SaaSとは、ソフトウェアをパソコンにインストールせず、インターネット経由でサービスとして利用する仕組みです。
近年、多くの企業でSaaSを活用した業務効率化が進んでいますが、メリットだけを見て導入を決めてしまうと、コストや運用面で思わぬ失敗を招くことがあります。
本記事では、SaaSの基本的な定義からIaaS・PaaSとの違い、導入のメリット・デメリット、失敗しないための選定ポイントまでをまとめました。
目次
- SaaS「サース」とは?
- SaaS・PaaS・IaaSはサービスの提供範囲が違う
- 企業がSaaSを導入する4つのメリット
- 1.初期費用を抑えてスモールスタートできる
- 2.保守・アップデートが自動で運用負荷を下げられる
- 3.場所を選ばず利用できテレワークや拠点展開に強い
- 4.最新機能を継続利用でき改善サイクルが回しやすい
- SaaS利用時の3つのデメリット
- 1.自社独自要件のカスタマイズが難しい場合がある
- 2.システム障害や停止で業務影響が出るおそれがある
- 3.社内でセキュリティ対策する必要がある
- SaaSをビジネスで活用する具体例
- 1.営業・顧客管理
- 2.コミュニケーション
- 3.バックオフィス
- 失敗しないSaaSを選ぶ5つのチェックポイント
- 1.自社の課題を解決できる機能が揃っているか
- 2.機能とコストのバランスが取れているか
- 3.既存システムやアプリケーションケーションと連携できるか
- 4.サポート対応や技術支援は充実しているか
- 5.どのようなセキュリティ対策を講じているか
- まとめ
- よくある質問
SaaS「サース」とは?
SaaS(サース)とは、ソフトウェアを製品として買い取ってパソコンにインストールするのではなく、インターネット経由で必要な分だけ利用する形態を指します。
従来のオンプレミス型では自社でサーバーを用意してシステムを管理する手間がありました。
しかしSaaSなら、保守運用やセキュリティ対策、データのバックアップなどを提供企業が担ってくれるため、ユーザーはツールを使った業務に集中できます。
ITの知識が乏しい組織であっても、最新のシステムをすぐに使いはじめられる点が魅力です。
SaaS・PaaS・IaaSはサービスの提供範囲が違う
クラウドサービスにはSaaS・PaaS・IaaSという3つの形態があり、それぞれ「どこまでを提供元が管理し、どこからを自社が担うか」といった提供範囲が異なります。
この違いを理解せずにサービスを選ぶと、導入後に想定外の運用負担が発生するケースがあります。
SaaS・PaaS・IaaSの違いは以下のとおりです。
| サービス名 | 主な提供内容 | 利用者の責任範囲 |
|---|---|---|
| SaaS(サース) | そのまま使えるアプリケーションケーション | アカウント管理・入力データの正確性 |
| PaaS(パース) | アプリケーションケーションを開発する土台(OSや開発ツール) | アプリケーションケーションの設計・開発・データ管理 |
| IaaS(アイアース) | サーバーやネットワークの機械資源 | OSの導入からセキュリティ対策・アプリケーションケーション構築まで |
SaaSは3つの中で利用者の管理負担が少なく、迅速に導入できるサービスです。
自社にITの専任者がいない場合や、できるだけ早く業務に使いはじめたい場合は、SaaSを導入するとよいでしょう。
企業がSaaSを導入する4つのメリット
SaaSの登場により高額な初期費用を投じなくても、必要な分だけサービスを利用できるようになりました。ビジネスの現場で実感できる主な4つのメリットは以下のとおりです。
企業がSaaSを導入する4つのメリット
- 初期費用を抑えてスモールスタートできる
- 保守・アップデートが自動で運用負荷を下げられる
- 場所を選ばず利用できテレワークや拠点展開に強い
- 最新機能を継続利用でき改善サイクルが回しやすい
1.初期費用を抑えてスモールスタートできる
SaaSは、初期費用を抑えられる点が魅力です。
従来のソフトウェアは、自社サーバーの設置や高額なライセンス料が必要で、本格稼働まで数ヶ月かかるケースも珍しくありませんでした。
一方でSaaSは月額や年額の定額料金で利用できるため、まずひとつの部署や業務に限定して試すスモールスタートがしやすい構造になっています。
効果を確かめてから全社展開できるため、「導入してみたが合わなかった」といったリスクを抑えられます。
2.保守・アップデートが自動で運用負荷を下げられる
SaaSでは、サーバーの管理やシステムのアップデートをすべて提供元が担うため、自社での保守作業が不要です。
従来のオンプレミス型では、情報システム担当者がパッチ適用やバージョン管理に多くの時間を割く必要がありました。
SaaSに切り替えれば、運用負荷から解放され、本来の業務に人員を集中させられます。
IT専任者がいない中小企業にとってはとくに効果が大きく、「気づいたら古いバージョンを使い続けていた」といった状況も防げます。
3.場所を選ばず利用できテレワークや拠点展開に強い
SaaSはインターネット環境さえあれば、オフィス・自宅・出張先を問わずどこからでも利用できます。
データはクラウド上で管理されるため、特定のパソコンに依存せず、複数の拠点やメンバーがリアルタイムで同じ情報を共有可能です。
テレワークの導入時や、新しい拠点を立ち上げる際にも、ソフトウェアをインストールしたり社内ネットワークを整備したりする手間がかからないため、素早く環境を整えられます。
働き方の変化や組織の拡大に対して、柔軟に対応できる点がSaaSの強みのひとつです。
4.最新機能を継続利用でき改善サイクルが回しやすい
SaaSは提供元が機能のアップデートをするため、常に最新の状態で利用できます。
従来の買い切り型ソフトウェアでは、新機能を使うたびにバージョンアップの費用が発生していましたが、SaaSでは追加コストなしで改善された機能を受け取れます。
法改正への対応も開発元が行うため、インボイス制度や電子帳簿保存法といった制度変更のたびに自社でシステムを改修する必要がありません。
常に最新の環境が維持されるため、業務改善のサイクルを止めずに回し続けられます。
SaaS利用時の3つのデメリット
提供元が管理の責任を負う点は、SaaSのデメリットにもなります。具体的なデメリットは以下のとおりです。
SaaS利用時の3つのデメリット
- 自社独自要件のカスタマイズが難しい場合がある
- システム障害や停止で業務影響が出るおそれがある
- 社内でのセキュリティ対策する必要がある
1.自社独自要件のカスタマイズが難しい場合がある
SaaSは複数の企業が同じシステムを共有して使う仕組みのため、特定の企業だけのために機能を作り変えることは原則できません。
自社特有の業務フローや帳票フォーマットに完全にあわせようとすると、対応できるツールが限られてしまいます。
導入を検討する際は、「ツールにあわせて業務の進め方を見直せるか」を事前に社内で確認しておきましょう。
どうしても変えられない業務ルールがある場合は、SaaSの導入範囲を限定するか、自社サーバーにソフトウェアを設置して運用する、オンプレミスといった方法の検討もおすすめします。
2.システム障害や停止で業務影響が出るおそれがある
SaaSは開発元のサーバー上で動作しているため、開発元側で障害が発生した場合、自社では復旧作業ができません。
そのため、復旧までの間、該当のツールを使う業務が完全に止まってしまうおそれがあります。
システム障害や停止といったリスクに備えるためには、契約前に開発元の過去の障害実績や、サービスの稼働率をどの水準で保証しているかを確認しておきましょう。
また、障害時に業務を継続するための代替手段をあらかじめ決めておくと、万が一の際の影響を最小限に抑えられます。
3.社内でセキュリティ対策する必要がある
SaaSは開発元がシステムのセキュリティを管理しますが、アカウントの管理や社内での利用ルールの整備は自社で行う必要があります。
「開発元に任せているから安全」という認識は誤りで、利用者側の対策が不十分だと情報漏えいのリスクが高まります。
具体的なセキュリティ対策は以下のとおりです。
- 退職者のアカウントを速やかに削除する
- 複数の方法で本人確認を行う多要素認証を設定する
- 会社が許可していないサービスを禁止する
SaaSの導入と同時に、社内の利用ルールを整備するとセキュリティ事故の予防につながります。
SaaSをビジネスで活用する具体例
SaaSは営業・コミュニケーション・バックオフィスなど、幅広い業務領域で活用されています。
ツールの種類によって解決できる課題が異なるため、自社が抱える課題に合ったジャンルから導入を検討するのが効果的です。
代表的な活用ジャンルと、それぞれが解決する課題は以下のとおりです。
| 業務ジャンル | 主な役割 | 解決する課題 |
|---|---|---|
| 営業・顧客管理 | 顧客情報や商談履歴の管理 | 属人化や売上予測のズレ |
| コミュニケーション | チャットやビデオ会議 | メールの埋もれや拠点間の意思疎通不足 |
| バックオフィス | 会計・経費精算・給与計算 | 手入力によるミスや法改正への対応遅れ |
自社の課題が明確であるほど、ツール選定の精度が上がります。
1.営業・顧客管理
営業活動における顧客情報や商談の進捗を一元管理できるSaaSを導入すると、担当者への情報の属人化を防げます。
SaaSを導入していない場合、商談の状況が担当者の頭の中やメモにしか残っておらず、急な休みや退職の際に引き継ぎが滞ることがあります。
SaaSを活用すれば、誰がいつどのような提案をしたかがリアルタイムで記録・共有されるため、チーム全体で営業活動の状況を把握することが可能です。
売上予測の精度が上がり、マネージャーが適切なタイミングでフォローに入りやすくなります。
顧客管理の基本や具体的な方法についてはこちらの記事で解説しているので、あわせて参考にしてください。
2.コミュニケーション
ビジネスチャットやビデオ会議ツールといったコミュニケーション系のSaaSを活用すれば、場所を問わずスムーズな情報共有が実現します。
メール中心のやり取りでは、重要な連絡が他のメールに埋もれたり、返信を待つ間に業務が止まったりといった非効率が生じやすくなります。
チャットツールであれば短いメッセージでテンポよくやり取りできるため、社内の意思決定スピードの向上にもつながるでしょう。
ビデオ会議ツールを使えば、離れた拠点のメンバーとも移動コストをかけずに顔をあわせて話せるため、テレワーク環境や多拠点展開をしている企業におすすめです。
3.バックオフィス
会計・経費精算・給与計算といったバックオフィス業務は、SaaSの導入効果が出やすい領域のひとつです。
手作業による入力ミスや転記ミスを減らせるだけでなく、データが自動で集計されるため、月次の締め作業にかかる時間を短縮できます。
経理や総務の担当者が本来注力すべき業務に時間を使えるようになる点が、バックオフィス系SaaS導入のメリットです。
バックオフィス業務のSaaS導入を検討している場合は、freee会計・freee人事労務をご活用ください。
freee会計は会計・確定申告・請求書発行をブラウザ上で一元管理でき、freee人事労務は給与計算・勤怠管理・年末調整をまとめて処理できます。
失敗しないSaaSを選ぶ5つのチェックポイント
SaaSを選ぶ際は、機能の豊富さや知名度だけで判断すると、導入後に「思っていたものと違う」という状況を招きやすくなります。
自社の課題や運用体制と照らしあわせながら、複数の視点での冷静な評価が重要です。SaaSを選ぶ際に確認すべきチェックポイントは以下のとおりです。
失敗しないSaaSを選ぶ5つのチェックポイント
- 自社の課題を解決できる機能が揃っているか
- 機能とコストのバランスが取れているか
- 既存システムやアプリケーションケーションと連携できるか
- サポート対応や技術支援は充実しているか
- どのようなセキュリティ対策を講じているか
1.自社の課題を解決できる機能が揃っているか
ツールを選ぶ前に、「自社が何に困っているか」を明確にしましょう。
課題が曖昧なまま機能の多さや価格だけで選ぶと、導入後に誰も使わないツールになるおそれがあるためです。
本当に必要な機能と、あれば便利な機能を事前に切り分けておき、前者を満たしているかを最優先に評価しましょう。
カタログ上の機能一覧だけで判断せず、無料トライアルや操作デモを通じて現場の担当者が実際に触れてみると安心です。
2.機能とコストのバランスが取れているか
SaaSは利用を続ける限り費用が発生するため、月額料金の安さだけでなく、数年単位での支払総額を試算しておくことが重要です。
料金体系はユーザー数に応じて課金されるものや、利用量に応じた従量課金など、サービスによって異なります。
とくに注意したいのは、必要な機能が上位プランにしか含まれていないケースです。
初期費用を抑えて契約したものの、使いたい機能を解放するたびにオプション料金が加算され、割高になることがあります。
契約前に想定される利用規模で総額を試算し、他のサービスと比較したうえで判断しましょう。
3.既存システムやアプリケーションケーションと連携できるか
新しいSaaSを導入しても、かえって業務効率が下がることがあります。既存のシステムやツールと連携できなければ、同じデータを複数の場所に入力する二重入力が発生するためです。
導入前に、現在使っているツールとのデータ連携が可能かを確認しておきましょう。
確認するポイントは現在使っているツールとAPIを通じてデータ連携できるかどうか、ひとつのIDで複数のサービスにログインできるシングルサインオンに対応しているかどうかです。
どちらも対応していれば、ツールをまたいだ情報の一元管理がしやすくなり、従業員の操作負担を軽減できます。
4.サポート対応や技術支援は充実しているか
SaaSは自社でシステムを修理・復旧できないため、トラブルが発生した際に提供元のサポートが重要になります。
とくに海外製のサービスを利用する場合、日本語でのサポート窓口があるか、問い合わせへの返答スピードはどの程度かを事前に確認しておくと安心です。
また、導入直後は操作方法や設定に関する疑問が発生しやすい時期です。
マニュアルやヘルプページの充実度に加え、電話やチャットでの個別サポートに対応しているかも選定の判断材料にしましょう。
5.どのようなセキュリティ対策を講じているか
SaaSを導入する際は、提供元がどのようなセキュリティ対策を講じているかの確認が欠かせません。自社の顧客情報や財務データといった重要な情報を預けるためです。
確認の目安として、情報セキュリティの国際規格であるISO27001を取得しているか、データの暗号化や多要素認証に対応しているかを確認しましょう。
また、万が一サービスが終了したり乗り換えが必要になったりした際に、自社のデータを適切な形式で取り出せるかどうかも事前に確認しておくことをおすすめします。
セキュリティ対策の水準は、提供元のウェブサイトやセキュリティホワイトペーパーで確認できる場合が多いため、契約前に目を通しておくと安心です。
まとめ
SaaSは、インターネット経由でソフトウェアを利用するクラウドサービスの一形態です。
初期費用を抑えてすぐに使いはじめられる手軽さや、保守・アップデートを開発元に任せられる運用のしやすさから、企業での導入が進んでいます。
一方で、カスタマイズの制限や障害時の対応、社内のセキュリティ管理といった注意点もあります。
メリットとデメリットを正しく理解したうえで、自社の課題や運用体制と照らしあわせながら導入を検討することが重要です。
バックオフィス業務へのSaaS導入を検討している場合は、freee会計をご活用ください。
会計・経費精算・請求書発行などの業務を一元管理でき、インボイス制度や電子帳簿保存法にも対応しています。
よくある質問
SaaSとは何ですか?
SaaSとは、ソフトウェアをパソコンにインストールするのではなく、インターネット経由でサービスとして利用する仕組みのことです。
月額や年額の定額料金で利用できるサブスクリプション形式が一般的で、サーバーの管理や保守はすべて開発元が担うため、専門知識がなくても導入できます。
詳しくは記事内「SaaS「サース」とは?」をご覧ください。
SaaSの身近な例は?
SaaSの身近な例としては、ビジネスチャットツール・ビデオ会議システム・会計ソフト・顧客管理システムなどが挙げられます。
freeeが提供するサービスもSaaSのひとつです。
たとえばfreee会計は会計・確定申告・請求書発行などの業務をブラウザ上で完結でき、freee人事労務は給与計算・勤怠管理・年末調整をまとめて管理できます。
詳しくは記事内「SaaSをビジネスで活用する具体例」をご覧ください。
