確定申告の方法は青色申告と白色申告の2種類
青色申告と白色申告では、利用できる制度や必要な手続き、記帳方法などが異なります。
青色申告を選べるのは、事業所得・不動産所得・山林所得があり、所定の期限までに青色申告承認申請書を提出した人です。それ以外の所得については、青色申告を選べません。
また、青色申告特別控除の控除額によって、必要な記帳方法や提出書類も変わります。まずは自身の所得の種類と青色申告の申請状況を確認しましょう。
青色申告とは
青色申告とは、事業所得・不動産所得・山林所得がある人が、事前に税務署の承認を受けたうえで、帳簿の記録に基づいて所得税を申告する制度です。一定の要件を満たすと、青色申告特別控除や青色事業専従者給与、純損失の繰越しなどを利用できます。
青色申告のメリット
青色申告の大きなメリットとしては節税効果が高いことが挙げられます。
①青色申告特別控除が受けられる
青色申告では、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。青色申告特別控除の控除額は65万円・55万円・10万円とあり、要件によって控除額が異なります。
それぞれの控除額ごとの要件は、以下のとおりです。
【2026年分までの青色申告特別控除】
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| 適用条件 |
青色申告特別控除額 65万円 |
55万円 |
10万円 |
| 所得の種類 |
事業所得 不動産所得(事業的規模で行うもの) |
事業所得 不動産所得(事業的規模で行うもの) |
事業所得 不動産所得 山林所得 |
| 記帳方法 |
複式簿記 |
複式簿記 |
単式簿記 |
| 提出する決算書類 |
損益計算書 貸借対照表 |
損益計算書 貸借対照表 |
損益計算書 |
| 申告期限 |
期限内を厳守 |
期限内を厳守 |
期限を過ぎてからでも申告可能(※10万円控除には控除固有の期限内申告要件はありませんが、確定申告自体は原則として期限内に行います。) |
e-Taxでの申告 または優良な電子帳簿保存 |
必須 |
− |
− |
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
2026年度税制改正により、2027年分以後の青色申告特別控除は、75万円・65万円・10万円に再編されます。主な変更点は以下のとおりです。
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| 区分 |
2026年分まで |
2027年分以後 |
| 控除上限額 |
65万円・55万円・10万円 |
75万円・65万円・10万円 |
| もっとも高い控除 |
複式簿記に加え、e-Taxによる申告または優良な電子帳簿の保存 |
複式簿記とe-Taxによる申告に加え、優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存 |
| 複式簿記・e-Tax |
65万円 |
65万円 |
| 複式簿記・書面申告 |
55万円 |
10万円 |
| 簡易な記帳 |
10万円 |
10万円。ただし、前々年の収入金額などによる対象制限あり |
75万円控除を受けるには、複式簿記による記帳とe-Taxによる期限内申告に加え、優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存の要件を満たす必要があります。
また、2027年分以後は、簡易な記帳による10万円控除の対象者が限定されます。原則として、事業所得または事業規模で行う不動産所得について、前々年の収入金額が1,000万円以下であることなどが要件です。
詳しくは、別記事「【令和8年度税制改正】青色申告特別控除が最大75万円に|変更点・要件・適用時期まで解説」をご覧ください。
②家族への給与を一定要件のもとで全額必要経費にできる
青色事業専従者給与とは、青色申告者と生計を一にする配偶者やそのほかの親族で、事業に専ら従事している人に支払う給与です。
事前に提出した届出書に記載した金額の範囲内で、労務の対価として適正な金額であれば、支払った給与を必要経費に算入できます。上限がないわけではなく、届出額を超える部分や、仕事内容などに照らして過大と判断される部分は必要経費になりません。
白色申告では、家族に支払った給与そのものを必要経費にはできません。ただし、一定の要件を満たす場合は、事業専従者控除を利用できます。控除額は、次のいずれか低い金額です。
白色申告の事業専従者控除額(いずれか低い金額)
- 事業専従者が配偶者の場合は86万円、そのほかの親族の場合は1人につき50万円
- 事業専従者控除前の事業所得などの金額を「事業専従者の人数 + 1」で割った金額
青色事業専従者給与を必要経費に算入するには、原則として、その年の3月15日までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出します。その年の1月16日以後に新たに事業を始めた場合や、新たに専従者が加わった場合は、その日から2ヶ月以内が提出期限です。
青色事業専従者に該当する主な要件は、以下のとおりです。
青色事業専従者に該当する主な要件
- 青色申告者と生計を一にする配偶者またはそのほかの親族
- その年の12月31日時点で15歳以上
- 原則として、その年を通じて6ヶ月を超える期間、事業に専ら従事している
なお、就業可能期間が1年に満たないなど一定の場合は、その期間の2分の1を超えて専従していることが要件となります。また、青色事業専従者として給与を受け取る人は、同一生計配偶者や扶養親族にはなれません。
出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
③純損失を翌年以後3年間繰り越せる
青色申告では、事業所得などの赤字をほかの所得と損益通算しても控除しきれず、純損失が生じた場合、その金額を翌年以後3年間にわたって繰り越せます。繰り越した純損失は、翌年以後に生じた所得から控除できます。
適用を受けるには、純損失が生じた年分の確定申告書を期限内に提出し、その後も連続して確定申告書を提出することが必要です。なお、特定非常災害による一定の純損失は、繰越期間が5年間となる場合があります。
以下の図では、1年目に生じた純損失を翌年以後3年間の所得から順次控除する例を示しています。
④減価償却資産(40万円未満)を一括経費にできる
通常、取得価額が10万円未満の減価償却資産は、取得した年に全額を必要経費に算入できます。10万円以上の資産は、原則として耐用年数に応じて複数年に分けて減価償却する扱いです。
ただし、青色申告を行う一定の中小事業者は、「少額減価償却資産の特例」を利用できる場合があります。2026年4月1日以後に取得した資産は、取得価額が40万円未満であれば、年間合計300万円を上限として取得した年に全額を必要経費に算入できます。2026年3月31日以前に取得した資産は、30万円未満が対象です。
個人の場合は、常時使用する従業員数が400人以下であることなどが要件となります。また、主要な事業として行う場合を除き、貸付けに使用する資産は対象となりません。特例の適用期限は2029年3月31日です。
出典:中小企業庁「少額減価償却資産の特例を拡充しました」
出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
⑤貸倒引当金を経費として計上できる
貸倒引当金とは、売掛金や貸付金などが将来的に回収不能になるリスクに備えて計上する勘定科目のことです。
事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者は、事業上生じた売掛金や貸付金などについて、一定額を貸倒引当金として必要経費に算入できます。
一括評価による繰入限度額は、原則として年末時点の対象債権の帳簿価額の合計額の5.5%以下で、金融業の場合は3.3%以下です。
白色申告でも貸倒引当金の計上は可能ですが、個別評価金銭債権(不良債権)しか計上できません。一括評価金銭債権(不良債権以外の一般売掛債権等)の計上は、青色申告のみ認められているメリットです。
青色申告のデメリット
節税メリットの多い青色申告ですが、白色申告に比べて提出書類や保存帳簿が多かったり、記帳方法が複雑だったりと、事務工数の面でデメリットがあります。
①確定申告前に申請手続きが必要
青色申告をするためには、その年の3月15日までに青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出しなければなりません。その年の1月16日以降に開業した場合は、開業から2ヶ月以内の提出が必要です。
事前の申請がない場合には自動的に白色申告となります。
②控除額によっては複式簿記で記帳しなければならない
2026年分までの青色申告で65万円または55万円の特別控除を受けるには、正規の簿記の原則に基づいて記帳する必要があります。一般的には複式簿記を用いるため、収入と支出を中心に記録する簡易な記帳と比べて、記録する項目が多くなります。
会計ソフトを利用すると、取引内容を入力することで仕訳や決算書類に反映できるため、記帳や書類作成の負担を抑えられます。
正しく記帳できるか不安な人は、会計ソフトの活用を検討しましょう。
白色申告とは
白色申告とは、確定申告のための帳簿作成や提出書類が青色申告よりも簡単な代わりに、税制上のメリットが少ない申告方法です。
白色申告のメリット
白色申告には、事前申請が不要であり、青色申告よりも記帳や提出書類の負担を抑えやすいというメリットがあります。
①記帳が簡単で申告手続きがシンプル
白色申告では、収入金額や必要経費などを記録する簡易な記帳が認められています。
青色申告で65万円または55万円の特別控除を受ける場合のように、複式簿記で記帳する必要はありません。
ただし、事業所得・不動産所得・山林所得がある白色申告者にも、記帳と帳簿書類の保存が義務付けられています。確定申告時には、収入金額や必要経費の内訳を記載した収支内訳書を提出します。
②事前の手続きなどは不要
青色申告では、確定申告をする前に青色申告承認申請書の提出が必要ですが、白色申告であれば事前の手続きなどはありません。
白色申告のデメリット
白色申告のデメリットは、青色申告特別控除や純損失の繰越しなど、青色申告者向けの制度を原則として利用できないことです。
①特別控除などがなく節税効果が期待できない
白色申告では、青色申告のような特別控除はありません。
白色申告にも事業専従者控除がありますが、控除額は、配偶者の場合は86万円、そのほかの親族の場合は1人につき50万円と、事業専従者控除前の所得金額を所定の方法で按分した金額のいずれか低い金額です。青色申告と比べると、税負担の軽減につながる制度は限られます。
②赤字の繰り越しができない
白色申告では、純損失を翌年以後に繰り越すことは原則としてできません。ただし、変動所得の損失や被災事業用資産の損失などには例外があります。
赤字の年と黒字の年を繰り返している場合は、純損失を繰り越せる青色申告と比べて、税負担が重くなる可能性があります。
青色申告と白色申告の違いは?
青色申告と白色申告では、事前申請の有無や記帳方法、利用できる制度などが異なります。また、青色申告の中でも、控除額によって必要な記帳方法や提出書類が変わります。
以下は、2026年分までの制度をもとに、それぞれの違いをまとめた表です。
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|
青色申告 (65万円控除・55万円控除) |
青色申告 (10万円控除) |
白色申告 |
| 対象者 |
事業所得または事業規模で行う不動産所得がある人 |
不動産所得・事業所得・山林所得がある人(※2027年分以降は対象者が限定される場合があります) |
事業所得・不動産所得・山林所得があり、青色申告の承認を受けていない人 |
| 事前申請 |
あり(青色申告承認申請書) |
あり(青色申告承認申請書) |
なし |
| 記帳方法 |
複式簿記 |
簡易な記帳 |
簡易な記帳 |
| 控除額 |
65万円または55万円 *65万円はe-Taxでの申告または優良な電子帳簿の保存が要件 |
10万円 |
なし |
| 提出書類 |
・確定申告書 ・青色申告決算書 (貸借対照表・損益計算書) |
・確定申告書 ・青色申告決算書 (損益計算書) |
・確定申告書 ・収支内訳書 |
| 帳簿の保存期間 |
原則7年 |
原則7年 |
5年(法定帳簿は7年) |
| 家族への給与 |
届出額の範囲内で、労務の対価として適正な金額を必要経費に算入できる |
届出額の範囲内で、労務の対価として適正な金額を必要経費に算入できる |
配偶者86万円・そのほかの親族1人につき50万円と、控除前の所得金額を所定の方法で按分した金額のいずれか低い額 |
| 赤字の繰越し |
翌年以後3年間 |
翌年以後3年間 |
原則できない。ただし、変動所得や被災事業用資産の損失などは例外あり |
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
出典:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
出典:国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」
65万円の青色申告特別控除を全額適用し、控除の前後で所得税率が変わらない場合の軽減額の目安は、以下のとおりです。
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| 課税される所得金額 |
所得税率 |
住民税率 |
軽減される税額の目安 |
| 65万円以上195万円未満 |
5% |
10% |
9万7,500円 |
| 260万円以上330万円未満 |
10% |
10% |
13万円 |
| 395万円以上695万円未満 |
20% |
10% |
19万5,000円 |
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」
出典:総務省「個人住民税」
上記は、65万円の控除を全額適用でき、控除前後で所得税率が変わらない場合の概算です。復興特別所得税、住民税の均等割などは含んでいません。また、実際の税額は所得控除や税額控除などによって異なります。
青色申告と白色申告のどちらを選ぶべき?
まず、所得の種類と青色申告承認申請書の提出状況を確認します。青色申告を選べるのは、事業所得・不動産所得・山林所得があり、期限までに申請書を提出した人です。
要件を満たしている場合は、利用したい制度と記帳にかかる負担を比較して判断します。青色申告でも、10万円控除であれば簡易な記帳が認められているため、「記帳の負担を抑えたい場合は必ず白色申告」とは限りません。
まずは所得の種類を確認する
青色申告を選べるのは、不動産所得・事業所得・山林所得のある人に限られます。これら以外の所得には、青色申告の制度を適用できません。
会社員の副業による所得は、活動の規模や継続性、帳簿書類の保存状況などを踏まえ、事業所得または雑所得に区分されます。事業所得に該当し、期限までに青色申告承認申請書を提出して承認を受けた場合は、青色申告が可能です。
青色申告が向いている人
青色申告が向いている人としては、以下のような人が挙げられます。
青色申告が向いている人
- 青色申告特別控除を利用して所得金額を抑えたい人
- 家族への給与を全額必要経費にしたい人
- 純損失を翌年以後に繰り越したい人
- 少額減価償却資産の特例を利用する予定がある人
青色申告では、青色申告特別控除、青色事業専従者給与、赤字の繰り越し、少額減価償却資産の特例などを利用できます。こうした白色申告にはない節税の仕組みがあることが、青色申告を選ぶ大きな理由です。白色申告と比較すると、節税のためにできることの幅が広がります。
白色申告が向いている人
白色申告が向いている人としては、以下のような人が挙げられます。
白色申告が向いている人
- 青色申告の対象とならない所得を申告する人
- 青色申告承認申請書を期限までに提出していない人
- 青色申告を取りやめる手続きをした人
所得税や住民税が発生しない場合は、青色申告特別控除による税額軽減につながらないことがあります。ただし、青色申告には純損失の繰越しなど、特別控除以外の制度もあるため、所得金額だけで判断しないことが重要です。
また、青色申告承認申請書の提出期限(原則その年の3月15日)に間に合わなかった年分は白色申告となり、翌年分から青色申告に切り替えられます。
出典:国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」
青色申告・白色申告を変更するには?
白色申告から青色申告に変えるときは、「所得税の青色申告承認申請書」を納税地の税務署に提出します。提出期限は、青色申告を始めたい年の3月15日です。その年の1月16日以後に開業した場合は、開業日から2ヶ月以内に提出します。
一方、青色申告をやめて白色申告に戻すときは、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の提出が必要です。こちらの期限は、青色申告を取りやめようとする年分の所得税の確定申告期限までです。
青色申告の承認は、取りやめや承認の取消しがない限り翌年以後も継続するため、毎年申請する必要はありません。なお、相続によって事業を承継した場合は、被相続人の申告状況や死亡日に応じて申請期限が異なります。
出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
出典:国税庁「A1-9 所得税の青色申告の取りやめ手続」
まとめ
青色申告を選べるのは、事業所得・不動産所得・山林所得があり、期限までに青色申告承認申請書を提出した人です。一定の要件を満たすと、青色申告特別控除や青色事業専従者給与、純損失の繰越しなどを利用できます。
青色申告でも、10万円控除であれば簡易な記帳が認められています。一方、65万円または55万円の控除を受けるには、2026年分までは正規の簿記の原則に基づく記帳などが必要です。
所得の種類や利用したい制度、記帳にかかる負担を確認して申告方法を選びましょう。
参考文献
▶︎出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
▶︎出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」
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