監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

サラリーマン(会社員)でも、条件を満たせば青色申告を選択できます。
青色申告は白色申告にはない税制優遇が多く、最大65万円の特別控除や損失の繰越控除などによって、所得税や住民税の負担を軽減できる点が大きな魅力です。
一方で、複式簿記による記帳や税務署への事前申請といった手間も発生するため、正しい理解と準備が欠かせません。
本記事では、サラリーマンが青色申告できる条件や白色申告との違い、メリット・デメリット、注意点をわかりやすく解説します。
目次
サラリーマンが青色申告できる条件
青色申告とは、納税者が自ら日々の取引を帳簿に記録し、所得や税額を計算して申告する制度のことです。
サラリーマンが青色申告をするには、給与所得以外の所得が「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかに該当する必要があります。
それぞれの所得の概要は、以下のとおりです。
所得の種類 | 概要 |
---|---|
事業所得 | 継続的かつ反復的に行われ、社会通念上「事業」とみなされる規模の活動から得られる所得 |
不動産所得 | アパート・マンションの賃貸や駐車場経営など、不動産の貸付によって得られる所得 |
山林所得 | 保有している山林を伐採して木材を売却した際や、立木のまま譲渡した際に得られる所得 |
上記以外の規模が小さく継続して行われていない副業収入は「雑所得」に分類され、青色申告の対象外です。具体例としては、フリマアプリによる不用品売却や単発のアルバイトなどがあります。
青色申告を検討する際は、まず自身の収入がどの所得に当てはまるのかを確認しましょう。
青色申告についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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青色申告とは?白色申告との違いや豊富なメリット、必要な準備・書類を解説
青色申告と白色申告の違い
確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2つの方法があります。
青色申告と白色申告の違いは、以下のとおりです。
青色申告 | 白色申告 | |
---|---|---|
税制優遇 | ・青色申告特別控除(最大65万円) ・損失の繰越控除 ・家族への給与の経費化 | 特になし |
記帳方法 | 複式簿記 (※)10万円の青色申告特別控除を受ける場合は簡易(単式)簿記 | 簡易(単式)簿記 |
提出書類 | ・確定申告書 ・青色申告決算書 | ・確定申告書 ・収支内訳書 |
事前申請の要否 | 開業届、青色申告承認申請書の提出が必要 | 事前申請は不要 |
青色申告は「複式簿記」での記帳が必要なため、白色申告に比べて申告の手間が増えます。ただし、適切に記帳することで、最大65万円の控除や損失の繰越控除などの税制優遇措置を受けられます。
一方、白色申告は、簡易的な記帳方法で済むため、青色申告に比べて手間が少ないです。ただし、青色申告のような税制優遇を受けることはできません。
節税メリットと記帳にかかる手間を比較し、自身の状況にあわせて申告方法を判断することが重要です。節税メリットを最大限に享受したいなら青色申告を、記帳の手間を最小限に抑えたいなら白色申告を選ぶとよいでしょう。
青色申告と白色申告の違いについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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サラリーマンが青色申告をするメリット
サラリーマンが青色申告をすることで、以下のようなメリットが得られます。
サラリーマンが青色申告をするメリット
- 最大65万円の青色申告特別控除が適用できる
- 損失の繰越控除ができる
- 家族への給与を経費にできる
- 少額減価償却資産の特例を活用できる
- 貸倒引当金を計上できる
それぞれ詳しく解説します。
最大65万円の青色申告特別控除が適用できる
青色申告の最大のメリットは「青色申告特別控除」が適用できることです。青色申告特別控除とは、事業所得または不動産所得から最大65万円を控除できる制度です(※)。
控除を受けるには、原則として複式簿記による記帳を行い、e-Taxで電子申告する必要があります。65万円の控除を適用すると、課税所得が減り、結果として所得税や住民税の負担を軽減できます。
(※)山林所得は10万円控除の区分
出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除
損失の繰越控除ができる
損失の繰越控除とは、事業が赤字になった場合に損失を翌年以降に繰り越して控除できる制度です。制度を利用すれば、事業所得や不動産所得で発生した赤字を最長3年間、翌年以降の所得から差し引くことができます。
たとえば、2024年に50万円の赤字が出た場合、2025年以降の3年間の所得から50万円を差し引くことが可能です。将来の税負担を軽減できるため、事業の立ち上げ期などの収益が不安定な時期には有効な制度です。
家族への給与を経費にできる
青色申告では、生計をともにする家族(青色事業専従者)に支払った給与を全額必要経費として計上できます(※)。
事業主本人の所得を分散させ、家族の給与として計上することで、所得税や住民税の負担を軽減できる効果があります。
ただし、制度の利用には事前の届出が必要です。また、支払う給与額は労働内容に見合った適正な金額である必要があります。
(※)不動産所得は、事業として行われている場合のみ経費計上が可能
出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
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青色申告の専従者給与とは?経費にできる条件や届出書の書き方、年末調整について解説
少額減価償却資産の特例を活用できる
通常、パソコンや高額な機器などの資産は、耐用年数に応じて少しずつ経費計上(減価償却)します。
しかし、青色申告では「少額減価償却資産の特例」を利用でき、30万円未満の資産であれば、年間合計300万円までをその年の経費として一括計上することが可能です。
この特例を活用することで、事業に必要な備品や機材を購入した年の所得を減らすことができ、節税効果を高めることにつながります。
出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
貸倒引当金を計上できる
貸倒引当金とは、売掛金や受取手形などの債権が将来的に回収できなくなるリスクに備え、あらかじめ一定の金額を経費として計上できる制度です。
青色申告では、回収不能になっていない債権に対して将来の損失を見越して経費を計上できるため、その年の課税所得を減らすことにつながります。取引先が多く、売掛金の管理が必要な事業には有効なメリットといえるでしょう。
サラリーマンが青色申告をするデメリット
サラリーマンが青色申告をする際には、以下のようなデメリットもあります。
サラリーマンが青色申告をするデメリット
- 複式簿記による記帳の手間がかかる
- 事前に税務署への申請が必要
それぞれ解説します。
複式簿記による記帳の手間がかかる
青色申告で最大65万円の控除を受けるには、原則として複式簿記での記帳が必要です。複式簿記とは、取引を「借方」と「貸方」に分けて記録する方法です。一定の会計知識が必要なため、慣れないうちは手間がかかります。
しかし、近年は簿記の知識がなくても質問に答えて入力すれば、自動で複式簿記の帳簿を作成してくれる会計ソフトが多数あります。
銀行口座やクレジットカードとの連携機能を利用すれば、自動で仕訳が作成されるため、記帳の手間を大幅に省くことができるでしょう。
事前に税務署への申請が必要
青色申告をするためには、事前に税務署への申請が必要です。開業初年度から青色申告したい場合は、まず税務署に「開業届」を提出し、事業を開始したことを申告します。加えて「青色申告承認申請書」を提出することで、青色申告をするための準備が整います。
青色申告承認申請書には提出期限があり、原則として青色申告をしたい年の3月15日までに提出しなければなりません。その年の1月16日以降に事業を始めた場合は、開業日から2ヶ月以内が期限です。
提出期限を過ぎるとその年は白色申告となり、青色申告のメリットを受けることができないため、早めに手続きを済ませましょう。
【関連記事】
青色申告承認申請書の書き方は?いつまでに提出すべきか注意点も解説
サラリーマンが青色申告をする際の注意点
サラリーマンが青色申告をする際には、以下の2点に注意しましょう。
サラリーマンが青色申告をする際の注意点
- 帳簿書類を保管する必要がある
- 本業の会社に副業がばれることがある
それぞれ詳しく解説します。
帳簿書類を保管する必要がある
青色申告では、日々の取引を記録した帳簿や取引の根拠となる領収書・レシート・請求書・預金通帳などの書類を一定期間保管する義務があります。原則として、帳簿は7年間、領収書などの書類は5年間の保存が義務付けられています。
税務調査が入った際に申告内容の根拠を示す必要があるため、紛失しないように整理して保管しましょう。
出典:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
本業の会社に副業がばれることがある
青色申告をしたとしても、直接的に会社に副業がばれることはありません。ただし、住民税の徴収方法によってばれる可能性があります。
住民税の徴収方法には「特別徴収(給与から天引き)」と「普通徴収(自分で納付)」があります。副業の所得に対する住民税を「普通徴収」にすれば、会社にばれることはありません。
確定申告の際に、住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れるのを忘れないようにしましょう。
なお、事業・雑所得分を確定申告する際、「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れても、自治体によっては特別徴収になることがあります。
サラリーマンの青色申告のやり方
サラリーマンが青色申告をするときの流れは、以下のとおりです。
サラリーマンの青色申告のやり方
- 開業届と青色申告承認申請書を提出する
- 日々の記帳をする
- 確定申告書類を作成して提出する
事業を開始したら、開始日から1ヶ月以内に税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を提出します。
また、青色申告をしたい年の3月15日まで(その年の1月16日以後に事業を開始した場合は、事業開始の日から2ヶ月以内)に税務署に「青色申告承認申請書」を提出します。
青色申告をするには、複式簿記での記帳が必要です。効率的に記録するために、会計ソフトの活用も検討しましょう。日々の記帳内容をもとに、翌年の2月中旬から3月中旬の確定申告期間に申告書を提出して納税します。
確定申告についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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確定申告とは?全くわからない人向けに申告の流れ・対象者について解説!
確定申告をかんたんに終わらせる方法
確定申告の期間は1ヶ月です。それまでに正確な内容の書類を作成し、申告・納税しなければいけません。
ほかにも、青色申告の場合に受けられる特別控除で、最大65万円を適用するためにはe-Taxの利用が必須条件であり、はじめての人には難しい場面が増えることが予想されます。
そこでおすすめしたいのが、確定申告ソフト「freee会計」の活用です。
freee会計は、〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポートします。また、所得額や控除額の計算は自動で行ってくれるため、計算・入力ミスの削減できるでしょう。
ここからは、freee会計を利用するメリットについて紹介します。
1.銀行口座やクレジットカードは同期して自動入力が可能!
確定申告を行うためには、1年間のお金にまつわる取引を正しく記帳しなければなりません。自身で1つずつ手作業で記録していくには手間がかかります。
freee会計では、銀行口座やクレジットカードの同期が可能で、利用した内容が自動で入力されていきます。
日付や金額を自動入力するだけでなく、勘定科目も予測して入力してくれるため、日々の記帳がほぼ自動化でき、工数削減につながります。

2.現金取引の入力もカンタン!
会計ソフトでも現金取引の場合は自身で入力し、登録しなければなりません。
freee会計は、現金での支払いも「いつ」「どこで」「何に使ったか」を家計簿感覚で入力できるので、毎日手軽に帳簿付けが可能です。
自動的に複式簿記の形に変換してくれるため、会計処理の経験がない人でも正確に記帳ができます。

さらに有料プランでは、チャットで確定申告について質問ができるようになるので、わからないことがあったらすぐに相談できます。また、オプションサービスには電話相談もあるので、直接相談できるのもメリットの1つです。
freee会計の価格・プランについてはこちらをご覧ください。
3.〇✕形式の質問に答えるだけで各種控除や所得税の金額を自動で算出できる!
各種保険やふるさと納税、住宅ローンなどを利用している場合は控除の対象となり、確定申告することで節税につながる場合があります。控除の種類によって控除額や計算方法、条件は異なるため、事前に調べなければなりません。
freee会計なら、質問に答えることで控除額を自動で算出できるので、自身で調べたり、計算したりする手間も省略できます。

4.確定申告書を自動作成!
freee会計は取引内容や質問の回答をもとに確定申告書を自動で作成できます。自動作成した確定申告書に抜け漏れがないことを確認したら、税務署へ郵送もしくは電子申告などで提出して、納税をすれば確定申告は完了です。
また、freee会計はe-Tax(電子申告)にも対応しています。e-Taxからの申告は24時間可能で、税務署へ行く必要もありません。青色申告であれば控除額が10万円分上乗せされるので、節税効果がさらに高くなります。
e-Tax(電子申告)を検討されている方はこちらをご覧ください。

freee会計を使うとどれくらいお得?
freee会計には、会計初心者の方からも「本当に簡単に終わった!」というたくさんの声をいただいています。
税理士などの専門家に代行依頼をすると、確定申告書類の作成に5万円〜10万円程度かかってしまいます。freee会計なら月額980円(※年払いで契約した場合)から利用でき、自分でも簡単に確定申告書の作成・提出までを完了できます。
余裕をもって確定申告を迎えるためにも、ぜひfreee会計の利用をご検討ください。
まとめ
サラリーマンでも、給与所得以外の所得が「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかに該当すれば、確定申告時に青色申告の選択が可能です。
青色申告は、白色申告に比べて記帳の手間は増えるものの、最大65万円の青色申告特別控除や損失の繰越控除などの税制優遇があり、所得税や住民税の節税効果が期待できます。
近年は、簿記の知識がなくても操作が簡単な会計ソフトが普及しており、記帳の負担は大きく軽減されています。節税効果の高い青色申告をして税負担の軽減を図りましょう。
よくある質問
サラリーマンが青色申告するメリットは?
サラリーマンが青色申告をすれば、最大65万円の青色申告特別控除・損失の繰越控除・家族への給与の経費計上など、さまざまなメリットがあります。
サラリーマンが青色申告をするメリットを詳しく知りたい方は「サラリーマンが青色申告をするメリット」をご覧ください。
開業届と青色申告承認申請書は、いつまでに提出すればいい?
開業届は事業開始から1ヶ月以内、青色申告承認申請書は青色申告をしたい年の3月15日まで(その年の1月16日以後に事業を開始した場合は、事業開始の日から2ヶ月以内)に税務署に提出が必要です。提出期限を過ぎると、その年は青色申告ができません。
開業届と青色申告承認申請書の提出について詳しく知りたい方は「事前に税務署への申請が必要」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
