会計事務所運営の基礎知識

AIの進化で税理士の仕事がなくなる?10年後の活躍のためにすべきこと

AIの進化で税理士の仕事がなくなる?10年後の活躍のためにすべきこと

近年の生成AIの進化により、税理士の仕事が「AIに取って代わられるのではないか」という議論が改めて活発化しています。記帳や仕訳、申告書のチェックといった定型業務はAIで効率化が進む一方、日本税理士会連合会によると税理士の登録者数は2026年5月末時点で82,233人と微増を続けており、業務がただちに消失する兆候は見られません。

本記事では、税理士職の将来性と、AIに代替されにくい業務、今後も活躍し続けるために必要な対応を解説します。

目次

将来、税理士の仕事はなくなってしまうのか?

オックスフォード大学のカール・B・フレイ氏とマイケル・A・オズボーン氏は、2013年に発表した論文「THE FUTURE OF EMPLOYMENT(雇用の未来)」で、米国の702職種を分析し、今後10〜20年でおよそ47%の仕事が自動化のリスクにさらされると述べました。この研究では「税務申告書代行者(Tax Preparers)」が自動化されやすい職種の上位にランクインしており、これが税理士職の将来への懸念につながっています。

ただし、論文の予測期間である約20年のうち大半が経過した現在も、税理士という職業が消滅したわけではありません。むしろ、たび重なる税制改正やインボイス制度・電子帳簿保存法への対応で会計事務所の業務はかえって複雑化しており、定型作業の自動化が進んだ分、専門的な判断や相談に時間を割ける環境が整いつつあります。AIは仕事を奪う脅威ではなく、業務を効率化する道具として位置づけられるようになってきました。

出典:日本税理士会連合会「税理士登録者数」

税理士と会計士がいなくなったエストニア

エストニアは人口約130万人の小国ですが、ITが世界トップクラスで発展し、医療や教育、選挙など多くの手続きがインターネット上で完結します。税制度の簡素化により、個人向け税理士は「絶滅した」ともいわれています。

ただし日本の場合、税制度はまだ複雑で、単純な事務作業以上の専門知識が求められることが多いため、税理士職が完全になくなることはないと考えられます。

AIには苦手な仕事がある

AIの進化で多くの定型業務が自動化されつつありますが、AIにも苦手とする領域があります。以下では、AIが代替しにくい4つの仕事を解説します。

思考力や創造性が必要な仕事

AIは過去のデータから物事を判断するため、まったくの新しいことや、パターン化しにくい複雑な判断が求められる仕事は苦手です。共感やコミュニケーション、人の意図や感情をくみ取ることは困難です。

AIの開発・操作を行う仕事

AIは定められたルールから経験則に基づいて結果を導くため、何もない状態から作り出すことが苦手です。AIの開発には、人間が判断基準やパターンを設定する必要があります。

複雑に体を動かす仕事

伝統工芸など「長年の勘」に頼る職人技は、環境や状態に応じた敏感な対応が必要なため、AIには難しいとされています。

有資格者のみができる責任を伴う仕事

法的責任を伴う独占業務は、AIに取って代わられるのは先のことになります。記帳や税務書類の作成はAIが得意とする作業ですが、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つは、税理士法で税理士の独占業務(無償独占)と定められており、税理士以外が報酬の有無にかかわらず行うことはできません。AIが申告書のたたき台を作成しても、最終的な内容の判断と責任は税理士が負います。

出典:国税庁「税理士制度」

税理士の価値とは?

定型業務がAIに置き換わっても、税理士にしか提供できない価値が残ります。事業展開への支援、感情や事情をくんだ柔軟な対応、他業界とのコラボレーションの3点から見ていきましょう。

今後の事業展開への支援

クライアントは単なる税務申告や会計処理ではなく、貸借対照表や損益計算表から見える今後の事業展開をサポートしてほしいと期待しています。

感情や事情をくんだ柔軟な対応

事業承継やM&Aなど、人間関係や感情が絡む場合、クライアントの事情に寄り添い最適な方法を示すことが税理士の価値です。

他業界とのコラボレーション

相続税相談では弁護士や司法書士との連携により、クライアント支援の幅が広がります。他業界の専門家とのコミュニケーションは生身の税理士にしかできません。

10年後も活躍するため、税理士に必要なこと

これからの税理士は、AIに任せられる作業を効率化しつつ、人にしかできない領域で強みを磨くことが求められます。専門分野・経営アドバイス・AI活用・コミュニケーション・ITやマーケティングの5つの観点で必要なことを整理します。

競合の少ない専門分野を作る

国際税務、組織再編税制、相続税、連結納税、ITツール導入支援など、需要が伸びているにもかかわらず経験者が少ない分野は狙い目です。

税務に関連した経営のアドバイスを行う

経営全般の知識や経験を持ち、コンサルティングが提供できれば経営者に重宝されるでしょう。

AIやRPAを駆使できるスキルを持つ

事務作業の効率化に生成AIやRPAを活用し、企業のAI導入時にアドバイスできれば需要が高まります。近年は、記帳や請求書の読み取りにAI-OCRを使ったり、税制改正の案内文を生成AIで下書きしたりする活用が広がっています。ただし税務分野は誤った回答が生成されるリスクがあるため、AIの出力は税理士による確認とあわせて運用することが前提です。

コミュニケーションスキルを高める

お金に関する悩みは誰にでもできるものではありません。クライアントとの信頼関係構築はコミュニケーションスキルが必要不可欠です。

ITやマーケティングに強みを持つ

集客やブランディングにはITとマーケティングの知識が必須です。これらの分野までアドバイスできれば、クライアントから頼られる範囲が広がります。

まとめ

税理士の仕事が将来完全になくなることはないと考えられます。本記事の要点は次のとおりです。

  • 定型業務はAIで効率化が進む一方、税務代理など税理士の独占業務は残る
  • 事業展開の支援や経営相談など、人にしかできない領域に価値の重心が移る
  • 専門分野・経営アドバイス・AI活用・コミュニケーション・ITやマーケティングの強みが、今後の差別化につながる

AIを敵と見なすのではなく、協働して自分の価値を高めていくことが、これからの税理士に求められる姿勢です。

クラウド会計ソフト「freee会計」は、AI-OCRによる証憑の読み取りや自動仕訳に対応しており、会計事務所の定型業務を効率化できます。顧問先への導入支援や業務のDXを検討する際の選択肢として活用できます。

よくある質問

「税理士はやめとけ」と言われるのはなぜですか?

AIの普及で定型業務が自動化され、将来性を不安視する声があるためです。ただし、記帳や申告書作成といった作業が効率化されても、税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の独占業務として残ります。

むしろ専門的な判断や相談に時間を割きやすくなり、人にしかできない領域で価値を発揮しやすくなっています。詳しくは「将来、税理士の仕事はなくなってしまうのか?」で解説しています。

未経験から税理士を目指すのは今からでも遅くないですか?

遅くはありません。税制改正やインボイス制度・電子帳簿保存法への対応で会計事務所の業務はむしろ複雑化しており、専門人材の需要は続いています。

国際税務や相続税など経験者が少ない分野で強みを作る、AIやITに強くなるなど、これから参入する人でも差別化できる余地は十分にあります。詳しくは「10年後も活躍するため、税理士に必要なこと」で解説しています。

AIに代替されにくい税理士になるには、何から始めればよいですか?

まずはAIやRPAを使いこなし、記帳や請求書読み取りなどの定型業務を効率化することから始めるとよいでしょう。

そのうえで、経営アドバイスやコミュニケーション、ITやマーケティングなど人にしかできない領域に時間を振り向けると、AIと協働しながら強みを伸ばせます。詳しくは「10年後も活躍するため、税理士に必要なこと」で解説しています。

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