
カフェテリアプランとは、企業が従業員にポイントを付与し、従業員はその範囲内で企業が用意した多様な福利厚生メニューから、好きなものを選んで利用できる制度です。従業員の多様なニーズに応える柔軟な制度で、従業員の満足度向上や採用力強化につながることから注目されています。
本記事では、カフェテリアプランについて詳しく説明します。導入の参考にしてください。
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目次
- カフェテリアプランとは
- カフェテリアプランが注目されるようになった背景と理由
- カフェテリアプランの仕組み
- ポイントの付与
- 福利厚生メニューの選択・ポイント利用
- 運営形態
- カフェテリアプランのメニュー例
- カフェテリアプランのメリット
- 企業側のメリット
- 従業員側のメリット
- カフェテリアプランのデメリット
- 企業側のデメリット
- 従業員側のデメリット
- カフェテリアプラン導入・運用の流れ
- 1. プランの設計・構築
- 2. 運用手法の確定
- 3. 従業員に対するガイダンス
- 4. フィードバックと改善
- カフェテリアプランの課税・非課税の考え方
- カフェテリアプランとパッケージプランの違い
- カフェテリアプランの導入・運用を外部委託するメリット
- 専門的な知識とノウハウを活用できる
- 社内の運用管理の負担を軽減できる
- 従業員満足度の向上につながるサービスを提供できる
- コストを削減できる
- まとめ
- よくある質問
カフェテリアプランとは
カフェテリアプランとは、企業が従業員にポイントを付与し、従業員はその範囲内で企業が用意した多様な福利厚生メニューから、好きなものを選んで利用できる制度です。
「カフェテリアプラン」という名称は、好きなメニューを選んで注文できる「カフェテリア」に由来しています。ほかにも、選択型福利厚生制度と呼ばれることがあります。
従業員の多様化するライフスタイルやニーズに応えるための制度として、カフェテリアプランは注目が集まっている制度です。
カフェテリアプランが注目されるようになった背景と理由
カフェテリアプランは、1970年代にアメリカで誕生しました。医療コストの上昇や多様化する従業員ニーズへの対策として始まったとされています。
日本で初めてカフェテリアプランが導入されたのは、1995年といわれています。旧来の福利厚生制度は、社宅や寮など一部の従業員しか恩恵を受けられないものが一般的でした。そのため、福利厚生に公平性を持たせる手段が求められていたことが、当時日本でカフェテリアプランが注目された理由です。
カフェテリアプランは近年再び注目されており、主に以下のような社会の変化が影響しています。
- 従業員の価値観・ライフスタイルの多様化
- 従業員エンゲージメント・満足度向上の必要性
- 健康経営・ウェルビーイングへの関心の高まり
- 従来の福利厚生制度の限界
カフェテリアプランの仕組み

カフェテリアプランの仕組みについて、さらに詳しく説明します。
ポイントの付与
カフェテリアプランのポイントは、企業が従業員に対して年度ごとなどに一定付与するのが一般的です。
企業によっては、勤続年数や役職に応じて付与するポイント数が異なる場合があるケースもあります。
福利厚生メニューの選択・ポイント利用
従業員は専用のWebサイトやカタログから提供されている福利厚生メニューを確認し、利用したいものを選択できます。選択したメニューの利用時に、ポイントで精算します。
ポイントには有効期限が設けられているケースもあります。
運営形態
カフェテリアプランは自社で運営する場合と、福利厚生代行サービス会社にアウトソーシングする場合があります。福利厚生代行サービス会社には、リロクラブやベネフィット・ワンなどが挙げられます。
一般的には、アウトソーシングするケースが多くなっています。運用の手間を大幅に削減できる、専門知識を活かした最適な制度設計を依頼できるといった点が理由です。
カフェテリアプランのメニュー例
カフェテリアプランで提供されるメニューは、企業や導入している代行サービスによって多種多様です。
その中から、一般的なメニューカテゴリーと具体例をいくつか紹介します。
カテゴリー | 例 |
---|---|
ヘルスケア関連 | ・人間ドック・健康診断の補助 ・スポーツジム利用補助 ・健康グッズ購入補助 ・メンタルヘルス相談 ・禁煙外来補助など |
自己啓発・スキルアップ関連 | ・書籍購入補助 ・資格取得費用補助 ・語学学習・ビジネスセミナー受講料補助など |
育児・介護支援関連 | ・ベビーシッター・託児所利用 補助 ・保育料・学童保育費用補助 ・介護サービス利用補助 ・介護用品購入補助など |
生活支援関連 | ・食事補助 ・住宅ローン補助 ・引越し費用補助 ・家事代行サービス補助など |
娯楽・リフレッシュ関連 | ・旅行・宿泊費用補助 ・レジャー施設・映画館利用補助 ・スポーツ観戦チケット補助 ・リラクゼーション利用補助など |
カフェテリアプランのメリット
カフェテリアプランを導入するメリットを、企業側と従業員側のそれぞれの目線で解説します。
企業側のメリット
企業側のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
従業員の満足度を向上させやすい
従業員の多様なニーズに応えることで、従業員の会社に対する満足度・エンゲージメントが高まり、人材の定着・リテンションにつながります。
全従業員にポイントが付与され、各自が利用したいメニューを選べるため、従来の画一的な制度よりも従業員が公平感を得やすく、満足度向上につながりやすいのが特徴です。
採用力強化のポイントになる
多様なメニューをそろえるカフェテリアプランを導入していると、福利厚生制度が充実している企業というポジティブな印象を与えられます。
これは、採用活動において企業の魅力を伝える際のアピールポイントになります。
福利厚生費を最適化できる
カフェテリアプランは、従業員一人あたりに付与するポイントを明確に設定できるため、予算管理や福利厚生コストの総額管理がしやすくなります。
提供するサービスを絞った福利厚生の場合、利用されずに無駄な支出となることもありますが、カフェテリアプランなら従業員自身がメニューを選択できるため、無駄を抑制できるのもポイントです。
従業員側のメリット
従業員側のメリットとして挙げられるのは、以下のとおりです。
一人ひとりに必要な福利厚生サービスを自由に選択できる
自身のライフスタイルや価値観、ライフステージに合わせて、本当に必要とする福利厚生サービスを選べる点は、従業員にとって大きなメリットです。
福利厚生を利用しやすい
カフェテリアプランはポイント制で利用でき、手続きも比較的容易な場合が多いため、利用しやすいといったメリットもあります。
とくにWebで利用が完結できる制度の場合、忙しい従業員も気軽に利用でき、満足度が高くなりやすいといえるでしょう。
カフェテリアプランのデメリット
カフェテリアプランのデメリットについても、企業側と従業員側それぞれの目線で解説します。
企業側のデメリット
カフェテリアプランの企業側のデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
さまざまなコストがかかる
カフェテリアプランを導入する場合、制度設計、システム導入、外部委託費用、継続的な運用管理といったコストと手間がかかります。継続的なコスト・手間として、メニュー更新や問い合わせ対応などもあります。
また、運用管理についても、従業員ごとのポイント管理、利用実績の集計、精算処理など、従来の福利厚生より管理業務が複雑になるケースが少なくありません。
制度内容や利用方法を全従業員に周知し、理解・利用を促進するための説明会開催や資料作成などの負担も生じます。
メニュー設計が難しい
すべての従業員のニーズを完全に満たすメニュー設計が難しいという問題もあります。
従業員に満足してもらうための適切なメニューを用意する必要がありますが、すべての従業員のニーズに完璧に応えることは困難です。特定のメニューに偏ってしまう可能性もあります。
従業員側のデメリット
従業員側のデメリットとしては、以下のようなものがあります。
課税リスクがある
選択するメニューによっては給与所得として課税対象になる場合があります。
詳しくは次の「カフェテリアプランの課税・非課税の考え方」で解説します。
ポイント失効のリスクがある
多くの場合、ポイントに有効期限が設定されているため、期限内にポイントを利用しきれずに失効する可能性があります。
カフェテリアプラン導入・運用の流れ
カフェテリアプランを企業に導入し、実際に運用していくための基本的なステップは以下の通りです。これらの各段階を着実に進めることで、従業員満足度の高いカフェテリアプランの実現が期待できます。
1. プランの設計・構築
まずは企業の目的や予算、従業員のニーズにあわせて、カフェテリアプランの全体像を設計します。
どのようなメニューを提供するのか、各メニューにどれくらいのポイントを割り当てるのかなどを具体的に決定します。この段階で従業員へのアンケート調査などを実施し、ニーズを正確に把握することも重要です。
2. 運用手法の確定
次に設計したカフェテリアプランをどのように運用していくかを決定します。自社でポイント管理システムを構築・運用するのか、あるいは専門の外部業者に委託するのかを検討します。
運用ルールの策定や利用対象者の範囲、ポイントの付与基準などもこの段階で明確にします。
3. 従業員に対するガイダンス
導入するカフェテリアプランの内容や利用方法について、従業員に対して丁寧に説明し、理解を促します。
説明会を実施したり、わかりやすいマニュアルを作成・配布したりすることが効果的です。従業員がスムーズにプランを利用開始できるようにサポートします。
4. フィードバックと改善
カフェテリアプランの導入後は、定期的に従業員からのフィードバックを収集します。フィードバックを踏まえて、カフェテリアプランの内容や運用方法について見直しと改善を実施していきます。
利用状況の分析や満足度調査などを通じて課題点を把握し、改善を重ねていくことで、より従業員にとって魅力的なカフェテリアプランへと進化させることが可能です。
カフェテリアプランの課税・非課税の考え方
カフェテリアプランのポイントが課税か非課税かについては、国税庁が次のような見解を示しています。
従業員に付与されるポイントについては、現に従業員がそのポイントを利用してサービスを受けたときに、その内容に応じて課税・非課税を判断するものとして差し支えないと考えられます。ただし、企業の福利厚生費として課税されない経済的利益とするためには、役員・従業員にとって均等なものでなければならないことから、役員・従業員の職務上の地位や報酬額に比例してポイントが付与される場合には、カフェテリアプランの全てについて課税対象となります(所得税基本通達36-29)。課税されない経済的利益は企業から現物給付の形で支給されるものに限られますので、ポイントを現金に換えられるなど換金性のあるカフェテリアプランは、その全てについて課税対象となります。
つまり、カフェテリアプランのポイントは、利用内容に応じて課税・非課税を判断する必要があります。
地位や役職によって付与するポイントが変化する場合は、課税対象です。換金性のあるメニューも課税対象になります。
このほか、よくあるサービスは次のように課税・非課税と判断されるケースが一般的です。
課税対象になるケースが多いメニュー
- 商品券、ギフトコード、食事券
- 宿泊施設のチケット
- 高額な旅行プラン
- 従業員の個人的な習い事にみなされるスクール費用など
非課税対象になることが多いメニュー
- 在宅勤務環境の整備・在宅勤務に使用したもの
- ワーキングスペースの利用
- 業務に関係する書籍、セミナー費用
- 健康診断や人間ドックの費用補助・医療関連費用
- 育児・介護関連の費用補助
カフェテリアプランとパッケージプランの違い
パッケージプランとは、企業側が福利厚生メニューをあらかじめ選定・パッケージ化し、全従業員に一律で提供する伝統的な福利厚生制度のことです。具体的には、保養所、社員旅行、特定の施設の割引などがあります。
カフェテリアプランとパッケージプランの違いの主な違いは下表のとおりです。
カフェテリアプラン | パッケージプラン | |
---|---|---|
選択権 | 従業員 | 企業 |
柔軟性 | 個々の従業員のニーズに対応しやすい | 画一的 |
公平性 | 機会・結果(満足度)の公平性につながりやすい | 利用しない人には恩恵がない |
運営管理のしやすさ | やや煩雑 | 比較的シンプル |
企業の規模、従業員の構成、福利厚生に関する方針、かけられる予算などにあわせてどちらが適しているか検討してください。
カフェテリアプランの導入・運用を外部委託するメリット
ここまでカフェテリアプランの仕組みやメリット、導入・運用の流れなどについて解説しましたが、自社だけでカフェテリアプランの運用体制を整えることは容易ではありません。
そこで、カフェテリアプランの導入・運用を専門の外部業者に委託するといった手段があります。自社ですべてをまかなう場合と比べて、より効率的かつ効果的な制度運用が期待できます。
カフェテリアプランの導入・運用を外部委託するメリットを紹介します。
専門的な知識とノウハウを活用できる
カフェテリアプランの導入・運用に関する専門業者は、カフェテリアプランの豊富な専門知識や多様な導入事例に基づいたノウハウを保有しています。
これにより、課税・非課税の区分などの法的な要件を遵守しながら、自社の状況や従業員のニーズに最適化されたプラン設計やメニュー構成など、的確なアドバイスを受けられます。
社内の運用管理の負担を軽減できる
カフェテリアプランの運用には、ポイント管理や利用申請の受付、精算処理などを行うためのシステムが不可欠です。これらのシステムを自社で開発・保守・運用するには、相応のコストと人的リソースが必要となります。
外部委託することで、このようなシステム関連の負担を大幅に軽減し、本来のコア業務に注力できるのもメリットのひとつです。
従業員満足度の向上につながるサービスを提供できる
専門の外部業者は、多様な提携サービスやスケールメリットを活かした魅力的な福利厚生メニューを提供できるのが特徴です。
また、従業員からの問い合わせ対応や利用促進のためのサポートなども代行してくれるため、従業員はよりスムーズかつ快適にカフェテリアプランを利用できるようになります。結果として、従業員の満足度向上につながりやすくなるのです。
コストを削減できる
カフェテリアプランの制度設計から日々の運用、問い合わせ対応までを一括して委託することで、社内の担当者の業務負担を大幅に削減できます。これにより、人件費を含む運用コスト全体の最適化も期待できます。
まとめ
カフェテリアプランは、従業員の多様なニーズに応える柔軟な制度です。従業員の満足度向上や採用力強化といったメリットが期待できます。
ほかの福利厚生制度との違いやコスト・手間をしっかり理解したうえで、導入を検討しましょう。
よくある質問
カフェテリアプランとは?
カフェテリアプランとは、企業が従業員にポイントを付与し、従業員はその範囲内で企業が用意した多様な福利厚生メニューから好きなものを選んで利用できる制度です。
詳しくは、記事内の「カフェテリアプランとは」をご覧ください。
カフェテリアプランの仕組みは?
カフェテリアプランは、企業から従業員にポイントが付与され、従業員が専用のWebサイトやカタログから利用したいメニューを選択すると、メニューの利用時にそのポイントから精算される仕組みです。
カフェテリアプランの仕組みについては、「カフェテリアプランの仕組み」をご覧ください。
カフェテリアプランで利用するサービスは非課税?
カフェテリアプランで利用するサービスは、その性質によって課税のものと非課税のものとに分類されます。
記事内の「カフェテリアプランの課税・非課税の考え方」で詳しく解説しています。