確定申告の基礎知識

消費税の中間納付・中間申告とは? 対象者や計算方法、仕訳をわかりやすく解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

消費税の中間納付・中間申告とは? 対象者や計算方法、仕訳をわかりやすく解説

消費税の中間納付・申告とは、消費税の申告・納付を年の途中に行うことです。本記事では、中間申告・納付の対象者申告回数などを解説します。

消費税の申告・納付は原則として年に1回ですが、直前の課税期間の消費税額が一定以上の事業者は、年の途中に自ら申告し納付しなければなりません。

消費税の中間申告は、年に1回の納付を分散させられるため、資金繰りの改善にもつながります。制度の仕組みや注意点を正しく理解し、活用しましょう。

目次

消費税の中間申告・中間納付とは?

消費税の中間申告・納付とは、原則として年に1回の消費税の申告と納付を、課税期間の途中に行うことです。

課税事業者として消費税の申告・納付の必要があるのは、課税売上高が1,000万円超の事業者(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)です。

消費税の課税期間は、原則として1年間と決まっています(※)。個人事業者は翌年の3月末日まで、法人は課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内に、確定申告・納付する決まりです。

消費税の申告に関して詳しく知りたい方は、「消費税申告」をご覧ください。

ただし直前の課税期間の確定消費税額が一定以上の事業者は、課税期間の途中に申告し、複数回に分けて消費税を前払いしなくてはなりません。この仕組みを中間申告制度といいます。

中間申告制度の目的は、主に以下の2つです。

中間申告制度の目的

  • 国の財政収入を安定させる
  • 納税者の負担を軽減する

年に1度の税収を分割することで、国は突発的な資金需要に柔軟に対応できるようになります。また中間申告・納付をすれば、1回あたりの納付額を抑えられるため、納税者の資金繰り改善にもつながります。

中間申告・納付が必要な事業者には、所轄税務署から納付書が中間申告対象期間の末日の翌月下旬から翌々月上旬にかけて届きます。決算期とは異なるタイミングで納付書が届くため、注意しましょう。

(※)個人事業主は1月1日~12月31日までの1年間、法人は事業年度です。

消費税の中間申告・中間納付の対象者

直前の課税期間の確定消費税額が一定以上の課税事業者は、中間申告・中間納付をしなければなりません。中間申告・中間納付の対象となる事業者を、法人と個人事業主に分けて解説します。

なお課税期間の特例制度を適用している場合、中間申告書の提出は不要です(※)

(※)課税期間の特例制度とは、事業者の選択によって、課税期間を3ヶ月ごとまたは1ヶ月ごとに区分して短縮できる制度です。

法人の場合

消費税の中間申告・中間納付が必要な法人は、前事業年度の確定消費税額の年税額が48万円を超える法人です。

なお消費税には、「標準税率(10%)」と「軽減税率(8%)」があります。

区分消費税率地方消費税率
標準税率(10%)7.8%2.2%
軽減税率(8%)6.24%1.76%

中間申告・中間納付が必要となるのは、確定消費税額が48万円超の場合であり、地方消費税額は含みません。

個人事業主の場合

消費税の中間申告・中間納付が必要な個人事業主は、前年の確定消費税額が48万円を超える人です。法人と同様に、地方消費税額は含みません。

たとえば、2023年に中間申告・中間納付の対象となる個人事業主は、2022年分の確定申告で確定した消費税の年税額が、48万円を超える人です。

消費税の中間申告・中間納付の時期や回数は?

中間申告の回数は、直前の課税期間の確定消費税額に応じて年1~11回と決まっています。

直前の課税期間の消費税額中間申告の回数中間申告提出・納付期限
48万円超400万円以下1回/年各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内
400万円超4,800万円以下3回/年
4,800万円超11回/年(別表の通り)

中間申告の回数が11回の場合、中間申告の提出・納付期限は以下の通りです。

(別表)

区分中間申告提出・納付期限
法人 ・その課税期間開始後の1ヶ月分:その課税期間開始日から2ヶ月を経過した日から2ヶ月以内(※)
・上記1ヶ月分以後の10ヶ月分:中間申告対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内(※)
個人事業主 ・n~3月分:5月末日
・4~11月分:中間申告対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内

(※)消費税の確定申告の期限の延長特例を受けている法人は、課税期間開始後の2ヶ月分はその課税期間開始日から3ヶ月を経過した日から2ヶ月以内、以後9ヶ月分は中間申告対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内が期限です。


出典:国税庁「No.6609 中間申告の方法」

消費税の中間納付額の計算方法

消費税の中間納付額の計算方法は、以下2つの方法から選択できます。

消費税の中間納付額の計算方法は2つ

  1. 前年実績にもとづく予定申告方式
  2. 仮決算方式

それぞれ詳しく解説します。

1.前年実績にもとづく予定申告方式

「予定申告方式」とは、直前の課税期間の確定消費税額をもとに月割りで納税額を求める方式です。中間申告の回数に応じて、以下の消費税額・地方消費税額を納付します。

直前の課税期間の消費税額中間申告の回数中間納付期限
48万円超400万円以下1回/年消費税額の6/12とその22/78の地方消費税額
400万円超4,800万円以下3回/年消費税額の3/12とその22/78の地方消費税額
4,800万円超11回/年消費税額の1/12とその22/78の地方消費税額

出典:国税庁「消費税及び地方消費税(個人事業者)の中間申告と納付」

予定申告方式の場合、所轄税務署から中間納付税額を記載した「消費税及び地方消費税の中間申告書」と「納付書」が届きます。届いた中間申告書に必要事項を記入して税務署に提出し、納付書を用いて消費税・地方消費税を納付する仕組みです。

仮決算方式

「仮決算方式」とは、各中間申告の対象期間を1課税期間とみなして仮決算を行い、これにもとづく消費税額・地方消費税額を納付する方式です。たとえば、中間申告の回数が年1回の場合、6ヶ月を1課税期間とみなして決算処理を行います。

前期と比べて業績が良くない場合や、業績が大きく悪化した場合などに仮決算方式を選択すれば、中間申告の納税負担を抑えることが可能です。

ただし仮決算方式を選択する場合は、「消費税及び地方消費税の中間申告書」を作成し、納税額を計算しなくてはなりません。中間申告のたびに仮決算を行うため、申告回数が多いほど事務負担が大きくなります。

なお仮決算方式で計算した金額がマイナスになった場合、中間申告税額は0となりますが、還付は受けられません。

簡易課税制度は、仮決算を行う場合も利用できます(※)

(※)簡易課税制度とは、売上にかかる消費税額みなし仕入率を乗じて算出した金額を仕入れにかかる消費税額として、消費税額を簡略的に計算できる制度です。

簡易課税制度については「簡易課税制度とは?申告方法やメリット、デメリットを解説」をご覧ください。

消費税の中間申告・中間納付の仕訳

消費税の中間申告・中間納付をしたときの仕訳方法は、どちらの経理処理方式を選択しているかで異なります。

2つの経理処理方式

  • 税込経理方式
  • 税抜経理方式

以下では、それぞれの方式ごとに仕訳方法を解説します。

税込経理を選択している場合

税込経理とは、売上や仕入に消費税を含めて会計処理する方法です。税込経理を選択している場合、中間納付した際は「租税公課」として処理します。

たとえば、中間消費税を現金で50万円納付した場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
租税公課50万円現金50万円

税抜経理を選択している場合

税抜経理は、消費税額を売上や仕入の金額に含めず、別で計上する処理方法です。

中間申告で納付した際は、「仮払金」または「仮払消費税等」の勘定科目を使用します。たとえば、中間消費税を現金で50万円納付した場合の仕訳は、以下の通りです。

借方貸方
仮払金50万円現金50万円

決算時、支払った「仮払消費税等」と預かった「仮受消費税等」を精算する際に、中間消費税もあわせて精算します。仕訳例は以下の通りです。

  • 中間申告で納付した消費税額:30万円
  • 仮受消費税等100万円
  • 仮払消費税等40万円
  • 確定納付額28万円
借方貸方
仮受消費税等100万円仮払消費税等40万円
仮払金30万円
未払消費税等28万円
雑収入2万円

清算の際に差額が生じた場合は、雑収入または雑損失を用いて仕訳します。

消費税の中間申告・中間納付の注意点

消費税の中間申告・中間納付の対象となる可能性がある事業者は、以下の点に注意しましょう。

消費税の中間申告・中間納付の注意点

  • 期限内に申告しないと仮決算方式での中間申告・中間納付はできない
  • 中間納付が遅れると延滞税がかかる
  • 消費税額48万円以下の場合は任意の中間申告制度が利用できる

それぞれ詳しく解説します。

期限内に申告しないと仮決算方式での中間申告・中間納付はできない

仮決算方式による中間申告・納付をしたい場合は、期限までに中間申告書を提出しなければなりません。提出しない場合は、自動的に予定申告方式での申告・納付となります。

期限を過ぎて提出することはできないため、仮決算方式を選択する場合は早めに申告しましょう。中間申告の提出期限は、原則として中間申告の対象となる期間の末日の翌日から2ヶ月以内です。

中間納付が遅れると延滞税がかかる

中間納付の対象となる法人・個人事業主が期限までに納付しない場合、不足している本税に加えて、延滞税を納付しなくてはいけません。

延滞税とは、期限までに納付しない場合に、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される税金です。延滞税は、以下の割合で算出されます。

経過日数延滞税の割合
納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで原則として年7.3%
納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後原則として年14.6%

延滞税がかかると税負担が余計にかかってしまうため、納付が遅れないように注意しましょう。

消費税額48万円以下の場合は任意の中間申告制度が利用できる

任意の中間申告制度とは、自主的に中間申告書を提出・納付できる制度です。

直前の課税期間の確定消費税額が48万円以下の事業者は、原則として中間申告・納付をする必要はありません。ただし、資金繰りが悪化している場合などに任意の中間申告制度を利用すれば、消費税の納付を分散させられます。申告回数・中間納付額は、以下の通りです。

項目任意の中間申告制度の概要
申告回数1回/年
中間納付額直前の課税期間の確定消費税額の6/12

任意の中間申告制度を利用する場合は、対象となる課税期間の開始日から6ヶ月以内に「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を提出しなければなりません。

また任意の中間申告制度の利用を取りやめる場合は、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」の提出が必要です。

任意の中間申告制度を利用した場合も、納付が遅れると延滞税がかかるため注意してください。

まとめ

直前の課税期間の確定消費税額が48万円超の法人や個人事業主には、消費税の中間申告・納付をする義務があります。「仮決算方式」での申告・納付を選択する場合は、期限内に中間申告書を提出しなければなりません。

中間納付が遅れると、本税に加えて延滞税が発生するため注意してください。

中間申告の回数は直前の課税期間の確定消費税額に応じて変わるため、毎年確認が必要です。中間申告・納付の仕組みや計算方式を正しく理解し、正確に申告・納付しましょう。

よくある質問

消費税の中間申告・中間納付とは?

消費税の中間申告制度とは、課税期間の途中に複数回に分けて申告・納税することです。

消費税の中間申告・中間納付の概要を詳しく知りたい方は「消費税の中間申告・中間納付とは?」をご覧ください。

消費税の中間申告・中間納付が必要な事業者は?

中間申告・中間納付が必要なのは、直前の課税期間の確定消費税額が48万円を超える法人・個人事業主です。

消費税の中間申告・中間納付が必要な事業者を詳しく知りたい方は「消費税の中間申告・中間納付の対象者」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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