給与所得と事業所得がある場合の確定申告とは?必要なケースや計算・書き方を解説

更新日:2026/10/1

監修:好川 寛

目次

給与所得と事業所得の両方がある場合、原則として両方を合算して確定申告する必要があります。

所得の計算は勤務先の年末調整で完結すると考えてしまいがちですが、事業所得は年末調整の対象外のため、合算の仕組みや損益通算を知らないままだと税金を納めすぎたり不足が生じたりするおそれがあるでしょう。

本記事では、確定申告が必要なケースと不要なケース、給与所得と事業所得の計算方法、源泉徴収票の見方、損益通算や赤字の繰越、申告書への書き方までを解説します。

給与所得と事業所得がある場合の確定申告

給与所得は勤務先から受け取る給与による所得、事業所得は自分の事業による所得を指します。両者は所得の性質や年末調整との関係が異なるため、申告上はそれぞれ別に計算したうえで合算し、合算後の金額をもとに所得税を求めます。

出典:国税庁「No.1300 所得の区分のあらまし」

給与所得と事業所得の違い

給与所得と事業所得は、所得を生み出す源泉と計算方法、源泉徴収・年末調整の有無が異なります。給与所得は給与収入から給与所得控除を差し引いた額、事業所得は事業の総収入金額から必要経費を差し引いた額です。

給与所得は勤務先が源泉徴収と年末調整を行うため、勤務先で税額が精算されます。一方で事業所得は、自分で総収入金額と必要経費を計算し、確定申告で税額を確定させます。両者の違いを整理すると次のとおりです。

<給与所得と事業所得の違い>

区分 給与所得 事業所得
所得の源泉 勤務先から受け取る給与 自分が営む事業
所得の計算式 給与収入−給与所得控除 総収入金額−必要経費
源泉徴収・年末調整 勤務先が実施 対象外
確定申告 一定の場合に必要 原則として必要

給与所得と事業所得の両方の所得がある人は、勤務先で完結する給与分と、自分で申告する事業分をひとつの確定申告にまとめる必要があります。

個人事業主は確定申告で精算する

年末調整は勤務先が給与所得者に対して行う手続きで、給与以外の所得は対象になりません。給与所得と事業所得の両方がある人は、年末調整だけでは納税が完結せず、原則として両方を合算して確定申告する必要があります。

年末調整で精算されるのは、あくまで給与にかかる所得税です。事業所得については勤務先が把握できないため、自分で確定申告して税額を確定させます。給与から源泉徴収された所得税は、確定申告の計算の最後で差し引いて精算します。

確定申告そのもののやり方や対象者を基礎から確認したい人は、「確定申告とは?全くわからない人向けにやり方・対象者をわかりやすく解説!」の記事も参照してください。

給与所得者の確定申告が必要・不要なケース

確定申告が必要かどうかは、事業所得など給与以外の所得の有無と額、給与収入の額、給与が源泉徴収・年末調整されているかで決まります。事業所得がある個人事業主は原則として申告が必要ですが、給与のみの会社員では所得の額によって扱いが分かれます。

確定申告が必要なケース

事業所得がある個人事業主は、原則として確定申告が必要です。事業所得は年末調整の対象外で、給与の年末調整だけでは事業分の納税が完結しないためです。

給与のみの会社員でも、次のいずれかに当てはまる人は確定申告が必要になります。

確定申告が必要な主なケース

  • 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
  • 1ヶ所から給与を受け、その全部が源泉徴収の対象で、給与所得と退職所得を除く各種所得の合計額が20万円を超える人
  • 2ヶ所以上から給与を受け、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得と退職所得を除く各種所得との合計額が20万円を超える人

事業所得は「給与所得と退職所得を除く各種所得」に含まれるため、副業の事業所得が20万円を超える会社員は申告の対象です。なお20万円は事業所得だけでなく、雑所得や一時所得なども合算して判定する点に注意が必要です。

出典:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」

確定申告が不要なケース

本業の給与1ヶ所のみで年末調整が済んでいて、かつ給与所得と退職所得以外の所得の合計額が20万円以下の会社員は、所得税の確定申告が不要になる場合があります。年末調整で給与分の所得税が精算済みで、追加で申告すべき所得が少額にとどまるためです。

ただし、この取り扱いは所得税に限ったものです。住民税には20万円以下の申告不要制度がないため、所得税の申告が不要でも、市区町村への住民税の申告は別途必要になります。

また、申告不要となるのは「年末調整済み」と「給与以外の所得が20万円以下」の両方を満たす場合に限られ、どちらか一方だけでは判定できません。事業の所得で生計を立てている個人事業主は、給与以外に相応の事業所得があると考えられるため、基本的に申告不要にはならない点に注意が必要です。

申告義務はないが還付を受けられるケース

申告義務がない人でも、確定申告をすることで源泉徴収された所得税が戻る場合があります。年末調整では反映できない控除や、精算されていない給与があると、納めすぎた税金が還付されるためです。

還付につながる主なケースには、医療費控除や寄附金控除を受ける場合、住宅ローン控除の適用初年の場合、2ヶ所以上から受けた給与をまとめて精算する場合、年の途中で退職して年末調整を受けていない場合などがあります。

事業所得が赤字のときも、給与所得との損益通算によって源泉徴収済みの税金が還付されることがあるでしょう。損益通算の仕組みは「給与所得と損益通算する」で解説しています。

給与所得と事業所得の計算方法

最終的な所得税は、給与所得と事業所得を合算した金額から所得控除を差し引き、残った課税所得に税率をかけて求めます。給与所得と事業所得は計算方法が異なるため、まずそれぞれの所得を計算し、その後で合算します。

給与所得の計算方法

給与所得は、給与収入から給与所得控除を差し引いて求めます。給与所得控除は給与収入に応じて決まる控除で、会社員にとっての必要経費に相当する金額です。

給与所得控除の額は収入金額に応じて段階的に決まり、令和7年(2025年)分以降は最低65万円です。

たとえば給与収入が190万円以下の場合、給与所得控除は65万円となり、給与収入180万円なら給与所得は115万円と計算します。計算のもとになる給与収入は、源泉徴収票の「支払金額」で確認できます。

給与所得控除の計算方法をさらに詳しく知りたい人は、「給与所得控除とは?給与所得の計算方法や所得控除との違いをわかりやすく解説」の記事も参照してください。

出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」

事業所得の計算方法

事業所得は、事業による総収入金額から必要経費を差し引いて求めます。必要経費は、収入を得るために直接かかった売上原価や販売費、管理費などです。

青色申告の承認を受けている場合は、総収入金額から必要経費を差し引いた後、さらに青色申告特別控除を差し引けます。事業所得を正しく計算するには、日々の取引を帳簿に記帳し、収入と経費を集計しておかなければなりません。なお、自宅兼事務所の家賃など事業と家事の両方にかかる費用は、事業に使った割合だけを必要経費にできます。

出典:国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」

両所得を合算して所得税を求める手順

給与所得と事業所得を計算したら、両者を合算した総所得金額から所得控除を差し引いて課税所得を求め、税率をかけて所得税を計算します。給与から源泉徴収された所得税は、計算した税額から最後に差し引いて精算します。

具体的な計算手順は次のとおりです。

給与所得と事業所得がある場合の所得税の計算手順

  • 給与所得を計算する(給与収入−給与所得控除)
  • 事業所得を計算する(総収入金額−必要経費−青色申告特別控除)
  • 給与所得と事業所得を合算して総所得金額を求める
  • 総所得金額から基礎控除や社会保険料控除などの所得控除を差し引いて課税所得を求める
  • 課税所得に税率をかけて所得税を計算する
  • 給与から源泉徴収された所得税を差し引いて納付額または還付額を確定する

源泉徴収された所得税より計算上の税額が大きければ差額を納付し、小さければ差額が還付されます。給与と事業の所得を別々に申告するのではなく、合算したひとつの課税所得に税率がかかる点を押さえておきましょう。

事業所得が赤字の場合の損益通算と繰越

事業所得が赤字になった場合、給与所得などほかの所得と相殺して税負担を軽くできることがあります。この相殺を損益通算とよび、損益通算してもなお残る赤字は、青色申告であれば翌年以降に繰り越せます。

給与所得と損益通算する

事業所得の赤字は、給与所得などほかの所得から差し引けます。損益通算によって課税所得が圧縮され、給与から源泉徴収された所得税が還付される場合があります。

損益通算できる赤字は、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つの所得区分で生じたものです。注意したいのは、副業の所得が事業所得ではなく業務にかかる雑所得に当たる場合です。

雑所得の赤字は損益通算の対象外で、給与所得と相殺できません。副業が事業所得と認められるか業務にかかる雑所得に当たるかで、損益通算の可否が変わります。

損益通算の対象や具体的なやり方を詳しく知りたい人は、「損益通算とは?対象所得の範囲と損益通算のやり方について解説」の記事も参照してください。

出典:国税庁「No.2250 損益通算」

青色申告なら赤字を3年繰り越せる

損益通算してもなお残る赤字(純損失)は、青色申告であれば翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年の所得から差し引けます。赤字が出た年に控除しきれなくても、将来の黒字と相殺して税負担を抑えられます。

一方で、白色申告では純損失の繰越しは原則としてできない点に注意が必要です。変動所得の損失や被災事業用資産の損失など一部の例外は白色申告でも繰り越せますが、事業全体の赤字を繰り越せるのは青色申告の特典です。

赤字を翌年以降でも相殺したい場合は、青色申告の承認を受けておくことが前提になります。

出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」

確定申告書の書き方と源泉徴収票の見方

確定申告書では、事業所得は事業所得の欄に、給与所得は給与所得の欄に分けて記入します。給与分は、勤務先から受け取る源泉徴収票の金額を申告書に転記して反映させます。

源泉徴収票で押さえるのは「支払金額」と「源泉徴収税額」の2つです。給与所得控除を差し引く前の給与収入にあたる「支払金額」は申告書の収入金額の給与欄に転記し、給与から天引きされて納付済みの所得税である「源泉徴収税額」は源泉徴収税額の欄に記入して、計算した所得税額から差し引いて精算します。

事業所得については、青色申告決算書または収支内訳書で計算した所得金額を事業所得の欄に記入します。源泉徴収票の項目と申告書の記入欄の対応は次のとおりです。

<源泉徴収票と確定申告書の対応>

源泉徴収票の項目 確定申告書の記入欄
支払金額 収入金額等の給与欄
給与所得控除後の金額 所得金額の給与欄
源泉徴収税額 源泉徴収税額の欄
社会保険料等の金額 社会保険料控除の欄

源泉徴収票に記載された各項目をどこに転記するかが分かれば、給与所得の記入は迷いにくくなります。事業所得と給与所得を区分して記入し、最後に源泉徴収税額を差し引いて納付額または還付額を確定させる流れです。

申告書の各欄の書き方や見本を確認したい人は、「確定申告書の書き方・見方をわかりやすく解説【項目別の見本あり】」の記事も参照してください。

確定申告で必要な書類と提出方法

給与所得と事業所得がある場合の確定申告では、給与分を確認する源泉徴収票と、事業分の所得を計算した書類、各種控除を証明する書類を準備します。提出は税務署窓口・郵送・e-Taxのいずれかで行えます。

必要書類は次のとおりです。

給与所得と事業所得がある場合の必要書類

  • 給与の源泉徴収票(勤務先から交付されるもの)
  • 青色申告決算書または収支内訳書(事業所得の計算に使用)
  • 事業の取引を記録した帳簿
  • 社会保険料控除や生命保険料控除などの控除証明書
  • マイナンバーカードなど本人確認書類

提出方法のうちe-Taxは、国税電子申告・納税システムを使って自宅やオフィスからオンラインで申告できる方法です。マイナンバーカードと対応端末があれば、税務署へ出向かずに提出が完結します。提出期間は原則として翌年2月16日から3月15日までで、期間内に提出します。

出典:国税庁「No.2020 確定申告」

まとめ

給与所得と事業所得の両方がある場合は、原則として両方を合算して確定申告します。所得の区分ごとに計算方法や精算の仕組みが異なり、給与は年末調整済みでも事業所得があれば申告が必要になるため、どちらか一方だけでは納税が完結しません。

まず行うべきは、自分が申告の必要なケースに当たるかを確認し、給与所得と事業所得を区分して計算したうえで合算することです。事業所得が赤字なら損益通算で給与所得と相殺でき、青色申告なら残った赤字を3年繰り越せます。申告書では所得を区分して記入し、源泉徴収票の支払金額と源泉徴収税額を転記して給与分を精算します。

合算の計算や帳簿付けに不安がある場合は、「freee会計」のような会計ソフトウェアを使うと所得の集計から申告書の作成までを効率化できます。判断に迷う点があるときは、税理士などの専門家に相談することも有効です。

よくある質問

  • 給与所得と事業所得がある場合、年末調整だけで済みますか?

    事業所得は年末調整の対象外のため、年末調整だけでは納税が完結しません。給与所得と事業所得の両方がある場合は、原則として両方を合算して確定申告する必要があります。

    詳しくは「個人事業主は年末調整を受けられず確定申告で精算する」で解説しています。

  • 副業の所得が20万円以下なら確定申告は不要ですか?

    本業の給与が年末調整済みで、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要になる場合があります。ただし住民税にはこの20万円の規定がないため、住民税の申告は別途必要です。

    詳しくは「確定申告が不要なケース」で解説しています。

  • 確定申告のとき源泉徴収票はどこを見ればよいですか?

    「支払金額」が給与所得控除前の給与収入、「源泉徴収税額」が給与から天引きされた所得税です。これらを確定申告書の該当欄に転記し、源泉徴収税額を差し引いて精算します。

    詳しくは「確定申告書の書き方と源泉徴収票の見方」で解説しています。

監修

好川 寛

好川 寛

元国税調査官。国税局では税務相談室・不服審判所等で審理事務を中心に担当。その後、大手YouTuber事務所のトップクリエイターの税務支援、IT企業で税務ソフトウェアの開発に携わる異色の税理士です。

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