青色申告の5つのメリットとは?個人事業主が注意すべきデメリットも解説
目次
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青色申告には、青色申告特別控除をはじめ、白色申告にはない税制上のメリットがあります。
赤字の繰越し控除・繰戻し還付や青色事業専従者給与の必要経費計上、少額減価償却資産の特例などを利用できる場合があり、税負担を抑えられる可能性があります。
55万円控除・65万円控除を受ける場合は複式簿記での記帳が必要になるほか、確定申告時の書類作成の手間は増えるものの、要件を満たせば税制上のメリットが得られるため、活用を検討しましょう。
本記事では、青色申告の主なメリット・デメリットについて、詳しく解説します。
青色申告のやり方やメリット・デメリットについて知りたい方はこちらの記事からチェック!
▶︎青色申告とは?個人事業主で向いている人や確定申告のやり方をわかりやすく解説
青色申告の5つのメリット
青色申告では、以下のようなメリットが受けられます。
青色申告のメリット
- 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
- 純損失の繰越し控除と繰戻し還付ができる
- 青色事業専従者給与を必要経費にできる
- 貸倒引当金を計上できる
- 少額減価償却資産の特例を使える
メリット①最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
青色申告では、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。特別控除が所得から差し引かれることで、課税される所得金額が少なくなり、所得税の負担が軽減されます。
控除額は10万円・55万円・65万円の3種類があり、満たす要件によって控除額が異なる仕組みです。
55万円控除を受けるためには、以下の要件を満たすことが必要です。また、65万円控除は、55万円控除の要件を満たしたうえで、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存を行うと適用されます。
55万円控除を受けるための要件
- 事業所得または事業的規模の不動産所得があること
- 複式簿記で記帳していること
- 確定申告時に青色申告決算書(損益計算書と貸借対照表)を添付すること
- 決められた期日内に青色申告で確定申告を行うこと
- 現金主義による所得計算の特例の適用を受けていないこと
一方、10万円控除は、青色申告者のうち、55万円控除・65万円控除の要件を満たさない場合に適用されます。具体的には、以下が10万円控除の要件です。
10万円控除を受けるための要件
- 青色申告で確定申告を行うこと
- 簡易な帳簿で記帳していること
- 青色申告決算書(損益計算書)と確定申告書を提出すること
10万円控除と55万円・65万円控除の大きな違いは、記帳方法が簡易な方法か、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)による方法かという点です。
簡易簿記は、収入や支出などを中心に、取引を比較的簡易な方法で記録する記帳方法です。一方、複式簿記では「消耗品を10,000円分購入し、現金が10,000円減った」のように、取引の二面性に着目して借方・貸方に分けて記帳し、最終的に損益計算書と貸借対照表を作成します。
また、55万円控除・65万円控除では、確定申告期限までに申告することも要件です。提出期限である3月15日(期限が土日祝日にあたる場合は翌開庁日)を過ぎて申告した場合、55万円控除・65万円控除は受けられず、10万円控除の対象となります。
2027年分以降に適用される青色申告特別控除の見直し
2026年度税制改正により、2027年分以後の所得税から、青色申告特別控除の控除額や要件が一部見直されます。主な見直し内容は、以下のとおりです。
青色申告特別控除の主な見直し内容
- 最大控除額が65万円から75万円に引き上げられる
- 書面申告で55万円控除を受けられる区分の廃止
- 前々年分の事業所得または事業的規模の不動産所得にかかる収入金額が1,000万円を超える場合、簡易簿記による10万円控除の対象外となる
青色申告特別控除の最大控除額は75万円に引き上げられます。75万円控除は、改正後の65万円控除の要件を満たしたうえで、仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存法に定める一定の要件を満たして電子データによる保存などを行う場合に適用されます。
現行制度では、複式簿記による記帳や期限内申告などの要件を満たしていれば、書面で申告する場合でも55万円控除を受けることが可能です。また、これらの要件に加えて、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存を行う場合は65万円控除を適用できます。
改正後は、現行の55万円控除に相当する区分にe-Taxによる電子申告が要件として加わります。そのうえで、控除額は65万円に引き上げられるため、書面申告で55万円控除を受ける区分はなくなります。
そのほか、前々年分の事業所得または事業的規模の不動産所得にかかる収入金額が1,000万円を超えると、簡易簿記による10万円控除は適用できません。
メリット②純損失の繰越し控除と繰戻し還付ができる
青色申告をしている個人事業主は、その年に生じた純損失(赤字)を翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年の所得から差し引くことが可能です。
白色申告では、原則としてその年の赤字を翌年以降の所得から差し引くことはできないため、翌年に黒字が出れば税金が発生する可能性があります。一方、青色申告であれば、翌年以降の黒字からその年の赤字を差し引くことができるため、税負担の軽減が可能です。これを純損失の繰越し控除といいます。
たとえば、1年目に300万円の赤字が生じ、2~4年目にそれぞれ100万円の黒字が出た場合、1年目の所得は-300万円、2年目は-300万円+100万円で-200万円、3年目は-200万円+100万円で-100万円、4年目は-100万円+100万円で0円となります。
この場合、ほかの所得などがなければ、2~4年目の事業所得に対する所得税の負担を抑えることが可能です。
さらに、青色申告では一定の要件を満たせば、その年に生じた赤字を前年分の所得に繰り戻して税金の還付を受ける「純損失の繰戻し還付」を利用できます。
独立直後などで黒字を出すことが難しい場合も、青色申告を行っていれば、翌年以降に事業が軌道にのって黒字が出てきたときに、繰越し控除により当初の赤字を差し引けます。
メリット③青色事業専従者給与を必要経費にできる
事前に届出が必要ですが、事業主が生計を一にする家族に支払った給与を必要経費に算入できるのも、青色申告のメリットです。これを「青色事業専従者給与」といいます。届出書は、原則として給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日までに提出する必要があります。
青色事業専従者給与は、届出書に記載した金額の範囲内で、仕事内容や従事状況に照らして相当と認められる金額を必要経費に算入することが可能です。
家族を青色事業専従者とするには、以下の条件を満たしている必要があります。
青色申告の「青色事業専従者給与」を適用できる条件
- 生計を一にする配偶者やその他の親族であること
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
- その年を通じて6ヶ月を超える期間(一定の場合には、事業に従事できる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること
なお、白色申告では家族への給与を必要経費に算入できませんが、「事業専従者控除」として以下のいずれか低い金額を差し引くことが可能です。
白色申告の「事業専従者控除」で差し引ける金額(以下のうち金額の低いほうどちらか)
- 事業専従者が配偶者の場合は86万円、配偶者以外の親族の場合は1人につき50万円
- 事業専従者控除前の事業所得等の金額 ÷(専従者の数 + 1)
メリット④貸倒引当金を計上できる
青色申告では、一定の要件を満たす貸倒引当金を必要経費に算入でき、税負担の軽減が可能です。貸倒引当金とは、掛け売り(商品やサービスを先に提供し、後日代金を回収すること)の代金などが将来回収できなくなる可能性に備えて、あらかじめ一定額を見積計上するものです。
青色申告では、貸倒引当金が年末時点での貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下(金融業は3.3%以下)の金額であれば、その金額が必要経費として認められます。
白色申告の場合は、取引先の支払能力などから回収不能が見込まれる債権について、個別評価による貸倒引当金に限り必要経費に算入できます。
メリット⑤少額減価償却資産の特例を使える
業務のために購入した備品や工具などの資産は、取得価額が10万円未満であれば、その年の必要経費として計上します。一方、取得価額が10万円以上の資産は、減価償却資産として、法定耐用年数に応じて数年に分けて必要経費に計上するのが原則です。
ただし、青色申告者のうち一定の要件を満たす場合は、少額減価償却資産の特例により、取得価額が一定額未満の減価償却資産を取得した年に一括して必要経費に算入することが可能です。
2026年度税制改正により、少額減価償却資産の特例は、対象となる取得価額が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限も延長されています。
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| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 取得時期 | 2026年3月31日までに取得 | 2026年4月1日から2029年3月31日までに取得 |
| 取得価額 | 30万円未満 | 40万円未満 |
利益の多く出た年に対象資産を取得し、特例の要件を満たす場合は、その年の必要経費に算入できるため、税負担を軽減することが可能です。この特例により必要経費に算入できる金額は、その年に取得した対象資産の取得価額の合計で300万円までです。
青色申告のデメリット
さまざまな優遇措置のある青色申告ですが、以下のようなデメリットや注意点もあります。
青色申告のデメリット
- 事前に青色申告承認申請書の提出が必要
- 55万円控除・65万円控除では複式簿記の記帳が必要
- 65万円の控除を受けるにはe-Taxでの電子申告か優良な電子帳簿保存が必要
デメリット①事前に青色申告承認申請書の提出が必要
青色申告をする場合は、原則として、青色申告をしようとする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。その年の1月16日以後に事業を開始した場合は、開業日から2ヶ月以内に提出すれば、その年から青色申告を利用できます。
提出方法は、税務署の窓口への持参や郵送のほか、e-Taxによるオンライン提出も可能です。期限までに提出していない場合、その年は白色申告で確定申告を行うことになります。
デメリット②55万円控除・65万円控除では複式簿記の記帳が必要
55万円控除・65万円控除では、正規の簿記の原則(一般には複式簿記)による記帳が必要で、白色申告や10万円控除と比べると手間がかかります。ただし、複式簿記による記帳は、経営状態の把握にもつながるため、必ずしもデメリットとはいえません。
また、青色申告では、確定申告時に青色申告決算書の提出が必要です。55万円控除・65万円控除を受ける場合は、損益計算書に加えて貸借対照表の作成・提出も求められます。
白色申告で作成する収支内訳書と比較すると、確定申告時の作成項目が多くなるため、負担が増えるというデメリットがあります。
デメリット③65万円の控除を受けるにはe-Taxでの電子申告か優良な電子帳簿保存が必要
65万円控除を受けるには、55万円控除の要件を満たしたうえで、e-Taxによる電子申告または一定の要件を満たす優良な電子帳簿保存が必要です。
電子帳簿保存とは、税法上保存が必要な帳簿や書類について、保存要件(必要に応じて税務職員によるダウンロードの求めに応じられることなど)を満たしたうえで、電子データのまま保存する制度です。
優良な電子帳簿には、電子帳簿保存の要件に加えて、訂正・削除・追加の履歴が残ることや、取引年月日・取引金額・取引先に関する検索機能があることなど、複数の要件が求められます。
優良な電子帳簿の要件は「電子帳簿保存法の要件とは?スキャナ保存や電子取引データ保存などのポイントを解説」で解説しています。
青色申告と白色申告の違いは?
青色申告と白色申告の違いをまとめると、次のとおりです。
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| 青色申告 (65万円控除・55万円控除) |
青色申告 (10万円控除) |
白色申告 | |
|---|---|---|---|
| 節税効果 | ◎ | △ | × |
| 事前申請 | 必要 | 不要 | |
| 提出書類 |
・確定申告書 |
・確定申告書 |
・確定申告書 |
| 保存帳簿 |
・総勘定元帳 |
・現金出納帳 |
・法定帳簿 |
| 記帳方法 | 複式簿記 | 簡易簿記 | 簡易簿記 |
出典:国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」
税負担の軽減を重視するなら、最大65万円の青色申告特別控除を受けられる青色申告が適しています。純損失の繰越し控除・繰戻し還付や青色事業専従者給与の経費計上も認められており、税負担を抑えることが可能です。
一方で、青色申告特有の手続きや複式簿記による記帳の負担を避けたい場合は、白色申告も選択肢になります。簡易簿記による記帳が可能で、確定申告の書類作成も少ない負担で済みます。
青色申告と白色申告の違いについて詳しくは、別記事「青色申告と白色申告の違いは?メリット・デメリットやおすすめの申告方法をわかりやすく解説」をご覧ください。
まとめ
青色申告は、最大65万円の青色申告特別控除を受けられるほか、赤字の繰越し・繰戻し、青色事業専従者給与の経費計上、貸倒引当金や少額減価償却資産の特例など、税負担を抑えやすい点がメリットです。
一方で、事前に青色申告承認申請書の提出が必要で、55万円・65万円控除を受けるには複式簿記での記帳や青色申告決算書の作成が求められます。
白色申告より手間はかかりますが、要件を満たして活用すれば税負担を軽減できる申告方法であるため、自身の状況に応じて活用を検討しましょう。
参考文献
▶︎国税庁「No.2070 青色申告制度」
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-
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詳しくは、記事内「青色申告と白色申告の違いは?」をご覧ください。
監修

北田 悠策
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。