軽バンなどの軽貨物車両または二輪自動車を使用して、有償で貨物を運送する事業を指します。

運送業の種類と貨物軽自動車運送事業の位置づけ

運送業は貨物自動車運送事業法により、以下の3種類に区分されています。

種類概要開業に必要な手続き
一般貨物自動車運送事業3輪以上の自動車で不特定多数の他者の貨物を有償運送国土交通大臣の許可
特定貨物自動車運送事業特定の荷主の貨物のみを自動車で有償運送国土交通大臣の許可
貨物軽自動車運送事業軽自動車または二輪自動車で他者の貨物を有償運送運輸支局への届出のみ
出典:e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法|第二条・第三条・第三十六条」

一般貨物・特定貨物の2種類は国土交通大臣の許可が必要で、営業所ごとに車両5台以上の確保や運行管理者の選任なども求められます。

一方、貨物軽自動車運送事業は届出制のため、必要書類に不備がなければ当日から開業でき、初期費用を抑えやすい点から個人事業主やフリーランスとしての参入が増えています。

軽貨物ドライバーの配送の種類

軽貨物ドライバーの仕事は、配送先や荷物の性質によって主に3種類に分けられます。それぞれ稼働パターンや向き不向きが異なるため、どの配送形態を中心にするかによって収入の安定性や働き方が変わります。

配送先配送物稼働パターン
宅配個人宅食材・日用品 など
(比較的小さいものが多い)
平日・土日問わず稼働。不在時は再配達が発生
企業配店舗・事業所 など事務用品・オフィス用品・飲食物 など
(まとめて配送するケースが多い)
配送先の営業時間内が中心のため、主に平日稼働
スポット配送個人宅・企業・空港 など
(長距離配送のものもある)
機械部品・食品・建築資材 など
(緊急性の高いものが中心)
緊急・突発的な依頼のため不定期。繁忙期に集中しやすい

宅配

個人宅への配送が中心です。EC市場の拡大に伴い荷物の取扱個数が増加しており、仕事量を確保しやすい配送形態です。日用品や食材など比較的小さな荷物が多く、女性や幅広い年齢層のドライバーも参入しています。

一方で、受取人が不在の場合は再配達が発生し、1件あたりの稼働時間が長くなりやすい点は収入効率に影響します。

企業配

店舗やオフィスなどの法人が配送先です。業務用の事務用品や飲食物など、一度にまとまった量を配送するケースが多く、1日あたりの配送件数は宅配より少ない傾向があります。

配送先の営業時間内に収まるため基本的に平日稼働となり、再配達のリスクが低い点が宅配との主な違いです。

スポット配送

緊急・突発的な配送依頼に対応する業務です。機械部品・食品・建築資材など、急ぎで必要とされる荷物が中心で、報酬単価は高めに設定されていることが多い一方、案件数は多くありません。繁忙期に他の配送事業者から人員補充として依頼されるケースもあります。

軽貨物ドライバーの働き方

軽貨物ドライバーとして個人事業主になる場合、仕事の取り方や契約形態によって収入の安定性や自由度が大きく異なります。自分の働き方に合った形態を選ぶために、それぞれの特徴を把握しておくことが収入計画の精度にも影響します。

軽貨物ドライバーの働き方としては、主に以下の3つが挙げられます。

軽貨物ドライバーの主な働き方

  • 企業との直接契約
  • 業務委託・FCとして働く
  • ギグワーカーとして働く

企業との直接契約

配送を依頼したい企業や出荷主に自ら営業をかけ、直接契約を結ぶ方法です。「直受け」とも呼ばれます。仲介業者を通さないため手数料が発生せず、同じ稼働量でも手取りが増えやすい点が特徴です。

一方で、契約獲得まで自力で営業活動を行う必要があり、開業直後に安定した仕事量を確保するまでに時間がかかるケースがあります。

業務委託やFCとして働く

運送会社や大手通販事業者と業務委託契約を結び、配送を請け負う方法です。委託ドライバーとも呼ばれ、個人事業主として軽貨物ドライバーを始める場合の主な形態のひとつです。

たとえばAmazonでは個人事業主との直接業務委託制度「Amazon Flex」を設けています。またヤマト運輸のグループ会社であるヤマト・スタッフ・サプライ株式会社は、個人事業主を対象とした「軽貨物フランチャイズ」制度を提供しています。

FC(フランチャイズ)契約の場合は、加盟先のブランドや配送ネットワークを活用できる反面、加盟金やロイヤリティが発生するケースもあるため、契約内容の確認が必要です。

出典:Amazon「Amazon Flex公式サイト」 出典:ヤマト・スタッフ・サプライ株式会社「軽貨物フランチャイズ加盟者募集」

ギグワーカーとして働く

ギグワーカーとは、アプリやプラットフォームを通じて案件を単発で受注する働き方です。Uber Eatsや出前館などが該当します。業務委託と異なり特定の企業と継続的な契約を結ぶ必要がなく、稼働日時を自分で決めやすい点が特徴です。

一方で、案件単価が低めに設定されていることが多く、まとまった収入を得るには稼働量を確保する必要があります。

軽貨物ドライバーの個人事業主として開業する要件と手続き

軽貨物ドライバーとして個人事業主になるには、運輸支局への届出や税務署への開業届など、複数の手続きを並行して進める必要があります。

さらに、2025年4月からは安全管理者の選任・講習受講も義務化されました。開業前に必要な手続きをすべて把握しておくことで、開業後の追加対応を防げます。

事業開始までの流れは下表をご確認ください。

ステップ手続き内容提出先
1個人事業の開業届を提出する所轄の税務署
2貨物軽自動車安全管理者講習を受講する(2025年4月以降に開業する場合)国土交通大臣登録の講習機関
3貨物軽自動車運送事業経営届出書・運賃設定届出書・事業用自動車等連絡書・車検証を提出する所轄の運輸支局
4貨物軽自動車安全管理者の選任・届出をする(2025年4月以降に開業する場合)所轄の運輸支局
5事業用自動車等連絡書をもとにナンバー変更などの手続きをする軽自動車検査協会

軽貨物ドライバーとして開業するにあたっての要件は、以下のとおりです。

軽貨物ドライバーとして個人事業主になる要件

  • 普通自動車免許を取得している
  • 軽貨物車両を保有している
  • 事業所から2km以内に駐車場を確保している
  • 個人事業の開業届を提出している
  • 貨物軽自動車運送事業経営届出書を提出している
  • 貨物軽自動車安全管理者を選任・届出している(2025年4月義務化)

普通自動車免許を取得している

軽貨物車両は普通自動車免許で運転できます。大型トラックで配送する一般貨物自動車運送事業とは異なり、追加の免許や資格を取得せずに開業できる点が特徴です。

軽貨物車両を保有している

個人事業主として開業する場合、配送用の軽貨物車両は自分で用意します。業務委託契約では企業から車両が貸与されるケースもありますが、自身で車両を保有することで契約先の選択肢が広がります。

軽バンなどの軽貨物車両は乗用車と比べて取得費用・維持費ともに抑えやすく、リース契約での調達も可能です。なお、車検証の用途欄は「貨物」「乗用」いずれの車両でも、貨物軽自動車運送事業に使用できます。

出典:関東運輸局「貨物軽自動車運送事業について」

事業所から2km以内に駐車場を確保している

軽貨物運送事業の届出には、事業所から半径2km以内に車両を保管できる駐車場の確保が求められます。個人事業主は自宅を事業所として申請できるため、自宅に駐車スペースがあればそのまま申請できます。

また、駐車場が都市計画法や建築基準法に抵触していないことも確認が必要です。

出典:国土交通省近畿運輸局「軽貨物運送業の内容と手続方法」

個人事業の開業届を提出している

個人事業主として軽貨物ドライバーを始める際には、事業開始から1ヶ月以内に所轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。提出が遅れても罰則はありませんが、開業届を提出していないと青色申告承認申請書を提出できず、最大65万円の青色申告特別控除を受けられません。

青色申告を利用する場合は、開業届と同時に「所得税の青色申告承認申請書」も提出しておくと手続きがスムーズです。

貨物軽自動車運送事業経営届出書を提出している

軽貨物運送事業の開始にあたっては、「貨物軽自動車運送事業経営届出書」「事業用自動車等連絡書」「車検証(電子車検証の場合は自動車検査証記録事項の印刷物)」を所轄の運輸支局に提出します。

届出後に返却される事業用自動車等連絡書は、黒ナンバー取得の際に軽自動車検査協会へ再提出します。提出する地域によって必要書類が異なる場合があるため、開業地域を管轄する運輸支局のホームページで事前に確認してください。

貨物軽自動車安全管理者を選任・届出している

2025年4月施行の法改正により、貨物軽自動車運送事業者(バイク便事業者を除く)は営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、運輸支局を通じて国土交通大臣へ届出することが義務付けられました。個人事業主が1人で事業を行う場合も対象となり、自身を安全管理者として選任・届出する必要があります。

安全管理者に選任するには、事前に国土交通大臣の登録を受けた講習機関で「貨物軽自動車安全管理者講習」(5時間以上)を受講することが求められます。選任後も2年ごとに定期講習の受講が必要です。対象の講習機関については、国土交通省「登録貨物軽自動車安全管理者講習機関の一覧」をご確認ください。

選任を怠った場合や届出をしなかった場合は、100万円以下の罰金の対象となります。

なお、2025年3月末までに経営届出を済ませた既存事業者には猶予期間が設けられており、安全管理者の選任は2027年3月末までに対応すればよいとされています。

出典:国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正を行いました」

軽貨物の個人事業主として働くメリット

軽貨物ドライバーとして個人事業主になることには、雇用形態や働き方の面でいくつかの特徴的なメリットがあります。

軽貨物ドライバーとして働くメリット

  • 普通自動車免許だけで開業できる
  • 稼働日時を自分で決められる
  • 需要が安定しており仕事を確保しやすい

普通自動車免許だけで開業できる

軽貨物ドライバーになるために必要な資格は普通自動車免許のみで、業務経験や学歴は問われません。大型トラックで配送する一般貨物自動車運送事業では運行管理者の選任など複数の要件が求められますが、貨物軽自動車運送事業は届出制のため、免許と車両・駐車場があれば開業できます。

稼働日時を自分で決められる

個人事業主として働くのであれば、休日や稼働時間を自分の裁量で設定できます。とくに、業務委託やギグワーカーとして複数の委託先と契約する形態であれば、繁忙期に稼働を増やす・育児や介護の都合に合わせてシフトを調整するといった柔軟な働き方が可能です。

需要が安定しており仕事を確保しやすい

EC市場の拡大に伴い宅配便の取扱個数は増加傾向にあり、軽貨物ドライバーの需要は継続的に高い水準にあります。経験がない状態で開業しても、委託先を通じてある程度の案件を確保しやすい環境といえます。

軽貨物ドライバーの個人事業主として働く際の注意点

個人事業主として軽貨物ドライバーを始めるのであれば、収入の仕組みや経費の負担、税務対応はすべて自身で管理することになります。開業前にこれらの特性を把握しておくことで、収支計画の精度が上がり、想定外の出費や税負担を防ぎやすくなります。

軽貨物ドライバーの個人事業主として働く際の注意点

  • 収入は配送件数に連動する
  • 車両維持費をはじめとする経費がかかる
  • 確定申告が必要
  • インボイス制度への対応

収入は配送件数に連動する

軽貨物ドライバーの収入は、配送した荷物の件数や稼働時間に応じて決まります。収入を増やすには稼働量を増やすしかなく、長時間労働になりやすい構造は開業前に把握しておくことが収入計画に役立ちます。

また、業務委託の場合は委託先の都合で案件数が減少するリスクもあるため、複数の委託先を確保しておくことが収入の安定につながります。

車両維持費をはじめとする経費がかかる

個人事業主として事業を運営する際、ガソリン代・車両のメンテナンス費用・任意保険料・駐車場代などの経費はすべて自己負担です。これらは事業の必要経費として確定申告で計上できますが、毎月の固定費として収支計画に組み込んでおかないと手元資金が不足するリスクがあります。

軽貨物ドライバーの主な経費の例は、以下のとおりです。

経費の種類内容
ガソリン代業務で使用した分を計上
車両費減価償却費またはリース料
車両メンテナンス費オイル交換・タイヤ交換・車検費用など
自動車保険料自賠責保険・任意保険(事業用)
駐車場代車庫として使用する駐車場の賃料
通信費業務で使用するスマートフォンの料金など(家事按分)

確定申告が必要

個人事業主として軽貨物ドライバーを営む場合、毎年確定申告が必要です。所得(収入から経費を差し引いた金額)が基礎控除額を超える場合、翌年2月16日から3月15日の間に確定申告書を提出します。

開業届を提出している場合は青色申告を選択でき、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。帳簿の記帳が必要になりますが、会計ソフトを活用することで作業負担を軽減できます。

副業として軽貨物ドライバーを行っている場合は、年間の所得が20万円を超えると確定申告の対象となります。

インボイス制度への対応

2023年10月にインボイス制度が開始されました。課税売上高が1,000万円以下の軽貨物ドライバーはこれまで消費税の納税義務が免除されていましたが、インボイス制度の導入により、適格請求書(インボイス)を発行できない免税事業者に対して委託先が仕入税額控除を適用できなくなりました。

委託先企業からインボイス登録を求められる可能性があるため、取引先の状況を確認したうえで対応を検討することが現実的です。

出典:国税庁「インボイス制度について」

まとめ

軽貨物ドライバーとして個人事業主になるには、普通自動車免許と軽貨物車両・駐車場の確保に加え、税務署への開業届と運輸支局への経営届出書の提出が必要です。2025年4月からは貨物軽自動車安全管理者の選任・講習受講も義務化されており、開業前に手続きの全体像を把握しておくことで、開業後の追加対応を防げます。

個人事業主として事業を継続するには、車両維持費や保険料などの経費管理と確定申告への対応が欠かせません。青色申告を活用することで最大65万円の控除を受けられるため、開業届と同時に青色申告承認申請書を提出しておくことが収益確保につながります。

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よくある質問

軽貨物ドライバーとして個人事業主になるには何が必要ですか?

普通自動車免許・軽貨物車両・駐車場の確保に加え、税務署への開業届と運輸支局への貨物軽自動車運送事業経営届出書の提出が必要です。2025年4月以降に新たに開業する場合は、貨物軽自動車安全管理者の選任・講習受講・届出も開業前に済ませる必要があります。

詳しくは記事内「軽貨物ドライバーの個人事業主として開業する要件と手続き」をご覧ください。

軽貨物ドライバー(個人事業主)の年収はどのくらいですか?

配送件数・稼働時間・契約形態によって異なりますが、300〜400万円程度が目安とされています。ガソリン代・保険料・車両維持費などの経費を差し引いた手取りベースで収支計画を立てることが現実的な判断につながります。

軽貨物の個人事業主は確定申告が必要ですか?

個人事業主として軽貨物ドライバーを営む場合、所得が基礎控除額を超えると確定申告が必要です。開業届を提出していれば青色申告を選択でき、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。副業として行っている場合は、年間の所得が20万円を超えると申告の対象となります。

詳しくは記事内「確定申告が必要」をご覧ください。

2025年の法改正で軽貨物の個人事業主は何をする必要がありますか?

2025年4月から、個人事業主を含む貨物軽自動車運送事業者に「貨物軽自動車安全管理者」の選任・講習受講・国土交通大臣への届出が義務付けられました。1人で事業を行う場合は自身を安全管理者として選任します。

2025年4月以降に新たに開業するのであれば開業前に対応が必要ですが、2025年3月末までに届出済みの事業者は2027年3月末までに選任すればよいとされています。

詳しくは記事内「貨物軽自動車安全管理者を選任・届出している」をご覧ください。

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