「武蔵台病院」と介護老人保健施設「日高の里」を拠点に、外来・入院診療から在宅医療まで幅広いサービスを提供している医療法人 和会(やわらかい)。事業を展開する埼玉県日高市で労働人口の減少が見込まれるなか、地域の方々に安全な医療介護を継続的に届けるため、DXを積極的に推進しています。その取り組みの一環として、人事労務管理の一元化を目指し、freee人事労務、freee勤怠管理Plusの導入を決定。現在は段階的に運用を進めているところです。
医療法人としてDXに取り組む背景や思い、導入前の課題、今後期待する効果などを、武蔵台病院 理事長の河野 義彦様、日高の里で事務を担当する鈴木 猛史様、福元 綾子様にお話を伺いました。
課題
・施設ごとの管理による情報の分断と重複作業
・2040年には地域の労働人口が20〜30%減少する見通しがあり、人材不足への危機感
・先進的な同業法人とのDX推進の差
導入の決め手
・複雑なシフト管理に対応する見やすく使いやすい画面設計
・入社からシフト管理、勤怠、給与まで一つのシステムで完結できる
期待する効果
・デジタル化により職員が本業に集中でき、地域への継続的な支援が可能に
2040年問題を見据えた経営判断。業務自動化とDXで「支援の質」を守る
――医療法人 和会さまが以前からDX推進に積極的に取り組んでこられた背景を教えてください。
河野 義彦さん(以下、河野): 今まさに人口減少時代に突入しています。特に私たちが拠点を置く日高市では現在の人口は約5万4000人ですが、2040年には労働人口が20%〜30%減少すると予測されています。この「2040年問 題」は、医療・介護経営に直結する重要な課題です。今後、限られた人員で高齢者支援を継続していくには、業務の自動化とDX化を進めていくことが重要です。最近は採用にも力を入れていますが、10年前に比べて人材の確保は確実に難しくなっています。そのため、システムに任せられる業務は迷わず任せ、職員が本来業務に集中できる体制を整えていきたいと考えています。
たとえば当院では、モバイル電子カルテを導入して、スマホから患者のカルテを閲覧できるようにしていますし、職員間の情報交換もビジネスチャットを活用しています。このような環境整備を進める中で、紙運用が中心の勤怠管理、出退勤、出張届などもスマホで完結できないかと考えるようになりました。
施設ごとに分断された煩雑な人事労務管理。330名分の情報を手作業で照合・確認
――システム導入前のバックオフィスには、どのような課題がありましたか?
鈴木 猛史さん(以下、鈴木): 当法人では、武蔵台病院に210名、グループ全体で330名の職員が勤務しています。勤怠管理には顔認証のタイムレコーダーを使っているのですが、アプリで集計された勤怠データと紙の有休届や勤務表を照らし合わせて確認する必要があり、大変な手間がかかっていました。
また、施設ごとに勤務データを集計し、FAXで本部に送信し、本部で給与明細を手入力で作成。さらにそのデータを現場に戻して再確認するという流れで、非常に煩雑でした。こうした業務を武蔵台病院では1名、日高の里では4名で対応していますが、特に年末調整の時期は作業量が急増し、他の業務を圧迫していました。
福元 綾子さん(以下、福元): そうですね。年末調整は毎年のことですが、記入項目に変更があると、職員から「書き方が分からない」という問い合わせが頻発します。記入漏れや不備がないかを私ともう一人の担当者でチェックするのですが、日高の里だけで110名の職員がいますので、確認作業だけでも膨大な時間がかかります。他の業務と並行して進めるため、年末調整の時期中は月に10時間ほど残業しており、負担を感じていました。
「現場目線の使いやすさ」がfreee導入の決め手
――freee導入の決め手となったポイントは何でしたか?
鈴木: 複数の同業他社のシステムを比較しましたが、freeeは入職から勤怠管理、給与の支払いまで、すべてを一つのシステムで完結できるところに魅力を感じました。病院や介護施設では、早番、遅番、準遅番、夜勤、日勤など勤務形態が多岐にわたり、さらにフロアごとに必要な時間帯も異なるため、シフト管理が非常に複雑です。そのため、シフト作成機能の使いやすさや画 面の見やすさを特に重視しました。そのほか、操作性やセキュリティ、コスト面も含めて総合的に検討し、最終的には関係者全員で話し合って、freeeに決めました。
「10年前と同じでは通用しない」デジタル化が生む組織の前向きな変化
――freeeの導入にあたって、どのようなことを期待していますか?
鈴木: 法人全体で情報を集約・共有できるようになることで、本部や社労士さんとの連携がよりスムーズになることを期待しています。たとえば、これまでは各施設に設置されている顔認証のタイムレコーダーから10日に1回ほどの頻度でUSBに勤怠データを取り出し、それをパソコンに取り込んでいました。今後freeeを本格的に導入すれば、勤怠情報をリアルタイムで確認できるようになりますし、本部との連携も同時進行で進められることは、大きなメリットだと思っています。
また、新しい職員が入職した際の業務改善にもつながると考えています。現在は職員の情報を詳細までこちらで入力しておらず、勤怠の契約内容などもエクセルで管理しています。それを社労士さんや本部に共有し、各システムに入力してもらっている状況です。freeeを使えば、こうした情報も一元管理できるので、見えないところで発生していた重複作業も解消され、入職の段階から業務が大幅に効率化されると思います。
福元: 私は年末調整の業務負担が軽減されることを期待しています。これまでは添付書類の不備や計算ミスが多く、その対応にかなり手間がかかっていました。今後はfreee上で職員が自身で情報を入力するようになるので、計算ミスも防げますし、私たちの業務もかなり楽になると思います。
河野: 「10年前と同じやり方では、もう通用しない」と常々話しています。
デジタル化を積極的に進めていくことで、組織としての前向きな変化が起きると感じています。バックオフィス業務が効率化されることで、職員は本来業務により集中できるようになり、その結果として医療・介護の質の向上にもつながる。そうした好循環が生まれることに、大きな期待を寄せています。
freeeは医療・介護の持続可能性を支えるDX化の基盤
――同じような課題を抱える医療法人に向けて、freeeをおすすめしたいポイントやアドバイスをお願いします。
河野: 医療・介護業界の事務部門は、いまだFAXが日常的に使われている状況で、DX化が遅れています。
しかし 、来るべき労働人口減少の時代に、現在の医療・介護の質を維持し、地域のみなさまの暮らしを守り続けるためには、私たちは変化に向き合い、変わっていかなければなりません。
業務をシステム化し、それを組織文化として確立できれば、これまで事務作業に費やしていた人材を他の業務に充てることができます。
私たちは「DXにチャレンジし、未来を切り開いていく」ことを一つの目標として掲げています。新たな挑戦は組織を活性化させ、職員一人ひとりのスキルアップを促し、最終的には医療・介護の質の向上にも貢献できると考えていきます。
――医療法人 和会さまにとって、freeeとはどのような存在でしょうか?
河野: 労働人口減少時代を乗り越えていく上で、freeeはまさに必須のシステムだと思います。すでに先進的な企業に導入されていることからも、その有用性の高さがうかがえます。当法人としても、本部の基盤を強化するために導入を決めました。
私は臨床医であり経営者でもあります。そのため、「プロとしての責任を果たす」姿勢を常に大切にしています。この考えを組織で実現していくには、本部機能の整備が不可欠です。特に労務においては、職員一人ひとりと誠実に向き合う姿勢が求められます
これからも職員への感謝の気持ちと敬意を持ち続け、より良い職場環境を整えていきたい。その思いを形にする手段の一つとして、freeeの導入を位置づけています。
――ありがとうございました。日高市の地域医療・介 護を守る、武蔵台病院の挑戦は続きます。