民泊の確定申告はいくらから必要?所得区分・経費・必要書類をわかりやすく解説

更新日:2026/9/28

監修:好川 寛

目次

民泊で得た収入は、物件に住みながら貸す家主居住型か住まずに貸す家主不在型かと、運営の規模に応じて、事業所得・雑所得・不動産所得のいずれかとして確定申告する所得です。

給与所得者か給与のない人かで申告が必要になる金額が変わり、所得区分を誤ると使える控除や納める税額も変わってきます。

本記事では、申告の要否と基準額、所得区分の見分け方、経費にできるもの、必要書類、申告のやり方、個人事業税や民泊新法の注意点までを解説します。

民泊の確定申告はいくらから必要?

民泊収入の確定申告が必要かどうかは、その人の立場によって基準が変わります。判定の対象になるのは売上そのものではなく、売上から必要経費を差し引いた所得です。会社員などの給与所得者・給与のない人・住民税の3つに分けて、申告が必要になる基準を確認します。

確定申告の全体像から知りたい人は「確定申告とは?全くわからない人向けにやり方・対象者をわかりやすく解説!」もあわせて参照してください。

給与所得者は所得が年20万円を超えると申告が必要

会社員などの給与所得者が副業で民泊を行う場合、給与所得および退職所得以外の所得が年20万円を超えると確定申告が必要になります。判定するのは民泊の売上ではなく、売上から仲介手数料や清掃費などの必要経費を差し引いた所得です。

たとえば民泊の年間売上が80万円でも、経費が65万円かかっていれば所得は15万円となり、この基準では申告は不要です。一方、売上が50万円で経費が20万円なら所得は30万円となり、申告が必要になります。

注意したいのは、年末調整を受けた給与所得者でも、医療費控除などで還付を受ける申告をする場合は、20万円以下の所得も申告に含める必要がある点です。

出典:国税庁「No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」

個人事業主・無職の場合は基礎控除額が基準

給与所得がない個人事業主や無職の人は、その年の所得の合計が基礎控除額を超えると確定申告が必要になります。民泊の所得だけでなく、ほかの所得も合算して判定します。

ここで押さえておきたいのは、20万円という基準が給与所得者にだけ認められた特例だという点です。給与のない人には20万円ルールは適用されません。所得が基礎控除額を下回れば所得税はかからず、申告も不要になります。

申告が不要でも住民税の申告は必要な場合がある

所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要なケースでも、住民税の申告は別途必要になる場合があります。20万円以下を申告対象から外す規定は所得税のしくみであり、住民税には同じ規定がないためです。

所得税の確定申告をすれば、その情報が市区町村へ共有されるため住民税の申告は要りません。しかし確定申告をしない場合は、民泊の所得を市区町村へ自分で申告する必要があります。

民泊収入の所得区分の見分け方

住宅宿泊事業法に基づく民泊で得た所得は、原則として雑所得に区分されます。

一般的な不動産の貸付けによる所得は不動産所得に区分されますが、民泊では部屋を貸すだけでなく、部屋の使用料だけでなく、寝具等の賃貸料やクリーニング代、水道光熱費、室内清掃費、日用品費、観光案内等の役務提供の対価などが含まれるため、通常の不動産賃貸とは性質が異なります。

ただし、民泊を所得税法上の「事業」として行っていることが明らかな場合は、事業所得に該当します。また、不動産賃貸業を営む人が、賃貸契約終了後から次の契約が決まるまでの空室期間に、その物件で一時的に民泊を行う場合は、不動産所得に含めても差し支えないとされています。

<民泊収入の所得区分の目安>

所得区分 主な考え方
雑所得 住宅宿泊事業法に基づく民泊による所得は原則として該当
事業所得 専ら民泊による所得で生計を立てているなど、所得税法上の事業として行われていることが明らかな場合
不動産所得 不動産賃貸業を営む人が、貸付け終了後から次の賃貸契約が締結されるまでの間、一時的に民泊を行う場合

所得区分は、家主が物件に住んでいるかどうかだけで決まるものではありません。実際の運営状況を踏まえて判断し、区分に迷う場合は所轄の税務署や税理士へ確認しましょう。

出典:国税庁「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」

民泊収入は原則として雑所得になる

住宅宿泊事業法に基づく民泊による所得は、原則として雑所得です。民泊では、部屋の使用料だけでなく、寝具などの賃貸料、クリーニング代、水道光熱費、室内清掃費、日用品費、観光案内などのサービスに対する対価も収入に含まれると考えられています。そのため、単に不動産を貸し付ける一般的な賃貸とは性質が異なり、原則として不動産所得ではなく雑所得に区分されます。

雑所得では青色申告特別控除は利用できません。

民泊以外の雑所得とあわせた申告の考え方は「雑所得とは?税率や計算方法・確定申告のやり方をわかりやすく解説」で確認できます。

事業として行う場合は事業所得になる

専ら民泊による所得で生計を立てているなど、住宅宿泊事業が所得税法上の「事業」として行われていることが明らかな場合、その所得は事業所得に該当します。

所得税法上の事業に該当するかどうかは、実際の事業規模や運営状況などを踏まえて判断する必要があります。

事業所得に該当し、青色申告の要件を満たす場合は、青色申告特別控除などの適用を受けられます。

不動産所得に区分されるケース

不動産賃貸業を営んでいる人が、賃貸契約の終了後から次の賃貸契約が締結されるまでの間、その空室を利用して一時的に民泊を行う場合、その所得は雑所得ではなく不動産所得に含めても差し支えないとされています。

したがって、「宿泊サービスが少ないから不動産所得になる」という考え方ではありません。もともと不動産賃貸業に使っている物件を、賃貸契約の合間に一時的に民泊へ利用するという実態がポイントです。

出典:国税庁「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」

所得区分で変わる税務上の扱い

所得区分によって、青色申告特別控除の可否・損益通算の扱い・個人事業税の課税が変わります。なかでも税額への影響が大きいのが青色申告特別控除で、事業所得または不動産所得を事業的規模で営む場合は、要件に応じて65万円・55万円・10万円の控除を受けられます。

雑所得はこの控除の対象外です。同じ民泊収入でも、雑所得か事業所得・不動産所得かで課税される所得が数十万円単位で変わることになります。青色申告と白色申告の違いは「確定申告は青色申告と白色申告の2種類!それぞれの特徴や節税効果について解説」で解説しています。

なお、令和8年度税制改正の大綱では、青色申告特別控除の最高額を令和9年分以後の所得税から75万円へ引き上げる見直しが盛り込まれている状態です。これは令和9年分(2027年分)の所得税からの適用が予定されており、令和8年分(2026年分)までの申告は従来どおり65万円・55万円・10万円が上限です。

今後の確定申告では、適用年分ごとに控除額が変わる点に留意する必要があります。

出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」

出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」

民泊の必要経費として認められるもの

民泊収入を得るために直接かかった費用は、必要経費として計上できます。自宅の一部を貸す家主居住型のように事業と生活が混在する場合に経費にできるのは、事業に使った割合分だけを家事按分した金額です。按分の基準には、床面積や使用日数など実態に合った合理的なものを用います。

民泊で経費にできる費用の例

  • 宿泊予約サイトの仲介手数料
  • 清掃費・リネンのクリーニング費
  • 水道光熱費(事業使用分)
  • インターネットなどの通信費
  • 寝具・アメニティなどの消耗品費
  • 火災保険料
  • 自己所有物件の固定資産税・建物の減価償却費
  • 賃借物件の場合の賃料(事業使用分)

これらの費用は、領収書や帳簿で支出の事実を残しておくことが前提になります。家事按分した場合は、按分の根拠となる面積や使用日数の記録も保管しておくと、税務調査の際に説明しやすくなるでしょう。

民泊の確定申告で必要な書類と帳簿

民泊の確定申告で必要な書類は、所得区分と申告方法(青色申告か白色申告か)によって変わります。確定申告書に加え、事業所得・不動産所得では青色申告決算書または収支内訳書の添付が必要です。雑所得は決算書の添付が原則不要なものの、収入規模に応じて書類の保存や添付を求められます。

<所得区分・申告方法別の主な必要書類>

所得区分 申告方法 添付する決算書類 帳簿の保存
事業所得・不動産所得 青色申告 青色申告決算書 必要(複式簿記など)
事業所得・不動産所得 白色申告 収支内訳書 必要
雑所得 ― 原則不要(収入規模により例外あり) 収入規模により必要

雑所得の場合は、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える人は、請求書や領収書などの現金預金取引等関係書類の保存が必要です。前々年分の収入金額が1,000万円を超える人は、確定申告書に収支内訳書を添付しなければなりません。収入規模によって義務が段階的に増える点に注意が必要です。

出典:国税庁「No.1500 雑所得」

民泊の確定申告のやり方と申告期限

民泊の確定申告は、収入と経費の集計から書類の提出まで、おおむね決まった流れで進めます。所得税の確定申告期間は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までです。申告書はe-Taxまたは書面(窓口 or 郵送)で提出します。

  • 1年分の民泊の収入と経費を集計する
  • 家主居住型か家主不在型か、規模はどうかをもとに所得区分を判定する
  • 確定申告書と青色申告決算書または収支内訳書を作成する
  • 申告期限までにe-Taxまたは書面で提出する

青色申告で特別控除を受けたい場合は、事前の手続きが必要です。青色申告をしようとする年の3月15日まで、その年の途中で開業した場合は開業日から2か月以内に、青色申告承認申請書を所轄の税務署へ提出しておく必要があります。期限を過ぎると、その年は青色申告ができません。

出典:国税庁「No.2020 確定申告」

民泊収入には個人事業税がかかる場合がある

個人事業税は、所得税とは別に都道府県へ納める税金で、所得区分によって課税の有無が変わります。事業所得は法定業種の旅館業、不動産所得は不動産貸付業に当たり、いずれも課税対象です。なお、不動産貸付業には認定基準(住宅なら概ね10室以上・10棟以上など)があり、これに満たない小規模な貸付けは課税されません。雑所得は事業に当たらないため、個人事業税はかかりません。

個人事業税において、所得から差し引ける事業主控除は年290万円です。控除後の所得に税率を掛けて税額を計算し、旅館業・不動産貸付業はどちらも第1種事業として税率5%が適用されます。所得が290万円以下であれば、事業主控除によって個人事業税はかかりません。

出典:東京都主税局「個人事業税」

民泊の確定申告の注意点

民泊では、税務の手続きとは別に、事業そのものへの法律上の制限と消費税の扱いに注意が必要です。営業できる日数の上限と届出の義務、そして消費税の課税という2つの論点を確認します。

住宅宿泊事業法の年間180日制限と届出

住宅宿泊事業法に基づく民泊では、人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えてはなりません。この1年間は、毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間で数えます。事業を始めるには、確定申告とは別に、都道府県知事等への届出が必要です。

180日を超えて営業したい場合は、旅館業法の許可や国家戦略特区の特区民泊など、別の制度に基づく手続きが必要になります。無届け・無許可での営業はできません。

出典:観光庁「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?」

民泊収入は消費税の課税対象になる

民泊収入は、原則として消費税の課税対象です。住宅の貸付けは消費税が非課税ですが、貸付期間が1か月未満のものは非課税の対象から外れます。民泊は短期の宿泊サービスにあたるため、課税の対象になります。

消費税の納税義務は、原則として基準期間である前々年の課税売上高が1,000万円を超えた場合に生じます。ただし、課税売上高が1,000万円以下であっても、インボイス発行事業者として登録すると課税事業者になり、消費税の申告・納税が必要です。

免税事業者からインボイス発行事業者になった場合、一定の要件を満たせば、2026年分までは納税額を売上税額の2割とする「2割特例」を利用できます。さらに、個人事業者については、2027年分と2028年分の申告で納税額を売上税額の3割とする「3割特例」が設けられています。

出典:国税庁「No.6201 非課税となる取引」

まとめ

民泊収入は、家主居住型か家主不在型かと運営の規模に応じて、事業所得・雑所得・不動産所得のいずれかで申告します。区分によって青色申告特別控除の可否・個人事業税の課税・必要書類が変わるため、まず自分の運営がどの区分に当たるかを見極めることが出発点になります。

実務では、給与所得者なら所得20万円超で申告が必要になる基準を押さえ、経費は家事按分して正しく計上し、青色申告の事前手続きや帳簿保存の義務を確認しておくことが基本です。あわせて、民泊新法の180日制限と届出、消費税の課税という事業面の制限にも目を配る必要があります。

所得区分の判定や青色申告の手続きに迷う場合は、税務署や税理士などの専門家へ相談することが確実な対応です。会計ソフトを使えば、収入と経費の集計から確定申告書の作成までを一貫して進められます。

よくある質問

  • 民泊の確定申告はいくらから必要ですか?

    会社員などの給与所得者は、民泊を含む給与・退職所得以外の所得が年20万円を超えると確定申告が必要です。給与所得がない人は、民泊を含む所得の合計が基礎控除額を超えると申告が必要になります。いずれも売上ではなく、売上から経費を差し引いた所得で判定します。

    この点が判断の起点です。詳しくは「民泊の確定申告は必要?いくらから申告するのか」で解説しています。

  • 民泊で個人事業税はかかりますか?

    民泊の所得が雑所得であれば、事業に当たらないため個人事業税はかかりません。事業所得は旅館業、不動産所得は不動産貸付業として法定業種に当たり、課税対象になります。事業主控除が年290万円あるため、控除後の所得がなければ課税されません。

    詳しくは「民泊収入には個人事業税がかかる場合がある」で解説しています。

  • 届出なしで民泊はできますか?

    住宅宿泊事業法に基づく民泊は、都道府県知事等への届出が必要で、人を宿泊させる日数は1年間で180日が上限です。180日を超えて営業する場合は、旅館業法の許可や特区民泊などの手続きが必要になり、無届け・無許可での営業はできません。

    詳しくは「住宅宿泊事業法の年間180日制限と届出」で解説しています。

監修

好川 寛

好川 寛

元国税調査官。国税局では税務相談室・不服審判所等で審理事務を中心に担当。その後、大手YouTuber事務所のトップクリエイターの税務支援、IT企業で税務ソフトウェアの開発に携わる異色の税理士です。

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