勤怠管理の基礎知識

有給休暇の繰り越しルールとは?計算方法や上限・消滅の仕組みをわかりやすく解説

有給休暇の繰り越しルールとは?計算方法や上限・消滅の仕組みをわかりやすく解説

有給休暇の繰り越しとは、当年度に使い切れなかった有給休暇を翌年度に持ち越して使用できる制度のことです。

本記事では、有給休暇の繰り越しに関する基本ルールから実務上の注意点、効率的な管理方法までを網羅して解説します。

目次

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有給休暇の繰り越しに関するルール

有給休暇(年次有給休暇)は労働者に与えられた権利ですが、付与された年にすべて使い切れるとは限らないでしょう。その場合に行われるのが、有給休暇の繰り越しです。

ただし、有給休暇の繰り越しに関しては、以下の基本的なルールを踏まえる必要があります。

有給休暇の取得期限

労働基準法第115条により、有給休暇の請求権の時効は「2年間」と定められています。そのため、付与された日から2年が経過すると、未使用の有給休暇は自動的に消滅します。

たとえば、2026年4月1日に付与された有給休暇は、2年後の2028年3月31日まで使用可能であり、2028年4月1日を迎えると消滅することになります。


有給休暇の繰り越しと取得期限

有給休暇の繰り越し上限日数

フルタイム労働者の場合、1年間に付与される有給休暇の法定最大日数は20日です。

繰り越せる日数は「前年度に付与され、使われずに残った日数」となるため、法律上の繰り越し上限日数は実質的に最大20日となります。前前年度の残日数は2年間の時効を迎えて消滅するため、20日を超えて翌年度に持ち越されることはありません。

当年度に新たに付与される日数(最大20日)と、前年度から繰り越された日数(最大20日)を合計すると、1人の従業員が一度に保有できる有給休暇の最大日数は40日となります。

なお、社内規定で法定以上の有給休暇を付与している場合を除き、一般的な企業において有給休暇の最大保有日数が40日を超えることはありません。一切消化しなかった場合の最大保有数の推移は下表のとおりです。


継続勤務年数当年付与日数前年からの繰り越し可能日数当年の最大保有日数
0.5年10日0日10日
1.5年11日最大10日最大21日
2.5年12日最大11日最大23日
3.5年14日最大12日最大26日
4.5年16日最大14日最大30日
5.5年18日最大16日最大34日
6.5年以上20日最大18日最大38日
7.5年以上20日最大20日最大40日

有給休暇を消化する場合の順序

有給休暇を取得する際、「繰り越された古い有休」と「今年付与された新しい有休」のどちらから先に消化されるのかは、実務上よくある疑問でしょう。

労働基準法には、繰り越し分と当年度分のどちらから先に消化すべきかについての明示的な規定はありません。法律上の指定がないため、企業が就業規則等でどちらの順番で消化するかを任意で定めることができるとされています。

多くの企業では、従業員に不利益が生じないよう「繰り越し分(前年度付与分)から優先して消化する」というルールを採用しています。

古い有休から消化するように設定しておくことで、時効による2年での消滅リスクを最小限に抑えることができ、労働者保護の観点からも望ましい運用とされています。

トラブルを未然に防ぐため、就業規則には消化順序をはっきりと明記しておきましょう。もし就業規則に規定がない場合でも、労使の慣行や労働者優位の解釈により「繰り越し分から消化された」とみなされるケースが多いため、明確に文化・ルールとして定めておくことが重要です。

年5日の有給休暇取得義務

2019年4月より、年10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者に対して、年5日の有給休暇を確実に行使(取得)させることが義務付けられました。

年5日のカウントには、前年度からの繰り越し分を使って取得した有休も含まれます。必ずしも当年度付与分から5日を取得させる必要はなく、繰り越し分を含めて年間で5日以上の消化が達成されていれば法律上の義務を果たしたことになります。

パート・アルバイトの場合

週の所定労働時間が30時間未満かつ週所定労働日数が4日以下のパート・アルバイト等には、下表のとおり労働日数に応じた「比例付与」が行われます。


週所定労働日数1年間の所定労働日数勤続勤務年数
0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上



4日169~216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121~168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73~120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48~72日1日2日2日2日3日3日3日

比例付与の対象者であっても、有給休暇の繰り越しルール(2年の有効期限・繰り越し可能)はフルタイム労働者と同じです。

たとえば、初年度に5日給付されたパート社員が2日消化した場合、残りの3日は翌年に繰り越され、翌年新たに付与される日数に加算されます。

有給休暇の繰り越し日数の計算方法

有給休暇の繰り越し計算は、入社年数や年ごとの消化状況によって変化します。ここでは、一般的なフルタイム社員(入社時に有休前倒し付与なし)をモデルとして、年数ごとの繰り越し計算を具体的に解説します。

入社1年目

入社半年が経過した時点で、初めて法定の有給休暇10日が付与されます。

  • 年間付与数: 10日
  • 繰り越し分: 0日(前年度の有休がないため)
  • 当年の最大保有数: 10日

1年目に消化しきれなかった日数(たとえば3日消化して7日残った場合)は、失効することなくすべて入社2年目へと持ち越されます。

入社2年目

入社1年半(1年6ヶ月)が経過したタイミングで、新たに11日の有給休暇が付与されます。

  • 新規付与数: 11日
  • 繰り越し分: 1年目の未使用分(最大10日)
  • 当年の最大保有数: 最大21日(新規11日 + 繰り越し最大10日)

たとえば、1年目に7日残していた場合、2年目の保有日数は 11日 + 7日 = 18日となります。2年目のうちに有休を使用する際は、時効を防ぐため古い1年目付与分(7日)から優先して消化していくのが一般的です。

入社3年目

入社2年半(2年6ヶ月)が経過したタイミングで、新たに12日の有給休暇が付与されます。

  • 新規付与数: 12日
  • 繰り越し分: 2年目の未使用分(最大11日)
  • 当年の最大保有数: 最大23日(新規12日 + 繰り越し最大11日)

入社3年目を迎えた時点で、入社1年目(入社半年時)に付与された有給休暇は2年の有効期限(時効)を迎えます。もし1年目付与分の残日数(たとえば1日)が2年目終了までに使われずに残っていた場合、その1日分は3年目に入った瞬間に消滅します。

有給休暇の繰り越しに関する注意点

有給休暇の繰り越しを管理するにあたっては、押さえておくべき実務上のポイントがいくつかあります。

休職期間を挟んだ場合の繰り越し

産前産後休業、育児休業、介護休業、労災による療養休業などを取得している期間中も、有給休暇の時効(2年)のカウントは停止しません。

そのため、長期間休職している間に2年の時効が到来した場合、使わなかった有休は休職中であっても順次消滅していくことになります。復職時に「休職前の有休がそのまま残っている」とは限らないため、休職に入る従業員には事前の説明が必要です。

有給休暇の買い取りが例外的に認められるケース

原則として、有給休暇の買い取りは休む権利を奪うことにつながるため、労働基準法で禁止されています。しかし、以下の例外的なケースにおいては、繰り越された有休や未消化分の買取りが認められています。

  1. 法定日数を超えて付与している有給休暇の買い取り: 会社が独自に上乗せして付与した有休
  2. 時効(2年)を迎えて消滅した有給休暇の買い取り: 法律上の権利が消滅した後の日数を対象とする場合
  3. 退職時に使い切れず残った有給休暇の買い取り: 退職に伴い行使できなくなる有休

退職時の有給休暇の消化

退職時には繰り越し分を含めた未消化の有給休暇(最大40日)をすべて消化することが可能です。

会社には「時期変更権(有休の取得時期を変更させる権利)」がありますが、退職日以降に有休を繰り延べることは構造上不可能なため、退職間際の有休申請に対して会社側は時期変更権を行使できません。引き継ぎスケジュールを考慮し、退職予定者と早めに協議・調整することが大切です。

なお、「業務の都合上、どうしても退職日までに全日数を消化しきれない」という場合、前述のとおり会社が買い取ること自体は違法ではありません。

ただし、会社側に未消化分の買取りを強制する法的義務はありません。あくまで労使の合意(就業規則の定めや個別の協議)に基づいて実施されるものであるため、買取りを行う場合の計算単価や条件は会社規定に従って対応します。

有給休暇の繰り越し管理を効率化する方法

従業員数が増えるほど、一人ひとりの付与日・繰り越し日数・失効日を手作業で管理するのは煩雑になり、計算ミスや管理漏れのリスクが高まります。

多くの企業で採用されているエクセル(Excel)での管理には、以下のようなメリット・デメリットがあります。


項目内容
メリット導入コストがかからず、自社のフォーマットに合わせて柔軟にカスタマイズできる
デメリット数式の破損や転記ミスが発生しやすい。法改正(年5日義務化など)への追従を自力で行う必要があり、時効消滅の管理が複雑化する

少人数のうちは対応可能ですが、従業員が10名を超えてくると手作業による限界やリスクが目立つようになります。

有給休暇の繰り越し管理を正確かつ効率的に行うには、クラウド人事労務ソフトの導入が有効です。システムを活用することで、人事労務担当者の業務負担を大幅に削減し、法令遵守の徹底を実現できます。

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まとめ

有給休暇の適切な繰り越し管理を行うことは、従業員のワークライフバランス向上や労使トラブルの防止につながるだけでなく、年5日の有休取得義務を達成するためにも不可欠です。

手動での管理に限界を感じている場合は、有給休暇管理の自動化に対応したクラウドサービスの活用をぜひ検討してみてください。正しい労務管理を通じて、より働きやすい職場環境を整えていきましょう。

よくある質問

有給休暇の繰り越しとは?

有給休暇の繰り越しとは、当年度中に使い切れなかった有給休暇を消滅させず、翌年度へ持ち越して使用できる制度のことです。労働基準法により有給休暇の時効は「付与から2年間」と定められており、1年目で未使用だった日数は自動的に2年目へ繰り越されます。

詳しくは、記事内「有給休暇の繰り越しに関するルール」をご覧ください。

有給休暇の繰り越しは何日まで可能?

法律上、1年間に付与される有給休暇の最大日数は20日であるため、翌年へ繰り越せる上限日数も最大20日となります。当年度新たに付与される最大20日と繰り越された最大20日を合わせると、従業員が一度に保有できる有給休暇の最大日数は合計40日です。

詳しくは、記事内「有給休暇の繰り越し上限日数」をご覧ください。

繰り越した有給休暇を使いきれずに辞めた場合はどうなる?

退職日までに使い切れなかった繰り越し有給休暇は、退職をもって権利が消滅します。会社側に買取りの法的義務はありませんが、退職により行使できなくなる有休について労使で合意形成ができれば、例外的に会社が買い取ることが認められています。

詳しくは、記事内「退職時の有給休暇の消化」で解説しています。

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