人事管理の基礎知識

介護職員の個人目標を設定するには?具体例や管理制度の設計手順について解説

介護職員の個人目標を設定するには?具体例や管理制度の設計手順について解説

介護施設における個人目標の管理は、介護職員の育成や人事評価の基盤となる重要な業務です。しかし、目標設定が形骸化してしまうと、介護職員の成長意欲を削いで早期離職につながる可能性もあります。

適切な目標管理は、処遇改善加算の要件対応や組織力の強化にも関わるため、その運用方法が重要です。

本記事では、介護施設の管理者や人事担当者に向けて、目標管理シートに記載する個人目標の具体例から、目標管理制度を設計・運用するステップまで詳しく解説します。

目次

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介護職員の個人目標の管理が重要な理由

介護職員の目標管理は、人材育成や定着率に関わる重要な業務です。ここからは、管理者が目標管理に取り組むべき3つの理由を解説します。

計画的な人材育成とスキルアップの仕組み化につながる

目標管理がない場合、指導担当者のスキルや経験則によって介護職員の成長度に差が生まれ、施設全体のサービス品質が安定しません。

個人目標の管理は、こうした問題を解決する「共通のものさし」です。目標管理によって、介護職員がキャリア段階ごとに習得すべき技術や知識が明確になるため、新人が現場で放置されたり情報過多で混乱したりする事態を防げます。

また、管理者は、OJTと研修を計画的に組み合わせた育成プログラムを策定しやすくなります。職員自身も「何をすれば成長するのか」という道筋が具体的になるため、スキルアップを実感できるでしょう。

結果的に、施設全体におけるサービス品質の向上や均質化につながります。

職員の定着率向上とモチベーション維持につながる

目標管理をキャリアパスと連動させることで、介護職員は将来への具体的な見通しをもてます。「この施設で働き続けても先がない」という不安を解消して、安心して長く働ける環境を整えやすいのがメリットです。

具体的には、「介護福祉士の資格取得」を目標に設定し、そのために必要な研修や業務経験を上司と共有するなどです。日々の業務に目的意識が生まれ、小さな達成感を積み重ねることがやりがいに変わるでしょう。

明確な目標管理によって介護職員の仕事に対するモチベーションが高まり、離職率の低下につながります。

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処遇改善加算の「キャリアパス要件」に対応する必要がある

介護職員等処遇改善加算を取得するには、「キャリアパス要件」と呼ばれる、職員の育成や昇給に関する複数の基準を満たさなければなりません。目標管理は、この基準を実態として運用している証拠となります。

たとえば、加算要件には「資質向上のための計画的な研修の実施(要件Ⅱ)」があります。一例として、個人目標に「認知症ケア研修の受講」を組み込めば、この要件を満たせるでしょう。

目標管理制度を適切に運用することで、人材育成と制度への対応を両立しやすくなります。

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【勤続年数別】介護職員の目標設定に役立つ例文

勤続年数別の目標設定には、新人職員の基礎習得の促進や、中堅・ベテラン職員への役割意識付けといった重要な目的と役割があります。

ここでは、それぞれの段階に応じた例文を紹介します。目標管理シートの記載例にしたり、面談時のものさしにしたりして活用してみてください。

【新人介護職員向け】基本業務の遂行と関係構築を促す目標例

新人職員(1〜2年目)の目標は、基本的な業務を安全に遂行して、利用者やチームとの信頼関係を築くことに焦点を当てます。この段階で曖昧な目標を立てると、本人の不安や焦りにつながり、早期離職の原因となりかねません。

管理者として、以下のような具体的で測定可能な目標を指導しましょう。

【新人介護職員の目標例1】
・3ヶ月以内に、担当利用者様の食事・入浴介助・排泄介助・移乗介助を、安全に1人で遂行できるようにする

【新人介護職員の目標例2】
・1ヶ月以内に、担当ユニットの利用者様全員の顔と名前、好きなことを1つ覚え、介護記録に記載する

【新人介護職員の目標例3】
・シフト交代時の申し送りで、担当利用者様の変化について、毎回3つ以上の具体的な情報を自ら報告する

新人のうちは、「いつまでに、何ができるようになるか」を明確に示す目標管理が大切です。まずは業務の土台を固めて、組織の一員としての自覚を促しましょう。

【中堅の介護職員向け】専門性の向上とチームへの貢献を促す目標例

中堅職員(3〜9年目)には、個人の専門性を高めると同時に、後輩指導や業務改善といった「チーム全体への貢献」を意識させる目標設定が求められます。

この層は、現場の中核として高い実務能力が期待されるだけではなく、新人・ベテラン間の橋渡し役でもあります。

たとえば、以下のように担当業務の習熟に加えて、視野を広げるような目標例を提示しましょう。

【中堅の介護職員の目標例1】
・今年度中に介護福祉士の資格を取得するため、試験対策の学習計画を立て、模擬試験で8割以上の正答率を目指す

【中堅の介護職員の目標例2】
・新人職員1名のOJT指導担当として、週1回の面談を実施し、3ヶ月後の独り立ちを支援する。指導内容は記録し、上長から月1回フィードバックをもらう

【中堅の介護職員の目標例3】
・ユニット内のヒヤリハット報告を分析し、転倒事故防止のための具体的な業務改善案を月1件提案し、チームミーティングで発表する

中堅職員がチーム視点をもつことで、組織全体のサービス品質や生産性が向上しやすくなります。

【ベテラン介護職員向け】組織運営への参画と業務改善を促す目標例

ベテラン職員(10年以上)には、施設全体のサービス品質向上や組織運営に参画する、より広い視点での目標設定を促しましょう。豊富な経験と知識を後進育成や仕組み作りに活かしてもらうことが、介護の質を底上げし、組織の持続的な成長につながります。

現場のプレイヤーとしてだけではなく、マネジメントや教育の視点を含む目標設定を指導しましょう。以下が目標の一例です。

【ベテラン介護職員の目標例1】
・中堅職員を対象とした研修プログラムを企画し、今年度中に3回実施する。研修後のアンケートで参加者満足度90%以上を目指す

【ベテラン介護職員の目標例2】
・施設全体の介護マニュアルを見なおすプロジェクトのリーダーとして、半年以内に改訂版を完成させ、介護記録のばらつきを削減する

【ベテラン介護職員の目標例3】
・チームリーダーとして業務フローを分析し、ユニット全体の月平均残業時間を3ヶ月後までに10%削減する改善策を実行する

ベテラン職員には、施設運営や人材育成といった経営視点を持たせることが重要です。これまでの経験を組織の力に変えて、施設全体のサービス水準を引き上げましょう。

介護職員の目標管理制度を設計するまでの手順

目標管理制度の設計には、キャリアパスとの連携や納得感のあるフィードバックなど、重要なステップがあります。それぞれの手順を正しく把握して、実効性のある制度を構築しましょう。

STEP1. 評価制度を設計し、キャリアパスと連携させる

まずは、「目標の達成度」を「昇給や昇格といった処遇」に反映させる仕組みを設計しましょう。介護職員が昇格への道筋をイメージできるため、目標達成に向けて主体的に取り組みやすくなります。

具体的には、以下のように進めるのが一例です。

  1. 職位ごとに求められる役割を定義した等級制度を設ける(例:「等級1:新人」「等級3:指導役」)
  2. 個人目標を「現在の等級で求められる役割を果たす目標」や「次の等級に上がるための目標」と紐づける

その結果、評価面談が「あなたは今、等級2です。等級3に上がるには、この目標の達成が重要です」といった将来のキャリアを具体的に話す場に変わります。

STEP2. 職員の主体性を引き出すような目標設定を支援する

上司から一方的に押し付けられた目標は「やらされ仕事」となり、介護職員の意欲を高めません。職員自身が目標を立て、管理者がその過程を支援することが重要です。

「SMARTの法則」のような目標設定のフレームワークを、施設全体に導入しましょう。SMARTとは以下の5つの要素で、目標を具体的かつ実行可能なものにするための考え方です。

  • Specific(具体的に)
  • Measurable(測定可能な)
  • Achievable(達成可能な)
  • Relevant(関連性のある)
  • Time-bound(期限が明確な)

たとえば「『頑張る』とは、具体的に誰に、何を、いつまでに行うことか」のように介護職員と一緒に考えて、行動計画に落とし込みましょう。

目標の立て方を教えることで、介護職員が自ら考えて行動する力を養い、日々の業務における問題解決能力の向上にもつながります。

STEP3. 納得感のある評価やフィードバックを実施する

介護職員が評価に納得し、次も頑張ろうと思うためには、フィードバックの伝え方や実施方法が重要になります。

たとえば、次のような取り組みが一例です。

  • 定期的な1on1ミーティングで進捗を確認し、課題があれば一緒に解決策を考える
  • 評価面談では、具体的な行動に基づいて評価を伝え、自己評価とのギャップをすりあわせる

なお、管理者が評価を伝えるときは、職員ごとに具体的な行動を表すようにしましょう。質の高いフィードバックを積み重ねていくと、介護職員は「この施設では、どういう行動が評価されるのか」を自然と学んでいきます。

介護職員の個人目標を組織の力に変えるポイント

介護職員の個人目標は、施設の理念やチーム目標と連動させてこそ組織の力になります。それぞれの手法を紹介しますので、現場のマネジメントに活かしましょう。

施設の理念を個人目標に落とし込み、方向性をあわせる

施設の理念や事業目標を、介護職員一人ひとりが実践できる具体的な行動目標にまで落とし込むことが重要です。理念が現場の業務からかけ離れていると、職員の行動は変わらず、施設全体の方向性が揃いません。

たとえば、施設が「利用者一人ひとりに寄り添うケア」という理念を掲げているとしましょう。管理者はまず「私たちの施設で『寄り添う』とは、具体的にどのような行動か」をチームで議論してもらいます。

その結果、「傾聴の時間を1日5分、全利用者に対して意識的に確保する」といった、誰でも実践可能で評価できる個人目標が生まれます。

介護職員一人ひとりが「自分の行動が組織の価値につながっている」と実感できるようになり、組織全体の方向性も統一されるでしょう。

個人目標における添削のポイントを理解する

管理者は、介護職員が立てた曖昧な目標を、具体的で評価可能な内容へと修正しなければなりません。

たとえば「コミュニケーションを高める」という目標に対し、管理者は次のようにSMARTの各要素で質問し、目標を深掘りさせましょう。

  • 「『高まった』ことを何で測りますか?回数ですか?」
  • 「いつまでに、その状態を目指しますか?」

結果として、目標は「担当利用者の〇〇様との対話時間を1日10分確保し、その内容を3ヶ月間記録する」といった具体的な行動計画に変わります。

この添削の過程で介護職員の思考を整理させ、客観的な評価と着実な成長を支援できます。

チーム目標と個人目標を連動させる

個人の目標管理とあわせて、チームやユニット共通の目標も設定し、連動させましょう。個人目標の達成だけを評価してしまうと、介護職員が自分の成果ばかりを追い求め、チーム内の協力体制が損なわれるおそれがあります。

具体的には、次のようなチーム目標が一例です。

  • ユニット内の残業時間を、月平均5時間削減する
  • 次の家族アンケートで、ユニットの満足度評価を5%向上させる

このようなチーム目標があると、介護職員は「記録業務を効率化する」「利用者様との対話時間を増やす」という個人目標が、チームの残業削減や成果につながると理解できます。

上司が一方的に目標を設定するのではなく、チームメンバー全員が議論に参加し、意見を出し合って目標を決定しましょう。

成功事例から自施設で応用できるヒントを得る

目標管理制度の導入で失敗を減らしつつ手間を省くには、他施設の成功事例から学びを得ることも大切です。

たとえば、ある介護施設が「コンピテンシー評価(行動特性を基準に評価する手法)と目標管理を連動させて定着率を改善した」場合、以下のステップで自施設への応用を考えます。

  1. 成功の要因を分析する(例:よいケアという曖昧な概念を、施設の理念に基づいた行動特性に落とし込んだから)
  2. 自施設の理念を体現する行動をワークショップで洗い出す(例:相手の話を遮らずに最後まで聴く)
  3. 洗い出した行動を、個人目標の評価項目に組み込む
  4. 管理者は、3の項目を意識した個人目標を設定するよう指示する

施設の規模・理念・職員の状況をふまえて応用できる点を見つけ出し、最適な形で導入しましょう。

まとめ

介護職員の個人目標を管理することは、人材育成や評価、定着率向上を支える重要な業務です。本記事で解説した制度設計や例文を実践すれば、介護職員の主体的な成長を促す仕組みが作りやすくなります。

また、目標管理は、処遇改善加算のキャリアパス要件とも深く関わっています。しかし、処遇改善加算には毎月の手当計算や、計画書・実績報告書の作成といった事務作業が伴うため、管理者の負担となっているケースも少なくありません。

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よくある質問

介護の個人目標でベテランがすべきことは何ですか?

ベテラン職員は自身のスキル向上だけではなく、後進の育成や組織運営への貢献を目標に設定しましょう。豊富な経験と知識を個人の能力にとどめず、施設全体の資産として活用してもらう必要があるためです。

具体的には「業務フローを見直し、残業時間を削減する改善案を実行する」といった、チームや施設全体に働きかける目標が求められます。

詳しくは、記事内「ベテラン介護職員向け|組織運営への参画と業務改善を促す目標例」をご覧ください。

介護におけるコミュニケーションの目標は何にすればいいですか?

コミュニケーションの目標は、対象者別に設定しましょう。一例として、以下のように行動レベルまで落とし込むことがポイントです。

  • 対利用者の目標:1日に1回、利用者に自分から声をかける
  • 対職員の目標:チーム定例で月1回以上、積極的に意見を述べる

介護職員の個人目標を組織の力に変える方法は、記事内「介護職員の個人目標を組織の力に変えるポイント」で解説しています。

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