兵庫県神戸市を拠点に、多様な福祉事業所を展開する株式会社PLAST。複数の拠点を運営しながらもバックオフィスは事務担当1人で担っており、年々増大する勤怠管理や給与計算などの業務負担が課題となっていました。
こうした状況を改善するため、同社はfreee人事労務(アドバンスプラン)とその雇用契約オプションを導入。すでに導入していたfreee会計と連携してバックオフィスを一元化することで、従業員120名分の労務・会計を、1人で安定的に管理できる体制を築いています。また、人件費の管理体制を整備できたことで、現場が納得しやすい人員配置にもつながったといいます。
今回は、同社で人事部門を統括している常務取締役の大谷紘一郎様に、freee人事労務導入の決め手や効果、組織拡大を見据えた今後の展望について伺いました。
想定された課題
・ 給与ルールが事業所やスタッフごとに異なり、社労士の負担が大きい
・事業所単位の人件費を把握できず、採用や配置の判断材料が不足
導入の決め手
・事業所やスタッフごとの細かい給与ルールの違いに柔軟に対応できる
・雇用契約オプションにより、雇用書類の作成・配布もfreee上で完結できる
導入後の効果
・事業所単位の人件費を正確に把握でき、予算管理や採用判断の精度が向上
・帳票管理機能により、年10回行う助成金申請の作業が大幅に効率化
8営業所のバックオフィスを事務1名で担当。月の前半は勤怠管理に追われ、社労士にも大きな負荷
――freee人事労務の導入以前、バックオフィスにどのような課題があったのでしょうか?
大谷紘一郎さん(以下、大谷): 当時はすでに8つの事業所を運営していましたが、バックオフィスは事務担当1名でした。加えて、勤怠管理がExcelを用いた手作業中心だったこともあり、事務担当の負担が大きな課題でしたね。
勤怠管理の業務フローとしては、各事業所のスタッフが記録した勤怠データを事務担当が集計し、不備があればスタッフ本人と現場責任者に確認。修正をしてから、最終的に社労士へ提出していました。しかし、入力漏れや誤記も多く、さらには社労士に提出した後で再度修正が入ることもあり、振込直前まで作業が長引くことも珍しくなく……。月の前半は、ほぼ勤怠確認に追われていました。
――現場の担当者と社労士、両方の確認作業で工数がかかっていたのですね。
大谷: そうですね。また、事業所ごとに異なる給与体系も社労士の負担となっていました。
例えば、同じ看護師でも訪問部門とデイサービスでは給与のルールが異なります。異動の際は原則異動先のルールを適用しますが、例外的に異動前の給与体系を引き継ぐこともしばしばで……。「このスタッフは、どのルールを適用するのか」を都度確認する必要がありました。こうした独自のルールにあわせた調整が、社労士にとって負担の大きい業務だったと思います。
――取締役として、経営面で感じていた課題はありますか?
大谷: 事業所ごとの人件費を正確に把握できない点に悩んでいました。
freee人事労務を導入する前の仕組みでは、全社として人件費の合計しかわからず、経営判断に必要な数値が得られなかったのです。福祉事業では人件費が重要な経営指標であるため、戦略的な人員配置や採用判断につなげにくい状況は大きな課題でした。
勤怠・給与・会計の一元管理へ向けてfreee人事労務を導入。3ヶ月の伴走でスムーズに本稼働へ
――freee人事労務を導入した理由を教えてください。
大谷: 以前使っていたシステムでは給与計算ができなかったので、その点を解決できる手段として検討しました。すでにfreee会計を利用していたので、freee人事労務を連携することで勤怠管理から給与計算、会計処理までを1つのプラットフォームで完結できる点も魅力的でした。
また、以前のシステムで雇用契約書などの文書配布を行っていたため、その流れを継続できる雇用契約オプションもあわせて導入しました。
――導入はどのような流れで進めましたか?
大谷: freeeのカスタマーサポートの方に3ヶ月ほど伴走していただき、週1回の打ち合わせを重ねながら進めました。「今週は給与ルールの登録、翌週はテスト計算」というように、毎週やるべきことを整理していただいたことで、通常業務があるなかでも円滑に準備を進められました。こちらの理解度や予算に合わせて、サポートの頻度や方法を調整いただけたのも助かった点です。
運用開始から2ヶ月ほどは、これまで通り社労士に給与計算を依頼しつつ、同時にfreeeでも同じ計算を行って 、結果が一致するか確認していきました。従来のデータを残した状態で、設定ミスがないことを確認してから切り替えることができたので、移行中も安心できましたね。
毎月15日までかかっていた勤怠・給与業務が、月の初週で完結するように。経営判断にも役立つfreee人事労務
――freee人事労務の導入によって、現場ではどのような変化がありましたか?
大谷: 最大の変化は、勤怠管理の流れをfreee上で仕組み化できたことです。
まず、月末から月初にかけての6日間だけスタッフに勤怠を編集できる権限を付与し、その間に本人が修正・申請を行います。その申請内容を現場責任者が確認して、最後に事務担当が承認するというルールに統一しました。
事務担当からの連絡を待つのではなく、スタッフ自身が期限内に修正を完了するという仕組みが、一人ひとりの当事者意識を高め、入力ミスによる手戻りや確認が減少しました。
Excelで管理していたころは、「夏期休暇の2日間を有給休暇として入力してしまう」といったミスも頻発していましたが、freee人事労務で項目を選択できるようになってからは、そういった区分ミスもほとんど見られなくなっています。
こうした仕組み化により、事務担当が入力漏れや誤入力の修正に追われる状況が解消され、勤怠データを予定通りに確定できるようになりました。従業員120名分の勤怠データの集計・確定作業も事務担当1人で安定して対応できるようになり、他のバックオフィス業務にも取 り組める時間も増えました。
――以前は、複雑な給与計算から社労士にも大きな負担がかかっていたとのことですが、freee人事労務を導入してどのように変わりましたか?
大谷: 給与計算がfreee人事労務で完結できるようになったことで、社労士に依頼する業務の比重が変わりました。
以前は毎月のルーティーンとしての給与計算作業が中心でしたが、今は助成金申請や監査対応など、より専門的な知見を必要とする業務に注力していただいています。何かあったときに経営や制度面で相談できる、心強いパートナーとしての関係を築くことができました。
――経営面での意思決定においても、freee人事労務をご活用いただいてますね。
大谷: freee会計との連携で人件費を事業所ごとに出せるようになったので、具体的な根拠をもって、採用や人員配置の判断ができるようになりました。
現場から「スタッフを増やしてほしい」といった相談があった際にも、人件費の目安を数値で示せるので、お互いに納得感のある形で共有できています。
また、事業所単位での採算管理や予算策定にも活用できています。新規拠点立ち上げでは「この規模なら人件費はこれくらい」と見積もれますし、既存施設の採用においても「正社員は難しいがパートなら可能」といった判断を数値に基づいて行うことができ、中長期的な人員計画や事業戦略の立案にも役立っています。
――福祉事業所ならではのfreee導入による効果が他にもあれば教えてください。
大谷: 帳票管理機能のおかげで、助成金申請が格段に楽になりました。
年に10回ほど助成金申請の作業が発生するのですが、以前はExcelの出勤簿を1枚ずつ印刷したり、社労士から賃金台帳を取り寄せたりと、書類を揃えるだけでも骨が折れました。今は必要な書類をfreeeから簡単に出力できるので、作業時間の短縮はもちろん、精神的な負担も大きく軽減されています。
行政の担当者からの質問対応についても、以前は事務担当や社労士に確認して回答があるまでに時間がかかっていましたが、現在はfreee人事労務に情報が集約されているので、やり取りがスムーズになりましたね。
早めの導入が事業拡大を助ける。リハビリモンスターの全国展開に向けての展望
――今後の事業展開について、どのようなビジョンを描かれていますか?
大谷: 事業規模の拡大と、拠点地域におけるニーズへの対応を両立させていきたいと考えています。
特に、リハビリ専門デイサービス「リハビリモンスター」については、コンサル事業なども含めた全国展開を視野に入れています。今の事業所で築いたモデルをもとに、他県でも同様の課題を抱える高齢者に価値を届けることが目標です。
一方で、障害福祉の分野では、まだ拠点地域で応えられていないニーズも多いので、直営施設の拡充によって必要な サービスを広げていきたいと考えています。
事業拡大に伴って従業員増加が見込まれるなか、freeeは安心して発展を続けるための土台として欠かせない存在です。
――導入前の貴社と同じような課題を持つ企業にメッセージをお願いします。
大谷: バックオフィスへの投資は後回しにされがちですが、早めに整えるメリットは非常に大きいです。
特に福祉事業は、事業の拡大とともに採用人数が自然と増えていくため、バックオフィスの体制が追いつかなくなるリスクがあります。導入が遅くなるほど、システム切り替えの負担も大きくなってしまうでしょう。
私たちは、人が増えても安定してバックオフィスが回る仕組みを早期に整えたことで、安心して事業拡大に踏み出せました。将来的な事業拡大を見据えている福祉事業所には、freeeのような業務改善ツールを早めに導入することを強くおすすめします。