監修 橋爪 祐典 税理士
個人事業主でも、日本政策金融公庫から融資を受けることは可能です。ただし、融資を受けるためには、必要書類を提出し審査に通過しなければなりません。
本記事では、個人事業主が日本政策金融公庫から受けられる融資額や、申込方法などを解説します。
申込時に必要な書類や、審査を通過するためのポイントを確認し、資金調達を成功させるための参考にしてください。
目次
- 個人事業主でも日本政策金融公庫の融資は受けられる
- 日本政策金融公庫の融資はいくらまで?
- 個人事業主が日本政策金融公庫に申し込むときに必要な書類
- 借入申込書
- 確定申告書・青色申告決算書
- 本人確認書類
- 創業計画書
- そのほかの必要書類
- 個人事業主が日本政策金融公庫から借入するまでの流れ
- STEP1. 事前相談
- STEP2. 申し込み
- STEP3. 面談
- STEP4. 審査
- STEP5. 契約
- 個人事業主が日本政策金融公庫の審査を通過するためのポイント
- 返済能力を裏付ける事業計画書を作る
- 自己資金を増やしておく
- 税金・社会保険などの滞納をしない
- 面談で事業への熱意と人柄をアピールする
- 専門家のサポートを受ける
- まとめ
- よくある質問
個人事業主でも日本政策金融公庫の融資は受けられる
日本政策金融公庫の融資は、個人事業主も利用可能です。
たとえば「新規開業・スタートアップ支援資金」の利用条件は「新たに事業をはじめる人または事業開始後おおむね7年以内の人」であり、法人か個人事業主かは問われません。
ただし融資を受けられるのは、新規事業に関する適正な事業計画を策定しており、計画を遂行する能力が十分あると認められる場合に限られるため、必ずしも融資が受けられるとは限りません。
日本政策金融公庫の融資はいくらまで?
実際に借入できる融資額は、事業規模や計画の実現可能性、返済能力などで決定されます。
できる限り多くの融資を受けるためには、事業規模や必要経費を根拠とともに示し、計画書で資金の必要性を具体的に説明することが大切です。
たとえば、日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」の融資限度額は7,200万円(うち運転資金は4,800万円)です。
出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
個人事業主が日本政策金融公庫に申し込むときに必要な書類
日本政策金融公庫の融資手続きを進めるには、以下の書類が必要です。
融資申し込みに必要な書類
- 借入申込書
- 確定申告書・青色申告決算書
- 本人確認書類
- 創業計画書
- そのほかの必要書類
書類に不備があると、審査に時間がかかったり再提出の手間がかかったりするため、必ず事前に確認するようにしましょう。
借入申込書
借入申込書には、申込者の氏名・希望融資額・、資金用途・返済期間などの項目を記入します。
記載事項に間違いがあると、再提出や審査の遅延につながるため、提出前によく確認しましょう。
なお、借入申込書は日本政策金融公庫の公式サイトからのダウンロード、もしくは支店の窓口で入手できます。
出典:日本政策金融公庫「国民生活事業|各種書式ダウンロード」
確定申告書・青色申告決算書
すでに事業を開始している人は、原則として直近2期分の確定申告書と、青色申告決算書(または収支内訳書)の提出が必要です。
融資担当者は確定申告書などの書類から、事業の安定性や返済能力を判断します。
赤字決算でも、事業拡大の先行投資など、合理的な理由を説明できれば、融資を受けられる可能性があります。
状況によっては、源泉徴収票や前職の収入を示す証明書が求められるケースがある点も把握しておきましょう。
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本人確認書類
申込者本人の身元を確認するため、以下、いずれかの本人確認書類の提出が必要です。
- 運転免許証(両面)
- マイナンバーカード(表面のみ)
- パスポート(顔写真のページおよび現住所等の記載のあるページ)
書面申込の場合はコピー、オンライン申込の場合は鮮明な画像データを提出します。
提出時は氏名・住所・顔写真・生年月日が正しく記載されているかを確認し、面談時には担当者がその場で確認できるよう、原本を持参するとよいでしょう。
創業計画書
新たに事業をはじめる人や事業を開始して間もない人は、創業計画書が必要です。創業計画書とは、事業の将来性や返済能力をアピールする書類で、これによって事業計画に実現可能性があるか、安定した収益が見込めるかが判断されます。
創業計画書に記載する内容は、客観的な根拠にもとづいた、具体的な数値を書きましょう。
たとえば飲食店なら「客単価×席数×回転率×営業日数」など、根拠ある計算式を示し、市場調査や競合比較で数字の妥当性を伝えられます。
日本政策金融公庫の公式サイトで提供されている創業計画書記入例と記入例を参考に、説得力のある事業計画書を準備しましょう。
出典:日本政策金融公庫「国民生活事業|各種書式ダウンロード」
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そのほかの必要書類
日本政策金融公庫の融資への申込時には、基本書類に加えて、事業計画の信頼性を裏づけるための補足資料を求められることがあります。
主な補足資料は、以下のとおりです。
- 預金通帳のコピー
- 見積書
- 許認可証・免許証
- 不動産の賃貸借契約書
状況によって必要な書類は異なるので、自分の場合には何が必要なのかを確認しましょう。
個人事業主が日本政策金融公庫から借入するまでの流れ
日本政策金融公庫の融資申し込みから実際に借入金が入金されるまでの主な流れは以下のとおりです。
融資申し込みから契約までの流れ
迅速かつ計画的に資金を調達するために、全体の流れを把握しておきましょう。
STEP1. 事前相談
事前相談は自身の事業計画に適した融資制度や、創業計画書で重視されるポイントなどについて、専門家のアドバイスを受けられる貴重な機会です。
申し込むときに必須ではないものの、書類作成の不備を防ぎ、審査通過の可能性を高めるためにも、事前に相談しておくとよいでしょう。
窓口以外にもオンライン・電話・メールの問い合わせフォームから相談が可能です。詳しくは、日本政策金融公庫の公式サイトで確認しましょう。
STEP2. 申し込み
必要書類がすべて整ったら、正式に融資を申し込みます。申込方法は支店窓口・郵送・インターネットの3種類があります。
インターネット申し込みなら、24時間365日受け付けしており、書類はアップロードで提出可能です。
STEP3. 面談
面談では、提出した創業計画書の信頼性が確認されると同時に、書類だけでは伝わらない事業への熱意や経営者としての資質をみられます。
面談で質問される内容は担当者によって異なりますが、主に以下のような内容が挙げられます。
- 事業動機
- 経験
- 事業の仕組み
- 資金使途
- リスクへの対応方法
- 収益見通しなど
事前に質問への回答を想定しておき、根拠を示せるようにしておきましょう。
STEP4. 審査
審査では、書類・面談内容・信用情報の評価によって、融資可否が判断されます。
審査期間の目安は2週間前後で、結果は電話や郵送で通知され、金額や条件が提示されます。
2週間以上経過しても連絡がない場合、日本政策金融公庫の担当者に状況を問い合わせましょう。
STEP5. 契約
審査に通過したら、契約手続きを進めます。
契約条件を確認し、電子契約・郵送・来店のいずれかで手続きを行ってください。
電子契約ならウェブサイト上で契約内容の確認や署名ができます。「内装業者への支払期日が迫っている」「商品の仕入れを急いでいる」などの場合、電子契約を選ぶとよいでしょう。
契約が完了すると、指定した口座に融資金が振り込まれます。
なお、「適切に手続きを進めて、審査を通過する自信がない」という場合は「freee創業融資サポート」を活用しましょう。
個人事業主が日本政策金融公庫の審査を通過するためのポイント
日本政策金融公庫の融資審査を通過するためのポイントは、以下の5つです。
日本政策金融公庫の審査を通過するためのポイント
審査を通過するためには、適切な事業計画書を準備し、経営者としての姿勢・信念を評価してもらうことが大切です。
返済能力を裏付ける事業計画書を作る
事業計画書は、事業で得た利益から借入金を計画どおりに返済する能力を示すために重要です。
売上予測を立てる際は、具体的な計算式や客観的な根拠を用いて説明しましょう。
利益から経営者自身の生活費を差し引いた金額が実質的な返済原資となるため、最終的な利益が、生活費と返済額を十分に上回る計画を立てることも大切です。
この金額に十分な余裕がなければ、金融機関から返済能力が低く、事業継続性に不安があると判断されてしまいます。
月次の詳細な資金繰り表などを添付すると、より説得力を高められます。
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自己資金を増やしておく
日本政策金融公庫の融資は、自己資金なしで申し込むことが可能です。しかし、自己資金がないより、あるほうが審査で有利になるでしょう。
また、融資担当者は自己資金の金額だけでなく、資金の調達方法も重視します。
たとえば、事業のために毎月計画的に貯蓄してきた預金通帳の履歴は、資金管理能力と事業への本気度を示す証明となります。
審査直前に用意した出所不明のお金(いわゆる「見せ金」)は、計画性がないと判断され、信用を損なう恐れがあります。親族から資金援助を受ける場合は、贈与契約書などを準備し、見せ金でないことを証明しましょう。
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税金・社会保険などの滞納をしない
税金や公共料金、ローンの返済などに滞納があると、審査に落ちる要因となります。
申し込む前に、支払状況を確認し、滞納の有無を確認しておきましょう。
融資審査では、CICなどの信用情報機関を通じて、クレジットカードやローンの返済状況が確認されます。
過去に長期延滞などの金融事故情報があると、返済能力を疑問視され、審査通過が困難になるため注意が必要です。
面談で事業への熱意と人柄をアピールする
面談では、以下の点を意識し、自信と誠意をもって対応しましょう。
- 質問には結論と根拠を述べる
- 具体的なデータを提示して説明する
- 自分の言葉で事業の意義や動機・リスク対策を語る
経営者としての本気度や誠実さを示すことにより、担当者から「この経営者になら安心して融資できる」と思ってもらえると、審査に通過しやすくなるでしょう。
専門家のサポートを受ける
事業計画書の作成に不安があるなら、専門家のサポートを受けると審査通過の可能性を高められます。
税理士や中小企業診断士、地域の商工会議所・商工会は、数多くの創業融資に携わっており、「審査に通る計画」のポイントを熟知しています。
なお、商工会議所・商工会などが実施する経営指導を受けると、無担保・無保証人の融資制度「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」で資金を調達ができる可能性もあります。
出典:日本政策金融公庫「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」
まとめ
日本政策金融公庫の融資は、個人事業主も対象であり、「新規開業・スタートアップ支援資金」なら最大7,200万円の資金調達が可能です。
しかし日本政策金融公庫から融資を受けるためには、審査を通過する必要があります。
そのため必要書類の準備や審査対策など、適切な備えをすることが大切です。手続きや審査を効率よく進めたい方は、「freee創業融資サポート」を活用してください。
よくある質問
日本政策金融公庫から個人事業主が借りられる限度額はいくらですか?
日本政策金融公庫が提供している「新規開業・スタートアップ支援資金」の融資限度額は7,200万円で、そのうち運転資金は4,800万円です。
個人事業主が公庫からお金を借りるにはどのような書類が必要ですか?
借入申込書や創業計画書、本人確認書類が必要です。ただし、「すでに事業をはじめている」など、状況によって異なります。
詳しくは記事内「個人事業主が日本政策金融公庫から借入する際の必要書類」をご覧ください。
日本政策金融公庫の融資が通らない理由は何ですか?
融資の審査に通らない主な理由は、事業計画の甘さや税金・ローン・社会保険の滞納による信用の問題などが考えられます。
詳しくは記事内「個人事業主が日本政策金融公庫の融資審査を通過するためのポイント」をご覧ください。
参考文献
監修 橋爪 祐典(はしづめ ゆうすけ)
2018年から現在まで、税理士として税理士法人で活動。中小企業やフリーランスなどの個人事業主を対象とした所得税、法人税、会計業務を得意とし、相続業務や株価評価、財務デューデリジェンスなども経験している。税務記事の執筆や監修なども多数経験している。
