
モチベーションとは、人がある行動を選択した際、それを継続するための原動力となる動機や目的意識のことです。組織においては、従業員のモチベーションをどう維持するか、あるいはどう高めるかが重要な経営課題となります。
本記事では、モチベーションの基本的な定義や種類、人事担当者が知っておくべき理論、従業員のモチベーションを高めるための実践的な施策についてわかりやすく解説します。
「従業員の意欲が低い」「仕事のやりがいが得られないことを理由に離職者が増えている」といった課題に向き合う際の参考にしてください。
目次
- モチベーションとは
- モチベーションと「やる気」の違い
- モチベーションと「エンゲージメント」の違い
- なぜ従業員のモチベーションが重要視されるのか
- 生産性の向上と業績への貢献
- 人材の定着と離職率の低下
- コストの削減
- 変化への対応力と自律的な組織づくり
- モチベーションの種類【内発的動機付けと外発的動機付け】
- 内発的動機付けとは
- 外発的動機付けとは
- 重要なのは両者のバランス
- 人事担当者が知っておきたい代表的なモチベーション理論
- マズローの欲求5段階説
- ハーズバーグの二要因理論
- ブルームの期待理論
- マクレガーのX理論とY理論
- 従業員のモチベーションを高める具体的な方法・施策
- 企業のビジョンや目標を明確に共有する
- 公平で納得感のある人事評価制度を構築する
- 適切な目標設定と定期的なフィードバックを実施する
- スキルアップとキャリア開発の機会を提供する
- 心理的安全性の高い職場環境をつくる
- 成果を正当に評価する報酬制度を設ける
- 多様な働き方を支える福利厚生を充実させる
- モチベーションを可視化し、改善サイクルを回すには
- モチベーションサーベイ(エンゲージメントサーベイ)の実施
- パルスサーベイによる定点観測
- まとめ
- 従業員エンゲージメントを高め、組織を活性化する福利厚生とは
- よくある質問
モチベーションとは
モチベーションとは、人がある行動を選択した際に、それを継続するための内的なエネルギーとなり得る動機や目的意識のことです。
仕事においてモチベーションは、従業員がどのように職務に向き合い、努力・工夫を続けるかを左右する要素になります。目標に向かった具体的な行動を起こすこと、それを維持するための心理的なエネルギー(動機付け)になることが、モチベーションの特徴です。
モチベーションと「やる気」の違い
「やる気」は、一時的な心理状態や感情的な意欲を示す言葉です。たとえば、「体調がいいので今日は頑張る」「興味が芽生えたので挑戦してみたい」というのは短期的な気分や感情であり、「やる気がある状態」といえます。
ただし、体調や興味は「目標達成に向けた持続的な原動力」にはなりにくいため、こうした状態はあまり長続きしません。モチベーションは行動の背景にある理由や目的がより明確で、行動の継続に寄与するという点で「やる気」とは区別されることがあります。
モチベーションと「エンゲージメント」の違い
モチベーションと同様、組織開発の中でよく用いられる言葉に「エンゲージメント」があります。
エンゲージメントとは、従業員が組織や仕事にどれだけ愛着を持ち、主体的に取り組んでいるかを示す概念・指標のこと。モチベーションは個人の「成長したい」「評価されたい」といった内的要因に焦点を当てた概念ですが、エンゲージメントは内的要因だけでなく、組織との関係性など外的要因も含めて評価される点が異なります。
なぜ従業員のモチベーションが重要視されるのか
近年では、多くの企業が従業員のモチベーション維持・向上に力を入れています。以下では、組織が従業員のモチベーション向上に取り組むべき主な理由について解説します。
生産性の向上と業績への貢献
モチベーションの高い従業員はそうでない従業員に比べて主体的に仕事に取り組み、効率的に成果を出します。結果として組織全体の生産性が向上し、業績に大きく貢献します。
人材の定着と離職率の低下
仕事にやりがいや意義を感じられる環境は、従業員の「ここで働きたい」「この会社に貢献したい」という意欲を高めます。モチベーションを高めることは離職率の低下につながるため、人材定着の有効な戦略になります。
コストの削減
採用コスト、研修にかかる教育コストなど、採用活動や人材育成には多くのコストがかかります。従業員のモチベーションが高い企業や組織では人材の定着率が高まるため、こうした費用の削減が可能です。また、部下のモチベーションが高い場合は日々のマネジメント負担も少なく、組織運営の効率化につながります。
変化への対応力と自律的な組織づくり
モチベーションが高い従業員は新しい環境や変化にも前向きであり、かつ柔軟に対応しやすいとされています。企業や市場を取り巻く環境変化が非常に速く、予測困難な事態も少なくない「VUCAの時代」において活躍できる従業員が多い組織は、自律的な成長を実現しやすいでしょう。
モチベーションの種類【内発的動機付けと外発的動機付け】
モチベーションには、大きくわけて「内発的動機付け」と「外発的動機付け」の2種類があります。それぞれの違いを確認しておきましょう。
内発的動機付けとは
内発的動機付けは、内面的な満足感や興味から生じる動機のことです。個人の好奇心や達成感など、内面的な欲求から生じる行動意欲を指します。「成長したい」「自分の力を試したい」といった思いがこれにあたります。
内発的動機付けには、持続性が高く、主体的な行動につながりやすいという特徴があります。仕事における内発的動機付けの例としては、仕事そのものへの興味、やりがい、達成感、成長の実感などが該当します。
外発的動機付けとは
外発的動機付けは、報酬や評価など外部からの刺激によって引き起こされる動機のことです。即効性があるものが多い反面、内発的動機付けと比べて効果が長続きしにくい場合もあります。
仕事における外発的動機付けの例としては、給与や賞与、昇進などの評価、福利厚生、上司や同僚からの称賛などがあります。ネガティブな意味では、懲罰なども外発的動機付けに当たります。
重要なのは両者のバランス
内発的動機付けと外発的動機付けにはそれぞれの特徴がありますが、どちらか一方が高い状態であればよいというわけではなく、バランスを取ることが重要です。組織は従業員が内発的動機付けをしやすい環境を整備する一方で、外発的動機付けにつながる適切な報酬、昇進などの評価を提供し、ときには罰則なども実施することでモチベーションの維持・向上を促すことが求められます。
内発的動機付けの持続性と、外発的動機付けの短期アクションに促しやすいという両者の特徴を理解したうえで、具体的な施策に落とし込むことをおすすめします。
人事担当者が知っておきたい代表的なモチベーション理論
モチベーションに関する研究や理論はさまざまあります。人材育成やマネジメントにおいて、近年でも用いられている以下の代表的な理論について解説します。
人事に関連する代表的なモチベーション理論
- マズローの欲求5段階説
- ハーズバーグの二要因理論
- ブルームの期待理論
- マクレガーのX理論とY理論
マズローの欲求5段階説
マズローの欲求5段階説とは、「人間の欲求は生理的欲求から自己実現欲求へと段階的に高まるものであり、それらは5段階の階層に分けられる」とする理論です。低階層の欲求が満たされない限り、高階層の欲求は満たされないとされています。

人間は生理的欲求や安全欲求が満たされない限り、より上位階層にある精神的な欲求が生まれません。つまり、職場での肉体的・心理的安全性が満たされない限り、「成長したい」「組織に貢献したい」といったモチベーションは生まれないと考えられます。
企業は、従業員がどの欲求段階でどういった不満を持っているのかを見極める必要があります。
ハーズバーグの二要因理論
ハーズバーグの二要因理論とは、満足を生む要因(動機付け要因)と、不満を防ぐ要因(衛生要因)の2つからなる理論のことです。
この理論にもとづいて考えると、従業員に満足感を与える要因(動機付け要因)と不満を引き起こす要因(衛生要因)を正しく理解することで、効果的な施策を打ち出せるようになります。
ブルームの期待理論
ブルームの期待理論は、「期待」「道具性」「誘意性」という3要素の掛け合わせによってモチベーションが決まるという考え方です。
この理論では、「努力すれば目標を達成できる(期待)」、「目標を達成すれば報酬が得られる(道具性)」、「その報酬が魅力的である(誘意性)」という3つの要素をすべて満たすことで初めて従業員のモチベーションが生まれるとされます。
組織においてこういった環境をつくるには、公平な評価制度が不可欠です。また、従業員が目標達成に向けて努力する理由を、期待と結び付けて説明するマネジメントも欠かせません。
マクレガーのX理論とY理論
マクレガーのX理論とY理論とは、人間に対する根本的な見方を示す2つの対立的な理論を指す言葉です。マクレガーは、従業員に対する考え方を「X理論(人間は怠け者である)」と「Y理論(人間は自己実現を求める)」に分類しました。
「人は本来働きたくない存在」とするX理論では、監視・命令や報酬といったいわゆる「アメとムチ」による強制的なマネジメントが有効です。反対に「人は自己実現のために働く存在」とするY理論では、従業員が自ら目標を設定し、機会や裁量を積極的に与えるマネジメントが適しているとされています。
近年では、モチベーションを高めやすいとの見方からY理論をもとにしたマネジメント方法が注目されています。
従業員のモチベーションを高める具体的な方法・施策
先述した理論をふまえ、従業員のモチベーションを高めるための具体的な方法・施策を紹介します。
- 企業のビジョンや目標を明確に共有する
- 公平で納得感のある人事評価制度を構築する
- 適切な目標設定と定期的なフィードバックを実施する
- スキルアップとキャリア開発の機会を提供する
- 心理的安全性の高い職場環境をつくる
- 成果を正当に評価する報酬制度を設ける
- 多様な働き方を支える福利厚生を充実させる
企業のビジョンや目標を明確に共有する
企業のビジョンや目標を共有することで従業員は業務に対する意義を感じやすくなり、結果としてモチベーションアップにつながります。
公平で納得感のある人事評価制度を構築する
従業員が納得できる評価制度を設計することで、モチベーションを向上させることができます。そのためには、透明性のある評価基準を設けることも重要です。
適切な目標設定と定期的なフィードバックを実施する
具体的かつ達成可能な目標の設定は、従業員の達成意欲を高めます。1on1ミーティングなどの定期的なフィードバックをとおして、従業員の成長促進に寄与する点も特徴です。これらのサイクルによって、モチベーションを維持しやすい環境が生まれます。
スキルアップとキャリア開発の機会を提供する
組織が従業員に対してスキルアップやキャリア開発の機会を提供することで、内発的なモチベーションを高めることが可能です。研修コンテンツの充実、資格取得のための支援などが例として挙げられます。
心理的安全性の高い職場環境をつくる
従業員が安心して働ける環境を整えることで、従業員のモチベーションは高まります。施策を検討する際は、オフィスの快適性、適正な賃金、労働時間といった肉体的な安全だけでなく、心理的安全性も含めて考えましょう。
心理的安全性を高める施策の例として、ハラスメント対策、コンプライアンス遵守の徹底、人事の透明性確保、意見の言いやすい環境の整備などがあります。
成果を正当に評価する報酬制度を設ける
従業員が創出した成果を正当に評価し、報酬に反映させることで、外発的なモチベーションを高めることができます。報酬制度は企業によって異なりますが、賞与などへの評価反映のほかに、インセンティブ制度の導入が効果的に働くケースもあります。
多様な働き方を支える福利厚生を充実させる
従業員のライフスタイルに応じた福利厚生を提供する施策も重要です。満足度が高まれば、その組織での働きがいにつながる可能性があります。組織や仕事に愛着を持ち、主体的に取り組む指標であるエンゲージメントの向上も期待できるでしょう。
従業員ごとの多様なニーズに合わせた施策としては、選択型の福利厚生などが人気です。
モチベーションを可視化し、改善サイクルを回すには
従業員のモチベーションを高めるには、まず現状を把握する必要があります。以下では、モチベーションを可視化する方法、そして可視化した後に改善を行い、サイクルを好転させる方法を解説します。
モチベーションサーベイ(エンゲージメントサーベイ)の実施
従業員の心理的な状態を測定する方法のひとつに、「モチベーションサーベイ」があります。モチベーションサーベイは、主に従業員の意欲や仕事への満足度、組織への貢献意識などを数字で把握するための調査です。この調査は企業が抱える課題を発見し、組織の改善に役立てることを目的としています。
モチベーションサーベイを定期的に実施することで、従業員の状態を把握し、改善点を見つけることができます。
パルスサーベイによる定点観測
従業員の満足度や職場への意識を定期的かつ継続的に調査する手法に「パルスサーベイ」と呼ばれるものがあります。
この調査は、脈拍(パルス)を測るように組織と個人の関係性を把握することを目的としており、短期間で簡易的な質問を繰り返し実施することで従業員の意識や状況をリアルタイムでチェックするのが特徴です。
短期間でパルスサーベイを行うことにより、モチベーションの変化をリアルタイムで把握し、迅速にアクションすることが可能になります。
まとめ
モチベーションは、従業員の生産性向上や成果創出に直結する重要な要素であり、組織全体の業績にも影響するものです。内発的・外発的動機付けのバランスを保ち、適切な施策を講じることで、企業は持続的な成長を実現できます。
効果的な施策を打つためには、まず従業員のモチベーションを可視化し、改善サイクルを回すことが重要です。本記事を参考に、従業員が高いモチベーションを発揮しやすい組織づくりを目指してください。
従業員エンゲージメントを高め、組織を活性化する福利厚生とは
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しかし、制度設計の手間やコストを考えると、すぐに行動に移すのは難しいと感じる方も少なくありません。そこで近年、選択肢として広がっているのが、アウトソーシング型の福利厚生サービスです。
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よくある質問
「モチベーション」と「やる気」の違いは?
モチベーションは、ある行動を継続するための原動力となる動機や目的意識のこと。一方のやる気は、一時的な心理状態や感情的な意欲を示すものです。モチベーションは行動の背景にある理由や目的がより明確で、行動の継続に寄与するという点でやる気とは区別されることがあります。
詳しくは記事内の「モチベーションと「やる気」の違い」をご覧ください。
「モチベーション」と「エンゲージメント」の違いは?
モチベーションは、個人の「成長したい」「評価されたい」といった内的要因に焦点を当てたものです。エンゲージメントは従業員が組織や仕事にどれだけ愛着を持ち、主体的に取り組んでいるかを示す概念・指標のことで、内的要因だけでなく、組織との関係性など外的要因も含めて評価される点が異なります。
詳しくは記事内の「モチベーションと「エンゲージメント」の違い」をご覧ください。
従業員のモチベーションを高める方法は?
従業員のモチベーションを高めるためには、以下のような方法が有効といえます。
- 企業のビジョンや目標を明確に共有する
- 公平で納得感のある人事評価制度を構築する
- 適切な目標設定と定期的なフィードバックを実施する
- スキルアップとキャリア開発の機会を提供する
- 心理的安全性の高い職場環境をつくる
- 成果を正当に評価する報酬制度を設ける
- 多様な働き方を支える福利厚生を充実させる
詳しくは記事内の「従業員のモチベーションを高める具体的な方法・施策」をご覧ください。