病院新設でスタッフ数が2倍に急増しても、少数精鋭のバックオフィス体制を維持 freeeの導入で医療と経営の質向上を実現

医療法人社団焔 CFOの鈴木桂祐さん、労務チームマネジャー 金城正智さん、経理 山下杏里さん

課題
経理の一元化でグループ企業を管理経営の課題をリアルタイムに把握エクセル・紙管理からの脱却月次決算を早期化し事業の意思決定スピードを上げたい

東京都板橋区にある「おうちにかえろう。病院」は、退院後の自宅での生活を「自分らしく」生きられるための支援を行う医療機関です。急性期病院を退院された方の治療とリハビリを行い、在宅復帰率は90%に上るといいます。


経営母体である医療法人社団焔では、同院の開設に伴いスタッフ数が2倍に急増し、バックオフィス業務を根本から見直す必要がありました。この状況を乗り越えるためにfreee製品を導入し、事業が多角化した現在もバックオフィス人員を大きく増やすことなく、6名の少数精鋭で滞りなく業務を進められています。さらには、経営状況をリアルタイムで可視化できることで、意思決定の確実性がアップしました。


freee導入のきっかけやその後の効果などについて、医療法人社団焔 CFOの鈴木桂祐さん、労務チームマネジャーの金城正智さん、経理の山下杏里さんに話を伺いました。

“少人数でがんばる体制”が限界に 事業拡大で見えた業務改革の必要性

――現在、freee会計やfreee人事労務などのfreee製品を導入されていますが、導入前はどのようにバックオフィス業務を進めていたのでしょうか。

山下杏里さん(以下、山下): 紙や表計算ソフトを使って管理する業務が大半でした。請求書や領収書は、スキャンデータを税理士や会計士へ送るとともに、紙の原本を毎月大量に郵送していました。


勤怠情報は、各スタッフが表計算ソフトに入力し、労務担当者が集計して税理士へ提出していました。手作業のため、半角と全角が混在するなどの表記揺れや入力ミスが多く、それを担当者が修正する負荷が大きいことに悩んでいました。


金城正智さん(以下、金城): 紙で管理をしていると、「検索性が低い」ことが課題に感じていました。過去のデータを確認するにも、紙の資料を探したり集計したりするのに時間がかかり、現場の業務や経営をより良くするために情報をうまく活用できていなかったです。


鈴木桂祐さん(以下、鈴木): 私が入職した8年前は、スタッフ数が30〜40名で、バックオフィスは数名のみの体制でした。当時は、訪問診療を行うやまと診療所の運営のみで、保有設備も少なかったため、紙での管理が多くても業務を回せていました。


その後、事業拡大やスタッフ数の増加にあわせて、バックオフィス部門も少しずつ拡大しましたが、少人数でがんばってその場を乗り切る状況は依然として続いていました。

医療法人社団 焔(ほむら)

CFO 鈴木桂祐さん

――freee製品を導入した経緯を教えてください。

鈴木: 今から4年前、「おうちにかえろう。病院」を新設するにあたってスタッフ数が100名ほど増えて、それまでの2倍になり、当時のバックオフィス体制と業務フローでは限界があると感じたことがきっかけです。


病院の設立で、診療に必要な設備や組織運営の業務が大きく増加し、バックオフィス機能は「やまと診療所のみの単一事業のサポート」から「法人全体のサポート」へと役割を拡大することになりました。業務のあり方を根本から見直す必要性が生じ、DXを推し進めることにしたのです。


事業規模が拡大しても決算状況がリアルタイムで把握可能に 経営判断の確実性がアップ

――freee導入後、バックオフィス業務はどのように変化しましたか。

金城: 勤怠入力や経費申請、年末調整などスタッフから紙で申請してもらっていた手続きがデジタルに変わったので、現場とバックオフィス双方の負担が減り、リアルタイムで状況確認できるようになりました。


勤怠の未入力者が減り、労務担当者が確認したりデータを修正したりする負担も大幅に減りました。ユーザー側が使うfreeeのアプリがアップデートされ、使い勝手が上がったことも利便性向上に寄与したと思います。


給与計算につきましても、以前は支払日前日に最終確定することもあるなどギリギリの状態でしたが、現在は3営業日前には確定できており、生産性が上がっていることが実感できます。

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労務チームマネジャー 金城正智さん


山下: 会計業務においては、税理士や会計士と密に情報共有できるようになったことが大きな変化です。業務のスピード感が格段にアップしました。それまでは、レターパックの容量いっぱいに書類を詰めて毎月郵送していたことを考えると、作業コストが削減できたのがうれしいですね。


鈴木: もともと月次締めに1カ月半かかっていましたが、今では決算状況が翌月の1週目には把握できるようになっています。


それまでは、会計士へ資料を郵送し、データをシステムに入力してもらって集計するプロセスがあり、月次決算が出そろうまでに、早くても1カ月はかかっていました。締日から1カ月以上経ってから決算状況を確認しても、過去の情報を見ているに過ぎないため、データを経営判断に役立てられていなかったのが正直なところです。


診療所のみの単一事業だった時代は、患者数から売上と利益がおおよそ把握できていました。しかし、訪問看護や病院運営など事業が多角化すると、肌感覚だけでは的確な経営判断ができなくなります。freee導入によってすぐさま数字を把握し、確実性の高い意思決定ができるようになりました。


また、営業などの各種施策についても、数字をもとに人材リソースの配置を決めるといったことができるようになり、打ち手の連続性が上がりました。

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金城: ここ数年でスタッフ数は250名から450名に急増し、バックオフィスの業務範囲も増え続けています。にもかかわらず、それらの業務を担う人数を変えずに回せていることを考えると、freee導入をはじめとしたDXによって効率化できていると考えています。


鈴木:おそらく他の医療機関に比べ、当法人は少数精鋭のバックオフィス体制ではないでしょうか。そのぶん、現場体制や患者さんが過ごす院内の設計に多くのリソースを充当できています。

freeeは“経営の中心” 一歩踏み出す経営判断に欠かせない存在に

――バックオフィスについての今後の展望をお聞かせください。

山下: freeeを今以上に使いこなして、さらなる業務効率化を図っていきたいです。現在は、取引先からの請求書回収やスタッフの立替経費精算のレシートなど、紙ベースでの経理業務が残っていますが、それらをデジタルに移行できるようになったときにすぐ対応できる状態にしておきたいです。


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経理 山下杏里さん(写真左)


金城: 当法人は職種や勤務形態が多様で、freeeの仕様に合わせきれていない業務が一部あるのが実態です。とはいえ、freeeを最大限活用するためには、我々の実運用をシステムに合わせていくのがポイントだと考えています。


freeeにデータを入力すると給与計算がすぐに終わる状態が実現できれば、1000人規模になっても、バックオフィス業務を少数精鋭で回せると思います。freeeのアップデートにも期待していますし、我々も業務を見直すことで、お互い進化していけるといいですね。

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鈴木: 当法人は今後も、既存事業の横展開と新規事業参入の両面から規模を拡大していく方針です。バックオフィス業務の複雑性も増すので、それに対応できる体制づくりが必要だと考えています。


バックオフィス部門では、「『人を想う人』を想う」という理念を掲げています。温かい世の中をつくる最前線にいる現場スタッフを支え、ミッション実現に邁進する会社を経営面からサポートするのが我々の役割です。


――最後にお聞きします。freeeはどのような存在でしょうか?

鈴木: freeeは“経営の中心にあるもの”です。お金に関するすべての情報が集約されているので、CFOとして経営判断を行う際は、常にfreeeを見ています。我々が何か一歩を踏み出すときには、必ずそこにfreeeがあるのです。


当法人のミッションである「『温かい死』を通して、『人が人を想う』気持ちを大切にできる世界を作る。」の実現に向け、事業は今後もより複雑化していくことが予想されます。そんななかでも、より良く働けるために、自由にアクセスできるプラットフォームが必要になります。そのプラットフォームがfreeeだと思うので、ぜひ今後もfreeeとともに成長していきたいです。


今後ますますfreeeが発展し、さまざまな機能が追加されることで、業務効率がさらに向上することを期待しています。


(執筆:御代貴子 撮影:飯本貴子 編集:ノオト)


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