経営管理とは、企業や組織が目標を達成するために、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を適切に管理・調整する経営手法です。生産管理・販売管理・労務管理・人事管理・財務管理の5つの領域にわたる業務を通じて、企業の持続的な成長を支える役割を担います。
事業が拡大するにつれて管理すべき業務や情報が増え、経営管理の重要性はより高まります。とくに中小企業やスタートアップでは、限られた人員で複数の管理業務を兼任するケースが多く、業務の効率化と情報の可視化が経営管理の大きな課題です。
本記事では、経営管理の目的や経営企画との違いのほか、経営管理に該当する業務内容・効果的に行ううえでのポイント・課題と改善方法・役立つシステムについて解説します。
目次
- 経営管理とは
- 経営管理の目的
- 「経営企画」と「経営管理」との違い
- 経営管理の仕事内容
- 生産管理
- 販売管理
- 労務管理
- 人事管理
- 財務管理
- 経営管理を効果的に行ううえでのポイント
- KPIを設定し進捗を管理する
- PDCAサイクルを回して継続的に改善する
- 経営情報を可視化・共有する
- 経営管理の課題とは
- 管理部門の業務プロセスが煩雑
- 計画や実行評価が不明確
- 業績予測精度が不正確
- 経営管理の改善方法
- 最適な経営管理システムの導入
- 組織内の各レイヤーに合わせた課題への対策
- 経営計画・KPIの見直しと定期的な振り返り
- 経営管理に役立つシステム
- 必要なデータベースを一元管理できる「ERP」
- さまざまなデータを収集・可視化できる「BIツール」
- クラウド会計ソフト
- まとめ
- よくある質問
経営管理とは
経営管理とは、企業や組織が目標を達成するために、経営資源を適切に管理・調整する経営手法です。事業部単位や企業単位で行われることが多く、主に以下の4つの経営資源を管理します。
経営管理は、これら4つの経営資源を有効に活用することで、企業の目標達成と持続的な成長を支える役割を担っています。
経営管理は企業規模を問わず必要な取り組みですが、限られた経営資源で事業を成長させる必要がある中小企業やスタートアップにとってはとくに重要です。経営者や少数の担当者が複数の管理業務を兼任するケースが多いからこそ、何をどのように管理するかを早い段階から整えておくことが、事業拡大の基盤となります。
経営管理の目的
経営管理の目的は、限りある経営資源を最大限に活用して、企業の目標や利益を達成することです。
企業が持続的に成長するためには、利益を確保し続けなくてはなりません。利益を確保するには、目標と達成するための計画を策定し、売上を増やす・コストを削減して生産性を上げるなど、経営資源を効率的に活用することが求められます。
また、経営管理を通じて経営目標やビジョンを組織全体で共有することで、従業員が同じ方向を向いて行動できるようになり、モチベーションの維持・向上にもつながります。
「経営企画」と「経営管理」との違い
経営管理と混同されやすい言葉に「経営企画」があります。両者の主な違いは以下のとおりです。
| 経営管理 | 経営企画 | |
|---|---|---|
| 役割 | 経営資源を効率的に活用し、目標を達成するための管理・調整を行う | 中長期的な目標を達成するための戦略・計画を策定する |
| 主な業務 | 生産・販売・人事・労務・財務の管理 | 中長期経営計画の立案・予算策定・市場調査・競合調査 |
| 時間軸 | 現在〜短期 | 中長期 |
経営企画が「どこに向かうか」という戦略を描く役割であるのに対し、経営管理は経営企画で策定された戦略に沿って「どのように進むか」を管理・調整する役割を担います。規模の小さな企業や設立間もない企業では、経営企画を創業者や経営者が兼任しているケースも多く見られます。
経営管理の仕事内容
経営管理の対象となるのは、主に以下の5つです。それぞれの領域で専門的な管理が行われることで、企業全体の目標達成を支えます。
経営管理の仕事内容
- 生産管理
- 販売管理
- 労務管理
- 人事管理
- 財務管理
生産管理
生産管理とは、製品の製造から出荷までの一連の工程を管理する業務です。品質・コスト・納期の3つの観点から効率よく生産できるよう管理します。
具体的には以下のような業務が含まれます。
生産管理の業務例
- 生産計画の策定・調整
- 原材料の調達・在庫管理
- 製造工程の品質管理
- 生産現場の人員配置・設備管理
- 梱包・出荷前の品質検査
販売管理
販売管理とは、販売活動に関わる一連の流れを管理する業務です。具体的には、生産条件(いつ・どこで・だれに・なにを・いくつ・いくら)に関する情報を管理します。
また、商品の販売履歴・仕入れ・在庫・顧客・請求などの情報も含まれます。受注から入金までのプロセスを可視化・管理することで、売上の安定的な確保とキャッシュフローの把握を可能とします。
主な業務フローは以下のとおりです。
販売管理の業務フロー
- 受注管理
- 出荷管理
- 請求管理
- 仕入管理
- 在庫管理
労務管理
労務管理とは、従業員が安心して働ける環境を整備し、労働に関するルールや条件を管理する業務です。法令遵守の観点からも欠かせない業務で、以下のような内容が含まれます。
労務管理の業務例
- 労働契約・労働条件の管理
- 勤怠管理・労働時間の管理
- 給与計算・社会保険手続き
- 就業規則の整備・運用
- 安全衛生管理
人事管理
人事管理とは、従業員の採用から退職までに発生するさまざまな管理を行う業務です。労務管理と混同されることがありますが、人事管理は従業員の能力開発・評価・配置など「人材を活かす」ことに重点を置きます。
主な業務は以下です。
人事管理の業務例
- 採用計画の策定・採用活動
- 人事評価(人事考課)の実施
- 人材育成・研修の企画・運営
- 配置・異動・昇進・昇給の管理
- 人事面談・キャリア支援
財務管理
財務管理とは、健全な企業経営を行うために資金や資産を管理する業務です。資金不足や不正が起こるリスクを防ぎ、経営者の意思決定を数字の面からサポートする役割を担います。
主な業務には以下のようなものがあります。
財務管理の業務例
- 資金調達・資金繰り管理
- 決算書の作成・財務分析
- 予算管理・利益計画の策定
- 原価管理・収益管理
- キャッシュフロー管理
経営管理を効果的に行ううえでのポイント
経営管理を効果的に行うためには、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。
KPIを設定し進捗を管理する
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とは、目標の達成度を測るための指標です。経営目標を達成するためには、まず目標を数値化し、その進捗を定期的に確認できる仕組みを整えることが求められます。
KPIを設定する際は、以下の点を意識しましょう。
KPI設定時に意識すべき点
- 経営目標(KGI)から逆算して、達成に必要なKPIを定める
- 部門・担当者ごとに管理できる粒度に落とし込む
- 定量的に測定できる指標を選ぶ
- 管理項目を絞り込み、過度な管理にならないようにする
KPIを設定するだけでなく、定期的なモニタリングと結果に基づいた対策を講じることで、目標達成に向けた組織の行動を方向付けられます。
PDCAサイクルを回して継続的に改善する
PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)の4つのステップを繰り返すことで、業務を継続的に改善するフレームワークです。経営管理においてPDCAサイクルを回すことで、計画と実績のズレを早期に把握し、迅速に対処できます。
経営環境の変化が激しい現代においては、PDCAサイクルを短いスパンで回し、状況の変化に柔軟に対応できる体制を整えることが求められます。
経営情報を可視化・共有する
経営管理を適切に行うためには、業績データや財務情報をリアルタイムに把握できる状態にしておくことが欠かせません。情報が特定の担当者に集中していたり、部門間で共有されていなかったりすると、経営判断が遅れたり、誤った意思決定につながるリスクがあります。
経営情報の可視化・共有を進めるためには、以下のような取り組みが有効です。
経営情報の可視化・共有の方法
- 売上・費用・利益などの業績データをダッシュボードで一元管理する
- 部門ごとの予算と実績を定期的に共有する仕組みを整える
- 経営会議・部門会議でデータに基づいた議論を習慣化する
- クラウドシステムを活用し、必要な情報にいつでもアクセスできる環境を整える
経営情報が組織全体で適切に共有されることで、経営層から現場の担当者まで同じ目標に向かって行動できるようになります。
経営管理の課題とは
事業の拡大に伴い管理するデータ量や業務の複雑さが増すと、経営管理に支障が生じる可能性があります。中小企業・スタートアップが直面しやすい主な課題は以下の3つです。
中小企業・スタートアップの経営管理の主な課題
- 管理部門の業務プロセスが煩雑
- 計画や実行評価が不明確
- 業績予測精度が不正確
管理部門の業務プロセスが煩雑
事業が成長し、取引先や従業員が増えるにつれて、管理すべきデータ量や業務の種類が増加します。ExcelやスプレッドシートだけでこれらをすべてPDCAサイクルを回しながら管理しようとすると、データの転記ミス・集計の手間・情報の属人化といった問題が生じやすくなります。
とくに経理・労務・在庫などの業務が部門ごとにバラバラに管理されていると、全体の状況を把握するために多くの時間と手間がかかり、本来注力すべき業務にリソースを割けなくなる悪循環に陥ることがあります。
計画や実行評価が不明確
中長期の経営計画や部門ごとのKPIが明確に定められていないと、「計画を立てたが進捗が把握できない」「どの施策が成果につながっているかわからない」といった課題が生じます。
とくに創業間もない企業や急成長中の企業では、日々の業務対応に追われるあまり、計画の策定や実績の振り返りが後回しになりがちです。計画と実績のギャップを定期的に確認する仕組みがなければ、問題の発見が遅れ、軌道修正のタイミングを逃してしまうリスクがあります。
業績予測精度が不正確
安定した経営を続けるためには、将来の売上・コスト・キャッシュフローをある程度正確に予測し、先手を打って対策を講じることが求められます。しかし、過去の実績データが十分に蓄積されていなかったり、市場環境の変化が激しかったりすると、業績予測の精度を高めることは困難です。
予測精度が低いと、資金繰りの悪化・過剰在庫・人員不足など、さまざまなリスクへの対応が後手に回りやすくなります。データに基づいた予測の仕組みを整えることが、リスクを最小限に抑えるうえで求められます。
経営管理の改善方法
経営管理の課題を解決するための主な改善方法は以下のとおりです。
経営管理課題の改善方法
- 最適な経営管理システムの導入
- 組織内の各レイヤーに合わせた課題への対策
- 経営計画・KPIの見直しと定期的な振り返り
最適な経営管理システムの導入
管理部門の業務プロセスが煩雑になっている場合、経営管理システムの導入が有効です。ERPやクラウド会計ソフトなどのシステムを活用することで、各部門のデータを一元管理し、リアルタイムで業績を把握できるようになります。
システム導入にあたっては、自社の規模・業種・課題に合ったものを選ぶことが求められます。大企業向けの高機能なシステムを導入しても、中小企業では使いこなせないケースもあるため、まず自社が抱える課題を明確にしたうえで、必要な機能を絞り込んで選定しましょう。
組織内の各レイヤーに合わせた課題への対策
経営管理の課題は、経営層・管理職・現場担当者など、組織内の立場によって異なります。経営層には業績の全体像を把握するためのダッシュボードが必要な一方、現場担当者には日々の業務を効率化するためのツールが求められます。
それぞれのレイヤーに合わせた情報提供と課題対策を講じることで、組織全体として経営管理の精度を高められます。具体的には以下のような対策が考えられます。
【レイヤー別】経営管理課題の対策例
- 経営層:月次・四半期ごとの業績レビューの仕組みを整備する
- 管理職:部門ごとのKPI管理と定期的な進捗確認の場を設ける
- 現場担当者:日々の業務データを入力・共有しやすい環境を整える
経営計画・KPIの見直しと定期的な振り返り
計画や実行評価が不明確なケースでは、経営計画とKPIの設定から見直すことが求められます。まず年次・四半期・月次といった時間軸で目標を設定し、定期的に実績と比較する仕組みを整えましょう。
振り返りの際は、目標との差異が生じた原因を分析し、 次の計画に反映させるPDCAサイクルを意識することが大切です。計画の精度は最初から高くなくても構いません。振り返りを繰り返すことで徐々に精度が上がり、業績予測の正確性も向上していきます。
経営管理に役立つシステム
経営管理の効率化・高度化を図るために活用できる主なシステムは、以下の3つです。
経営管理に役立つシステム3選
- 必要なデータベースを一元管理できる「ERP」
- さまざまなデータを収集・可視化できる「BIツール」
- 財務・経営データをリアルタイムで把握できる「クラウド会計ソフト」
必要なデータベースを一元管理できる「ERP」
「ERP」(Enterprise Resources Planning:企業資源計画)とは、企業の基幹業務(会計・人事・生産・販売・在庫など)を一元管理するシステムです。部門ごとにバラバラに管理されていたデータを統合することで、リアルタイムに経営状況を把握できるようになります。
ERPの主なメリットは以下のとおりです。
ERPのメリット
一方で導入コストが高く、社内への定着まで時間がかかるケースもあるため、自社の規模や課題に合わせて検討することが求められます。
さまざまなデータを収集・可視化できる「BIツール」
BIツール(Business Intelligence Tool)とは、社内外のさまざまなデータを収集・集計・可視化するシステムです。売上・コスト・顧客データなどを分析し、経営判断に活用できる形でグラフや表として表示します。
BIツールの主なメリットは以下のとおりです。
BIツールのメリット
- 複数のシステムに散在するデータを統合して可視化できる
- ダッシュボードにより、経営状況をひと目で把握できる
- データに基づいた客観的な意思決定を支援する
ERPと組み合わせて活用することで、より高度な経営分析が可能になります。
クラウド会計ソフト
クラウド会計ソフトとは、会計・財務管理をクラウド上で行えるシステムです。ERPほど大規模なシステム導入が難しい中小企業・スタートアップでも導入しやすく、財務管理・経営管理の効率化に役立ちます。
クラウド会計ソフトの主なメリットは以下のとおりです。
クラウド会計ソフトのメリット
- 銀行口座・クレジットカードと連携し、取引データを自動で取り込める
- リアルタイムで損益・キャッシュフローを把握できる
- 場所を選ばずアクセスでき、経理業務の効率化につながる
- 月次レポートや経営分析レポートを自動で生成できる
freee会計では、AI機能による自動仕訳をもとに作成されたレポートから月々の資金繰り状況を手軽に把握できます。事業別の売上データもリアルタイムに可視化・比較できるため、経営判断のスピードと精度向上に役立てられます。
まとめ
経営管理とは、企業や組織が目標を達成するために、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を適切に管理・調整する経営手法です。生産管理・販売管理・労務管理・人事管理・財務管理の5つの領域にわたる業務を通じて、企業の持続的な成長を支えます。
経営管理を効果的に行うためには、KPIの設定と進捗管理・PDCAサイクルによる継続的な改善・経営情報の可視化と共有の3つのポイントを押さえることが求められます。
事業の拡大に伴って管理業務が煩雑になってきたら、外部ツールやシステムの活用を検討しましょう。ERPやクラウド会計ソフトなどのシステムを活用することで、業務効率化やリアルタイムな経営状況の把握が可能になります。
よくある質問
経営管理とは何ですか?
経営管理とは、企業や組織が目標を達成するために、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を適切に管理・調整する経営手法です。生産管理・販売管理・労務管理・人事管理・財務管理の5つの領域にわたる業務が含まれます。 詳しくは記事内「経営管理とは」をご覧ください。
経営管理と経営企画の違いは何ですか?
経営企画が「どこに向かうか」という中長期的な戦略・計画を策定する役割であるのに対し、経営管理は経営企画で策定された戦略に沿って「どのように進むか」を管理・調整する役割を担っています。 詳しくは記事内「「経営企画」と「経営管理」の違い」をご覧ください。
経営管理の仕事内容にはどのようなものがありますか?
経営管理の仕事内容は、生産管理・販売管理・労務管理・人事管理・財務管理の5つに分類されます。それぞれの領域で専門的な管理が行われることで、企業全体の目標達成を支えています。 詳しくは記事内「経営管理の仕事内容」をご覧ください。
経営管理に役立つシステムにはどのようなものがありますか?
経営管理に役立つ主なシステムとして、基幹業務を一元管理する「ERP」・データを収集・可視化する「BIツール」・財務・経営データをリアルタイムで把握できる「クラウド会計ソフト」が挙げられます。自社の規模や課題に合わせて選定しましょう。 詳しくは記事内「経営管理に役立つシステム」をご覧ください。
