監修 中村 桂太 特定社会保険労務士
6時間勤務の際の休憩時間は、「6時間ぴったり」か「6時間を1分でも超えるか」でルールが大きく変わります。6時間以内であれば休憩なしでも違法ではありませんが、6時間をすぎて1分でも働いた場合は45分以上の休憩付与が必要です。
この違いを正しく理解していないと、「少しだけ残業しただけなのに休憩の未取得で違法状態」という状況が起こり得るため注意しなければなりません。本記事では、6時間勤務における休憩時間の考え方や注意点をわかりやすく解説します。
目次
- 6時間勤務の休憩時間は「ぴったり」か「超える」かで変わる
- 「休憩なしで6時間勤務」が違法となる落とし穴
- CASE1:合法(休憩なしOK)な場合
- CASE2:違法(休憩なしNG)となる場合
- 違法にならないための対策
- 休憩時間に関する「3つの原則」
- 原則1:途中付与の原則
- 原則2:一斉付与の原則
- 原則3:自由利用の原則
- 6時間勤務の休憩に関するよくある疑問
- 雇用形態によって休憩ルールは変わる?
- 休憩時間は給与(時給)の対象になる?
- 45分の休憩は30分と15分に分割できる?
- 休憩時間のルールに違反した場合のペナルティ
- 長時間勤務時の休憩の考え方
- 労働基準法とは
- 労働契約法の安全配慮義務とは
- まとめ
- 勤怠管理をカンタンに行う方法
- よくある質問
6時間勤務の休憩時間は「ぴったり」か「超える」かで変わる
就業中に休憩が必要かどうかは、「労働時間が6時間を超えているか否か」で判断されます。労働基準法では、休憩時間について以下のように定めています。
使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
労働時間が6時間ぴったり、もしくは6時間未満の場合には、休憩時間を付与する法的義務は発生しません。つまり、休憩が「0分」であっても違法にはならないということです。
| 労働時間 | 最低休憩時間 | 法的根拠 |
|---|---|---|
| 6時間 | 0分 | 休憩付与の義務なし |
| 6時間+1分以上 | 45分 | 労基法第34条 |
| 8時間 | 45分 | 労基法第34条 |
| 8時間+1分以上 | 1時間 | 労基法第34条 |
注意すべきは、6時間を1分でも超えると45分以上の休憩を付与しなければならない点です。勤務シフトを作成する際や、実際の労働時間が予定より長引く可能性がある場合は、気をつけましょう。
「休憩なしで6時間勤務」が違法となる落とし穴
6時間勤務の場合、休憩を与えなくても違法とはなりません。しかし、想定外に業務が延びて労働時間が6時間を超えてしまうと、休憩を付与していない状態が違法になる恐れがあるため注意が必要です。
CASE1:合法(休憩なしOK)な場合
労働基準法第34条では「6時間を超える場合」に休憩を付与する義務が発生すると定められているため、6時間以内であれば休憩を与えなくても法律違反にはなりません。
具体的には、以下のようなケースです。
「休憩なしで6時間勤務」が合法なケース
- シフト:9:00〜16:00(実働6時間、休憩1時間)
- シフト:9:00〜15:00(実働6時間、休憩なし)
どちらのケースも計6時間の労働となるため、休憩を与えても与えなくても違法ではありません。これは短時間勤務が多い職場や店舗型ビジネスにおいて、一般的に認められている働き方です。
CASE2:違法(休憩なしNG)となる場合
6時間勤務でも、休憩を付与しないと違法になるケースがあります。たとえ数分であっても、6時間を超えた時点で45分以上の休憩を与える法的責任が生まれるためです。
たとえば「9:00〜15:00(実働6時間、休憩なし)の予定だったが、業務が長引いて15:05に退勤(実働6時間5分)した」というケースで考えましょう。この場合、労働時間が6時間5分となり、法的には「6時間超」に該当します。それにもかかわらず休憩を与えていない場合は、労働基準法第34条に違反することになります。
違法にならないための対策
6時間勤務の場合、業務の都合で数分だけでも残業すると休憩義務が生じます。予期せぬ違反を防ぐには、勤務時間の設計の段階から余裕を持たせることが大切です。
たとえば、実働6時間ぴったりのシフトを組む場合でも、最初から45分の休憩を組み込んでおくという方法です。勤務時間「9:00〜15:45」といったようにあらかじめ休憩時間を確保しておけば、急な業務延長があっても問題になりません。
一度に45分の休憩が取りづらい業態や現場では、休憩時間を複数回に分けて与える方法も有効です。15分ずつ3回に分けるなど、分割して付与すること自体は法律上認められています。ただし、合計の休憩時間が法定休憩時間を下回らないように管理する必要があります。
休憩時間に関する「3つの原則」
休憩は「何分与えるか」だけが問題ではなく、付与方法にも法律上のルールがあります。
休憩付与の方法に関する法律上のルール
- 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
- 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
- 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
労働基準法では休憩の取り方に関する「3つの原則」を定めており、これを満たしていない場合は仮に休憩があったとしても違法となります。
原則1:途中付与の原則
休憩時間は、「労働時間の途中で与えなければならない」と定められています。つまり、勤務開始前や退勤後にまとめて与えることは認められていません。休憩の目的は労働による疲労の回復であるため、実際に働いている最中に必要な休息時間を確保する必要があります。
原則2:一斉付与の原則
休憩は事業場のすべての労働者に一斉に与えなければならないとされています。ただし、飲食業や交通運輸業、接客業など、一斉に休むと業務運営が困難な業種では交代制で休憩する方法も認められています。その他の業種については、必要な範囲で労使協定の締結が必要です。
原則3:自由利用の原則
休憩時間中は労働者を業務から完全に解放し、自由に過ごさせる必要があります。電話番やレジ待機、来客対応など、業務に備えて待機させる状態は「手待ち時間」と見なされ、労働時間として扱われます。このように指示している場合、休憩を与えたことにはならないため注意しましょう。
6時間勤務の休憩に関するよくある疑問
「6時間勤務」は休憩時間を付与する義務の有無を分ける境界線となるため、誤解や運用ミスが起こりやすいともいえます。特にパート・アルバイト雇用が多い職場では、「雇用形態で休憩ルールが変わるのか」「休憩中は給与が出るのか」など、よくある疑問が発生しがちです。
雇用形態によって休憩ルールは変わる?
雇用形態が違っても、休憩に関するルールは変わりません。労働基準法で定められたルールは、正社員、契約社員、パート・アルバイトといった名称や雇用区分に関係なく、すべての労働者に適用されます。
そのため、6時間を超える勤務であれば雇用形態に関係なく45分以上の休憩が必要です。
休憩時間は給与(時給)の対象になる?
休憩時間は、賃金支払いの対象になりません。休憩は「労働からの解放」が前提であり、労働時間に含まれないためです。この考え方は、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいています。なお、休憩が有給となるかどうかは就業規則や企業独自の制度によって異なります。
45分の休憩は30分と15分に分割できる?
分割して付与すること自体は、法律上禁止されていません。ただし、細切れにしすぎて自由利用が保障されない場合や実質的に休息になっていない場合は、労働基準法第34条の趣旨に反する恐れがあります。労働者の心身回復や災害防止の観点から、まとまった休憩が望ましいといえます。
休憩時間のルールに違反した場合のペナルティ
休憩時間のルールを守ることは、法律で定められている明確な義務です。必要な休憩を与えていなかったり与え方が不適切だったりする場合は、労働基準法第119条に基づき「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される恐れがあります。
また、休憩を与えなかった時間は労働時間と見なされ、未払い賃金や割増賃金の支払い義務が生じるケースもあります。労働基準監督署による是正勧告や指導の対象となる可能性も認識しておきましょう。
出典:労働基準法 第119条|e-Gov法令検索
長時間勤務時の休憩の考え方
労働基準法では、「8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与える」と定められています。しかし「8時間を超えるごとに1時間ずつ追加の休憩が必要」といった、より細かな条件は設けられていません。
とはいえ、法定休憩時間だけ確保しておけばよいわけではありません。長時間労働が常態化している職場などでは、労働契約法第5条で定める「安全配慮義務」について考慮する必要があります。
出典:e-Gov法令検索「労働契約法 第五条」
労働基準法とは
労働基準法は賃金や労働時間、休憩、休日など、労働条件に関する最低基準を定めた法律です。休憩についても「6時間を超えたら45分」「8時間を超えたら1時間」という基準さえ守っていれば違反にはなりません。
労働契約法の安全配慮義務とは
労働契約法は、労働者と企業の労働契約に関する基本ルールを定めた法律です。
第5条では使用者に対して、「労働者が安全と健康を確保しつつ働けるよう必要な配慮をする義務」を定めています。つまり、休憩に関して労働基準法第34条を守っていたとしても、過重労働が原因となって健康被害が生じた場合は、安全配慮義務違反を問われる恐れがあるのです。
これらを考慮し、一部の企業では就業規則で追加の休憩制度を設けているケースがあります。たとえば「残業が2時間を超える場合は15分の小休憩を付与する」「20時以降も勤務する場合は追加で30分休憩を与える」などです。労働者の健康保持や疲労軽減に配慮し、適切なルールを設けることが大切です。
まとめ
6時間勤務の際の休憩時間については、「6時間ぴったり」と「6時間を1分でも超える場合」で定められている義務が異なります。知らないまま運用してしまうと、数分の残業でも休憩未取得状態となり、労働基準法違反に該当するリスクがあります。
法律違反を避けるには、勤務計画を「6時間を超える可能性がある」と考えて設計することが重要です。適切な休憩付与は、法令遵守だけでなく労働者の健康確保、災害防止、職場環境の維持にもつながります。
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よくある質問
「6時間1分」勤務した場合の休憩時間は何分?
実働で「6時間1分」勤務した場合、45分の休憩を与える必要があります。勤務計画では「6時間ぴったり」だったとしても、1分以上残業した場合は休憩しなければ法律違反となるため注意しましょう。
詳しくは記事内の「6時間勤務の休憩時間は「ぴったり」か「超える」かで変わる」をご覧ください。
休憩時間のルールに違反した場合のペナルティは?
労働基準法第34条で定められている休憩に関するルールに違反した場合、企業に「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられる恐れがあります。これは同法第119条に定められている罰則です。
詳しくは記事内の「休憩時間のルールに違反した場合のペナルティ」をご覧ください。
パート・アルバイトと正社員で休憩時間のルールは変わる?
パートやアルバイトといった雇用形態の違いによって、休憩に関するルールが変わることはありません。労働基準法は正社員や契約社員、アルバイトなどの雇用区分に関係なく、すべての労働者に適用されると理解しておきましょう。
詳しくは記事内の「雇用形態によって休憩ルールは変わる?」をご覧ください。
参考文献
監修 中村 桂太
建設会社に長期在籍し法務、人事、労務を総括。特定社会保険労務士の資格を所持し、労務関連のコンサルタントを得意分野とする。 ISO9001及び内部統制等の企業内体制の構築に携わり、 仲介、任意売却、大規模開発等の不動産関連業務にも従事。1級土木施工管理技士として、土木建築全般のコンサルタント業務も行う。


