青色申告で55万円控除を受けるための条件とは?手順や必要書類をわかりやすく解説
目次
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青色申告特別控除には、2026年分までの現行制度において、65万円・55万円・10万円の3種類があり、所得税の計算上、一定額を所得金額から差し引けます。
55万円控除は65万円控除とは異なり、2026年分までは書面での確定申告が可能です。ただし、複式簿記での記帳などいくつかの要件を満たすことが必要です。また、確定申告の際には、確定申告書のほかに損益計算書・貸借対照表を含む青色申告決算書の提出が求められます。
本記事では、青色申告で55万円控除を受けるための条件や具体的な手順・必要書類を解説します。
青色申告特別控除とは?
青色申告特別控除とは、青色申告により所得税の確定申告を行う際、一定額を所得金額から差し引ける制度です。確定申告には白色申告と青色申告があり、一定の要件を満たして青色申告を行う場合は、さまざまな特典を受けられます。青色申告特別控除も、その特典のひとつです。
2026年分までの現行制度では、青色申告特別控除には65万円・55万円・10万円の3種類があります。所得税の計算で青色申告特別控除の適用を受けることで、税負担を軽減できる点がメリットです。
3種類の控除額のうち、どの金額が適用されるかは、満たしている要件によって決まります。
青色申告ができる個人事業主とは
青色申告ができるのは、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかがある人です。
青色申告をするためには、青色申告を適用したい年の3月15日までに、所轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。ただし、その年の1月16日以後に事業を開始した場合は、事業開始日から2ヶ月以内に提出すれば、その年分から青色申告できます。
青色申告承認申請書の書き方や提出方法は別記事「青色申告承認申請書はいつまでに提出すべき?提出方法や期限について詳しく解説」で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
青色申告特別控除で55万円の控除を受けるための条件
青色申告者のうち、一定の要件を満たす人は55万円控除の対象となり、さらに追加要件を満たす場合は65万円控除を適用できます。一方、65万円控除・55万円控除の要件を満たさない人は、10万円控除が適用されます。
55万円控除を受けるための要件は以下のとおりです。
青色申告特別控除 55万円控除の要件
- ①事業所得または事業的規模の不動産所得があること
- ②単式簿記ではなく複式簿記で記帳していること
- ③現金主義ではなく発生主義で記帳していること
- ④申告時に貸借対照表と損益計算書を添付すること
- ⑤確定申告の法定期限を守ること
①事業所得または事業的規模の不動産所得があること
青色申告で確定申告ができるのは、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかの所得がある人です。このうち55万円控除を適用できるのは、事業所得または事業的規模の不動産所得がある人です。
青色申告者であっても、山林所得のみの場合は55万円控除を受けられません。事業所得や不動産所得がなく、山林所得のみの場合、青色申告特別控除額は10万円です。
また、不動産所得がある青色申告者であっても、その不動産所得が事業的規模でない場合は、55万円控除の対象になりません。事業的規模かどうかは、社会通念上の事業といえる程度の規模かどうかによって実質的に判断されます。
建物の貸付けを行っているケースでは、判断基準は以下のとおりです。
不動産所得が事業的規模として認められる基準
- 貸間、アパートなどについては、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること
- 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること
出典:国税庁「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」
青色申告特別控除以外にも、不動産所得が事業的規模に該当するかによって税制上の取り扱いが変わります。詳しくは別記事「不動産所得の事業的規模を活用して節税する方法を解説!」をご覧ください。
②単式簿記ではなく複式簿記で記帳していること
帳簿の付け方には、主に単式簿記と複式簿記があります。55万円控除を受けるには正規の簿記の原則、一般的には複式簿記により記帳する必要があります。単式簿記で記帳している場合は、55万円控除の適用を受けられません。
単式簿記とは、取引の内容をひとつの科目のみで記録する方法で、記帳の仕方がシンプルである点が特徴です。たとえば、業務で交通費1,500円を支払ったケースでは、以下のように記帳します。
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| 日付 | 勘定科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|
| 2026年〇月〇日 | 旅費交通費 | 1,500円 | 電車賃 |
複式簿記とは、ひとつの取引を借方と貸方の二面から捉え、複数の勘定科目を用いて仕訳する記帳方法です。単式簿記に比べ、取引の内容や資産・負債の動きを把握しやすくなります。上記の取引を複式簿記で記帳すると、以下のとおりです。
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| 日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|---|
| 2026年〇月〇日 | 旅費交通費1,500円 | 現金1,500円 | 電車賃 |
55万円控除を受けるためには、複式簿記による記帳が必要です。そのため、単式簿記よりも記帳に手間がかかります。ただし、複式簿記による記帳も過度に複雑なものではなく、会計ソフトを利用すれば比較的容易に作成できます。
単式簿記と複式簿記の違いについて、詳しくは別記事「複式簿記とは?単式簿記との違いや書き方、メリット・デメリットまで」をご覧ください。
③現金主義ではなく発生主義で記帳していること
会計処理の代表的な考え方に「発生主義」と「現金主義」があります。このうち、55万円の青色申告特別控除を受けられるのは、発生主義で記帳している場合です。現金主義で記帳していると55万円控除を適用できません。
発生主義とは「取引が発生した時点で記帳を行う方法」、現金主義とは「現金の入出金があった時点で記帳を行う方法」です。
55万円控除を受ける場合、会計処理は原則として発生主義で行う必要があります。
④申告時に貸借対照表と損益計算書を添付すること
55万円控除を受けるためには、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付し、青色申告特別控除額を記載して、申告期限までに提出する必要があります。
損益計算書には売上や売上原価、経費などを記入します。貸借対照表には現金・売掛金・買掛金などの項目ごとに、資産や負債などの状況を記入します。
10万円控除の場合は、損益計算書を作成すればよく、貸借対照表の作成や提出は不要です。55万円控除を受けるためには貸借対照表の作成が必要となるため、申告準備の負担は増えます。申告書類の作成にかかる手間を抑えたい場合は、会計ソフトを活用しましょう。
⑤確定申告の法定期限を守ること
55万円控除を受けるためには、原則として申告期限である翌年3月15日までに確定申告書を提出する必要があります。期限後に確定申告をした場合、55万円控除は適用されず、最高10万円控除の対象となります。
所得税の確定申告期間は、原則として2月16日から3月15日までの1ヶ月間です。ただし、この期間の開始日または最終日が土日祝日にあたる年は、その翌営業日が確定申告期間の開始日や最終日になります。
2026年分の所得税の確定申告期間は、2027年2月16日(火)から2027年3月15日(月)までです。55万円控除を受けるには、期限である2027年3月15日(月)までに申告書を提出する必要があります。
青色申告の65万円控除と55万円控除の違い
青色申告特別控除(65万円・55万円・10万円)のうち、現行制度でもっとも控除額が大きい65万円控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
青色申告特別控除 65万円控除の要件
- 55万円の青色申告特別控除の要件に該当していること
- 上記に加えて、次のいずれかの要件を満たしていること
- その年分の事業にかかる仕訳帳および総勘定元帳について、優良な電子帳簿保存を行っていること
- その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Taxを使用して行うこと
優良な電子帳簿保存を行っていない場合、65万円控除の適用を受けるには、確定申告書をe-Tax(電子申告)で提出する必要があります。確定申告書を税務署の窓口に持参または郵送で提出する人は、65万円控除を適用できません。
なお、e-Taxを初めて利用する人は、利用開始のための手続きが必要です。e-Taxを利用すれば、申告書の作成から提出までをオンラインで行えます。
青色申告の10万円控除と55万円控除の違い
青色申告者のうち、発生主義や複式簿記による記帳、期限内申告など、55万円控除の要件を満たさない人は、10万円控除の対象となります。
なお、55万円控除や65万円控除の要件を満たしている場合でも、不動産所得または事業所得の合計が55万円や65万円の控除額より少ないときは、その所得金額が控除限度額です。
この合計額は、損益通算前の黒字の所得金額で判定します。そのため、事業所得に黒字があり不動産所得に赤字がある場合でも、赤字を差し引く前の黒字の所得金額をもとに控除限度額を計算します。
たとえば、青色申告特別控除前の事業所得が40万円で、55万円控除の要件を満たしている場合、控除額は55万円ではなく40万円です。
所得金額が控除額以上かどうかは、これらの控除の適用要件ではありません。そのため、所得金額が55万円未満または65万円未満でも控除の対象外になるわけではなく、所得金額を上限として控除が適用されます。
2027年分以降に適用される青色申告特別控除の見直し
2026年度税制改正により、2027年分以後の所得税から、青色申告特別控除の控除額や要件が一部見直されます。主な見直し内容は、以下のとおりです。
2027年分以降に適用される青色申告特別控除の主な見直し内容
- 最大控除額が65万円から75万円に引き上げられる
- 書面申告で55万円控除を受けられる区分の廃止
- 前々年分の事業所得または事業的規模の不動産所得にかかる収入金額が1,000万円を超える場合、簡易簿記による10万円控除の対象外となる
青色申告特別控除の最大控除額は75万円に引き上げられます。75万円控除は、改正後の65万円控除の要件を満たしたうえで、仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存法に定める一定の要件を満たして電子データによる保存などを行う場合に適用されます。
現行制度では、複式簿記による記帳や期限内申告などの要件を満たしていれば、書面で申告する場合でも55万円控除を受けることが可能です。また、これらの要件に加えて、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存を行う場合は65万円控除を適用できます。
改正後は、現行の55万円控除に相当する区分にe-Taxによる電子申告が要件として加わります。そのうえで、控除額は65万円に引き上げられるため、書面申告で55万円控除を受ける区分はなくなります。
そのほか、前々年分の事業所得または事業的規模の不動産所得にかかる収入金額が1,000万円を超えると、簡易簿記による10万円控除は適用できません。
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」
出典:財務省「所得税法等の一部を改正する法律案」
55万円控除を受けるためのやり方
2026年分までの現行制度において、青色申告で55万円控除を受けるための流れは、次のとおりです。
青色申告で55万円控除を受けるための流れ
- ①青色申告承認申請書を提出する
- ②複式簿記で記帳を行う
- ③必要書類を添付し、期限内に確定申告を行う
青色申告をする場合は、青色申告をしようとする年の3月15日までに、所轄税務署へ青色申告承認申請書を提出します。ただし、その年の1月16日以後に事業を開始した場合は、開業日から2ヶ月以内に提出すれば、その年分から青色申告が可能です。
現行制度では、55万円控除は書面またはe-Tax(電子申告)による確定申告で適用を受けることができます。書面での申告方法は、所轄税務署に持参する方法と、郵送で送付する方法の2つです。
税務署に持参する場合は、平日8時30分〜17時の開庁時間内に窓口に持ち込むか、時間外収受箱へ投函します。郵送する場合は信書扱いになるため、「郵便物(第一種郵便物)」または「信書便物」で送付します。
出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
出典:国税庁「申告書の税務署への送付」
55万円控除の適用に必要な提出書類
55万円の青色申告特別控除の適用を受けるための主な提出書類は、次のとおりです。
55万円控除を受ける場合、確定申告書のほかに損益計算書と貸借対照表を含む青色申告決算書の提出が必要です。
また、各種控除を受ける際は、控除の種類に応じて、証明書類や明細書の添付・保存などが必要となる場合があります。たとえば、医療費控除を受けるためには、医療費控除の明細書の添付が必要です。
55万円控除による節税効果の計算例
青色申告特別控除によって、どの程度税負担が変わるのかを計算例で確認しましょう。
所得税額は、基本的に「課税所得金額(所得金額から所得控除を差し引いた金額)」に下表の税率をかけ、控除額を差し引いて算出します。課税所得金額が小さいほど、適用される所得税率は低くなる仕組みです。
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| 課税対象の所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
事業所得は通常、「総収入金額 - 必要経費」で計算されますが、青色申告特別控除を適用する場合は「総収入金額 - 必要経費 - 青色申告特別控除額」で計算されます。控除額の分だけ所得金額が減少するため、所得税の負担を軽減できる仕組みです。
仮に、事業の売上(総収入金額)が500万円、必要経費が150万円、医療費控除などの所得控除の合計額が80万円、青色申告特別控除が55万円の場合、所得税額は以下のように計算できます。
■白色申告の場合
- 課税される所得金額:5,000,000円 - 1,500,000円 - 800,000円 = 2,700,000円
- 所得税額:2,700,000円 × 10% - 97,500円 = 172,500円
■55万円の青色申告特別控除を適用する場合
課税される所得金額:5,000,000円 - 1,500,000円 - 800,000円 - 550,000円 = 2,150,000円
所得税額:2,150,000円 × 10% - 97,500円 = 117,500円
所得税のみで比較すると、納める税額の差額は55,000円です。なお、実際には復興特別所得税も加算されるため、最終的な納付額ベースの差額は上記とは異なります。
さらに、住民税や国民健康保険料も所得に応じて算定されるため、青色申告特別控除によって負担が軽減される場合があります。
まとめ
青色申告特別控除には65万円・55万円・10万円の3種類があり、それぞれ適用要件が異なります。
55万円控除の適用を受けるには、複式簿記による記帳や発生主義、期限内申告などの要件を満たす必要があります。さらに、これらの要件を満たしたうえで、優良な電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行うと、65万円控除を受けることができます。
確定申告の期限を過ぎると、55万円の青色申告特別控除は適用されません。青色申告のメリットや節税効果を活かすためにも、確定申告の準備は早めに始めて、期限までに確実に手続きを終えましょう。
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-
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青色申告特別控除には65万円・55万円・10万円の3種類あり、それぞれ適用要件が異なります。
青色申告特別控除について詳しくは「青色申告特別控除とは?」をご覧ください。
-
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監修

北田 悠策
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。