経営資源の再配置を加速 ネイキッドが実践する「人にしか生み出せない価値」への集中戦略

ネイキッド 執行役員 経営企画戦略室 財務・人事 北原岳史氏、ネイキッド 情報システム 矢部七佳氏、フリー SMB事業本部 第4事業部 広告・メディア・制作セグメントチーム 木之下隆人氏

課題
経営の課題をリアルタイムに把握初心者でも経理や労務を簡単にバックオフィスの体制構築・効率化販売管理を楽にしたい分散しているツールを一元化

 京都の世界遺産・元離宮二条城をアートで彩る夜間イベントや、東京タワー、マクセル アクアパーク品川をはじめ日本各地のランドマークを舞台にした没入型体験など、アートテクノロジーで新たなシーンを生み出し続けるネイキッド。クリエイティブの領域で生成AIが台頭する今、人の手によってしか創出できない価値と向き合い続けている。クリエイションに多くのリソースを充てるべく、バックオフィス業務のDXにも抜かりがない。Biz/Zineでは同社の担当者らを取材し、財務会計管理の強化や業務効率化に至るまでのプロセスに迫った。


DXで捻出したリソースをクリエイションに充てる

――はじめに、ネイキッドの事業概要をお聞かせください。

北原(ネイキッド): アートイベントの企画・制作や、クリエイションの知見を活用した企業コンサルティング事業、地域共創事業を手がけています。2025年7月末から、世界遺産の元離宮二条城で開催される夜間アートイベント「NAKED meets 二条城 2025 夕涼み」の企画・演出・制作も我々の仕事です。


株式会社ネイキッド

ネイキッド 執行役員 経営企画戦略室 財務・人事 北原岳史氏

――コロナ禍を経て、オフラインイベントはどこも活況を呈しているようです。御社のビジネスを取り巻く環境がどのように変化しているか、お話しいただけますか?

北原(ネイキッド): 当社比で見ても、人流はコロナ禍以前の水準まで回復傾向にあります。訪日外国人観光客の数が増えたほか、海外におけるイベント需要の高まりも感じているところです。


株式会社ネイキッド

NAKED meets 二条城 2025 夕涼みの作品「Twilight Bloom – A Summer Tale」

――クリエイションを語る上で、生成AIの台頭は無視できません。テクノロジーの進化にともない、御社の制作物に求められるレベルも上がっているのでしょうか。

矢部(ネイキッド): 当社のミッションは「最先端のアートテクノロジーを取り入れながら、時代や社会に新たな価値を提案していくこと」です。生成AIも取り入れつつ、人の手によってしか生み出せない価値をいかに作り上げていくか。この点に向き合う必要性を感じています。


株式会社ネイキッド

ネイキッド 情報システム 矢部七佳氏


矢部(ネイキッド): 生成AIをはじめとするテクノロジーは、効率化や時短というメリットをもたらします。DXで捻出したリソースを、クリエイションや価値の創出に充てられる体制も構築しなければなりません。


CRMツールを用いた案件管理に限界を感じた

――DXの話題が出たところで、バックオフィス業務の課題をうかがえますか?

北原(ネイキッド): 管理会計の非効率性が課題でした。月次決算の遅延がその代表例です。以前は担当の税理士に毎月の決算を委託していたのですが、報告のタイミングが翌月の半ばにずれ込むため、前月の収支を把握するしかない状況でした。これでは事業の状況把握に遅れが生じ、戦略や方針の意思決定においても時期を逸してしまうリスクがありました。柔軟な戦略実行やタイムリーな意思決定を可能にするためにも、売上や収支をリアルタイムに把握できる環境が必要でした。


矢部(ネイキッド): 案件管理に費やされるリソースやコストも課題の一つでした。これまでは、CRMツール上で案件に売上や原価を紐づけて、プロジェクトごとの収支を管理していました。イベントの企画・運営やコンサルティングサービスは非定型商材のため、プロジェクトごとに原価や収支が異なります。その管理に用いていたCRMツールがコスト増の要因になっていたのです。元々高価な製品だったことに加え、仕様の複雑さゆえにシステムの改修や機能追加には外部ベンダーへの委託が必須でした。それらに費やされる費用や手間は少なくなく、コスト増につながっていました。

――いまお二人からうかがったようなバックオフィス業務の課題は、同業他社でも生じているのでしょうか?

木之下(フリー): 私は日頃から広告代理業/コンテンツ制作業のクライアントと対峙していますが、案件管理にまつわるコストは、非常に多くの企業で共通する経営課題としてよく耳にします。矢部さんが指摘されたとおり、この業界ではプロジェクトごとの収支管理が欠かせません。しかし、その管理を統合的に行えている企業は、実は多くありません。


株式会社ネイキッド

フリー SMB事業本部 第4事業部 広告・メディア・制作セグメントチーム 木之下隆人氏


木之下(フリー): ネイキッド様のケースとは異なりますが、売上と原価を別のシステムで管理していたり、スプレッドシートの案件管理のデータを手作業で会計システムに連携していたりする企業は少なくないです。こうした非効率の解消は、バックオフィス業務の負担を軽減し、企業の競争力を高める上で避けて通れない課題だと考えます。


圧倒的な使いやすさが現場のDXを加速

――先にうかがった課題を踏まえ、ネイキッドでは「freee会計」「freee人事労務」「freee販売」を導入されたそうですね。

北原(ネイキッド): 最初に導入したのはfreee会計です。導入の最大の狙いは、月次決算の早期把握でした。従来は担当の税理士に任せていた業務を内製化し、お金の動きをリアルタイムで把握できる体制を目指しました。


株式会社ネイキッド


北原(ネイキッド): freee会計を選定した最大の理由は、ユーザビリティの高さにあります。導入にあたっては複数の会計システムを比較しましたが、freee会計の操作性やわかりやすさは、頭一つ抜けていました。会計や財務にそれほど詳しくなくても、仕分け入力などの操作が難なく行える点は魅力でした。


 続いて導入したのがfreee人事労務です。freee会計の導入をきっかけに、バックオフィス業務を可能な限りfreee製品に集約したいと考え、既存の給与システムをfreee人事労務に移行しました。


矢部(ネイキッド): 最後に導入したのがfreee販売でした。導入の目的は、案件管理を行なっていたCRMツールのリプレイスです。既存のCRMツールは仕様が複雑だったのに対して、freee販売は機能やUIがシンプルでわかりやすく、SE経験のない私でも難なく運用できそうな点に魅力を感じました。


複数製品を連携して管理と処理がシームレスに

木之下(フリー): freee販売に限らず、当社の製品は財務や会計、人事労務などの専門的な知識を持たないお客様でも、容易に利用できるよう設計されています。そのため、業務の標準化や属人化の解消を促しやすく、バックオフィス業務の抜本的な見直しに役立ちます。


 また、製品間の連携も可能なため、システムごとに分断されがちな業務をシームレスにつなげることができ、転記作業やダブルチェックなどの非効率な作業を大幅に削減できます。業務効率化に加え、システムの運用や開発の内製化を目指していたネイキッド様には、非常にフィットしやすい製品だったのではないかと自負しています。

――それぞれの製品をどのように活用しているのか、お聞かせいただけますか?

北原(ネイキッド): freee会計は、月次決算をはじめとしたお金の流れをリアルタイムで把握するツールとして利用しています。freee人事労務は給与システムとして活用し、freee会計とデータを連携して会計処理を効率化しました。さらにfreee販売では、従来はCRMツールで行っていた案件管理やそれに紐づく収支管理を行っています。


矢部(ネイキッド): 具体的には、見込み顧客からの問い合わせを受けた段階でfreee販売に案件情報を登録し、その後の見積書や請求書の発行、売上や工数の管理などを一貫してfreee販売で行っています。これにより、見積書と請求書の突き合わせや紙の文書への押印など、従来発生していた数多くのアナログな業務がシステム上で実施できるようになりました。運用も内製化されており、以前は発生していた外部ベンダーへの委託などが不要になったことから、大幅なコスト減を実現しています。


内製化によってコスト意識や意思決定に変化が

――freee製品の導入により、経営や事業にどのような効果がありましたか。

北原(ネイキッド): freee会計に関して言えば、定量的なデータに基づく意思決定や議論がしやすくなったと感じています。freee会計の導入によって、お金の動きをリアルタイムで把握できるようになりましたし、何より過去の実績との比較が容易になりました。


 たとえば「売上は継続的に伸びているのに、粗利が伸びていないのはなぜか」「人件費の投資対効果はどのくらいか」といった緻密な議論が可能になっています。これは、決算を外注していた頃には実現できなかったことです。事業を伸ばすにあたり、仮説の設定と検証のサイクルは欠かせません。定量的なデータに基づいた仮説を立てられるようになったことは、今後事業を拡大していく上で大きな武器になると思います。


矢部(ネイキッド): freee販売については、従業員のコスト意識を高める効果があると感じています。従来、案件管理を行なっていたCRMツールは高価だったため、案件を担当するプロデューサーのみに利用が限られ、活用範囲も限定的でした。しかし、現在は組織編制の変更やライセンス配布のしやすさなどを背景に、freee販売を他の製品と連携して活用しています。その結果、より多くの従業員が案件ごとの収支に自然と関心を持ち、当事者意識を持って業務に取り組むようになりました。freee製品はUIがわかりやすく、管理項目の意図もヘルプマークで直感的に把握できるため、案件に対する理解が組織全体で深まりつつあると感じます。


(BizZine 2025年7月 掲載記事より転載/抜粋)


株式会社ネイキッド