人事管理の基礎知識

【2026年春闘】賃上げ率の予測は?物価上昇を上回る実質賃金改善や格差是正はどうなる?

【2026年春闘】賃上げ率の予測は?物価上昇を上回る実質賃金改善や格差是正はどうなる?

2026年春闘(春季生活闘争)の行方について、多くの従業員や人事担当者、経営者が注目しています。2024年、2025年と近年の春闘では高水準の賃上げが続いたものの、依然として続く物価高に対し、従業員の生活や企業の経営が実質的な豊かさを取り戻せているとはいい難い状況です。

2026年の春闘は、単なるベア(ベースアップ)の継続確認ではありません。物価上昇を上回る実質賃金の改善や、大手企業と中小企業の賃金格差の是正、深刻化する人手不足を背景とした初任給の引き上げ競争などが、かつてないほど重要なテーマとなっています。

本記事では、2025年春闘の振り返りを含めた2026年の賃上げ率予測から、従業員が知っておきたい相場感や企業が検討すべき防衛策まで解説します。

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2026年春闘は3月中旬に回答へ|5%超の賃上げは継続するか

高水準の賃上げが実現した2025年の勢いを引き継ぎ、2026年春闘はどのような局面を迎えるのでしょうか。

連合の方針と主要団体の要求水準

2026年春闘に向けて、連合(日本労働組合総連合会)は「5%以上」の賃上げ目標を3年連続で掲げる方針を固め、中小労組などに対しては「価格是正分」として1%上乗せの「6%以上(18,000円以上)」を目安としています。「底上げ」「格差是正」をキーワードに、中小企業や非正規雇用者の賃金底上げに重点を置いています。

経営者団体である経団連も、構造的な賃上げの必要性には理解を示しており、2026年もデフレ脱却を確実にするための高水準の賃上げ実現が社会的な合意形成となっています。

2026年1月現在、日本経済は緩やかなインフレが定着しています。エネルギー価格の変動はあるもののサービス価格への転嫁が進み、物価上昇率は2%前後で推移すると予測されます。

この状況下で「実質賃金のプラス」を維持するためには、定昇(定期昇給)分を含めて少なくとも4〜5%の賃上げが最低ラインとなります。労働組合側は、昨今の物価高による生活の遅れを取り戻すため、強気の要求を突きつける構えです。

ベアと定昇との違い

ベア(ベースアップ)とは、企業全体の給与水準を一律に引き上げることです。個人の年齢や勤続年数にかかわらず、全社員の基本給が底上げされるのが特徴です。物価上昇に対応して生活水準を維持する目的が強く、2026年春闘でも「実質賃金のプラス」を実現するためにベアをいかに積み増せるかが最大の焦点となります。

一方の定昇(定期昇給)は、勤続年数や年齢、役職の向上に伴い、あらかじめ決まった賃金体系に沿って個人の給与が上がる仕組みです。毎年一定の時期に自動的に増える分であり、会社全体の給与水準を上げるベアとは明確に区別されます。一般的に日本の企業の賃上げ率は、この「定昇分」と「ベア分」を合計した数値で語られます。

シンクタンク各社の賃上げ率予測

シンクタンク各社は、2026年春闘による賃上げ率を以下のとおり予測しています。予測値は各社で異なるものの、いずれも2025年の高水準が続くとしています。


社名予測
第一生命経済研究所人手不足が強力な押し上げ要因となるとして5.20%と予測
浜銀総合研究所2025年よりは微減も高水準を維持するとして5%弱と予測
日本経済研究センター企業収益の高止まりを背景に4.88%と予測
伊藤忠総研収益と物価、労働需給のバランスから算出し、4%台半ば以上と予測
出典:株式会社第一生命経済研究所「2026年・春闘賃上げ率の見通し」
出典:株式会社浜銀総合研究所「2026 年春闘も 5%弱の高い賃上げ率が実現か」
出典:公益社団法人 日本経済研究センター「1 実質経済成長率(前期比年率、四半期)」
出典:株式会社伊藤忠総研「日本経済:26年度春闘も4%台半ば以上の高い賃上げ率を予想」

2026年春闘の交渉・回答スケジュール

2026年春闘における交渉・回答は、以下のスケジュールが想定されます。


時期概要詳細
2025年12月連合が全体方針を決定2026年の目標「5%以上」が正式に確定
2026年1月経団連「経労委報告」公表経営側のスタンスが示され、労使の議論が本格化
2026年2月各組合が要求書を提出各企業の労働組合が会社側へ具体的な要求額を提示
2026年2月下旬個別企業の早期回答人材確保を優先する企業が、相場に先駆けて高水準の回答を公表
2026年3月中旬大手企業の集中回答大手企業の回答結果が集計され、2026年の「賃上げ相場」が判明
2026年3月下旬中小企業の交渉・回答大手の回答を参考に、中小企業の妥結が本格化
2026年4月給与への反映多くの企業で、4月給与から新賃金が適用される

高水準を実現した2025年春闘の振り返り

2026年の動向を予測するうえで、前年(2025年)春闘の結果についても把握しておきましょう。

最終集計から見る平均賃上げ率の実績

2025年春闘における平均賃上げ率は、連合の最終集計で5.25%に達し、2024年の5.10%という33年ぶりの高水準を上回る結果となりました。

特筆すべきは、多くの主要企業が労働組合の要求に対して満額回答を、それも交渉の早期段階で出したことです。これは、企業側も「賃上げをしなければ人が辞める、採用できない」という強い危機感を共有していたことを示しています。

中小企業と非正規雇用の「賃上げ格差」の現状

一方で、課題も浮き彫りになりました。大手が平均5.35%の賃上げを実現するなかで、中小企業は平均4.35%にとどまり、その差はわずかながら拡大傾向にあります。

また、パートやアルバイトといった非正規雇用の時給引き上げも活発でしたが、いわゆる「年収の壁」問題により、賃上げが必ずしも手取り額の増加に直結しないという構造的なジレンマも露呈しました。

実質賃金はプラスに転じたか?消費への影響

2025年の最大の焦点は「実質賃金がプラスに転じるか」でした。名目賃金(額面の給与)は大きく上がりましたが、消費者物価指数の上昇がそれを相殺する月が続きました。

2025年後半になってようやく実質賃金が安定的にプラス圏へと浮上し始めたものの、生活実感として「豊かになった」と感じている層はまだ一部に限られているのが実情です。

従業員の給料はどれくらい上がる?職種・企業規模別の相場観

従業員にとってもっとも重要なのは「自分の給料が世間の相場と比べてどうなのか」という点です。

大手企業の先行回答と予測

2026年も、自動車や電機といった輸出関連の大手製造業が賃上げを牽引する見込みです。ベア相当分で月額1万円〜1万5,000円以上の要求に対し、多くの企業が早期の満額回答を目指すでしょう。

また、IT業に関しても慢性的な人材不足により、スキルに応じた個別賃上げが加速する可能性があります。一律のベアよりも、評価に基づいた年収アップのケースも考えられます。さらに金融業も、若手層への重点的な配分が続き、初任給を含めた大幅なベースアップが予測されます。

中小企業での賃上げ波及効果と格差の現状

一方で中小企業においては、2026年は対応の二極化がより鮮明になるかもしれません。

独自の技術を持ち価格転嫁ができている企業は、大手並みの4〜5%の賃上げを実施し、人材を囲い込むでしょう。反対に原価高騰を価格に転嫁できず、賃上げ原資が確保できない企業は、1〜2%の定期昇給にとどまる可能性があります。

競合企業に負けない賃金設計と採用競争力の強化

企業にとって、2026年春闘は生き残りをかけた人材投資の場となります。

「初任給の大幅引き上げ」への対応案

現在、大卒初任給が25万円を超える企業が続出し、大手企業などでは初任給30万円も現実味を帯びてきました。2026年入社の従業員に対しても、このような傾向が見られると予測されます。

ただし初任給だけを上げると、入社3〜5年目の既存社員との給与差が縮まり、モチベーション低下を招きかねません。初任給の引き上げと同時に、若手・中堅層の賃金カーブを全体的に上方修正する「スライド昇給」の設計が不可欠です。

賃上げ原資を確保するための価格転嫁と助成金の活用

企業が「ない袖は振れない」状況を打破するには、徹底した価格交渉が求められます。具体的には以下のような取り組みが挙げられるでしょう。

  • 労務費の指針遵守: 政府が策定した「労務費の転嫁のための指針」を活用し、取引先と強気の交渉を行う
  • 業務改善助成金の活用: 設備投資を行い生産性を上げることで、最低賃金以上の賃上げを行う企業を支援する制度を積極的に利用する

2026年春闘に関連するトピック

2026年は、金額以外の賃金のあり方にも大きな変化が訪れる可能性があります。

非正規雇用・パート・アルバイトの賃上げ動向

最低賃金は全国平均で1,100〜1,200円を目指す動きが加速しています。これにより、地方でも時給アップが不可避となります。

企業は時給を上げるのはもちろん、社会保険料の負担軽減策や正社員登用制度の充実をセットで提示することが求められていくでしょう。

ジョブ型雇用への移行と成果に応じた分配の加速

働き方に関しては、年功序列からジョブ型(職務給)への移行がますます本格化するでしょう。それに伴い、2026年春闘では一律のベアだけでなく、特定の職務や高い成果を出した個人に厚く配分するという方針を打ち出す企業が増える可能性があります。

従業員側は「ただ待っていれば給料が上がる時代」の終わりを意識し、自身の市場価値を高める努力がこれまで以上に重要になります。

まとめ

2026年の春闘は、日本経済がデフレマインドから完全に脱却できるかどうかの正念場です。

従業員においては、2026年も高い賃上げが期待されますが、企業格差・個人格差は広がる可能性があります。自社の状況を冷徹に見極め、自身のスキルを磨くことで「選ばれる人材」であり続けることが、最大の生活防衛術となるでしょう。

一方で企業にとっては、賃上げはもはやコストではなく、事業継続のためのインフラ投資ともいえます。価格転嫁の断行と、納得感のある評価制度の構築により、優秀な人材を惹きつける組織へと変革する好機と捉えてください。

2026年の春闘を単なる給与改定に終わらせるのではなく、自らのキャリアや組織の未来をアップデートする機会にしていくことが望まれます。

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