事業を継続的に成長させていくうえでは、利益をしっかりとコントロールする仕組みが不可欠です。売上が伸びていても、コストの増加によって思うように利益が残らないというケースは少なくありません。こうした状況を防ぐために行うのが「利益管理」です。
本記事では、利益管理の基本的な考え方や目的をわかりやすく整理したうえで、その中核を担う「利益予算管理」の具体的な手順までを解説します。これから利益管理に取り組む方や、自社の管理体制を見直したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
利益管理とは
利益管理とは、企業が目標とする利益を達成するために、利益にかかわる計画を立ててその実行をモニタリングし、必要に応じて改善を加えていく一連の管理活動を指します。
利益は売上から原価や経費を差し引いた残りの金額であり、企業が事業を継続するための原資です。売上だけを追いかけても、原価や経費がそれを上回れば利益は残りません。そのため、売上・コスト・利益のバランスを意識しながら、利益そのものを管理対象として扱う考え方が必要になります。
利益管理を適切に行うことで、経営判断の根拠が数値として明確になり、業績悪化の兆しを早い段階で察知して対策を打てるようになります。
利益管理を構成する2つの活動
利益管理は、大きく分けて2つの活動から構成されます。
利益管理を構成する2つの活動
- 利益計画:期初に目標利益を定め、それを達成するための売上・原価・経費の計画を立てる
- 利益統制:計画期間中に予算と実績を比較し、ズレが生じていれば原因を分析して改善策を講じる
利益計画だけでは、立てた目標が機能しているかが見えません。一方、利益統制だけでは判断の拠り所が定まりません。両者を一体で運用することではじめて、利益管理が機能するようになります。
売上管理・原価管理との違い
利益管理と混同されやすい活動に、売上管理と原価管理があります。それぞれ管理対象が異なり、利益管理はこの2つを統合した上位の管理活動と位置づけられます。
| 管理活動 | 主な管理対象 | 目的 |
|---|---|---|
| 売上管理 | 売上高 | 売上目標の達成 |
| 原価管理 | 製造原価・仕入原価 | 原価の適正化・低減 |
| 利益管理 | 利益(売上 − 原価 − 経費) | 目標利益の確保 |
売上管理は「いくら売るか」、原価管理は「いくらでつくる・仕入れるか」に焦点を当てるのに対し、利益管理は「最終的にいくら残すか」をゴールに据えます。売上と原価の両方を視野に入れたうえで利益を捉えるのが、利益管理の特徴です。
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利益管理の目的
利益管理の最大の目的は、企業が事業活動を通じて生み出すべき利益を確実に確保することです。利益が確保できなければ、納税・借入返済・再投資・株主還元といった企業活動が立ち行かなくなります。
数値目標としての利益が明確になっていない状態では、経営の方向性が定まらず、現場の意思決定もぶれやすくなります。たとえば「売上を伸ばす」という方針だけでは、コストをかけて売上を取りにいくべきか、効率重視でコストを抑えるべきかの判断がつきません。
利益管理によって目標利益と達成プロセスが明確になれば、こうした日々の経営判断に一貫した基準が生まれます。また、計画と実績のズレを継続的にチェックする仕組みが整うことで、課題への対応が後手に回るリスクも下げられます。
利益管理の中核となる「利益予算管理」
利益管理を実務として動かしていくうえで中心になるのが、目標利益を予算という形に落とし込み、達成状況を管理していく「利益予算管理」です。期初に決めた利益目標が単なる努力目標で終わらないよう、数値計画として組織内に共有し、毎月実績と照らし合わせていくプロセスといえます。
予算管理に欠かせない4つの予算
そもそも「予算」とは、目標利益の達成に必要となる売上やコストの目安をあらかじめ数値化したものです。過去の経営実績や市場環境をふまえ、年間や月単位で売上とコストの見通しを立てた数値を「予算」として設定します。
予算管理は、設定した予算と実際の数値を比較しながら、分析や改善を進めていく業務です。予算管理では次の4種類の予算を扱うのが一般的です。
予算管理で扱う4つの予算
- 売上予算:期中に達成すべき売上の目標額
- 原価予算:商品・サービスの提供に必要な原価の目標額
- 経費予算:人件費・交通費など、事業活動にかかる費用の見積もり額
- 利益予算:期中に達成すべき利益の目標額
売上予算は、過去の実績をベースに成長分を上乗せして設定するのが一般的です。原価予算は、販売業であれば商品仕入、製造業であれば原材料費の見積もりが該当します。経費予算は、人件費・交通費・事務所の家賃・光熱費など、事業運営にかかわる費用の見積もりです。
本記事では以降、これら4つの予算のうち利益管理の中核となる「利益予算」に焦点を当てて解説していきます。
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利益予算とは
利益予算とは、企業が目標とする利益を生み出すために設定する予算です。
事業活動を続けていくには、売上を立てるだけではなく、確実に利益を残していく必要があります。利益は、売上から原価や経費を差し引いて算出されます。利益を確保するには売上を伸ばすことも重要ですが、売上予算が未達であっても、原価や経費の削減によって利益予算を達成できるケースもあります。
利益管理(利益予算管理)を行うメリット
利益予算をあらかじめ決めておくと、経営戦略や方針が明確になります。販売数を増やして売上を伸ばすべきなのか、コストをさらに抑えるべきなのか、といった方向性の判断がしやすくなります。
見通しが立てば、設備の更新・人材の採用・新規投資といった今後の意思決定も検討しやすくなるでしょう。
また利益予算を決めておくことで、目標を達成できなかった場合に課題の分析や改善策の検討がしやすくなる点もメリットです。
利益予算の決め方
利益予算を決める流れは、以下のとおりです。
利益予算を決める流れ
それぞれ詳しく解説します。
1.大まかな利益目標と予算を決める
取締役会で、会社全体の大まかな利益目標と予算額を決定します。この時点では、目標としたい利益額をざっくりと決める形で問題ありません。「今期はこの水準の利益は確保したい」という経営層の意思を反映させてもよいでしょう。
少し高めの予算を設定するのも有効ですが、現実的に達成不可能な水準まで引き上げてしまうと現場が機能しなくなるため、無理のない範囲にとどめることが大切です。
2.各部門で分析し、予算を算出する
会社全体の方針が固まったら、経理部・予算部・経営企画部など、経営に関わる部署で具体的な方針を検討します。損益計算書・過去の実績・データをもとに、部門ごとの予算を算出していきます。部門数が多ければ多いほど、利益額のばらつきも目立ってくるでしょう。
販売する商品・サービスの違いによって、利益が大きく出る部門もあれば、比較的小さい部門もあります。時期によって販売数や売上の波がある部門もあるため、それぞれの特性を考慮しながら、各部門に適した予算を配分しましょう。
3.各部門で調整後、予算を決定する
各部門に配分した予算は、部門内で十分に検討してもらい、要望や意見があれば調整に入ります。明らかに少なすぎる・多すぎる、あるいは時期的に販売数や売上が予算に届きそうにないといった場合は、要望として予算部や経営企画部などに相談を上げてもらいます。
相談内容を検討して再度予算見直し、特に要望・意見がなければ、当期の利益予算として確定させます。
利益管理(利益予算管理)の具体的な手順
次に、利益予算管理の具体的な手順を解説します。
次に、利益予算管理の具体的な手順を解説します。
それぞれ詳しく解説します。
1.前期分の変動損益計算書を作成する
前期の損益計算書をもとに、コストを固定費と変動費に分けて、前期分の変動損益計算書を作成します。変動損益計算書は、通常の損益計算書と異なり、原価と費用を固定費・変動費に区分して表示した資料です。
変動損益計算書を作成することで、限界利益率(限界利益 ÷ 売上高)や損益分岐点売上高(利益と損失の境目となる売上高)を把握できます。
限界利益(売上高 − 変動費)とは、商品やサービスを販売して得た売上から、販売にかかる変動費を差し引いた利益のことです。限界利益がプラスであれば、その分だけ固定費を回収できるため利益が出ます。つまり、限界利益率が高いほど損益分岐点は下がり、利益を出しやすい体質といえます。
限界利益は利益予算を決める際の指標としても役立ちます。適切な目標を立てるためにも、限界利益率の考え方を押さえておきましょう。
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2.当期の変動損益計算書を作成する
前期の変動損益計算書をベースに当期の予算を検討する際には、経営上必要となる利益を確保するために、どのような数値を実現すべきかを考える必要があります。
必要な利益を確保するために、変動損益計算書を使って予算シミュレーション(基本的には売上・変動費・固定費の増減)を行いましょう。
3.当期の利益予算を決める
必要利益を生み出す予算計画が組み上がったら、当期の変動損益計算書をもとに利益予算を確定します。ここまでが利益予算の作成プロセスです。
ただし、この段階で終わってしまうと予算を立てただけの状態にとどまるため、次のステップで実績管理まで踏み込みます。
4.月ごとの利益予算を算出して実績管理を行う
利益予算が決まったら、達成に向けて毎月どれだけの利益が必要かを見積もり、月次で実績管理を行うことがポイントです。予算は決定して終わりではありません。
確実に利益を確保するためにも、月ごとの予測利益と実績を突き合わせ、進捗を継続的にチェックしましょう。月次の実績管理を続けることで、進捗のペースや課題を早期に把握できます。
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会計ソフトを活用して利益管理を効率化する
利益管理を効率的に進める方法として、会計ソフトの活用も選択肢に入ります。
利益予算の策定や実績管理は、企業経営の根幹となる重要な業務である一方、対応には相応の時間と労力がかかります。
会計ソフトを活用すれば、意思決定に必要なデータを手早く出力できるため、利益予算の作成や実績管理にかかる工数を削減できます。予算と実績のズレも迅速に把握できるため、利益管理のサイクルを回しやすくなり、経営判断のスピード向上にもつながるでしょう。
まとめ
利益管理とは、企業が目標とする利益を確保するために利益計画を立て、実績をモニタリングしながら改善を重ねていく一連の管理活動です。売上管理や原価管理とは異なり、最終的に残す利益そのものをゴールに据えるのが特徴です。
実務としては、利益予算を策定し、月次で実績と比較しながら運用していく「利益予算管理」が中核を担います。利益予算を決めておくことで経営判断の基準が定まり、目標未達の際にも課題の分析や改善が進めやすくなります。
予算の設定だけで満足せず、達成に向けて継続的に管理していくことが、利益管理を機能させるうえでの要となります。会計ソフトなどのツールも上手に取り入れながら、自社にあった利益管理の仕組みを整えていきましょう。
よくある質問
利益の管理とは?
利益管理とは、企業が目標利益の達成に向けて計画を立て、その実行をモニタリングするとともに必要に応じて改善を加えていく一連の管理活動です。
利益を上げる4つの方法は?
利益を確保する方法として、基本的には「売上を伸ばす」か「原価や経費を削減する」の2つの方向性が考えられます。具体的には、販売単価を上げる・販売数量を上げる・固定費を下げる・変動費を下げるの4つの方法を検討できます。
