90年の老舗病院が挑んだ経営改革。「マンガ」のような会計ソフトを、どう使いこなしたのか?

医療法人須藤会 土佐病院 院長 須藤 康彦さん、総務部長 正木 孝一さん、中越 久美さん

課題
経営の課題をリアルタイムに把握初心者でも経理や労務を簡単に

高知県高知市に位置する医療法人須藤会 土佐病院は、精神科をメインとした事業で地域医療を支え続けて90年以上の歴史を誇る老舗の医療機関です。
病院運営に加え、グループホーム、就労支援事業、訪問看護ステーションなど複数の事業所を運営し、地域包括ケアの核として重要な役割を担っています。


導入前の課題

・月次決算に時間がかかり、経営状況のリアルタイム把握が困難だった
・各事業所のデータを手作業で集約・入力しており、会計処理が煩雑だった
・部門別の収支把握に挑戦したが、挫折した経験があった

導入の決め手

・クラウド会計により、経営状況がいつでもリアルタイムに把握可能になる点
・直感的な操作性で、経理担当者の負担が軽減されることでの業務効率化

期待する効果

・リアルタイムなデータに基づき、「選択と集中」の経営判断の迅速化
・将来的な人員構成を見据えて、少数精鋭のバックオフィス体制を構築し、バックオフィス業務のさらなる効率化

リアルタイムな経営判断を阻んでいた、月次決算にかかる2週間の壁

医療法人須藤会 土佐病院


――freee導入前はどのような課題を抱えていましたか?

中越 久美さん(以下、中越): 最大の課題は、経営状況のリアルタイムな把握が困難だったことです。院長の方針としては、自席のパソコンでいつでも手軽に病院の経営状況を把握できる状態にしたかったようです。


しかしながら、従来の会計ソフトは経理のプロ向けで操作が難しく、特定のパソコン1台にしかインストールされていなかったため、主に私がその端末で伝票処理などを行う形式となっていました。


結果として、院長に「今、どうなっている?」と尋ねられても、私や経理担当者が説明はするものの、院長自身が本当に欲しい形のデータを提供できない状況が続いていました。 また、複数事業所の会計データを集約する作業は手作業が多く、それぞれの事業所からの入力を待った上で月次の締め作業に入るため、月締めの作業には約2週間かかっていました。


――総務部長は昨年4月にご着任されたとのことですが、それ以前は、バックオフィス全体の課題感のようなものは感じていらっしゃいましたか?

医療法人須藤会 土佐病院


正木 孝一さん(以下、正木): 私は昨年4月に総務部長になるまで、リハビリの仕事をしておりました。バックオフィス業務の詳細までは把握できておらず、こちらに異動してきて、「大変そうだな」というのが率直な感想でした。


――経営判断をなさる院長としての視点では、どのような点で課題を感じていらっしゃいましたか?

須藤 康彦さん(以下、須藤): 経営状況の把握にコストがかかっていましたね。経営判断の材料としてこれまでは紙ベースで管理していたため、月末に試算表を持ってきてもらって、それを見て経営状況を判断していました。当院の場合は現金主義で会計処理をしているので、今月診た患者さんの診療報酬が入金されるのは2ヶ月後になります。例えば5月に見る試算表は、3月診療分の収入が計上されていて、一方で支出は5月のものということになります。


そのため、正確な経営状況が分かるのは、年末に決算整理仕訳をした結果を見て、「今年は良かったんだな、悪かったんだな」と分かるだけで、月次の単位では全く状況が掴めないという状態でした。


年末にならないと経営状態が分からないということは、何かおかしいことがあっても、それが判明するのに2、3年かかってしまう。


いわば「バックミラーを見て経営しているような状態」ですね。


これまで通りでは病院経営は成り立たない。「選択と集中」を可能にするスピードとデータ分析を求めて

医療法人須藤会 土佐病院


――院長が自ら動いて新しいツールを探されたと伺いました。弊社としても、院長先生からの資料請求は珍しいケースですが、なぜでしょうか?

須藤: これまでの病院経営において「会計」は、正直あまり重要視されてこなかったと感じています。診療点数が決まっているため、「これくらいの規模の病院だと、これくらいの人数を配置して、こういう治療をすれば、これくらいの点数が入ってくる」ため、すごく儲かるわけでもないけれど、大損するわけでもない。収入が安定しているのがこれまでの常でした。


しかし、最近はなかなかそうもいかなくなってきています。 診療報酬改定率の伸び悩みや物価高の影響など、ますます病院経営が厳しさを増しています。人件費の向上も顕著です。


そのため、どの部門が収益を上げ、どの部門が赤字なのかといったデータをリアルタイムで把握し、「選択と集中」の判断を下す必要がありました。


――そのような状況の中でfreeeを選ばれた決め手は何だったのでしょうか?

須藤: 経営者が求める「スピード」と「データを深掘りできること」を実現できる点でした。
例えば、これまでは「消耗品費が今月いくらかかりました」という数字があっても、その内訳が分かりませんでした。もちろん元帳を全部たどれば分かりますが、「この消耗品費1万円の内訳は何か?」と、取引先の伝票を一枚一枚調べていくのは、すごく大変でした。


なので、データをドリルダウンして深掘りできる、つまり「消耗品費」をクリックしたら取引先ごとの内訳が出て、さらにクリックすると元の請求書データまでたどれる点が良いと思いました。
また、過去に挫折した部門別会計も、freeeのタグ付け機能を使えば簡単に実現できると判断しました。
そして、クラウド型であるため、いつでもどこでも最新の経営状況を確認できる点も大きな魅力でした。


医療法人須藤会 土佐病院


「小説」から「マンガ」への変化。戸惑いを乗り越え、経理担当者が実感した「心理的安全性」とは

――freeeに変わるとなった時、経理担当の方々からは、どのような反応がありましたか?

医療法人須藤会 土佐病院


中越: 最初は戸惑いもありました。これまで30年以上使い慣れた会計ソフトが読み込んで活用する「小説」だとすれば、freeeはパッとストーリーが頭に入ってくる「マンガ」のような感覚で、操作や考え方が全く違ったからです。
最初は「マンガの世界」に頭の切り替えが全くできませんでした。


1年間の並行運用を経て、その直感的な操作性や柔軟性を実感しました。その安心感と手軽さがあったからこそ、スムーズに移行できました。実際のところ、これまでのやり方に固執していると、なかなか移行は難しいかもしれません。


さらなるデータ活用で未来への舵を切る

医療法人須藤会 土佐病院


――今後、freeeに期待していることはありますか?

須藤: レセコン(レセプトコンピュータ)や電子カルテとのAPI連携に大きな期待を寄せています。これが実現すれば、さらに詳細なデータを分析できるようになり、より精度の高い経営判断が可能になります。また、給与計算なども含めてバックオフィス業務を一元管理できると、さらに業務効率が向上するだろうと考えています。


正木: 従来は特定の担当者に業務が集中しがちでしたが、freeeのような使いやすいツールであれば、業務の引き継ぎや分担もスムーズに進むようになるだろうという期待感があります。会計だけでなく、給与計算など他の機能も全てfreeeに統合できれば、一元管理が実現し、さらに可能性が広がるだろうと感じています。


さらに、もっと多くの職員がfreeeをはじめとしたITツールを使いこなしていければ、もっとあたらしい可能性が開けるのではないかと期待しています。私自身も含め、もっと理解を深め、ツールを有効活用して業務を効率化していきたいですね。


――最後に、貴院にとってfreeeとはどのような存在でしょうか?

須藤: 当院にとってfreeeは「経営効率化のためのパートナー」です。また、労働人口の減少も見据え、安易な人員補充に頼らない経営を目指す上で、freeeは「5人目の医事課職員」のような、欠かせない存在になっています。


中越: freeeは直感的に操作が可能で、「マンガ」を読むようにすぐに全体像を把握できる手軽さがあります。これまで経理に馴染みがなかった人でも、使い方や見方が分かりやすく、入りやすいのではないでしょうか。


医療法人須藤会 土佐病院

利用サービス