人的資本経営とは、企業における人材を資本(投資)として捉え、その価値を最大限に引き出すことを目指す経営のあり方です。
近年、人的資本経営の重要性はますます高まっています。とくに2023年からは、上場企業に対して有価証券報告書での人的資本情報の開示が義務化され、企業の持続的成長における人材の戦略的活用が注目されるようになりました。
本記事では、人的資本経営の基本的な意味から、近年重視される背景や、具体的な取り組み、メリット、導入ステップなどをわかりやすく解説します。
目次
- 人的資本経営とは
- 「人材版伊藤レポート」による普及と発展
- 従来の経営手法と人的資本経営の違い
- 人的資本経営が注目される理由
- 人材・働き方の多様化
- ESG投資の浸透
- 国際標準化機構による「ISO30414」の策定
- 人的資本経営に求められる3つの視点
- 経営戦略と人材戦略の連動
- As is-To beギャップの定量把握
- 企業文化への定着
- 人的資本経営の5つの共通要素
- 動的な人材ポートフォリオ
- 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
- リスキリング(学び直し)
- 従業員エンゲージメント
- 時間や場所にとらわれない働き方
- 人的資本経営で企業が開示すべき情報
- 1.人材育成
- 2.エンゲージメント
- 3.流動性
- 4.ダイバーシティ
- 5.健康・安全
- 6.労働慣行
- 7.コンプライアンス・倫理分野
- 人的資本経営に取り組むメリット
- 企業のイメージ向上
- 従業員エンゲージメントの向上
- 投資家からの信頼獲得
- 人的資本経営における現状の課題
- 人材データの取得が困難
- 経営層と人事が連携できていない
- 開示方針の作成が難しい
- 人的資本経営の導入ステップ
- STEP1.全社的なプロジェクト体制の構築
- STEP2.「As is - To be ギャップ」による現状把握
- STEP3.KPIの設定
- STEP4.人材戦略の策定
- STEP5.施策の実践と改善を繰り返す
- まとめ
- 従業員エンゲージメントを高め、組織を活性化する福利厚生とは
- よくある質問
人的資本経営とは
人的資本経営とは、企業における人材を資本(投資)として捉え、その価値を最大限に引き出すことを目指す経営のあり方です。
従来、人材にかかる費用(人件費)はコストとみなされがちでした。しかし、人的資本経営では「人材は企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上につながるものである」と考えます。そのため、従業員の育成やスキルアップへの支出は「投資」と位置づけられます。
また近年は、投資家などのステークホルダーも人的資本に関する情報を「企業の将来性を判断する重要な指標」として注目しており、企業に対して情報開示を強く求めるようになっています。
「人材版伊藤レポート」による普及と発展
日本で人的資本経営の考え方が広まる契機となったのが、経済産業省が2020年に公表した「人材版伊藤レポート」です。
「人材版伊藤レポート」では、企業と投資家が対話を進め、持続的な企業価値を創造するために不可欠な人材戦略の枠組みが提示されました。さらに2022年には、より具体的な取り組みの方向性を示す「人材版伊藤レポート2.0」が公表され、後述する「3つの視点」と「5つの共通要素」が提唱されています。
従来の経営手法と人的資本経営の違い
従来型の経営手法における人材戦略では、人材は「資源(リソース)」として捉え、人件費は抑制すべき「コスト」として管理されてきました。終身雇用制度のもと、人材をいかに組織内に囲い込み、画一的に管理するかが重視されていたのです。
一方、人的資本経営では人材を「資本」と捉えます。育成やスキルアップへの支出は企業価値向上のための戦略的な「投資」と位置づけられ、データや客観的な指標に基づいて企業と人材の双方が成長できる関係構築を目指す点が従来の手法との違いです。
人的資本経営が注目される理由
ではなぜ、今これほどまでに人的資本経営が注目されているのでしょうか。ここからは、人的資本経営が注目される理由を解説します。
人材・働き方の多様化
現代の企業は、少子高齢化による労働人口の減少という大きな課題に直面しています。また、非正規雇用者や外国人従業員の増加、テレワークの普及などにより人材の構成や働き方も多様化しています。
こうした環境下では、従来の画一的な人材管理手法で多様な人材の持つ能力を最大限に引き出すことは困難です。そのため、現代では従業員一人ひとりの自立と活性化を促す人的資本経営の考え方が不可欠となっています。
ESG投資の浸透
近年、投資家が企業価値を評価する際の指標として、財務情報だけでなく「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の3つを重視するESG投資の考え方が世界的に拡大しています。人材への投資は企業の持続可能性や成長性を測る重要な指標として投資家から評価されるようになっているのです。
とくに、従業員の育成やダイバーシティの推進、健康経営などの人的資本への取り組みは、「社会(Social)」の要素に深く関わるため、企業の戦略的な投資と積極的な情報開示が求められています。
国際標準化機構による「ISO30414」の策定
2018年に、国際標準化機構(ISO)が人的資本に関する情報開示の国際的な基準となる「ISO30414:社内外への人的資本レポーティングのガイドライン」を策定しました。これにより、人的資本経営に関する世界共通の基準が明確になり、人的資本の評価が定量化しやすくなっています。
ISO30414のガイドライン策定は、日本国内における人的資本情報開示の義務化にも影響を与えており、世界的な潮流として人的資本経営の推進が求められています。
人的資本経営に求められる3つの視点
前述の「人材版伊藤レポート2.0」では、人的資本経営を実践するうえで不可欠な要素として、以下の「3つの視点」が示されています。
人的資本経営に求められる3つの視点
これらは、人材戦略を企業価値の向上に結びつけるために、人的資本経営においてとくに重視される視点です。
経営戦略と人材戦略の連動
経営戦略と人材戦略の連動とは、企業の経営戦略を達成するために、どのような人材がどれだけ必要かを定義し、戦略的に確保・育成・配置することです。
企業の持続的な価値向上を実現するためには、まず「自社がどのような経営戦略を目指すのか」を明確にしなければなりません。そのうえで、経営目標の達成に「どのような人材が必要か」を定義し、その人材をいかに確保・育成・配置するかという具体的な人材戦略を策定して実行することが求められます。
As is-To beギャップの定量把握
「As-Is / To-Be ギャップ」とは、現状(As-Is)と、理想的な将来像(To-Be)の間に存在する差分や隔たりを指す概念で、ビジネス領域で一般的に用いられる分析フレームワークです。現状を正確に把握したうえで、目指す姿との乖離を可視化し、解決すべき具体的な課題を特定するために用いられます。
人的資本経営においては、「To-Be(理想の姿)」として、将来的な経営戦略の実現に必要となる人材像(スキル、経験、人数など)を定義します。一方で、「As-Is(現状)」として、現在の人材ポートフォリオやスキルレベルをデータに基づき定量的に把握します。
この「As is-To beギャップ」を明確にすることで、ギャップを埋めるための具体的な施策を策定し、人的資本への投資をより効果的に行うことが可能になります。
企業文化への定着
策定した人材戦略は、一部の部門だけで実行しても効果は限定的です。そのため、人材戦略を全従業員に浸透させ、企業文化として根付かせることが欠かせません。
経営層が自ら人的資本経営の重要性について強いコミットメントを示し、全社に向けて発信し続けることで組織全体の意識や行動を変革していくことが求められます。
人的資本経営の5つの共通要素
前述の「3つの視点」を実践し、企業文化として定着させていくための具体的な取り組みとして、「人材版伊藤レポート2.0」では以下の「5つの共通要素」を挙げています。
人的資本経営の5つの共通要素
動的な人材ポートフォリオ
動的な人材ポートフォリオとは、市場や事業環境の変化に応じて必要な人材の「質」や「量」を継続的に見直し、柔軟に最適化していく仕組みや考え方です。単なる人員配置の調整ではなく、採用や育成、配置、リスキリングを一体で捉え、将来の成長領域に必要な能力を計画的に確保していきます。
動的な人材ポートフォリオを活用することで、企業は急速な市場変化にも柔軟に対応できるようになり、持続的な価値創造を可能にします。また、従業員にとっても多様なキャリア形成の機会が広がるため、個人と組織の双方の成長につながります。
知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
人的資本経営の共通要素である「知・経験のダイバーシティ&インクルージョン」とは、性別や国籍といった属性だけでなく、専門知識や職務経験、キャリアパスの違いなど、多様な「知」と「経験」を持つ人材を組織に取り込み、それぞれが力を発揮できる環境を整えることを意味します。
多様な視点が組み合わさることで課題発見の精度が高まり、革新的なアイデアや新たな価値創造につながりやすくなります。また、インクルージョン(多様な人材の活躍)を徹底することで、個々の強みが生かされ、従業員のエンゲージメント向上や組織の競争力強化にも寄与します。
リスキリング(学び直し)
リスキリングとは、技術革新や市場環境の変化に対応するために職務や分野のスキルを学び直すことです。
近年では、DXや事業構造の変化が加速しており、従業員が新しい業務や役割に必要なスキルを習得することが不可欠となっています。
こうした時代にリスキリングを戦略的に進めることで、組織は環境変化に強い柔軟性を持ち、事業モデル転換や新規事業の創出を支える基盤を確立できます。また、従業員側にとってもキャリアの選択肢が広がり、働きがいの向上にもつながります。
そのため、企業は従業員に対して学び直しの機会を戦略的に提供し、支援することが求められます。
従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントとは、従業員が自社や仕事に対して抱く熱意や貢献意欲を指します。人的資本経営では、仕事への意欲や組織への信頼、働きがいといった心理的側面を重視し、従業員が「この会社で力を発揮したい」と感じられる環境を整えることが重要です。
企業が従業員の成長や働きがいを感じる環境整備に積極的に投資することで従業員エンゲージメントが高まり、結果として生産性の向上や離職率の低下につながります。
時間や場所にとらわれない働き方
リモートワークやフレックスタイム制度の導入など、多様で柔軟な働き方を実現することも人的資本経営においては重要な要素です。
働く時間や場所の柔軟性を高めることで業務効率の向上や多様な人材の活躍促進につながり、生産性の向上が期待できます。
また、従業員一人ひとりが自身のライフスタイルに合わせて能力を最大限に発揮できる環境を整備すれば、優秀な人材の確保・定着にもつながります。
人的資本経営で企業が開示すべき情報
2023年3月期決算以降、上場企業には有価証券報告書で人的資本に関する情報開示を行うことが義務付けられました。投資家が企業価値を評価する際に人的資本が重要な判断基準となったことが示されています。
開示が推奨されている主な分野は、以下の7分野19項目です。
| 分野 | 項目 |
|---|---|
| 人材育成 | ・リーダーシップ ・育成 ・スキル・経験 |
| エンゲージメント | ・エンゲージメント |
| 流動性 | ・採用 ・維持 ・サクセッション |
| ダイバーシティ | ・ダイバーシティ ・非差別 ・育児休業 |
| 健康・安全 | ・精神的健康 ・身体的健康 ・安全 |
| 労働慣行 | ・労働慣行 ・児童労働・強制労働 ・賃金の公平性 ・福利厚生 ・組合との関係 |
| コンプライアンス・倫理 | ・コンプライアンス・倫理 |
1.人材育成
人材育成はリーダーシップや育成、スキル・経験に関する情報が開示対象です。具体的には、人材育成にかかった費用や、研修時間、研修参加率、スキル向上研修の種類など、従業員への投資状況に関する情報が含まれます。
これらの情報を開示することで、企業が人材を長期的に、かつ戦略的に育成している姿勢を示すことができます。
2.エンゲージメント
従業員の企業に対するエンゲージメント(貢献意欲)も情報開示が求められています。具体的には、従業員エンゲージメントサーベイの結果やマネジメントへの信頼度、心理的安全性の確保に向けた施策などが挙げられます。
エンゲージメントの項目では、企業が働きやすく生産性の高い職場環境づくりに取り組んでいる姿勢を示すことができ、投資家や求職者にとって組織文化の健全性や中長期的な企業価値を判断する指標となります。
3.流動性
流動性とは、離職率や定着率、採用人数、中途採用比率など、人材の出入りや組織内での人材維持に関する情報のことです。人材の流動性が高い環境下で、企業がどれだけ柔軟に対応しているかを評価するデータとなります。
流動性に関する情報開示により、企業が事業環境の変化に対応するために人材ポートフォリオを形成しているか、また従業員に多様なキャリア機会を提供しているかを外部に示すことができます。
4.ダイバーシティ
ダイバーシティは属性別の経営層比率、男女別の育児休業取得率、男女間賃金格差など、多様な人材の活用と公平な機会提供に関する情報です。
企業が異なる価値観や経験を持つ人材を積極的に受け入れ、その能力を活かす組織づくりを進めている姿勢を示すことができます。
5.健康・安全
健康・安全分野は、医療・ヘルスケアサービスの利用促進、安全衛生に関する研修参加の割合、労働災害の発生件数など、従業員の心身の健康への配慮を示す情報です。
具体的な取り組みとしては、定期健康診断の受診率や産業医による面談・指導の実施状況、特定の疾病予防プログラムの提供と参加率といった医療・ヘルスケアサービスの利用促進に関する事項が挙げられます。
健康と安全への取り組みは投資家にとって重要な評価指標であり、労働災害の削減やメンタルヘルス対策の充実は社会的な責任を果たす企業としての信頼性を高めます。
6.労働慣行
労働慣行は、従業員が安心して働ける環境を整備し、公正かつ健全な労務管理を行っているかを示す情報です。具体的には、労働時間管理や長時間労働の割合、有給休暇取得率、健康経営に関する施策などが挙げられます。
これらは企業の働きやすい環境を示すもので、従業員のワークライフバランスを支援する取り組みが評価されます。
7.コンプライアンス・倫理分野
人的資本経営において企業が開示すべき「コンプライアンス・倫理分野」に関する情報とは、法令順守や企業倫理に基づいた行動を従業員が実践できる体制を整えているかを示すものです。
具体的には行動規範や倫理規程の整備状況、コンプライアンス研修の実施状況、内部通報制度の運用、情報セキュリティ対策、不正防止の仕組みや対応方針などが挙げられます。
情報を開示することで企業が従業員の行動基準を明確に示し、不正や不祥事を未然に防ぐガバナンス体制を構築している姿勢を示すことができます。投資家や取引先にとっては、企業のリスク管理能力や信頼性を判断する重要な指標となります。
人的資本経営に取り組むメリット
企業が人的資本経営に本格的に取り組むことで、以下のメリットがあります。
人的資本経営に取り組むメリット
企業のイメージ向上
人材への投資や働きやすい環境づくりを進める企業は、顧客・取引先・求職者といった社外のステークホルダーから「信頼できる企業」として評価されやすくなります。
主に、ダイバーシティ推進や公正な労務管理、柔軟な働き方などの取り組みを適切に開示することで、企業の社会的評価が高まり、結果として優秀な人材が集まりやすいブランド力の向上につながります。
従業員エンゲージメントの向上
従業員の成長や挑戦を支援し、働きがいのある環境を提供することで従業員のエンゲージメントが向上しやすくなります。公正な評価制度や心理的安全性の確保、リスキリング機会の提供などを通じて、従業員が「この会社で成長できる」と実感できる状態をつくることが重要です。
従業員エンゲージメントが向上すれば、生産性の向上や革新的なアイディアの創出、離職率低下の効果も期待できます。
投資家からの信頼獲得
ESG投資の観点から、人的資本への取り組みは企業が持続的に成長する力を測るうえで重要視されています。
人的資本情報を適切に開示すれば、企業価値向上に真摯に取り組む姿勢を示すことができるでしょう。その結果、投資家からの信頼を獲得でき、安定的な資金調達や企業価値の向上につながります。
人的資本経営における現状の課題
人的資本経営には多くのメリットがある一方で、実際の導入・実践には以下のような課題も存在します。
人的資本経営における現状の課題
人材データの取得が困難
人的資本経営を実践するには、従業員のスキルや経験、エンゲージメントといった情報を定量的に収集・分析することが不可欠です。
しかし実際には、多くの企業で人材データが各部門に分散していたり、そもそも十分に収集されていなかったりというケースも少なくありません。データが不十分だと、適切な人材配置や育成計画の立案が困難になり、人的資本経営の効果が薄れてしまう恐れがあります。
経営層と人事が連携できていない
人的資本経営は経営戦略と人材戦略を一体で進めることが前提となりますが、実際の現場では経営層と人事部門の連携が十分に取れていないケースも見られます。
経営側が人材投資の重要性を十分に理解していなかったり、短期的な業績目標を優先するあまり長期的な育成投資が後回しになったりという構造的要因が課題となっています。
一方で、人事側も事業理解やデータ分析の視点が不足していると、経営層へ納得度の高い提案ができず、結果として施策が場当たり的になりがちです。こうした連携不足は、人的資本施策を企業全体の成長戦略へ結びつけるうえで大きな障壁となります。
開示方針の作成が難しい
2023年3月期から人的資本情報の開示が義務化されましたが、どの情報をどの程度詳細に開示するかについて具体的な統一基準が確立されているわけではありません。そのため、開示する情報の範囲や詳細度は企業の競争力にも影響を与える可能性があり、慎重な検討が必要です。
また、データの正確性や継続的な更新体制を整える必要があるため、社内のリソース負担が大きくなる点も課題です。こうしたさまざまな要因から、実効性のある開示方針を設計することが難しいケースもあります。
人的資本経営の導入ステップ
実際に人的資本経営を導入するには、どのようなステップを踏めばよいのでしょうか。
ここでは、人的資本経営を導入する際の一般的な5つのステップを紹介します。
STEP1.全社的なプロジェクト体制の構築
人的資本は人事部門だけでなく、経営層や現場部門、情報システム部門など複数の領域が関わるため、組織横断的なガバナンスが不可欠です。経営層が方向性を明確に示し、人事部門が中心となって施策設計を主導したうえで、現場が実行段階で協力する仕組みを整えましょう。
また、データ収集・分析を担う専門チームを設けることで、人的資本経営を継続的に推進する基盤を構築できます。
STEP2.「As is - To be ギャップ」による現状把握
経営戦略の実現に不可欠な人材像やスキル要件(To Be)を定義します。それと同時に、現状の人材の「量」と「質」(As Is)をデータで可視化し、「As is-To beギャップ」を定量的に把握しましょう。
「As is - To be ギャップ」による現状把握により、優先すべき課題や投資領域が明確になり、実態に即した評価が可能になります。
STEP3.KPIの設定
人材投資の成果を評価するうえで、KPI(重要業績評価指標)の設定は欠かせません。
たとえば、「次世代リーダー候補の育成人数」「従業員エンゲージメントスコア」「リスキリング研修の参加率」などの指標設定が考えられます。
明確なKPIの設定により、施策の成果を客観的に把握し、改善につなげるための判断基準が整います。
STEP4.人材戦略の策定
設定したKPIの達成と、STEP2で把握したギャップの解消を目指し、具体的な施策を盛り込んだ人材戦略(戦略的な人材ポートフォリオ計画)を策定します。
採用、育成(リスキリング)、配置、評価、エンゲージメント向上など、多岐にわたる施策を連動させることが重要です。とくに、将来の事業モデルや競争優位性を踏まえて「どの能力をどの程度備えた組織を目指すのか」という方向性を明確にしましょう。
また、経営層と人事部門が連携して人的資本投資の優先順位や必要なリソースを検討し、実現可能性の高い戦略を設計します。
STEP5.施策の実践と改善を繰り返す
人的資本経営は一度で完成するものではなく、環境変化や従業員のニーズに応じて運用を見直す姿勢が求められます。
そのため、策定した人材戦略に基づいて施策を実行したうえで、成果を検証しながら継続的に改善を行うことが欠かせません。KPIの定期的なモニタリングやサーベイ結果の分析、現場フィードバックの収集を通じて、施策の効果を評価しましょう。
また、必要に応じて新たな教育施策や組織開発施策を追加しながらPDCAを回し続けることで、人的資本の価値を最大化する循環を構築することが重要です。
まとめ
人的資本経営とは、人材を「コスト」ではなく「資本」として捉え、人材の価値を最大限に引き出すことで企業の持続的な成長を目指す経営手法です。とくに、近年はESG投資の浸透やDXの推進といった環境変化を背景に、人的資本経営の重要性がますます高まっています。
人的資本経営の導入には、経営戦略と人材戦略を連動させ、データに基づいて「As is-To beギャップ」を把握し、ダイバーシティの推進やリスキリングなどの施策を実行することが求められます。
人的資本経営の土台となる複雑な従業員データ管理や給与計算、労務手続きの効率化・可視化には、「freee人事労務」のようなシステムの活用も有効です。バックオフィス業務を効率化し、より戦略的な人事施策に注力できる環境づくりをサポートします。
従業員エンゲージメントを高め、組織を活性化する福利厚生とは
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しかし、制度設計の手間やコストを考えると、すぐに行動に移すのは難しいと感じる方も少なくありません。そこで近年、選択肢として広がっているのが、アウトソーシング型の福利厚生サービスです。
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満足度向上と採用活動のアピールポイントに
採用活動でのアピールポイントとなり、エンゲージメント向上にも繋がる福利厚生。
気になった方は是非、 福利厚生サービス「freee福利厚生ベネフィットサービス」をお試しください。
よくある質問
人的資本経営が重要視される背景は?
少子高齢化や働き方の多様化やESG投資の浸透、DXの推進など、企業環境の変化が背景にあります。人材を資本と捉え、その価値を最大化し、企業価値向上につなげる経営が不可欠です。
詳しくは「人的資本経営が注目される理由」をご参照ください。
人的資本経営を導入するメリットは?
主なメリットは「企業のイメージ向上」「従業員エンゲージメントの向上」「投資家からの信頼獲得」の3点です。優秀な人材の確保や生産性向上、企業の持続的成長につながります。
詳しくは「人的資本経営に取り組むメリット」をご参照ください。
人的資本経営で開示すべき項目とは?
上場企業には有価証券報告書での開示が義務化されています。主な分野として「人材育成」「エンゲージメント」「流動性」「ダイバーシティ」「健康・安全」「労働慣行」「コンプライアンス・倫理」の7分野が示されています。
詳しくは「人的資本経営で企業が開示すべき情報」をご参照ください。
