勤怠管理の基礎知識

勤務間インターバル制度とは?努力義務の内容や導入メリット、助成金などを解説

勤務間インターバル制度は、文字どおり勤務と勤務の間に一定のインターバル(休息時間)を設ける仕組みです。

2024年4月から、運送・建設・医師などの特定業種に対しても時間外労働の上限規制が適用され、日本全体で働き方の質が問われる時代に突入しました。そのなかで、勤務間インターバル制度は従業員の健康を守り、持続可能な労働環境を構築するための切り札として注目を集めています。

本記事では、勤務間インターバル制度の定義や努力義務の内容、2024年問題との関連性から、具体的な導入ステップ、活用できる助成金までをわかりやすく解説します。

目次

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勤務間インターバル制度とは

勤務間インターバル制度とは、終業時刻から翌日の始業時刻までに、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保するルールのことをいいます。

たとえば、11時間のインターバルを設定している企業において、ある日の仕事が23時に終わったとします。この場合、翌日の始業時刻は23時の11時間後である、翌朝10時以降でなければならないというルールです。

この制度の最大の特徴は、単に1日の労働時間を制限するのではなく、従業員の睡眠やプライベートのための時間を物理的に予約するという逆転の発想にあります。これにより、慢性的な睡眠不足や疲労蓄積を防ぐことが期待されています。

働き方改革関連法における「努力義務化」の背景

かつて日本では、深夜まで働き、翌朝早くに出社することが美徳とされる風潮がありました。しかし、その結果として脳・心臓疾患、精神疾患による過労死や過労自殺が社会問題化しました。

こうした事態を受け、2019年4月に施行された労働時間設定改善法において、すべての事業主に勤務間インターバル制度の導入が「努力義務」として課せられました。

努力義務とは、導入するように努めなければならないという状態を指します。現時点では導入しなくても罰則はありませんが、厚生労働省は2025年までに「制度を知らない企業をゼロにする」「導入企業を全体の15%以上にする」という数値目標を掲げ、推進してきました。

現在も引き続き、ESG経営や人的資本経営の観点から、この努力義務をどう果たすかが企業の信頼性を左右する指標となっています。

2024年問題と特定業種への適用状況

2024年4月は、日本の労働史における大きな転換点となりました。それまで36協定の上限規制が猶予されていた「建設業」「運送業(ドライバー)」「医師」に対しても、ついに罰則付きの時間外労働規制が適用されました。

これら3業種は、長時間労働が常態化しやすく、インターバルの確保がもっとも困難とされてきた領域です。

業種適用後の具体的な対策
運送業改善基準告示が改正され、継続して拘束されない時間(休息期間)が9時間以上(継続11時間を基本)と明文化された
建設業現場の工期遵守のために無理な早出・残業が発生しやすいが、法改正により厳格な管理が求められている
医師医師の働き方改革により、特定労務管理対象機関(B・C指定など)では、9時間の勤務間インターバル確保が実質的に義務化されている

これらの業種において、インターバル制度の導入は単なる努力義務ではなく、コンプライアンス遵守と労働力の確保を両立させるための必須条件となっています。

勤務間インターバル制度を導入する5つのメリット

制度を導入することは、一見すると労働時間の減少=売上の減少につながるように思えるかもしれません。しかし、中長期的な経営視点で見れば、そのメリットは大きいといえるでしょう。

1.従業員の健康確保とメンタルヘルス対策

最大のメリットは、深刻な健康リスクを未然に防げることです。医学的な研究では、脳・心臓疾患の発症リスクは睡眠時間に大きく依存しており、十分な休息が取れない状態での労働はアルコールを摂取した状態と同等の認知機能低下を招くとされています。

制度によって強制的に休息を確保することで、慢性的な疲労蓄積をリセットし、うつ病などのメンタルヘルス不調による休職を抑制できます。これは従業員の命を守るだけでなく、企業にとっての安全配慮義務を果たす重要な防波堤となります。

2.ワークライフバランスの向上による離職防止

「仕事が終わっても寝るだけで明日が来る」という生活は、従業員の労働意欲を著しく減退させます。勤務間インターバル制度により、終業後の自由時間が保障されることで、育児や介護、自己研鑽といった私生活との両立が現実的になります。

とくに若手層や共働き世帯にとって、自分の時間をコントロールできる安心感は、給与額以上の働き続ける理由に直結します。深刻な人手不足が続くなか、貴重な熟練スタッフの流出を防ぎ、定着率を向上させるための戦略的な福利厚生として機能します。

3.労働生産性の向上とミス・事故の防止

長時間労働による集中力の低下は、作業効率の悪化だけでなく、重大な人的ミスや労災事故を誘発します。勤務間インターバル制度を導入し、脳をしっかりと休ませることで、翌日の始業時から高いパフォーマンスを発揮できるゴールデンタイムを維持することが可能です。

たとえば、IT業界であればバグの低減、製造や建設現場であれば操作ミスによる事故の防止、運送業であれば交通事故の回避に直結するでしょう。ミスによる手戻りや損害賠償リスクを最小化できるため、結果として時間あたりの収益性が高まります。

4.企業イメージの向上

2026年現在の採用市場において、求職者は企業のホワイト度を厳しくチェックしています。求人票に「勤務間インターバル制度導入済み」と明記できることは、その企業が従業員の心身の健康をコストではなく資産として捉えている証となるでしょう。

これは、ESG経営や人的資本経営を重視する投資家や取引先からも高く評価されるポイントです。働きやすさを対外的にアピールすることで、優秀な人材が自然と集まるサイクルが生まれ、結果として高騰する採用コストの抑制にもつながります。

5.働き方改革推進支援助成金の受給対象に

制度導入には勤怠管理システムの改修や社内ルールの整備など、一定のコストがかかりますが、国が提供する「働き方改革推進支援助成金」を活用することで、その費用の大部分を補填できます。

2026年度も中小企業向けに手厚い支援が継続されており、最大100万円規模の助成を受けながら社内のDX推進が可能です。資金面での不安を解消しつつ、最新のITツールを導入して経営効率を高められる絶好の機会となるため、コスト面でのメリットも大きいといえます。

制度導入における法的な注意点と実務のルール

勤務間インターバル精度の導入にあたって、実務上でもっとも混乱が生じやすいのが「何が休息時間に含まれるのか」という定義と給与計算の扱いです。

「休息時間」に含まれる範囲

休息時間とは、労働から完全に解放された時間を指します。ここで注意が必要なのは、「通勤時間は休息時間に含まれる」という点です。

たとえば22時に退勤し、翌朝9時に出勤する場合、その間の11時間は休息時間です。この11時間の間に、電車に乗っている時間や自宅での睡眠時間がすべて含まれます。

会社が関与するのは「会社を出てから、翌日入るまで」の時間です。ただし、通勤に往復3時間かかる社員の場合、11時間のインターバルがあっても自宅での自由時間は8時間しか残りません。制度設計時には、自社の平均通勤時間も考慮に入れるのが親切でしょう。

終業時刻が遅れた場合の翌日の始業時刻の扱い

勤務間インターバル制度を運用する際に重要なのが、「翌日の始業時刻をどう動かすか」です。主に以下の2つのパターンがあります。現実的には「始業時刻をスライドさせる」パターンが多く見られます。

パターン具体例
始業時刻を後ろ倒しにする11時間インターバルで、24時に終業した場合、翌日の始業は11時とする
前日の終業時刻を制限する翌朝9時の始業を守るため、前日は22時までに必ず退勤させる

休息時間が翌日の始業時刻に食い込んだ場合の給与計算

ここが実務上の最大の分岐点です。11時間インターバルにより、翌日の始業が9時から11時にズレた場合、本来働くはずだった9時〜11時の2時間分をどう扱うべきでしょうか。この場合、以下の2つのケースが考えられます。

  • 有給(労働したものとみなす):働いていない2時間分も給与を支払う
  • 無給(カットする):働いていない時間は給与を支払わない

法律上は無給としても違法ではありませんが、それでは遅くまで頑張って働いた人が翌日の給与を削られるという不合理が発生し、制度が形骸化する可能性があります。そのため「労働したものとみなし、全額支給する」という規定にするのが厚生労働省の推奨であり、一般的です。

適用除外(適用猶予)となるケースの確認

場合によっては災害対応、急を要するシステム障害、大規模な納期の逼迫など、どうしてもルールを守れない例外的な状況が発生するでしょう。 そのため、就業規則には「災害その他避けることのできない事由がある場合」などの適用除外条項を設けておく必要があります。

ただし、これが常態化しては意味がないため、「例外を適用した場合は、別途代償休日を付与する」といったフォローが必要です。

勤務間インターバル制度の導入ステップ

行き当たりばったりで導入すると、現場の混乱を招きます。ここでは、導入時の具体的なステップを解説します。

1.現状の勤務実態(退勤から出勤までの時間)の把握

まずは客観的なデータに基づき、現在は何時間のインターバルが確保できているかを精緻に分析しましょう。過去3〜6ヶ月分の勤怠データを抽出し、終業から翌日の始業までの時間が11時間未満、9時間未満となっているケースが月に何件発生しているかを部署別・個人別に可視化することをおすすめします。

もし特定の繁忙期や特定の担当者に集中している場合、業務過多や属人化、工程のボトルネックといった根本原因を特定することが、形骸化しない制度設計のために欠かせない土台となります。

2.休息時間の決定(9時間、11時間などの設定基準)

現状把握の結果を踏まえ、自社の実態に即した休息時間を設定します。理想はEU基準の「11時間」ですが、現状で深夜残業が多い現場にいきなり導入すると、翌日の業務が回らなくなるリスクがあります。

そのため「まずは全社一律で9時間を設定し、1年後には11時間へ引き上げる」といった段階的な目標設定や、「繁忙期を除き11時間を努力目標とする」などの柔軟な運用も検討してみましょう。自社の平均通勤時間やシフトの回転率を考慮し、従業員が実質的に6〜8時間の睡眠を確保できる時間を基準に選定します。

3.就業規則への記載と労使協定の締結

制度を法的根拠のある社内ルールとして確立させるため、就業規則の改訂を行います。具体的には、休息時間の定義、始業時刻をスライドさせた際の賃金の取り扱い(有給扱いとする旨など)、突発的なトラブル時の適用除外条項を明文化します。

また、一方的な通達ではなく、労働組合や従業員代表との協議を経て、労使協定を締結することが重要です。現場の懸念事項を汲み取りながら合意形成を図ることで、制度導入に対する従業員の理解と協力が得られ、スムーズな運用に移行しやすくなります。

4.勤怠管理システムの改修・選定

手動でのインターバル管理は管理職の過度な負担となり、計算ミスも誘発するため、ITツールの活用が成功の鍵を握ります。既存の勤怠システムがインターバル管理に対応しているかを確認し、未対応であればシステムのアップグレードやリプレイスを検討しましょう。

「打刻時に翌日の最短始業時刻が表示される」「インターバル不足が予測される場合に本人と上司に通知が飛ぶ」といった機能を備えたシステムを導入すると、現場レベルでのセルフマネジメントが促進されます。

勤務間インターバル制度導入時に活用できる助成金支援

2026年度も引き続き、政府は中小企業の勤務間インターバル制度導入をバックアップしており、新規導入の場合には「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」が支給されます。

この助成金のメリットが大きい点として、対象範囲が広いことが挙げられます。以下のような経費がインターバル確保のための環境整備を目的とするものとして認められれば、支給上限額内で費用の大部分が助成されます。

  • 労務管理ソフト・勤怠管理システムの導入・改修
  • 外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング費用
  • テレワーク用通信機器(PC、タブレットなど)の購入
  • 生産性向上のための設備・什器(高性能PCや自動化設備など)

「令和8年度厚生労働省予算概算要求の主要事項」によると、助成金の具体的な支給上限額は下表の見込みです。さらに賃金および割増賃金率の引き上げによって、上限額に加算される制度も予定されています。

達成目標(休息時間)支給上限額
新たに9時間以上11時間未満を導入100万円
新たに11時間以上を導入150万円
出典:厚生労働省「令和8年度厚生労働省予算概算要求の主要事項」

交付申請は例年4~11月頃(予算がなくなり次第終了)です。助成金の活用を検討している場合は、厚生労働省のホームページにて詳しい要件などを確認してください。

勤務間インターバル制度の運用でよくある課題と解決策

制度は運用が始まってからが本当のスタートです。ここでは、制度の運用時に現場で直面しやすい壁と、その解決策を紹介します。

仕事が終わらない現場の抵抗

制度を導入しても、業務量が変わらなければ「翌日の始業を遅らせた分、さらに夜遅くまで働く」という悪循環に陥ります。この課題に対し、経営層は単なる時間管理の強制ではなく、業務の断捨離を主導すべきです。たとえば、無駄な会議の廃止、過剰な報告資料の削減、属人化した業務のマニュアル化をセットで進めることをおすすめします。

また、インターバル不足が頻発する部署には人員を補充するか、外注を活用する予算を配分するなど、リソース面のバックアップを明示することで、現場の「休めない」という心理的抵抗を解消しましょう。

交代制勤務におけるスケジューリング

24時間体制の製造現場や介護・サービス業では、遅番の翌日に早番が入る「入り明け」が最大のネックとなります。解決策としては、勤務割(シフト)作成ソフトを導入し、インターバル設定時間を下回る組み合わせをシステム上で「エラー」として弾く設定にすることが有効です。

また、勤務パターンを「早番・遅番・夜勤」の3形態から、インターバルを確保しやすい4形態へ組み替えるなど、根本的なシフトサイクルの見直しも検討してください。これにより、パズルを解くような作業を行わなければならない管理者の負担も大幅に軽減されます。

災害時やトラブル対応時の例外規定

情報システムの重大な障害対応や大規模な災害、急ぎの輸出入対応など、社会通念上避けられない緊急事態においては、制度の厳格な適用が事業継続を危うくするケースが考えられます。こうしたケースに備え、就業規則には「災害その他避けることのできない事由」による適用除外規定を設けておきましょう。

ただし、例外を乱用させないために、事後の報告義務や不足した休息時間に相当する代償休日(フリースロット)を1週間以内に付与するなどのリカバリルールを定めることが重要です。業務対応の柔軟性と従業員の健康との両立が、制度を長続きさせるコツです。

まとめ

勤務間インターバル制度は、単に従業員の労働を制限するものではありません。睡眠という、人として最も基本的なパフォーマンスの源泉を保障しながら、企業の持続可能性を高めるための投資ともいえるでしょう。

今後ますます労働人口が減少を続けるなかで、自社が選ばれる企業であり続けるためには、「いかに休ませ、いかに質の高い仕事をしてもらうか」という発想の転換が不可欠です。まずは自社のインターバル実態を可視化することから、最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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よくある質問

勤務間インターバル制度の導入は義務?

勤務間インターバル制度の導入は、現在すべての企業において「努力義務」とされています。2019年の法改正により、事業主は制度の導入に努めるべき立場にありますが、強制ではありません。ただし、2024年4月以降、医師など一部の職種では実質的に義務化されており、社会的な重要性は年々高まっています。

詳しくは、記事内「勤務間インターバル制度とは」をご覧ください。

勤務間インターバル制度の導入メリットは?

勤務間インターバル制度の最大のメリットは、従業員の睡眠時間を確保し、健康障害やメンタルヘルス不調を防げることです。これにより離職率が低下し、採用面でも働きやすい企業として強いブランド力を獲得できます。また、集中力向上によるミス防止や、助成金の受給対象になる点もメリットといえるでしょう。

詳しくは、記事内「勤務間インターバル制度を導入する5つのメリット」で解説しています。

勤務間インターバル制度に罰則はある?

現時点では、勤務間インターバル制度を導入していないことや、設定したインターバル時間を下回ったことに対する直接的な法的罰則はありません。しかし、過労死ラインを超える長時間労働が常態化し、安全配慮義務違反に問われた場合、高額な損害賠償や企業名の公表といった深刻なリスクを招く恐れがあります。

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