創業融資の基礎知識

女性、若者/シニア起業家支援資金とは? 公庫出身の専門家が対象や返済期間、留意点について解説

女性、若者/シニア起業家支援資金とは? 公庫出身の専門家が対象や返済期間、留意点について解説

日本政策金融公庫(以降「公庫」とします)が実施する創業融資や各融資に伴う特例制度には、政府が行う政策に基づき複数の種類があります。

創業前もしくは創業まもない企業への融資支援であることは共通していますが、創業者の年齢や業種、その他諸々の条件によって、それぞれ異なる融資・特例が適用されることになります。

この記事では、それらの融資・特例制度のなかでも一風変わった、創業者の年齢や性別などの属性を利用条件とする「女性、若者/シニア起業家支援資金」について解説します。

目次

女性、若者/シニア起業家支援資金とは? 概要と特徴

女性、若者/シニア起業家支援資金とは、新たに事業を始めるか始めてからおおむね7年以内の女性(年齢制限なし)もしくは35歳未満か55歳以上の男性を対象として公庫が行う創業関連融資のひとつです。

「女性、若者/シニア起業家支援資金」制度の対象となる人

この制度は、別途解説した新規開業資金(*1)と同様、日本政策金融公庫の「国民生活事業」と「中小企業事業」双方で取り扱われている制度です。

「国民生活事業」は個人事業者や比較的小規模企業を対象とする小口資金融資が主要業務で、融資額はおおむね数百万円~数千万円です。個人創業者やベンチャー企業、スタートアップ段階の企業はほぼ国民生活事業の対象となるでしょう。

一方、「中小企業事業」は中小・中堅企業を対象とする長期事業資金融資が主な業務で、融資額は数千万円~数億円となっています。新規事業を始めたり、企業の立て直しに取り組んだりする中堅企業を対象としており、一般の創業者が当てはまることは少ないでしょう。

以降は、一般的な創業者の創業資金を対象としている「国民生活事業」での女性、若者/シニア起業家支援資金について解説します。

女性、若者/シニア起業家支援資金の対象となるためには、公庫が取り扱う全融資制度共通の条件と、女性、若者/シニア起業家支援資金特有の条件両方を満たす必要があります。

【関連記事】
*1:新規開業資金とは? 公庫出身の専門家が対象や返済期間、留意点について解説


1. 全融資制度共通の条件

公庫の融資制度は、ほとんどの業種の個人事業者・中小企業であれば利用が可能ですが、以下の業種は利用できません。

  • 金融業
  • 投機的事業
  • 一部の遊興娯楽業等

参照: 一般貸付 - 日本政策金融公庫

2. 女性、若者/シニア起業家支援資金制度特有の条件

以下の要件いずれかに該当する必要があります。

  • 女性であること、もしくは男性であって35歳未満か55歳以上であること
  • 新たに事業を開始する場合、もしくは事業を開始して概ね7年以内であること

3. 条件のポイント

女性、若者/シニア起業家支援資金利用の条件は、要約すると

  • 金融業、投機的事業、一部の遊興娯楽業等でないこと
  • 35歳から54歳の男性でないこと
  • これから創業するか、創業して7年以内であること

であればいいことになります。

ほかの創業関連融資や融資特例制度と比べると、格段に条件がシンプルです。実質、「創業者であって35歳から54歳の男性でないこと」ということと同じと言えるでしょう。

これは、創業融資審査の申請者に35歳から54歳の男性が多い反面、女性や若者、第2創業といわれるシニアの創業者があまり見られず、その層の創業を支援していこうとの政策に従ったものです。

ただし、ほかの創業関連融資と同様、事業計画が正しく策定されており、かつ遂行できると公庫に認められることが融資を受けるにあたって必要となります。融資担当者との面談やその準備にに不安があれば、専門家の手を借りることも検討してみましょう。

創業融資を受ける上で必須である事業計画・創業計画書の書き方については、以下の関連記事をご参照ください。公庫の融資審査における担当者の判断基準やポイントについて詳細に解説しています。

【関連記事】
創業計画書の書き方は? 項目別の詳細解説と記入例

融資金額と返済期間、返済方法と利率

女性、若者/シニア起業家支援資金の融資金額や返済に関する規定には、新規開業資金と共通する点も数多くあります。そのため、新規開業資金に関する解説記事を読んだ方には繰り返しとなる内容もありますが、異なる点も含めて改めて解説します。

融資金額

新規開業資金と同じく融資限度額は7200万円で、うち4800万円が運転資金の限度額です。実際の融資実行は、無担保で300万円から700万円、特別なノウハウがある場合や資産状況が良好なケースではまれに1000万円~1500万円程度の実行されることが多い点も新規開業資金と共通しています。

女性、若者/シニア起業家支援資金だから融資金額が特別に上乗せされるといったことはありません。

返済期間

返済期間は設備資金で20年以内、運転資金で7年以内です。

希望により短縮できることや、設備の償却期間に対応させた期間を指定されること、融資実行後の当初利息のみの支払(据置期間といいます)が設備資金、運転資金とも制度上最長2年設定できることも含めて新規開業資金と同じです。

利率

利率は基本的に[特別利率A](土地取得資金は基準利率、担保提供の有無や融資期間により変動)となりますが、以下の要件に該当するときは[特別利率B]、[特別利率C]となります。

特別利率は基準金利や政策金利をもとに随時改定されますので、その都度公庫のホームページで確認するといいでしょう。

  1. 技術・ノウハウ等に新規性がみられる場合(注1)[特別利率B](土地取得資金は基準利率)
  2. 地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める場合[特別利率B](土地取得資金は基準利率)
  3. 地方創生推進交付金を活用した起業支援金及び移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める場合[特別利率C](土地取得資金は基準利率)

引用: 女性、若者/シニア起業家支援資金- 利率|日本政策金融公庫

要約すると、新規開業資金と同じく、政府が行う「地方創生推進交付金」を活用した支援金の利用者には[特別利率B]、[特別利率C]が適用されます。

一方、新規開業資金と違い、上記のような特別な条件を満たさなくても基準利率より0.4%マイナスである[特別利率A]が適用されます。この制度の最大のメリットと言えるでしょう。

利率の注意点

公庫の利率適用は複雑な仕組みとなっていますが、自分ですべてを理解しなくても、審査担当者が申込人に該当する最も低い利率を提示してくれるはずです。公的機関として政策目的に沿った融資には特別利率を適用することは使命のひとつであり、高度な注意義務を課せられているからです。

しかし、公庫における利率は固定金利が原則であるため、誤った利率が最後まで適用されると金額的に大きな損失となることもあります。適用される利率とその根拠程度は審査担当者に確認するようにしましょう。

資金使途・具体例

新規に事業を開始するためや事業開始後に必要となった設備資金および運転資金が資金の使途として認められています。こちらも新規開業資金と同一です。

  • 事業開始前でも、直近で支出が客観的に確認できる場合(領収書や振り込み通知等客観的資料で確認できる場合)は融資対象となる可能性があります
  • 事業とは無関係な使途、会社設立のための資本金や増資としての使途、他からの借り入れを返済する使途は対象になりません

具体例

新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする以下の資金

担保や保証

第三者の連帯保証や担保は原則求められない傾向となっていますが、融資金額が大きければ(ひとつの目安として1500万円超)、後継者の連帯保証や不動産担保が必要となるでしょう。

いわゆる「新創業融資」の対象になるケース

女性、若者/シニア起業家支援資金は、一定の条件に該当すれば利率を上乗せすることで無担保・無保証人となる「新創業融資」制度が利用できます。

一定の条件には

  • 税務申告を2期終えていない
  • 雇用を創出する、創業資金の10分の1以上自己資金が確認できる(例外あり)

などがあります。

新創業融資制度の特徴は何といっても無担保無保証で融資が受けられること。法人の場合、代表者の連帯保証も必要ありません。制度融資では代表者の連帯保証が原則必要であることに比べると、特に大きなメリットといえます。

いわゆる「資本性ローン」の対象になるケース

女性、若者/シニア起業家支援資金は、一定の条件に該当すれば金融検査上借入金としてではなく自己資本とみなせる「資本性ローン」制度が利用できます。

一定の条件には

  • 技術・ノウハウ等に新規性がみられる
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けている
  • 事業に新規性及び成長性がみられる

などがあります。

【関連記事】
「資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)」とは? 公庫出身の専門家が対象や返済期間、留意点について徹底解説

いわゆる「新創業融資」も「資本性ローン」も対象になるケース

「新創業融資」と「資本性ローン」両方とも利用できる場合、どちらかの制度ひとつを選択して利用します。理由は制度の目的や返済条件が大きく異なるためです。

制度目的の違いをわかりやすく言うと、新創業融資の目的は無担保無保証の実現にある一方で、資本性ローンは自己資本とみなせる資金調達による財務体質の強化が目的です。

返済条件の違いで解説すると、新創業融資は分割返済、資本性ローンは一括返済が大前提です。

この違いを理解して、自社にとって有利な選択肢はどちらかを選ぶ必要があります。

融資審査における女性、若者/シニア起業家支援資金

先に触れたように、この制度は創業実績の少なかった「女性、もしくは男性であって35歳未満か55歳以上」の層を支援する政策に基づいた制度です。したがってこの制度の融資は、筆者が知る限りでも公庫の重点取組事項のひとつとなっていました。

融資審査を甘くするわけではありませんが、「できれば融資したい」との思いは支店全体でも共有していました。不安なことがあっても、事前相談段階や申し込み、審査時に遠慮なく尋ねれば、しっかりサポートしてくれるはずです。

震災の影響を受けた場合

東日本大震災、平成28年熊本地震の影響を受け離職した人が該当地域で創業する場合、利率が特に低減された女性、若者/シニア起業家支援資金が利用できます。該当すると思われる方は以下の公庫のホームページを参考にしてください。

女性、若者/シニア起業家支援資金(東日本大震災関連)
女性、若者/シニア起業家支援資金(平成28年熊本地震関連)

東京都の「女性・若者・シニア創業サポート事業」

東京都が補助金を支給し、地域創業アドバイザーと民間金融機関(都内の信用金庫、信用組合)が連携し、信用保証協会の信用保証を条件として民間金融機関が融資を行う「女性・若者・シニア創業サポート事業」というものがあります。

公庫が行う女性、若者/シニア起業家支援資金によく似ていますが、違いもあります。

公庫との違いを簡単にまとめておきます。

制度名女性・若者・シニア創業サポート事業女性、若者/シニア起業家支援資金
融資実行者民間金融機関(信用保証協会の信用保証が条件)日本政策金融公庫
対象者
  • 女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)
  • 都内における創業の計画がある方又は創業後5年未満の方(NPO等も含む)
  • 地域の需要や雇用を支える事業
  • 女性または35歳未満か55歳以上の方
  • 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
融資条件(限度額)
1,500万円以内(運転資金のみは750万円以内)
(返済期間・据置期間)
返済期間10年以内、据置期間3年以内
(連帯保証人)
法人は代表者個人または不要、個人事業主は不要
(限度額)
7,200万円以内(うち運転資金4,800万円以内)
(返済期間・据置期間)
返済期間20年以内、据置期間2年以内
(連帯保証人)
新創業融資制度適用により無担保無保証
利率固定金利1%以内  
(別途信用保証料が必要)  
固定金利1.26%〜2.05%  
(令和元年11月1日現在)
特徴地域創業アドバイザーが融資前に事業計画アドバイス(原則3回まで無料)、融資後に最大5年間経営サポートを行う(年3回まで無料)創業ホットラインや各地ビジネスサポートプラザで相談が可能、全国152支店の創業サポートデスクでも相談が可能

まとめ

女性、若者/シニア起業家支援資金は、新規開業資金と同じくこれから創業する者、創業後7年以内の者を対象とする融資制度ですが、対象は女性もしくは35歳から54歳以外の男性に限定されます。このような申込人の属性が取扱の条件となっている制度は、公的機関である公庫においてはユニークであると言えるでしょう。

属性条件に当てはまるだけで低い利率が適用されますので、ほかの創業系融資より低利率で融資を受ける可能性が高いと言えます。また新規開業資金と同様、要件を満たせば時代のニーズに合わせた「新創業融資」や「資本性ローン」といった特例制度利用が可能です。属性に該当すれば、創業時の不足資金調達方法としておすすめの制度です。

行政書士 杉町徹 プロフィール画像

執筆 : 杉町 徹 行政書士

杉町行政書士総合経営事務所 所長
経歴:神戸大学法学部卒業後、国民金融公庫(現在の日本政策金融公庫)入庫。
公庫勤務中は融資審査、返済案内、債権管理など幅広く担当。
22年勤務の後に退職、税理士事務所勤務を経て2017年より公的融資支援を主業務とする現職に従事。
(freee認定アドバイザー、freee認定会計スペシャリスト、freee認定経理コンサルタント)

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