オーラスタジオ上間氏が描く「健全なアニメーション制作」の未来図:freeeが支える持続可能な組織づくり

株式会社オーラスタジオ 取締役/制作二課部長 上間 康弘 氏
freee株式会社 木之下 隆人 氏

課題
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フリーランスの多いアニメーション業界では、発注書や請求書のやり取りも多く事務処理は膨大だ。昨今の働き方改革の推進によって労務管理の重要性も増大している。そのため、アニメーション業界でもバックオフィス拡充の重要性が高まっている。より良い作品作りのためにもバックオフィスの充実は欠かせないものになっている。


株式会社オーラスタジオでは、バックオフィス改善のため2025年からfreeeを導入。同社ではfreee業務委託管理、freee会計、freee販売を導入し数字の見える化と事務処理の工数軽減を図ろうとしている。


Brancでは同社の取締役で制作二課の部長・上間康弘氏とfreeeの木之下隆人氏の対談を実施。アニメーション業界のバックオフィスのDX改善にfreeeのサービスがどう貢献するのか、語ってもらった。


「制作」に集中できる環境への先行投資

――オーラスタジオの遍歴についてまず教えていただけますか。

上間康弘氏(以下、上間): オーラスタジオは2016年創業、ゲームやアニメーションなどの3DCG制作を生業とする会社としてスタートし、今年で9年目です。私は以前スタジオKAIという会社で制作プロデューサーを務めていたのですが、今年2月にその時の私のチームメンバーとともにオーラスタジオに合流し、テレビアニメーションの元請け制作を行う部門を立ち上げました。


木之下隆人氏(以下、木之下): 実は、上間さんとは、以前よりお付き合いさせていただいておりまして、今回freee製品を導入してくださったんです。


上間: アニメーション業界はクリエイティブに重きが置かれる業界ですから、バックオフィス業務は軽視される傾向にあると感じます。私は制作畑ではなく、製作委員会側の立場としてライセンス事業を担っていたり、もっと言うと一般企業が出自でして。その時の感覚からすると、バックオフィスが整備されている方が格段に仕事しやすくなるし、本当にやるべきことに集中できると思ったんですよね。それにより制作スタッフの仕事に対する安心感や、ビジネスに対するリテラシーの持ち方も変わると思っています。


アニメーションはクリエイティブな営みではありますが、クライアントから制作費というお金を預かって行うビジネスである以上、その筋論や一般社会通念を理解して行動すべきでしょう。その中にはフリーランス新法や下請法など、関係法令への対応も必要です。


また、当然にゴーイングコンサーンを目的としていますから、バックオフィスをないがしろには出来ないし、するつもりもありませんでした。一方で、一般の目からは恐らく特殊に映るであろう業界、それもこれから部門を立ち上げようという我々が、そのための適切な人材の協力を得ることも難しいだろうと思いまして。freeeを活用することを合流前から検討していました。


オーラスタジオ


――最初に導入を検討されていたツールは「freee業務委託管理」と聞きました。

上間: アニメーション制作は、フリーランスの方々を含め外部のパートナーが多い業界です。我々のような小規模なプロダクションでも、月次で50~100件の委託取引が発生します。それを縦軸として、発注書の発行から納品確認、請求書回収、そして金額の照合含めた横軸の、単純な処理・確認作業に人手を割くのはもったいないと思うんです。


例えば請求書の内容に間違いがあれば訂正を依頼しなければならないですし、依頼されて訂正するほうもストレスでしょう。なにより数字の照合は、人間よりもシステムのほうが正確です。「freee業務委託管理」なら、その発注から請求書回収、照合までをシームレスにできるようになります。


木之下: アニメーション業界では、作業の一部領域が属人化されていてブラックボックスとなっている部分があると感じています。紙で膨大な経理処理を行っている企業もまだ多く、上間さまのおっしゃったような、昨今の法対応の部分でも膨大な処理が発生していると現場の方から聞いております。

freeeは、会計から人事、労務管理から販売、オーラスタジオさまにもご利用いただいている業務委託管理など様々なツールをご用意していますので、カバー範囲には自信があります。その点において、アニメーション業界の多様なニーズに対応できると考えております。


上間: 人が本来やるべきことと、そうでないことを選別し、そのうえでシステムのほうが明らかに得意なことは、システムに担ってもらおうと。それで浮いた時間で、もっと思考や行動をしたほうがいい。そのためのツールとして、freee業務委託管理は魅力的に思えました。


――freeeでは、自社サービスの導入に際して、どんなサポートをされているのですか。

木之下: 弊社ではゴールは導入ではなく、効果的にお使いいただくことを最終的な目標としていますから、専任のコンサルタントがつく形になっています。導入の際にも企業様でどういったことを悩んでいるのか、どんな業務内容なのか、ヒアリングさせていただき、本当に必要なものは何かをご提案し、システムを軌道に乗せて利活用できるよう、一緒に伴走する支援体制を構築しています。


上間: ただ、実際の運用には課題もあるかもしれませんね。我々がそういったシステムを構築しても、相手方が受け入れないこともあると思います。


木之下: 当然、こうしたクラウドの管理システムに明るくない方や、これまでのやり方を変えたくないという方もいらっしゃいますよね。相互に我々のシステムを使っていただければ一番効率が良くなりますが、企業側だけがこのシステムを使っていただくだけでも、確認作業の軽減や法対応の面でも効率は上がるはずです。


――発注先のフリーランスの方がfreeeのシステムに明るくなかったとしても、企業側には充分にメリットがあるわけですね。

木之下: そうですね。確認作業の軽減の他、タレントマネジメントのデータベースも作成できます。例えば、特定のフリーランスの方との契約書を格納しておけば、これまでどんな仕事を依頼してきたかわかるようになります。新しい案件を依頼する際、今まではご担当の方の感覚で処理していたと思うんですが、データ化して全社で共有することで、適切なタイミングで適切な人材に発注をする手助けができると思います。


上間: 仕事は結局人についてくるものだと思います。人材情報を社内でただ共有しても、アプローチできるのはつながりを持った人だけであることも多いです。ですが、データベースで「こういう職能を持った方が存在する」と知っていることが、次の行動のアイディアにはなるかもしれませんね。そして、それが会計システムとつながっていることで、実際に依頼する際の効率化が図れる。そのことを主目的にこのシステムを導入したわけではありませんが、副次的な効果としては助けになりそうです。


――あくまで、人と人のつながりで仕事が発生する世界であるわけですね。

上間: 結局なにを言うかより誰が言うかですからね。ですが、それはこの業界に限った話ではないんじゃないかなと思います。誠実で一生懸命な人を優先するのは普通のことでしょう? そういうのは私も大切にしたいなと。


オーラスタジオ


予算を「見える化」してスキルアップにつなげたい

――オーラスタジオではfreee会計と販売も導入されたそうですね。

上間: 業務委託管理で発注したものを最終的に統合するのは会計ですし、販売とも連携可能なので基幹ツールとして会計を導入しました。ワークフローの役割もあります。3DCG制作のみを請け負っていた時は、基本的に内製作業が大半でしたが、アニメーション制作を請け負うとなると、相当な量の業務を外部パートナーにお願いすることになります。この数字を自分たちで適切に把握できるようになりたいと。


木之下: 既存の会計ソフトでは、仕分け作業や会計帳簿の記帳など、別々になっているんですよね。請求者の発注や入出金の管理、稟議とか色々な業務が本来、最終的には会計に紐づいてきます。それらを処理するソフトが分かれていると二重に作業が発生することもありますが、freeeはそういう煩わしさを解消したんです。


――freee販売についてはいかがでしょうか。

上間: 各話を担当する制作進行にも、自身が担当する話数の原価、ひいては売上総利益の推移を理解してほしいという考えが前提にあります。それが制作進行の学びになり、スキルアップにつながると思っていて。そのためのツールとして、併せて他プロダクトとの連携可能性も含めて、freee販売で管理してみようと思いました。実際どんなシステムを使うにせよ予実管理は必要です。これを例えばエクセルなどで管理しようとすると、担当者のリテラシーによって情報量の差異が生まれますし、独立した資料なので手間も増えますしね。


――予算を「見える化」することで、制作進行一人ひとりに予算の意識をより持ってもらおうということでしょうか。

上間: そうですね。キャリアアップのためにも予算を意識することはとても重要です。数字を理解したうえで、この作品のこの話数の内容だと、どこに重点的に予算投下をすべきか?なんていうことが考えられるようになると良いですね。これができるようになれば、クオリティへの貢献度も上がりますし、予算の使い方によっては、パートナーとの信頼関係構築にも役立ちます。


それに、出来なかったことが出来るようになるって嬉しいし楽しいことだと思うんですよね。この感情を、いわゆる制作的な業務以外でも感じていって欲しくって。先ほど「なにを言うかより誰が言うか」と言いましたが、若いうちはむしろ「なにを言うか?」なんですよね。それを経て信頼を得られた結果、「誰」かになれる。間接的ではありますが、そんなスキルアップの補助ツールにもなると良いなと思って導入しました。


オーラスタジオ


木之下: 原価計算の方法は会社によって様々ですが、アナログ作業では抜け漏れが発生したり、案件を持っている人の感覚でやっていて、蓋を開けると赤字だったということも起こりえます。freee販売はそういう抜けがないようにすべく作ったツールです。作品のクオリティは担保しつつ、事務作業をやるのは大変なことですが、その工数をなるべく減らすための努力で、我々はアニメーション業界にお力添えできればと思っています。


アニメーションを健全に作り続けられる組織を作りたい

オーラスタジオ


――働き方改革の影響もあり、アニメーション業界全体でもバックオフィスの改善は求められていると思います。この改善がアニメーション業界にどんな影響をもたらすと上間さんは思いますか。


上間: 私は、アニメーションを健全に作り続けられるチームを作りたいと思っています。そのためには原価はもちろん販管費も含めて、正しく把握できる状況を作っておくというのは当然のことです。あとは、それをするツールがセクションをまたぐことが出来て、更なる効率を追求できるものであったほうがいい。


そういう意味では、働き方改革の影響というのは直接的には気にしていないかもしれません。そもそも、どんなことでも土台というか足腰というか、そういうものが強いところのほうが継続して強いと思うんですよ。バックオフィスは、ビジネスを展開するうえでの足腰だと思っているので。


――アニメーションを健全に作り続けられる組織作りのためには、前提として作る以外の部分をサポートできるシステムが必要だということですね。

上間: そうですね。アニメーションは人の手によって作られるはずのものですから、属人的な部分の良いところはそのままにして。一方、明確にシステムのほうが得意なことは助けてもらえばいい。


木之下: 私自身、アニメーションが大好きで、これからも素晴らしい作品を作り続けてほしいという気持ちでいます。上間さまがおっしゃったような、作品を作り続けられる体制、成長していける組織を作ることや、法整備対応の面、数字の可視化でも、freeeはお手伝いができますし、今後もより充実したサポートができるようシステムをアップデートしていきたいと思っています。


(Branc 2025年6月24日掲載記事より転載/抜粋) 

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