準夜勤とは、夕方から深夜にかけて働く勤務形態のことです。医療・介護業界をはじめ、シフト制の企業で導入されています。
夜勤シフトの人と交代するため、勤務時間は16時〜25時や17時〜26時など、夕方から深夜にかけての勤務となり、日付が変わるころには退勤可能です。
本記事では、準夜勤と夜勤の違いや、準夜勤を導入するメリット・デメリットについて詳しく解説します。
医療や介護業界で働くうえで準夜勤について知りたい人や、シフト制・3交代勤務制の導入を検討している企業・施設の担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
- 準夜勤とは
- 準夜勤と夜勤の違い
- 準夜勤を導入するメリット【従業員側】
- 介護・福祉業務を続けるうえでキャリアのプラスになる
- 2交代制の夜勤勤務よりも勤務時間が短い
- 日中の時間を有効活用できる
- 深夜手当が支給される
- 準夜勤を導入する3つのメリット【企業側】
- 多様な働き方を実現できる
- 業務の引き継ぎがスムーズになる
- 翌日も勤務を依頼できる
- 準夜勤を導入する2つのデメリット【従業員側】
- 次の勤務までの休息時間が短い
- 帰宅時に電車やバスが利用できない場合がある
- 準夜勤を導入する3つのデメリット【企業側】
- シフトの組み方が難しくなる
- 人件費が増える
- 採用の選択肢が狭まる
- 準夜勤を導入する際のポイント
- 従業員の体調管理に細心の注意を配る
- 人件費増加の高騰分を考慮する
- クラウド型の勤怠管理システムを導入する
- シフト作成を効率化するなら『freee人事労務 勤怠管理』
- まとめ
- よくある質問
準夜勤とは
準夜勤とは、3交代制勤務のうち夕方から深夜にかけて働く勤務形態のことです。
3交代制勤務は、1日24時間を日勤・準夜勤・夜勤の3つに分割し、各時間帯に従業員を割り当てるシフト制度です。
準夜勤は、主に医療機関や介護施設、食品メーカーの工場など、24時間稼働が必要な企業や組織で導入されています。
準夜勤は夜勤で働く人との交代時間が決まっているため、勤務時間は16時〜25時や17時〜26時などに設定され、日付が変わるころには退勤可能です。ただし、勤務時間は勤務先によって変動し、上記の時間帯はあくまで一例となります。
準夜勤と夜勤の違い
準夜勤と夜勤の大きな違いは1日の労働時間です。
準夜勤は3交代制でのみ設けられているシフトで、日勤と夜勤の真ん中の時間帯を指し、1日の労働時間は7〜8時間です。
一方、夜勤は2交代制・3交代制どちらにも設けられており、夕方もしくは夜から翌朝にかけてのシフトを指します。
夜勤は実働8時間・休憩1時間の9時間労働の場合もあれば、実働10時間・休憩2時間の12時間労働の場合もあります。
特に介護施設や病院などでの夜勤は、仮眠時間を設けて12〜16時間労働となることもあり、準夜勤より労働時間が長くなりがちです。
なお、厚生労働省の定義に基づき、夜勤明けの休日扱いは原則的に認められていません。そのため、安全配慮義務の観点から夜勤明けの翌日を休日扱いとするのが一般的です。
一方、準夜勤は従業員への身体的・精神的負担が比較的軽く、翌日も出勤となるケースもあります。
さらに、準夜勤・夜勤ともに深夜手当が支給されますが、夜勤のほうが手当が多くなりがちです。深夜手当とは22時〜5時までの時間帯に働いたすべての人へ、支払われる割増賃金です。翌朝まで働く夜勤のほうが、深夜手当が支給される時間帯に勤務する時間が長く、賃金が高くなりやすいでしょう。
出典:厚生労働省徳島労働局「休憩・休日」
準夜勤を導入するメリット【従業員側】
準夜勤を含む夜勤経験者に対応可能な人材は貴重で、特に介護福祉関係の仕事に就く人にとってはキャリアの面で大きなプラスになります。
準夜勤を導入することで従業員側が得られるメリットは主に以下のとおりです。
【従業員側】準夜勤を導入するメリット
介護・福祉業務を続けるうえでキャリアのプラスになる
介護士や看護師など、介護福祉関係の仕事に就く人にとっては、準夜勤での勤務経験がキャリアを続けるうえで大きなプラスになります。
準夜勤での勤務経験によって、以下のような能力・評価を得られます。
- 緊急時の経験で対応力や判断力が向上
- 異なる勤務時間への対応によって自己マネジメント能力が向上
- シフトごとに異なる従業員ともうまく連携できる協調性の高さ
- 少人数シフトでも対応可能な実務能力
- さまざまな勤務形態や従業員へスムーズに対応する柔軟性の高さ
準夜勤を含む夜勤勤務に対応できる優秀な人材は少なく、職種によっては転職で待遇改善やキャリアアップが実現できる可能性が高まります。
現在の勤務先でスキルアップに励んでおくと、転職先で現在よりも好待遇で働ける可能性が高まるでしょう。
2交代制の夜勤勤務よりも勤務時間が短い
準夜勤は夜勤の人と交代するため、退勤時間が明確に決まっており、夜勤よりも勤務時間が短い傾向にあります。次の日も出勤扱いの可能性が高いものの、1日の労働時間は8時間前後です。
一方、2交代制での夜勤は、介護福祉施設の場合は1回の勤務で12時間以上働くことも珍しくありません。翌日は公休扱いのケースが多いものの、準夜勤のほうが1回の勤務で生じる疲労やストレスは小さいといえます。
準夜勤は退勤時間が深夜で選択肢は限られるものの残業は少ないため、退勤後は自由に時間を活用できます。
また、3交代制を導入することで、2交代制に比べて夜勤で働く人の労働時間が短くなるのもメリットです。どの時間帯であっても、働く人の負担を軽減できます。
日中の時間を有効活用できる
勤務が準夜勤または夜勤であれば、翌日が休日ではなくても、日中の時間を有効活用できます。
たとえば、役所への手続きや通院、銀行での振り込みなど、土日祝日では済ましにくい自身の用事に時間をあてられるため、無駄に有給休暇を取得する必要がありません。
出勤前にショッピングや友人との食事など、プライベートな時間も確保しやすいのもメリットです。
深夜手当が支給される
準夜勤は、1回の勤務で2〜4時間分の深夜手当が支給されるため、日勤で同じ労働時間を働くよりも多くの賃金が得られます。
深夜手当は22時〜5時の時間帯で働いた人に対し、【1時間あたりの賃金×25%以上×労働時間分】を支払わなくてはなりません。
1時間あたりの賃金が1,500円だった場合の準夜勤と日勤では、以下のように賃金に差がでます。
【準夜勤の場合】
15時〜21時までの賃金:1,500円 × 6時間 = 9,000円
22時〜24時までの賃金:1,500円 × 1.25 × 2時間 = 3,750円
※21時〜22時は休憩時間とする
▶︎ 1日の賃金の合計:9,000円 + 3,750円 = 12,750円
【日勤の場合】
▶︎ 1日の賃金の合計:1,500円 × 8時間 = 12,000円
上記のように、1日あたり750円の差ではありますが、準夜勤での勤務を重ねるほど差額は大きくなります。仮に1ヶ月で10回準夜勤のシフトに入った場合は、1ヶ月で750円×10回=7,500円の差額になります。1年同じペースで働き続けると、7,500円×12ヶ月=90,000円の差額です。
1日あたりの差額は小さいものの、準夜勤の勤務回数や勤務年数が増えるほど、日勤で同じ時間働いた場合との差が大きくなります。
準夜勤を導入する3つのメリット【企業側】
準夜勤は2交代制の夜勤と比べて労働時間が短く、従業員への負担も比較的軽いため、翌日も出勤を依頼できます。
また、準夜勤の導入で労働時間を3つの時間帯に分けられるため、従業員に多様な働き方を提示できます。
【企業側】準夜勤を導入するメリット
多様な働き方を実現できる
日勤・準夜勤・夜勤と勤務時間を3つの時間帯に分けると、従業員はライフスタイルや家庭の事情に応じた働き方を選択できます。
たとえば、準夜勤は日中の時間を有効活用できるため、朝が苦手な人や学生などにとって魅力的な選択肢です。
多様な働き方の実現によって、仕事とプライベートを両立しやすい環境が整うと、モチベーションアップや離職率の低下につなげられます。
また、日勤で働く主婦・準夜勤で働きたい学生・夜勤で稼ぎたい人のように、時間帯ごとに働きやすい人材が集まりやすくなり、人手不足の解消も期待できます。
業務の引き継ぎがスムーズになる
準夜勤の人は夜勤の始業時間に合わせて、終業時間の30分前ぐらいから業務を引き継ぐ準備を進めます。
たとえば、介護施設の場合は利用者の体調や食事の摂取状況など、夜勤の人と交代する際に連絡事項を伝えられるため、利用者の体調が急変してもスムーズな対応が可能です。
また、スムーズな引き継ぎによって、業務品質を一定水準以上に保てるため、シフト単位でサービスの質にばらつきが生じるリスクを抑えられます。
翌日も勤務を依頼できる
準夜勤を含む3交代制であれば、各シフトの労働時間は長くても8時間です。
1日8時間労働であれば、従業員の労働時間は法定労働時間内に収められるため、翌日を必ずしも休日扱いとする必要はありません。
準夜勤を含めた夜勤の出勤回数には法的な制限がなく、夜勤に慣れているスタッフがいれば、優先的に準夜勤や夜勤の出勤を依頼できます。
また、2交代制の夜勤と比べると労働時間が短く、従業員にかかる肉体的・精神的負担は小さいでしょう。深夜手当の支給によって、日勤で同じ時間働くよりも多くの賃金が得られるため、業務へのモチベーションも保ちやすいといえます。
準夜勤を導入する2つのデメリット【従業員側】
準夜勤は1日の労働時間が法定労働時間内で、翌日が出勤扱いとなるケースも珍しくありません。翌日の勤務時間を指定する法的な規制もなく、準夜勤の翌日が日勤での勤務になる可能性もあります。
また、準夜勤での勤務が終わるころにはバスや電車など、公共交通機関が利用できない可能性が高く、他の通勤手段を考えておく必要があります。
【従業員側】準夜勤を導入するデメリット
次の勤務までの休息時間が短い
準夜勤は1回の勤務が8時間前後で終わるため、翌日を休日扱いにする必要がありません。翌日を出勤扱いとした場合に勤務時間を指定する必要もなく、勤務先の従業員数や業務量によっては翌日が日勤となる可能性があります。
準夜勤の翌日が日勤なら、従業員は十分な休息時間を確保できず、体調不良や業務でのミスを招く可能性が高まります。
帰宅時に電車やバスが利用できない場合がある
準夜勤は夕方〜深夜にかけて働く勤務形態のため、退勤時間は24時や25時などの深夜です。
帰宅の際には、バスや電車といった公共交通機関の運行が終わっている可能性が高いため、必然的に以下4つの通勤手段に限られます。
- マイカー通勤
- タクシー
- 徒歩
- 自転車
勤務先によってはタクシーチケットを支給している可能性もありますが、すべての企業が対応しているわけではありません。
車通勤を許可している企業や施設であれば、電車やバスが使えなくても移動手段を確保できます。ただし、視界が暗く交通量が少なくてスピードが出やすいため、運転には十分な注意を払わなければなりません。
準夜勤を導入する3つのデメリット【企業側】
準夜勤を導入する場合は3つの時間帯で人員が必要になるため、シフトの組み方が難しくなります。ほかにも、人件費や採用の面でデメリットが生じます。
【企業側】準夜勤を導入するデメリット
シフトの組み方が難しくなる
準夜勤を導入すると、日勤と夜勤を含め、3つの時間帯で通常業務を回せるだけの人員確保が必要です。
介護職や看護師は人材不足が続いており、短期間で優秀な人材や求める人物像に合致した人材を採用できる保証はありません。
また、シフト作成の際には従業員の能力や家庭の事情、人間関係など、さまざまな点を考慮しなければなりません。たとえば、実務経験の浅い従業員が入るシフトには、教育係もセットで同じ時間帯に入れる必要があります。
加えて、3交代制の場合は勤務間のインターバルや時間帯ごとの業務内容・ニーズに対応した人員配置、連続勤務時間、休憩時間、休暇などを考慮してシフトを作成しなければなりません。
さらに、当日に欠勤や緊急事態が発生した際の代替要員も確保しておく必要があります。
人件費が増える
上述したように、22時〜5時の間の労働時間には深夜手当を支払わなければなりません。準夜勤も一部深夜手当の対象となるため、企業側にとっては人件費が高くなるデメリットにもなります。
準夜勤と夜勤で働く従業員数が多いほど、深夜手当の支払額が増えるため、人件費の増加で経営状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。
採用の選択肢が狭まる
準夜勤で働く人は退勤後、バスや電車以外の手段で帰宅する可能性が高くなります。
そのため、車通勤ができる人や徒歩・自転車で通える距離の人など、採用できる人材の選択肢が狭まりやすくなります。
もしタクシーチケットの支給や車通勤を許可しない場合は、思うように応募が集まらない可能性が高いでしょう。
準夜勤を導入する際のポイント
準夜勤の導入前に体調管理を優先したシフトが組めるか、人件費高騰分の対策をどうするか、決めておくことが重要です。
準夜勤を導入する際のポイント
従業員の体調管理に細心の注意を配る
勤務時間のローテーション制を採用しているのであれば、従業員は夜勤や日勤を経由して再び準夜勤で働くことになります。
勤務時間が定期的に変わると生活リズムを崩しやすいため、従業員の体調を最優先にしたシフトを組まなければなりません。
たとえば、準夜勤の翌日に日勤での出勤を依頼するといった過酷なスケジュールは、避けるのが賢明です。
また、シフト勤務は家族や友人との予定も合わせにくく、ストレスの蓄積でメンタルヘルスの不調を招く原因になります。普段の仕事ぶりを見て体調の異変を感じたら、有給休暇の取得や業務量の調整などを行い、メンタルケアに努める必要があります。
人件費増加の高騰分を考慮する
事前に深夜手当支給に伴う人件費の高騰をどのようにカバーするか、対策を立てておかなければなりません。
たとえば、人件費の高騰分を商品やサービス価格に転嫁するのであれば、限定メニューや付加価値を付けたサービスの提供などが必要です。ただし、介護福祉施設の場合は他の業種ほど、簡単に深夜向けのサービスを開発できません。
業務量や利用者の数にもよりますが、準夜勤や夜勤は少ない人数で回すのも、ひとつの選択肢です。もしトラブルがあっても対処できるよう、実務経験豊富な人をシフトに組み込むことが大切です。
クラウド型の勤怠管理システムを導入する
クラウド型の勤怠管理システムを導入し、労働時間の管理やシフト作成の効率化を図りましょう。勤怠管理システムとは、労働時間や残業時間、有給取得率など、従業員の勤怠データを一元管理できるシステムです。
出退勤時刻から労働時間や残業時間を自動で集計・計算するため、担当者が手作業でデータ集計や計算を行う必要がなくなり、作業効率が高まります。
また、シフト作成機能を搭載している場合、システムによっては曜日ごとに必要な人数とシフトパターンを設定するだけで、シフトパターンを自動で作成可能です。
システム上には登録されたシフトパターンに加え、施設や企業の働き方に応じたオリジナルのシフトパターンも作成できます。
従業員はスマートフォンから希望シフトを提出できるため、担当者はシフト表の作成・集計を行う必要がありません。
さらに、クラウド型の勤怠管理システムは、サーバーの調達やメンテナンス、アップデートをベンダー側に依頼できるため、システム担当者の業務負担を抑えられる点も魅力です。
シフト作成を効率化するなら『freee人事労務 勤怠管理』
シフト作成を効率化できる勤怠管理システムを探しているなら、『freee人事労務 勤怠管理』の導入がおすすめです。
『freee人事労務 勤怠管理』はシフトの自動作成機能を搭載しており、システム上でいくつか設定をするだけでシフトが作成されます。
シフト作成の際は、従業員の能力や曜日ごとに必要な人数を事前に設定できるため、人手不足・能力不足による提供サービスの品質低下を避けられます。
加えて勤務日時の設定をしておけば、休息時間が足りていない従業員や休暇予定の従業員を誤ってシフトに入れる心配もありません。
もちろん複数の労働形態にも対応しており、3交代勤務でも2交代勤務でも、従業員の勤怠データを正確に記録できます。
また、勤務実績に応じて有給休暇を自動で付与するため、有休管理簿の作成が不要です。
さらに、月額料金は300円/1ユーザーとリーズナブルな価格設定で、初期費用は発生しません。シフト管理機能を搭載した勤怠管理システムをお探しの方は、『freee人事労務 勤怠管理』の導入をご検討ください。
まとめ
準夜勤を導入するメリットは、多様な働き方を実現できる点です。ライフスタイルに合わせて勤務時間帯を選べるため、子育てや介護を抱える人も仕事を続けやすくなります。
一方、準夜勤導入に伴うデメリットは、シフト管理が難しくなる点です。3つの時間帯で通常業務を回せるだけでなく、従業員の能力や相性も考えてシフトを作成しなければなりません。
シフト作成と管理を効率化する手段には、クラウド型勤怠管理システムの導入がおすすめです。freee人事労務 勤怠管理は、シフトの自動作成機能を搭載しており、システム上で従業員の業務習熟度や曜日ごとに必要な人数などを設定するだけで、シフトが完成します。
また、初期費用不要で月額300円/1ユーザーから利用可能とリーズナブルです。準夜勤の導入やシフト業務の効率化に取り組んでいる方は、freee人事労務 勤怠管理の導入をご検討ください。
よくある質問
準夜勤とは何時から何時までの勤務ですか?
準夜勤は、15時〜24時や16時〜25時など、夕方から深夜過ぎまでの時間帯が一般的です。基本的に日勤と夜勤の間の時間帯の勤務で、1日の労働時間は8時間程度です。
準夜勤の詳細や夜勤との違いは、「準夜勤と夜勤の違い」をご確認ください。
準夜勤のデメリットはなんですか?
従業員は帰宅時にバスや電車が利用できない点が挙げられます。車通勤やタクシーの利用など、別の手段を考えておかなければなりません。
一方、企業側としてはシフト作成が難しくなります。3つの時間帯で通常業務を回せるだけの人員確保に加え、従業員の能力や人間関係も考えてシフトを作成しなければなりません。
詳しくは「準夜勤を導入する2つのデメリット【従業員側】」、「準夜勤を導入する3つのデメリット【企業側】」をご覧ください。
