近年、企業経営において人材の価値を最大化するタレントマネジメントシステムへの注目が急速に高まっています。終身雇用の崩壊や働き方の多様化が進む現代において、従来の人事管理だけでは優秀な人材の確保や育成、定着が困難になっているためです。
本記事では、タレントマネジメントシステムの基礎知識や導入メリット、選定ポイントなどについて、網羅的に解説します。
目次
- タレントマネジメントシステムとは?
- タレントマネジメントシステムと人事管理システムや人的資本管理の違い
- タレントマネジメントシステム導入の主な目的
- 人材採用の最適化・定着率の向上
- 優秀な人材の戦略的育成
- データに基づく適材適所な人材配置
- タレントマネジメントシステムが注目される背景
- 終身雇用制度が変化し人材流動性が高まっている
- グローバル化が高まり事業環境が複雑化している
- 働く価値観の多様性やエンゲージメントが重視されている
- タレントマネジメントシステムの主な機能
- 人材データベース(人材情報の一元管理・可視化)
- スキル・キャリア管理
- 目標管理・人事評価
- 人材配置・異動シミュレーション
- 人材育成・研修管理
- エンゲージメントサーベイ
- タレントマネジメントシステム導入によるメリット
- データに基づいた客観的かつ戦略的な人事施策を打てる
- 社員のスキルや強みを可視化し能力向上が期待できる
- 従業員エンゲージメントの向上が期待できる
- タレントマネジメントシステム導入時のよくある課題
- 導入目的があいまいで運用が停滞する
- 従業員からの理解・協力が得られていない
- システムを使いこなせず担当者の負担が増加
- データの収集・更新ルールが整備されていない
- タレントマネジメントシステムの導入を成功させるコツ
- 目的を明確化し、経営層を巻き込む
- 社員に導入の目的とメリットを丁寧に共有する
- 必要な人材データを定義し、整備する
- スモールスタートで段階的に活用を進める
- 活用状況をモニタリングし、PDCAサイクルを回す
- タレントマネジメントシステムを選ぶ6つのポイント
- 1. 自社の課題解決に必要な機能が備わっているか
- 2. 既存の人事システム(給与・勤怠)とスムーズに連携できるか
- 3. 管理者・従業員にとって使いやすいか
- 4. 分析機能のデータの可視化レベルは十分か
- 5. セキュリティ対策は万全か
- 6. 導入後のサポート体制が充実しているか
- まとめ
- 従業員エンゲージメントを高め、組織を活性化する福利厚生とは
- よくある質問
タレントマネジメントシステムとは?
タレントマネジメントシステムとは、人材の才能(タレント)を最大限に活かすための戦略的な人事管理システムのことです。
従来の人事管理のように、単に社員の属性情報や勤怠を記録するだけではありません。社員一人ひとりが持つスキル、経験、評価、キャリア志向といった定性的な情報までを一元管理・可視化します。それらのデータを分析し、採用、人材育成、適材適所の配置、公正な評価といった人事戦略に活用するための仕組みこそが、タレントマネジメントシステムです。
タレントマネジメントシステムと人事管理システムや人的資本管理の違い
タレントマネジメントシステムを検討する際、よく混同されるのが「人事管理システム」や「人的資本管理」といった用語です。
タレントマネジメントシステムは、人材の育成・配置・評価など、戦略的なタレントマネジメント業務に特化したシステムです。個人の能力開発やパフォーマンス最大化を主目的とします。
一方で人事管理システムは、給与計算や勤怠管理、入退社手続きなど、定型的な労務管理業務の効率化を中心としたシステムです。「間違いのない事務処理」を主目的とします。
また、人的資本管理はタレントマネジメントシステムの機能に加え、人事管理システムが担う労務管理や給与計算までを包括的にカバーする、より広範な概念です。人材を「資本」と捉え、投資対効果を最大化する経営視点の管理手法を指します。
タレントマネジメントシステム導入の主な目的
企業がタレントマネジメントシステムを導入する際、漠然と導入するのではなく「何を実現したいか」というゴールを明確にすることが重要です。
ここでは、タレントマネジメントシステムの3つの主な導入目的を解説します。
人材採用の最適化・定着率の向上
採用のミスマッチを減らし、人材の定着を図ることです。システムに蓄積された既存社員のデータを分析することで、自社で活躍している人材の傾向や特性(コンピテンシー)を明らかにできます。これを採用基準に反映させることで、感覚に頼らない精度の高い採用が可能になります。
また、社員のコンディションやキャリア志向を継続的に把握することで、離職の兆候を早期に察知し、適切なフォローが可能です。これにより貴重な人材の流出(離職)を防ぎ、定着率の向上が期待できるでしょう。
優秀な人材の戦略的育成
次世代リーダーや専門人材を計画的に育成することも、重要な目的のひとつです。社員のスキルや実績を一元管理することで、将来の幹部候補となるハイポテンシャル人材を早期に発掘できます。
それぞれの社員の特性や不足しているスキルに合わせ、適切な研修プログラムやキャリアパスを提示することで、個人の成長を加速させます。これにより、場当たり的ではない計画的な後継者育成を実現できるのです。
データに基づく適材適所な人材配置
個人のパフォーマンスを最大化するための人材配置を実現することも、タレントマネジメントシステム導入の目的として挙げられます。社員の保有スキルや過去の経験、本人のキャリア希望などをデータで見える化することで、「誰がどこで最も力を発揮できるか」を客観的に判断できます。
また、異動シミュレーション機能を活用すれば、異動後の組織バランスや戦力変化などの事前予測が可能です。組織全体のパフォーマンスを最大化する、最適な人員配置を実現できます。
タレントマネジメントシステムが注目される背景
現在、多くの企業がタレントマネジメントシステムを必要としている背景には、大きく3つの社会的・経済的要因があります。
終身雇用制度が変化し人材流動性が高まっている
かつての日本企業で一般的だった「終身雇用・年功序列」は、崩れつつあります。現在は転職が当たり前の選択肢となり、人材の流動性が劇的に高まりました。
企業にとっては、優秀な人材がより良い環境を求めて流出しやすくなっています。そのため、選ばれる企業であり続け、社員をつなぎ留める(社員の定着率を高める)ための積極的な施策が不可欠です。
グローバル化が高まり事業環境が複雑化している
ビジネスのグローバル化や市場の変化スピードは、大いに加速しています。
国内外の激しい競争に対応するためには、画一的な人材育成では足りません。多様な環境で活躍できるグローバル人材や、高度な専門スキルを持つ人材をスピーディーに育成・確保することが急務となっています。
働く価値観の多様性やエンゲージメントが重視されている
働き方改革の推進や個人のキャリア観の変化により、社員が会社に求めるものも多様化しています。
給与や待遇だけでなく、「やりがい」や「成長実感」が重要視されるようになりました。そのため、個々の価値観に寄り添ったマネジメントを行い、従業員エンゲージメントを高めることが経営課題として注目されています。
タレントマネジメントシステムの主な機能
タレントマネジメントシステムには、人事業務を戦略的に支援するための多彩な機能が搭載されています。
ここでは、代表的な機能を紹介します。
人材データベース(人材情報の一元管理・可視化)
社員の基本情報に加え、経歴や保有スキル、過去の評価、研修受講履歴などを顔写真付きで一元管理します。
散在していたエクセルや紙の情報を集約することで、検索・閲覧を容易にします。
スキル・キャリア管理
社員が現在持っているスキルや資格、過去のプロジェクト経験などを可視化します。
また、将来どのようなキャリアを歩みたいかという本人の希望(キャリアプラン)を申告・管理する機能も備えています。
目標管理・人事評価
MBO(目標管理制度)やOKRなどの目標設定から進捗管理、評価の実施、フィードバックまでをシステム上で完結させます。
評価プロセスが見える化されることで、評価の納得感や業務効率が高まります。
人材配置・異動シミュレーション
「特定のスキルを持つ人材」や「経験年数◯年以上」といった条件で人材を検索し、候補者をリストアップできます。
ドラッグ&ドロップなどの操作で、異動後の組織図をシミュレーションし、配置バランスを検討できます。
人材育成・研修管理
eラーニングの配信や、集合研修の受講管理を行います。
社員ごとの育成プランの作成や進捗確認も可能で、個人のスキルアップを体系的に支援します。
エンゲージメントサーベイ
従業員の満足度や組織状態を把握するためのアンケートを実施・集計する機能です。組織の課題を数値で可視化し、改善策の立案に役立てます。
タレントマネジメントシステム導入によるメリット
システムを導入することで、企業や従業員が得られるメリットを解説します。
データに基づいた客観的かつ戦略的な人事施策を打てる
最大のメリットは、人事が「勘と経験」から「データと事実」に基づく運用へと進化することです。
従来、評価や配置といった人事施策は上司の主観に左右されがちでした。タレントマネジメントシステムを利用すれば、蓄積された客観的なデータに基づいて人事施策を打つことができます。これにより、経営戦略と連動した戦略的人事の実現が容易になります。
社員のスキルや強みを可視化し能力向上が期待できる
社員自身も自分のスキルレベルや評価をシステム上で確認できるため、客観的な自己認識が生まれ、自律的なキャリア開発への意識が高まります。
また、上司も部下の強み・弱みをデータで正確に把握できるため、的確な指導やフィードバックが可能になります。結果として、個人とチーム全体の能力底上げにつながるのです。
従業員エンゲージメントの向上が期待できる
公正な評価制度の運用、本人の希望や適性を考慮した配置、そして適切な育成機会の提供は、社員の会社に対する信頼感を醸成します。
「会社が自分を見てくれている」「正当に評価されている」という実感は、従業員エンゲージメントを高めます。結果として、モチベーション向上による生産性アップや離職率の低下へとつながるのです。
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タレントマネジメントシステム導入時のよくある課題
多くのメリットがある一方で、導入に失敗してしまうケースも少なくありません。タレントマネジメントシステム導入時によくある課題を紹介します。
導入目的があいまいで運用が停滞する
「流行っているから」「他社もやっているから」といった曖昧な理由で導入すると、失敗しがちです。
何のために使うかが定まっていないと、システムを使うこと自体が目的化してしまい、現場で活用されないまま放置されてしまいます。
従業員からの理解・協力が得られていない
導入の意図が現場に伝わっていないと、社員は「監視されるのではないか」と警戒心を抱きやすくなります。
その結果、スキル情報の入力やアンケートへの回答など、運用に必要な協力を得られなくなります。
システムを使いこなせず担当者の負担が増加
高機能すぎるシステムを選んだ結果、操作が複雑で誰も使いこなせないというケースです。
人事担当者がデータ整備や操作サポートに追われ、かえって業務負担が増えてしまう本末転倒な事態になりかねません。
データの収集・更新ルールが整備されていない
システムは「鮮度の高いデータ」があってこそ機能します。
「どの情報を」「いつ」「誰が」更新するのかというルールが決まっていないと、データが古いまま放置され、分析や判断に使えないシステムになってしまいます。
タレントマネジメントシステムの導入を成功させるコツ
前述の課題を乗り越え、導入を成功させるためのコツを解説します。
目的を明確化し、経営層を巻き込む
まず、「なぜ導入するのか」「導入して何を解決したいのか」といった導入目的を具体的に定義しましょう。
そして「人事部門だけの課題ではなく、経営課題である」ということを経営層に理解してもらい、全社的なプロジェクトとしてトップダウンで推進する体制を作ることが重要です。
社員に導入の目的とメリットを丁寧に共有する
システム導入は「社員の管理・監視」のためではなく、「個人の成長支援」や「公正な評価」のために行うものであることを丁寧に説明しましょう。
社員自身にもメリットがあることを理解してもらうことで、運用への協力を得やすくなります。
必要な人材データを定義し、整備する
目的に合わせて、本当に必要なデータ項目(スキル、資格、キャリア志向など)を絞り込みます。
既存データがどこにあるのかを棚卸しし、不足しているデータはどう集めるか、更新頻度はどうするかといった運用ルールを事前に策定します。
スモールスタートで段階的に活用を進める
最初からすべての機能を完璧に使いこなそうとすると挫折してしまいます。
まずは「人材情報の可視化」や「評価ワークフローの電子化」など、優先度の高い機能や特定の部署から小さく始めましょう。そこで成功体験を作り、徐々に活用範囲を広げていくのが確実です。
活用状況をモニタリングし、PDCAサイクルを回す
タレントマネジメントシステムの導入は、ゴールではなくスタートです。導入後もログイン率やデータの更新状況を定期的にモニタリングしましょう。
現場からのフィードバックを収集し、使いにくい部分は改善するなど、運用ルールを柔軟に見直しながらPDCAサイクルを回し続けることが重要です。
タレントマネジメントシステムを選ぶ6つのポイント
自社に最適なシステムを選ぶためにチェックすべき6つのポイントを紹介します。
1. 自社の課題解決に必要な機能が備わっているか
「育成」に力を入れたいなら研修管理機能が充実しているもの、「配置」に悩んでいるならシミュレーション機能が使いやすいものなど、目的によって重視すべき機能は異なります。
まずは自社の最優先課題を明確にし、それを解決できる機能が備わっているかを優先して確認しましょう。
2. 既存の人事システム(給与・勤怠)とスムーズに連携できるか
すでに利用している給与計算システムや勤怠管理システムと、CSV連携やAPI連携が可能かを確認します。
連携できない場合、二重入力の手間が発生し、現場の負担になります。
3. 管理者・従業員にとって使いやすいか
人事担当者だけでなく、現場の管理職や一般社員も直感的に操作できるUI(ユーザーインターフェース)であることが重要です。
必ずデモや無料トライアルを利用し、実際の操作感を確認してください。
4. 分析機能のデータの可視化レベルは十分か
収集したデータが見やすいグラフや、ダッシュボードで表示されるかを確認します。
離職者傾向分析やハイパフォーマー分析など、自社の人事戦略に必要な分析が容易に行えるかをチェックしましょう。
5. セキュリティ対策は万全か
極めて機密性の高い個人情報を扱うため、セキュリティ体制は妥協できません。
アクセス制限機能、データの暗号化、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証の取得状況などを確認し、信頼できるベンダーを選びましょう。
6. 導入後のサポート体制が充実しているか
システム導入時の初期設定支援だけでなく、運用開始後の問い合わせ対応や、活用定着のためのコンサルティングなど、サポート体制が手厚いかどうかも重要な選定基準です。
まとめ
タレントマネジメントシステムは、人材データを一元管理・活用することで採用や育成、配置、評価といった人事業務を戦略的に進化させる強力なツールです。
導入を成功させるためには、「何のために導入するのか」という目的を明確にし、自社の課題に合った機能を備えたシステムを選定することが重要です。
また、導入後もスモールスタートで徐々に活用範囲を広げ、現場の声を反映しながら運用を改善していく姿勢が求められます。
「人」の可能性を最大化することは、企業の未来を切り拓くことと同義です。本記事を参考に、自社に最適なタレントマネジメントシステムの導入を検討してみてください。
従業員エンゲージメントを高め、組織を活性化する福利厚生とは
「優秀な人材の定着」「生産性の向上」といった組織課題の解決に向けて、新たな施策をお探しではありませんか
これらの課題解決の鍵として、今「福利厚生」のあり方が見直されています。
しかし、制度設計の手間やコストを考えると、すぐに行動に移すのは難しいと感じる方も少なくありません。そこで近年、選択肢として広がっているのが、アウトソーシング型の福利厚生サービスです。
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よくある質問
タレントマネジメントシステムとは?
社員のスキルや経験、評価、キャリア志向などの情報を一元管理・可視化し、それらのデータを採用や育成、配置、評価などの戦略的な人事業務に活用するためのシステムです。
詳しくは、記事内の「タレントマネジメントシステムとは?」をご覧ください。
タレントマネジメントシステムを導入するメリットは?
以下のようなメリットが挙げられます。
- データに基づいた、客観的かつ戦略的な人事施策(配置・評価)が可能になる
- 社員のスキル可視化によって能力向上が期待できる
- 公正な評価や適切な配置により従業員エンゲージメントが向上する
詳しくは、記事内の「タレントマネジメントシステム導入によるメリット」で解説しています。
システム導入を失敗しないための最も重要なポイントは?
「なぜ導入するのか」「導入して何を解決したいのか」という目的を明確にすることです。目的があいまいなまま導入すると、単なるデータ置き場となり、運用が停滞する原因となります。
詳しくは、記事内の「タレントマネジメントシステムの導入を成功させるポイント」をご覧ください。
