ERP(Enterprise Resource Planning)の導入メリットは、業務データの一元管理による効率化にとどまらず、意思決定の高速化・内部統制の強化・システムコストの削減まで、経営全体に波及します。一方で、導入・運用コストや現場への定着に課題が生じるケースもあり、メリットとデメリットを正確に把握した上で導入可否を判断することが求められます。
本記事では、ERP導入のメリット・デメリットのほか、導入が向いている企業の特徴を解説します。
ERPの基本的な仕組みや定義については別記事「ERPとは?意味や比較のポイントをわかりやすく解説」をご覧ください。
目次
ERP導入の目的
企業がERPを導入する目的は、主に以下の4つに整理できます。
ERP導入の主な目的
- 業務効率化とデータの一元管理
- 意思決定の高速化
- 内部統制とガバナンスの強化
- ITシステムコストの最適化
各部門がそれぞれ異なるシステムで業務データを管理していると、情報の集約に時間がかかり、経営判断に必要なデータをリアルタイムに把握しにくくなります。販売・在庫・購買・会計のデータがバラバラに存在する状態では、月次決算に時間がかかる・拠点間で数値の認識がずれる・担当者に確認しなければ状況がわからない、といった問題が慢性化しやすくなります。
ERPは、これらの業務をひとつのシステムに統合し、各部門の情報をリアルタイムで集計・分析できる状態をつくります。
ERPの選び方や導入プロセスについて詳しく知りたい方は、別記事「ERPの選び方とは?失敗しない選定プロセスと比較ポイントを解説」をご覧ください。
ERP導入のメリット
ERPの導入効果は、単なる業務効率化にとどまりません。データの一元管理が実現することで、現場の作業負荷の軽減から経営判断の質の向上まで、組織全体に波及します。
ERPを導入する主なメリットは以下の5つです。
ERPを導入する主なメリット
ヒューマンエラーの削減
ERPでは入力したデータが関連業務に自動で反映されるため、導入後は転記作業そのものがなくなります。
たとえば受注データを入力すると、在庫引当・請求書作成・売上計上が連動して処理されます。手作業の介在箇所が減ることで、入力ミスや転記漏れによる数値のずれが起きにくくなり、ヒューマンエラーの削減につながるでしょう。
データドリブンな意思決定の支援
ERPに蓄積された販売実績・原価・人件費・キャッシュフローなどのデータは、ダッシュボードやレポート機能でリアルタイムに可視化できます。月次の集計が完了するまで業績が把握できない状態から、必要なタイミングで経営指標を確認できる状態へ移行可能です。
データの取得から分析までのリードタイムが短縮されることで、市場環境の変化や業績の異常値に対して、より早い段階で手を打てるようになります。
部門をまたいだデータをリアルタイムで一元共有
販売・在庫・購買・会計のデータがERPに集約されると、各部門が同じデータをリアルタイムで参照できるようになります。「在庫の状況を確認するために別部門に問い合わせる」「決算数値を取りまとめるために各部門からエクセルを集める」といった工数が削減可能です。
拠点や部門をまたいだプロジェクト管理においても、最新データを共通の基盤で確認できることで、認識のずれや情報の遅延が起きにくくなります。
ガバナンスリスクの低減
ERPでは、承認フローや操作履歴がシステム上に自動記録されます。誰がいつどのデータを処理・変更したかを追跡できるため、不正の抑止と発覚後の原因特定が容易になります。
IPO準備や監査対応が求められる企業では、内部統制の整備をシステムと切り離して行うと別途コストがかかります。ERPを導入することで、業務効率化と統制基盤の整備を同時に進められます。
複数システムの運用コストを集約
部門ごとに個別システムを導入している場合、それぞれのライセンス費用・保守費用・バージョンアップ対応コストが発生し続けます。ERPに統合することでシステム数が減り、運用管理の工数とコストを削減できます。
法改正(電子帳簿保存法・インボイス制度など)への対応も、個別システムごとに対処する必要がなくなり、ERPベンダーのアップデートで一括対応できるようになります。
ERP導入のデメリットと注意点
ERPを導入することで生産性向上などのメリットがある一方、初期費用やランニングコストの発生、これまで取り組んできた業務の見直しなどの作業が生じます。
ERP導入のデメリットと注意点
導入・運用に継続的なコストがかかる
クラウド型では月額・年額のサブスクリプション費用が、オンプレミス型では初期のサーバー・ソフトウェア費用と保守費用が継続的に発生します。さらに導入時には、データ移行・初期設定・社内トレーニングにかかる費用も別途見積もる必要があります。
月額料金の比較だけでは総コストを見誤ってしまうため、3〜5年単位の総保有コストで試算した上で判断しましょう。
クラウド型ERPとオンプレミス型ERPの違いについては、別記事「クラウドERPとは?導入メリット・デメリットやオンプレミスとの違いを解説」をご覧ください。
導入に時間と社内リソースが必要
ERPの導入は、要件定義・システム設定・データ移行・操作研修・本番稼働までを経るため、規模によっては数ヶ月から1年以上かかります。この期間、現場担当者がプロジェクトに関与する工数が通常業務に上乗せされます。
導入プロジェクトの体制が不十分なまま進めると、稼働が遅延したり、現場への定着に時間がかかったりするリスクがあります。専門のスタッフがいない・雇えない場合は、実装時のサポートを行ってくれるベンダーと契約できると安心です。
業務フローの変更に現場の対応が伴う
ERPの標準機能に合わせて、業務プロセスを見直しましょう。これまでの手順や慣習を変えることへの現場の抵抗感が、導入後の定着を妨げるケースもあります。
カスタマイズで現行業務に合わせることも可能ですが、カスタマイズの範囲が広がるほどコストと導入期間が増加し、将来のバージョンアップ対応が複雑になります。導入前に「業務をシステムに合わせる」という方針を組織内で共有しておくことで、現場の混乱を抑えられます。
ERP導入が向いている企業の特徴
ERPはあらゆる企業に適しているわけではなく、現状の業務課題や組織の状況によって、導入効果の大きさが変わります。以下の3つの特徴に複数当てはまるようであれば、ERPの導入が課題解決の選択肢となるでしょう。
ERPが必要な会社の特徴
部門間の情報連携に時間がかかっている
「在庫状況の確認に別部門への問い合わせが必要」「月次決算のたびに各部門からデータを収集している」といった状況が常態化している場合、部門をまたぐデータ連携の非効率がボトルネックになっています。
各部門のデータが統合されていないことで生じる手作業・手戻り・認識のずれを解消するには、データの一元管理ができるERPの導入が有効です。
担当者依存の管理体制が続いている
特定の担当者のエクセルや個人の知識に業務が依存していると、その担当者が不在・退職した際に業務が止まるリスクがあります。また、属人化した業務フローは内部統制の観点からも課題になりやすく、監査や法令対応の際に整備コストがかかります。
ERPでは承認フロー・操作履歴・データ管理がシステム上で標準化されます。業務の属人化を解消し、担当者交代時の引き継ぎコストを下げられるでしょう。
事業拡大・IPO準備でガバナンス強化が求められている
組織が成長するにつれ、売上・費用・人員の管理が複雑になり、既存の個別システムやエクセル管理では対応しきれなくなります。とくにIPO準備段階では、内部統制の整備・監査対応・連結管理といった要件が一度に求められます。
ERPを早期に導入することで、事業拡大に合わせてシステムを段階的に拡張しながら、ガバナンス基盤を同時に整備可能です。
まとめ
ERPのメリットは、業務の一元管理による工数削減から経営判断の高速化・内部統制の整備まで、導入形態を問わず共通して得られるものです。導入のメリットは大きい一方、継続的なコスト・導入プロジェクトの工数・業務フロー変更への現場対応といった課題も伴います。
部門間の情報連携・担当者依存・ガバナンス整備といった課題を整理することで、ERPの導入に適している企業かどうかを判断できます。自社の業務課題や組織の状況を踏まえた上で、導入の可否と進め方を検討してください。
よくある質問
ERPを導入するメリットは何ですか?
業務プロセスの自動化によるヒューマンエラーの削減、部門をまたいだデータのリアルタイム共有、経営データの見える化による意思決定の高速化、内部統制の強化、複数システムの運用コスト削減の5つが主なERP導入のメリットです。
詳しくは記事内の「ERP導入のメリット」をご覧ください。
ERPを導入するデメリットは何ですか?
導入・運用に継続的なコストがかかること、導入プロジェクトに時間と社内リソースが必要になること、業務フローの変更に現場の対応が伴うことの3点が、ERP導入による主なデメリットと注意点です。
詳しくは記事内の「ERP導入のデメリットと注意点」をご覧ください。
ERPの導入が向いている企業はどんな企業ですか?
ERPの導入は、部門間の情報連携に時間がかかっている企業、担当者依存の管理体制が続いている企業、事業拡大やIPO準備でガバナンス強化が求められている企業に向いています。
詳しくは記事内の「ERP導入が向いている企業の特徴」をご覧ください。
