
借り上げ社宅とは、企業が賃貸契約した物件を従業員に貸し出す制度あるいは貸し出した物件を指す言葉で、福利厚生として人気の高い社宅制度の形態のひとつです。
企業が社宅として物件を保有する場合は、メンテナンス費用や税金などのランニングコストがかかります。そのため、物件を手放して維持管理が比較的楽な借り上げ社宅制度を採用する企業も増えています。借り上げ社宅は企業と従業員の双方にとって有益な制度といえるでしょう。
本記事では、借り上げ社宅の概要やメリット・デメリットのほか、社有社宅や住宅手当との違い、さらに家賃を経費として計上するための要件などを詳しく解説します。
目次
- 借り上げ社宅とは
- 社宅と寮の違い
- 借り上げ社宅と社有社宅の違い
- 借り上げ社宅と住宅手当の違い
- 借り上げ社宅を採用している企業の特徴
- 転勤や異動が多い
- 若手社員や新卒採用社員が多い
- 福利厚生を充実させたい
- 社有社宅の老朽化や管理負担に課題がある
- 借り上げ社宅のメリット
- 従業員にとってのメリット
- 企業にとってのメリット
- 借り上げ社宅のデメリット
- 従業員にとってのデメリット
- 企業にとってのデメリット
- 借り上げ社宅の家賃相場
- 借り上げ社宅は経費にできる
- 借り上げ社宅を経費にする条件
- 役員社宅の場合
- 借り上げ社宅を契約する手順
- 1. 物件交渉と申込み
- 2. 審査と契約の調整・署名
- 3. 家賃の支払いと入居
- 4. 契約の更新と管理
- まとめ
- よくある質問
借り上げ社宅とは
借り上げ社宅とは、企業が賃貸契約した物件を従業員に貸し出す制度、または貸し出した物件そのものを指す言葉です。転勤が多い企業や海外事業を展開する企業で導入されることが多く、企業が物件探しを行う場合もあれば、従業員が物件を指定して企業が契約や手続きを行うケースもあります。家賃は、企業と従業員の双方負担が基本です。
社宅と寮の違い
社宅と似た福利厚生サービスに、「寮」があります。寮と社宅の解釈は企業によって異なりますが、一般的には単身向けの物件を「寮」、家族向けの物件を「社宅」と使い分けている企業が多いといえるでしょう。実際には独自に定めた規則の中で区別している企業が多く、両者に明確な違いはありません。
借り上げ社宅と似た福利厚生制度として、社有社宅や住宅手当が挙げられます。借り上げ社宅とこれらの違いは、「物件の所有者」と「契約者」の2点です。
借り上げ社宅と社有社宅の違い
社有社宅と借り上げ社宅の違いは、「誰が物件を保有しているか」です。借り上げ社宅はあくまで「企業が契約した賃貸物件」であり、所有者は賃貸のオーナーや管理会社など、企業とは別になります。
一方で、社有住宅は「企業が保有している物件」です。こちらの場合は保有している企業がメンテナンス費用や税金などの固定費を負担します。
社有社宅の大きなメリットは、物件探しの手間や家賃、敷金礼金など賃貸物件特有のコストがかからないこと。ただし、社宅のメンテナンス費がかかったり、物件を従業員が選べなかったりといったデメリットもあります。
借り上げ社宅と住宅手当の違い
借り上げ社宅と住宅手当の主な違いは以下です。
借り上げ社宅 | 住宅手当 | |
---|---|---|
物件の契約者 | 企業 | 従業員本人 |
家賃の補助方法 | 給与から天引き | 手当として支給 |
借り上げ社宅の契約者は企業ですが、住宅手当では従業員自身が物件を探して個人で契約を結びます。企業側としては、物件探しや契約の手間がないのがメリットです。
また、住宅手当は「法定外福利厚生」のため、企業ごとに自由にルールを設定できます。扶養家族の有無や住んでいる住居の形態(賃貸か持ち家か)などを考慮して、事前に明確な規程を定めておきましょう。
なお、一般財団法人日本経済団体連合会が発表している「第64回福利厚生費調査結果報告」によると、住宅手当の平均支給額(2019年)は1万1,169円で、年々減少傾向にあります。
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もうひとつの大きな違いが、家賃の補助方法です。借り上げ社宅では家賃を給与から天引きするケースが一般的ですが、住宅手当は給与に補助分を上乗せします。
たとえば、給与が30万円で家賃8万円の賃貸物件に住み、4万円を会社が負担する場合、借り上げ社宅(家賃天引き)と住宅手当では、手取り額が以下のように変わります。
単位/円 | 借り上げ社宅 | 住宅手当 | 差額 |
---|---|---|---|
年間の給与 | 3,600,000 | 3,600,000 | 0 |
住宅手当 | 0 | +480,000 | ▲480,000 |
社会保険料全額控除 | ▲535,500 | ▲606,900 | +71,400 |
所得税 | ▲208,950 | ▲267,120 | +58,170 |
復興特別所得税 | ▲4,387 | ▲5,609 | +1,222 |
家賃支払い | ▲480,000 | ▲960,000 | +480,000 |
手取り額 | 2,371,163 | 2,240,371 | +130,792 |
出典:協会けんぽ「(東京都)令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」(介護保険料を含む)
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」(平成27年分以後所得税速算表)
※給与、住宅手当、社会保険料が同額で前年12ヶ月続いた場合の概算
上記の例は東京都の40歳~65歳で、社会保険料として「雇用保険・健康保険料・介護保険料・厚生年金保険」を徴収しています。従業員の最終的な手取り額は、借り上げ住宅のほうが多くなることがわかります。
住宅手当の場合、手当として支給される額は「給与」と見なされることから所得税や社会保険料の対象になります。そのため企業側には、社会保険料の負担分の増加や、割増賃金の計算基礎に含まれる場合に割増賃金が増加するなどのデメリットがあります。
借り上げ社宅を採用している企業の特徴
借り上げ社宅制度を採り入れている企業には、いくつか共通した特徴があります。
企業の特徴
- 転勤や異動が多い
- 若手社員や新卒採用社員が多い
- 福利厚生を充実させたい
- 社有社宅の老朽化や管理負担に課題がある
借り上げ社宅制度はすべての企業の福利厚生に適しているわけではなく、特定のビジネス環境や企業戦略、従業員構成を持つ企業において効果を発揮するといえます。
借り上げ社宅と住宅手当の違い
全国に支店や営業所を展開している企業では、転勤が頻繁に発生します。地方に支社や営業所を持つ企業にとって、スムーズに人材を配置しやすい借り上げ社宅制度は有効な福利厚生のひとつです。
また、従業員が不動産物件を探す手間を軽減できるだけでなく、支社や営業所の近くの賃貸物件を確保することで通勤の負担も減らせます。海外事業を展開する企業においても同様で、会社が社員の物件手配を代行することで慣れない土地での不安を軽減し、安心して働ける環境を提供できます。
若手社員や新卒採用社員が多い
若手社員や新卒採用を積極的に行う企業でも、借り上げ社宅制度は有効です。若手社員はまだ収入が安定していないことが多く、給与の多くを占める住居費の負担軽減は大きな魅力になります。
実際、借り上げ社宅制度を導入してから若手の定着率が高まったという事例もあります。親元を離れて一人暮らしを始める若手社員にとって、会社が家賃を補助してくれることは可処分所得の拡大にもつながるため、満足度の向上も期待できます。
福利厚生を充実させたい
借り上げ社宅制度を、従業員満足度の向上や人材獲得・定着戦略のひとつとして導入している企業もあります。特に、住宅関連の福利厚生を手厚くしたい企業に人気です。住宅関連の福利厚生を充実させることは、すなわち従業員の生活を支えることにつながります。そのため、就活生から見た企業イメージとして「安定さ」のアピールにもなるでしょう。
また、借り上げ社宅制度は住宅手当と比較して、企業側の負担を軽減できる場合があります。住宅手当は従業員の社会保険料の算定に含めなければならず、結果として企業の負担が増える可能性があります。しかし借り上げ社宅なら、負担している家賃を福利厚生費として計上することが可能なため、企業と従業員双方にメリットがあるといえます。
社有社宅の老朽化や管理負担に課題がある
保有していた社有社宅が老朽化し、維持管理や修繕にかかるコストが増大している企業も、借り上げ社宅への移行を検討する傾向にあります。なぜなら社有社宅は自社でメンテナンス費用をまかなう必要があり、老朽化にともなうコスト増大を避けられなくなるからです。借り上げ社宅なら物件管理は不動産会社が行うため、企業側の管理負担を軽減できます。
また、社有社宅は築年数が経過しているケースも多く、設備の古さや使い勝手の悪さから従業員に敬遠されるケースもないとはいえません。借り上げ社宅なら従業員のニーズに合わせた物件を選択できるため、福利厚生としての価値が高まると判断する企業も増えています。
借り上げ社宅のメリット
借り上げ住宅には企業側と従業員側のそれぞれにメリットがあるため、自社の従業員のニーズや採用の方向性によって適切に活用することが求められます。
従業員にとってのメリット | 企業にとってのメリット |
---|---|
・経済的負担が少ない ・契約の手間がない ・社会保険料や所得税の負担が軽減される | ・節税につながる ・人材の確保や定着につながる |
従業員にとってのメリット
- 経済的負担が少ない
- 契約の手間がない
- 社会保険料や所得税の負担が軽減される
従業員が借り上げ社宅を利用する最大のメリットは、金銭面や手続きの負担が少ないことです。企業が家賃の一部を支払う制度なので経済的負担が少なくなることはもちろん、契約などの事務手続きに関する負担もありません。
また、家賃の企業負担分は福利厚生費となり給与に含まれないため、所得税がかかりません。同様に、給与を基準に算出される社会保険料も負担が軽減されます。
企業にとってのメリット
- 節税対策につながる
- 人材の確保や定着につながる
「従業員にとってのメリット」で示したように、借り上げ社宅で企業が負担した家賃は福利厚生費として計上できます。福利厚生費は「経費」として扱われるため、原則非課税です。また、給与から家賃を天引きできれば、給与をベースに算出する社会保険料を減額できる可能性もあります。
さらに、借り上げ社宅の提供は優秀な人材を獲得しやすくし、採用率や従業員の定着率を向上させるのにも役立つでしょう。
借り上げ社宅のデメリット
借り上げ社宅にはメリットだけではなく、従業員側と企業側のそれぞれにデメリットもあります。制度の導入を検討する場合は、デメリットも把握しておくことが大切です。
従業員側のデメリット | 企業側のデメリット |
---|---|
・物件が限定される場合がある ・年金や失業保険などの金額が減少する可能性がある | ・コストがかかる ・業務の負担が大きい |
従業員にとってのデメリット
- 物件が限定される場合がある
- 年金や失業保険などの金額が減少する可能性がある
借り上げ社宅を企業があらかじめ用意している場合は物件が限定されるため、住む場所や間取りなどを選べません。加えて、退職時には退去しなければいけないこともあり、退職と同時に住む場所を失う恐れがあります。
また、給与から家賃が天引きされると、住宅手当を支給される場合と比較して、社会保険料の対象金額が減ります。実際に負担する社会保険料を少なくできる反面、年金や失業保険などの社会保障額が減るため、貯蓄や個人年金の加入など個人での対策が必要です。
企業にとってのデメリット
- コストがかかる
- 業務の負担が大きい
借り上げ社宅では、賃貸契約や家賃支払いなどの手続きをすべて企業側が行います。また、賃貸物件を常に用意しておく場合は、従業員が入居していない物件にも家賃を払い続けなければなりません。
手続きの手間や家賃の支払いといった負担を減らすには、運営代行の利用が効果的です。入居時や退去時の手続きはもちろん、支払い業務なども行ってくれるため、業務の手間を大幅に減らせるでしょう。
借り上げ社宅の家賃相場
借り上げ社宅の家賃には法律などの明確な規定が存在しないため、企業が独自に社内規定の中で決定・運用することになります。従業員が支払う家賃は企業によって異なることから、借り上げ社宅の家賃相場を具体的に示すのは難しいでしょう。
とはいえ、従業員が負担する家賃相場は「地域の平均家賃の10~20%程度」で設定されるケースが一般的といえます。たとえば、都心部で周辺相場が月額10万円の物件であれば、従業員負担は1~2万円程度、企業側の負担が8~9万円程度になるということです。また、周辺相場が月額6万円の物件であれば、従業員の負担は6,000円~1.2万円程度、企業側の負担は4.8万円~5.4万円程度になります。
ただし、企業側の負担割合が多すぎると「みなし給与」となり課税対象になる可能性がある点には注意が必要です。税法上では、「従業員が賃料相当額の50%以上を負担する場合、企業は借り上げ社宅の家賃を経費として計上できる」とされていますが、賃料相当額より低い金額を家賃として徴収している場合は差額が給与と見なされ、課税対象となります。
家賃の設定はただ低くすればよいわけではないため、実際には賃貸料相当額の50%以上を満たすように設定するケースが多いでしょう。
出典:国税庁「使用人に社宅や寮などを貸したとき」
借り上げ社宅は経費にできる
借り上げ社宅の家賃は条件を満たすと「福利厚生費」として認められるため、節税が可能です。また、従業員と役員では負担すべき賃貸量相当額の算出方法が異なります。
ここからは、借り上げ社宅を経費にするための要件と役員住宅について解説します。
借り上げ社宅を経費にする条件
借り上げ社宅の家賃を経費にするためには、賃貸料相当額の50%以上を従業員から徴収することが条件です。無料もしくは、賃貸料相当額の50%未満の家賃しか徴収していない場合は、経費とは認められません。
出典:国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」
賃貸料相当額とは?
(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
12円 ×(その建物の総床面積(㎡)/ 3.3(㎡))
(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%
(1 + 2 + 3)= 賃貸料相当額
ただ、一般的に賃貸料相当額は実際の家賃よりかなり低いことが多いでしょう。
固定資産税の課税標準額を知るには、固定資産評価証明書が必要です。正確な賃貸料相当額を算出する場合は、借り上げ社宅を所有している大家か不動産会社に書類を取り寄せてもらいましょう。
また、借り上げ社宅では事前に規程を作成して、従業員に借り上げ社宅に入居できる条件を周知しておく必要があります。
規程に記載しておきたい主な項目
- 家賃負担額
- 適用される従業員の範囲
- 要件
- 期間
- 入居や退去の手続き
規程違反があった場合の罰則や退去などでかかる費用は、企業が一切負担しないことなどを明記しておくと、トラブルを避けられます。
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役員社宅の場合
役員も、小規模住宅の場合や一般的な住宅の場合で賃貸料相当額が変わってくるため注意が必要です。それぞれのケースごとに、賃貸料相当額の算出方法を見ていきましょう。
小規模な住宅 | 一般的な住宅 | 豪華住宅 |
---|---|---|
・法定耐用年数30年以下の場合:床面積132㎡以下 ・法定耐用年数30年以上の場合:床面積99㎡以下 | ・「小規模な住宅」に該当しない住宅 | ・床面積240㎡を超えるもののうち取得価額・支払賃料の額・内外装の状況などを総合的に判定 ・床面積240㎡以下であってもプールなど個人の好みを著しく反映した設備を有する場合 |
小規模な住宅の場合
以下の住宅は、「小規模住宅」に分類されます。
小規模住宅に分類される住宅
- 法定耐用年数が30年を超える非木造住宅などで床面積が99㎡以下
- 法定耐用年数30年以下で床面積が132㎡以下
小規模住宅の場合、以下の計算式の合計額が賃貸料相当額です。
(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
12円 ×(その建物の総床面積(㎡)/ 3.3(㎡))
(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%
(1 + 2 + 3)= 小規模住宅の賃貸料相当額
一般的な住宅の場合(賃貸/自社所有)
小規模住宅に該当しない場合は、賃貸か自社所有かで算出方法が異なります。自社所有の社宅の賃貸料相当額は以下で求められます。
(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 12%
※ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%を乗じる。
(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 6%
(1 + 2)/ 12 = 自社所有の社宅の賃貸料相当額
賃貸の賃貸料相当額は、企業が家主に支払う家賃の50%の金額と、先述した「自社所有の社宅の場合」で算出した賃貸料相当額の2つを比較し、金額が多いほうです。
豪華な住宅の場合
物件の価格・賃料・内装・外装から総合的に判断し、小規模住宅にも一般的な住宅にも該当しないものは、豪華な住宅と見なされます。
たとえば、床面積が240㎡以上の住宅や、プールや役員の個人的好みの設備がついているケースです。この場合は全額が役員負担であり、経費にすることは認められません。
借り上げ社宅を契約する手順
借り上げ社宅の契約は、企業・従業員・貸主(不動産オーナーや管理会社など)の三者によって進行されます。
借り上げ社宅を契約する手順は、基本的に以下の流れです。それぞれ詳しく解説します。
- 物件交渉と申込み
- 審査と契約の調整・署名
- 家賃の支払いと入居
- 契約の更新と管理
なお、借り上げ社宅では、賃貸契約や家賃の支払いなどを企業が行わなければなりません。管理に人的リソースを割かなければいけないため、人材確保が難しい企業は、社宅制度の運用・外注も検討してみるとよいでしょう。
1. 物件交渉と申込み
借り上げ社宅を導入するには、まず物件を決定する必要があります。また、物件を決めるときの条件交渉は、社宅規定を考慮して行うことが大切です。条件の交渉には主に以下が含まれるので、覚えておきましょう。
条件交渉に含まれる主な内容
- 家賃
- 提供期間
- 契約の詳細
- 特典
- 家具や設備の提供
- メンテナンスに関する合意
物件の決定後は、必要な書類を揃えて申込みを行います。
2. 審査と契約の調整・署名
物件の決定後は入居審査が行われるほか、社宅規定に合うように企業と貸主間で契約内容の調整を行います。問題がなければ合意に基づき、以下の内容を含めた正式な契約書を作成し、企業が署名して賃貸契約は完了です。
契約時に取り決める内容
- 住宅の住所
- 契約期間
- 家賃や初期費用など支払いスケジュール
- 家具や設備の提供に関する詳細
- 法的規制への遵守事項
なお、契約に関して従業員側で行うことはありません。
3. 家賃の支払いと入居
契約の成立後は、企業が入居に必要な初期費用や家賃の支払いを行います。一般的に従業員の負担分は、給与からの天引きです。ただし社宅規定によっては、従業員が一部の費用を別途口座振込で対応するケースもあります。
契約が無事に完了すると、入居予定日までに鍵の受け渡しが行われます。
4. 契約の更新と管理
借り上げ社宅は、賃貸契約の締結が完了したら終わりではありません。借り上げ社宅制度を継続するためには、契約の更新と管理が必要です。賃貸契約の更新には、「合意更新」と「自動更新」があります。
更新の種類 | 内容 |
---|---|
合意更新 | 貸主・借主の間で合意によって契約が更新される |
自動更新 | 契約期間を迎えると自動的に契約が更新される |
合意更新の場合は、契約期間を迎える前に契約の更新が必要となるため、担当者は注意が必要です。一方、自動更新の場合は基本的にこれまでの契約内容と同条件で自動的に更新され、手続きは必要ありません。
ただし、更新のタイミングで賃料や共益費などの改定が行われるケースもあります。更新の際は慎重に確認しておきましょう。
また、物件維持のメンテナンスは、以下の点に関して企業側で対応を考えておく必要があります。
- エアコンの故障や雨漏りなど設備のトラブル
- 退去時の原状回復に関するトラブル
特に費用の負担に関しては従業員との間でトラブルに発展するケースもあるため、事前に取り決めを行い、適切な管理が必要です。
まとめ
借り上げ社宅は、企業と従業員の双方にメリットがある福利厚生制度です。企業としての節税はもちろん、従業員の生活をサポートをとおしてイメージアップや優秀な人材の採用・定着にもつなげられます。
ただし、導入にあたっては社宅規程の整備や賃貸料相当額の正確な算出など、適切な運用が欠かせません。特に家賃設定については、税法上の要件を満たすよう注意が必要です。
人材確保や社宅のコストに悩みを持つ企業は、費用面や業務負担などを考慮して借り上げ社宅の採用を検討しましょう。
よくある質問
借り上げ社宅とは?
借り上げ社宅とは、企業が賃貸契約した物件を従業員に貸し出す制度、もしくは貸し出した物件そのものを指す言葉です。です。転勤が多い企業や海外事業を展開する企業で導入されているケースが多いといえます。企業が物件探しから手続きまで担ってくれることもあり、従業員側の負担が少ないという特徴があります。
借り上げ社宅の概要や基本情報を詳しく知りたい方は「借り上げ社宅とは」をご覧ください。
借り上げ社宅のメリットは?
借り上げ社宅を利用する従業員の主なメリットは、「経済的負担が少ない」「契約の手間がない」「社会保険料や所得税の負担が軽減される」の3点です。一方、企業にとっては人材の確保や定着につながるメリットがあります。
借り上げ社宅のメリットを詳しく知りたい方は「借り上げ社宅のメリット」をご覧ください。
借り上げ社宅は経費にできる?
借り上げ社宅の家賃は、条件を満たせば経費計上できます。ただし、賃貸料相当額の50%以上を従業員から徴収することが必須です。無料もしくは賃貸料相当額の50%未満の家賃しか徴収していない場合は「みなし給与」と判断される可能性があります。
詳しくは記事内の「借り上げ社宅は経費にできる」をご覧ください。