経営管理の基礎知識

予実管理とは? 目的や予算管理との違い、作成に役立つツールを解説

多くの企業では期初に計画や目標が設定されます。その予算と計画した目標の進捗状況を把握し、コントロールするプロセスが「予実管理」です。

当初の計画通りに進めても大丈夫なのか、途中で修正をしたほうがいいのかなど、設定している予算と進捗の実績を比較しながら計画を達成するための管理です。

本記事では、赤字を避け利益を確保するための「予実管理」について、詳しくご紹介していきます。

目次

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予実管理とは?目的や概要を説明

予実管理とは「予算実績管理」の略称です。計画して目標に設定した予算と、その実績を管理します。

通常、企業では実績を把握するために月次決算や半期決算、または年に4回ほど決算を行って数字を把握します。赤字を避け、利益を出していくためにも、当初設定した予算と実績を比較して利益が出ているのかの判断は重要です。

もし予算を達成できていない場合は、そのつど問題や原因を分析します。問題を意識し原因を明らかにしなければ、対策は練られません。

そこから予算が達成できるように軌道修正をし、改善に繋げるなどしていきます。中小企業などでは経営者の経験から予実管理を行っていない、あるいは経営者自身が予実管理を行っているところも多くありますが、大企業の多くでは部署毎に予実管理を行っているところがほとんどです。

予実管理では、目標や計画を定めてからそれに向かっていく途中で差異や問題点が発生したらそれらを一早く知り、コントロールしながら目標を達成することが大切です。

予実管理と予算管理の違い

予実管理と混同されやすい用語に「予算管理」が挙げられます。

予算管理は事業年度ごとに予算計画を策定し、期末の実績と比較・分析して管理するプロセスです。予実管理は予算管理の一部とも言えますが、一般的にはほぼ同様の概念として捉えられています。

予実管理の具体的な進め方

予実管理の具体的な進め方は以下の通りです。

予算管理の進め方

  1. 予実管理の目標の設定
  2. 予実管理の具体的な数値を設定する
  3. 予算と実績の比較をして差異を確認する
  4. 予実管理の改善、軌道修正をして差異を埋める

各ステップの詳細を解説します。

①予実管理の目標の設定

予算作成の目標である営業利益の設定を行います。過去の実績があれば、過去の実績データをベースにして年間予算を計画していきます。過去の実績から大きく異なる数値の設定や、過去の実績をそのまま利用するのではなく、目標の数値が実現できるかがポイントです。

達成しやすい数字を目標にする、あるいは現実的に考えて不可能という数字は設定せず、実現可能であり、かつ手が届きそうな数字を目標に設定しましょう。

②予実管理の具体的な数値を設定する

目標となる営業利益が設定できたら、次は具体的な数値の予算を設定していきます。具体的な予算とは、人件費・減価償却費・管理費などの経費や、原価予算・製造予算などです。予算ごとに明確に設定していきます。

また、細かく分けると通信料や交通費なども含まれ、季節による売上の変動なども発生してくるので、このような予算も決めた上で数値を考慮していきます。

企業の場合は部署や課などがあり、それぞれに与えられる予算の数値があることがほとんどでしょう。

各部署や課で与えられた予算数値をそれぞれが予実管理していきます。各部署で設定された予算を合算して、全体の予算と相違がないか確認します。

予実管理は経理が行うケースも存在しますが、各部署で管理している場合はExcelや、最近では便利なツールもあるので、もっとも効率的に管理ができる方法で行うとよいでしょう。

③予算と実績の比較をして差異を確認する

当初設定した予算数値と利益の実績を比較します。予実管理をしていくとこれらが明確にわかるようになります。ただ比較をするだけで終わらせてはいけません。

設定していた数値との差異が大きければ、その差異を埋めるために原因の分析をし、原因が一時的なものなのか、それとも今後も続くものなのかの見極めが必要です。どうしたら予算が達成できるか、設定していた予算に無理はなかったかを確認します。

そこで弱みなどの原因がわかれば、改善するための対策を練り、軌道修正が必要か否かを判断します。予算と実績の比較をして差異を見つけたら、原因の分析を必ず行いましょう。

予実管理は毎日行っているところもありますが、作業量の関係上毎日行えない場合は週単位で実施します。少なくとも1ヶ月に1回は行うよう心がけましょう。

週単位、月単位での管理をおすすめする理由は、時間差をかけずにタイムリーに管理をすると、予算と実績の差異があった場合に軌道修正がしやすいからです。短い周期での予算管理や実績管理が必要になりますが、差異が大きくなる前に対策を練れます。

④予実管理の改善、軌道修正をして差異を埋める

原因が分かり今後の対策案ができたら、それを実行に移します。月単位で予実管理をしている場合なども、問題点が見つかったらすぐに改善、軌道修正していきましょう。

予実管理は手遅れになる前に原因に気づき、差異を埋める対策を練り改善していくプロセスが大切です。

予実管理の良くない例

予実管理をしていく上で良くない例もいくつか挙げられます。予実管理をする意味を理解し、ただ数字を把握するだけで終わらないようにしましょう。

低めの予算設定

利益の目標は経営者の考えによって変わり、経営者が決めるケースも想定されますが、目標を達成しやすくするために予算を低めの設定にしてしまうのは、成長段階の企業にはおすすめしません。

一方で、現実離れした高すぎる予算の設定にも無理が生じます。過去のデータがある場合はそれを参考にしながら少し高めの予算を目標にし、なんとか手が届きそうな数字を定めるといいでしょう。

タイムリーな予実管理ではない

予実管理はリアルタイムの実績把握とタイムリーな対応が重要です。予実管理は設定した予算と実績の差異を確認するためのプロセスですが、その差異を見つけるのが半年後などでは既に手遅れとなってしまうかもしれません

ビジネスは常に動いているので時間が経てば経つほど情報が古くなります。また気付くのが遅すぎると、取り返しがつかないことになるケースもあるでしょう。

予実管理をタイムリーに行うことによって、差異があっても最小限に抑えられ、問題点の原因を早めに調査できます。

予算を強引に達成させようとする

設定された予算に実績が届かず達成するのが難しくなったときに、強引に予算を達成させようと、残った期間で無理をする方法はおすすめできません。実績の水増しをする、あるいは無理な労働をさせて強引に達成しようとするのは良くない例です。

予算と実績に差異が大きく生じる場合には、もともとの予算が現実的に達成不可能である可能性も想定されます。定期的に計画や設定を見直し、差異があったら修正を行いましょう。

予実管理の問題点の原因を追及しない

設定した予算と実績を集計し差異を把握するだけでは何も変わりません。問題点がわからないまま、うやむやにするのは良くない例です。差異があった場合には何が問題だったのかをきちんと考え、原因を追及することが重要です。

実績を集計していくと事業の強みや弱みをきちんと把握できます。それらを把握することによって改善すべき箇所があれば、対策を練り軌道修正をしていきます。問題の本質を見極め、原因を追及して明らかにしていきましょう。

予実管理を行ううえでのポイント・注意点

予実管理はポイントや注意点を押さえて適切に行いましょう。以下では、3つの視点から解説します。

適切な予算を設定する

予実管理の成功の鍵は適切な予算設定です。目標達成に必要な資源や費用を明確に理解し、目標と予算を関連付けて設定します。

予算を設定する際は、過去の経験やトレンド分析をもとに現実的で前向きな計画を立てましょう。不意の事態に備えるため、リスクや不確実性への配慮も大切です。

定期的に見直し更新する

予実管理は定期的な見直しと更新が必要です。進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて予算や目標を修正しましょう。予期せぬ問題が生じた際は、迅速に対応策を立てるなど柔軟な行動が求められます。

PDCAサイクルを活用する

予実管理は、企業や組織が目標達成や業績改善を図るために行うPDCAサイクルの一部として捉えられます。

PDCAサイクルのステップ内容
Plan(計画)会社やプロジェクトの予算や目標を設定する
Do(実行)予算や目標を達成するために実際に行動する
Check(評価)実績と予算を比較し、進捗状況や業績を評価する
Act(改善)差異を分析し、問題点や改善点を抽出して対策

予実管理を行う際は上記のサイクルを意識しておくとよいでしょう。また、PDCAサイクルを円滑に実施するための仕組みづくりも重要です。

予実管理をサポートするツール

予実管理は、予算計画の策定や定期的な見直しなど複数の工程をともないます。各工程の作業負担の軽減にはツールの活用が有効です。具体的には、以下のツールが挙げられます。

予実管理をサポートするツール

  • Excel、Google Sheets
  • プロジェクト管理ツール
  • 会計ソフトウェア

各ツールの詳しい内容を紹介します。

Excel、Google Sheets

ExcelやGoogle Sheetsは予実データを入力し、予算と実績を比較・分析する作業に適したツールです。比較的低コストで利用でき、使い慣れている人も多いというメリットも挙げられます。予算作成に適したフォーマットが作れて、グラフ化や数値の計算を行える点も利点です。

プロジェクト管理ツール

プロジェクト管理ツールは、予実管理で行われる多数のタスクの管理をサポートするツールです。予算に関する膨大な情報の管理や進捗状況の追跡などに役立ちます。近年では、Trello・Asana・Jiraなどのプロジェクト管理ツールが提供されています。

会計ソフトウェア

会計ソフトウェアを活用すると、会計データをベースに予実管理を行えます。日々の業務で蓄積された財務・経営データを自動で分析・集約できるため、とても便利です。

たとえばfreee会計では、「経営ナビゲーション」メニューで勘定科目・部門・セグメント別の予実対比ができます。実績は自動集計され、着地予測などのグラフに反映されます。

まとめ

予実管理のポイントを大きくまとめると以下の通りです。

  • 低めの予算設定をしない
  • タイムリーに数字を把握
  • 問題点があれば原因を探る
  • 改善するための行動を移す

予実管理の目的は予算を達成するためではなく、設定した予算に対して実績はどうだったかを把握し、会社が成長するとともに、利益を得ていくために管理するプロセスです。予算と実績を比較することにより問題があれば原因を探り、それらを改善し、軌道修正するためのものです。

予実管理をするにはExcel以外にも新しいツールが出てきています。操作しやすいツールを選んで予実管理していきましょう。

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