「スタートアップが可能性を最大限に発揮できる世界をつくる」をミッションに、SaaS「smartround」の提供に加え、バックオフィス業務を代行するBPOサービスを展開する株式会社スマートラウンド。同社のバックオフィスを担うのが北原恭子さんです。育児と大学、そしてフルタイムでの勤務を両立しながら、日々の業務効率化を徹底的に追求しています。
エンジニア経験ゼロ、プログラミングコードも書けないという北原さんが、いかにしてAIとfreeeを組み合わせ、月次の売上計上や複雑なコスト按分を「ワンクリック」で自動化する仕組みを構築したのか。AIとの向き合い方やfreee×AIに期待する価値についてインタビュー形式で詳しくお届けします。
始まりは「とにかくやってみる」未経験からAIを実務に落とし込むまで
北原さんはこれまでに多くのキャリアを歩まれてきたと伺いました。これまでの経歴と、スマートラウンド様での現在の役割を教えてください。
私のキャリアの土台は7〜8年ほど在籍した会計事務所にあります。税理士や顧客ごとのルールに合わせて複数の会計ソフトを使い分ける日々でした。その後、事業会社などを経て、2025年11月にスマートラウンドに入社しました。
現在は経理をメインに、労務や総務の一部などコーポレート領域全般を担っています。入社当時から「freee会計」「freee人事労務」「freee業務委託管理」が導入されており、私がそれらを使った業務を行っています。
入社されてから、AIを業務に取り入れ始めたきっかけは何だったのでしょうか?
最初は個人的に、GeminiやChatGPTで「ちょっとした調べ物や、わからないことの下調べをする」その上で税理士さんや社労士さんに質問や相談するといった用途で使う程度でした。
大きな転換期となったのは、2026年の1月から2月頃にかけて、社内で「AIを実務で使ってみよう」という方針が打ち出されたことです。「何に使えるかはわからないけれど、とりあえず今の自分の業務を丸投げしてみよう」と、選別せずに始めてみました。
最初はAIと対話し、「こういうことをやりたいんだけど、どうすればできる?」と相談しながら、徐々に業務の形を作っていきました。
MCPの登場で激変。手作業やExcelがなくなった「2つの魔法」
AIの活用を進める中で、freeeとの連携はどのように変化していきましたか?
初期の頃は、Chromeの拡張機能などを使って、AIに画面上のブラウザ操作を直接やらせるアプローチを取っていました。これだと動作が遅く、失敗することも多くてストレスでした。
それが、MCPが使えるようになったことで劇的に変わりました。
MCPのおかげで、画面操作ではなく、裏側のAPI経由でシステム同士を直接繋いで操作できるようになりました。処理のスピードと安定性が段違いに向上したんです。
具体的に、これで劇的な効果が出た自動化が2つあります。
① StripeとfreeeのAPI連携による「売上計上自動化」
弊社では決済プラットフォームにStripeを使っているのですが、StripeとfreeeをそれぞれMCPでAIに接続させました。Stripeからデータを自動抽出し、事業部ごとに集計した上で、freee会計に自動で売上を計上する仕組みです。これは比較的スムーズに構築でき、手入力のプレッシャーから解放されました。
② 人事労務データと紐付けた「部門別コストの按分自動化」
研究開発費や原価の部門別按分は、以前は本当に大変なExcel作業でした。freee人事労務から人件費データをエクスポートし、スプレットシート上で誰が、どの業務にどのくらいの割合で稼動しているかを按分計算して、インポート用データを作ってfreee会計に流し込んでいました。
今では、AIに「按分お願いね」と一言指示を投げるだけ。AIがfreee人事労務からデータを引っ張ってきて、裏で業務割合に準じた按分計算を終わらせ、freee会計に伝票を起こすところまでを自動で完結してくれます。本当に「魔法みたいだな」と感じる瞬間です。
北原さんは元々エンジニアのご経験がおありだったのですか?
いえ、プログラミングやAPIのコードは全く書けませんし、裏側のスキルの技術的な構成も理解していません(笑)。すべてClaudeなどのAIに対して指示を出し、コードを書いてもらって構築しました。
AIを機械やプログラムと思うのではなく、「新入社員の経理スタッフが入ってきた」と思って接しています。
「先月までこの処理できてたのに、今月はどうして数値が違っちゃったの?」とAIに聞くと、AIが自分でバグを分析して、修正案を出してくれます。その繰り返しでメンテナンスも私一人で回せています。
育児に学業。タイトな日常を支えるAIと人に残る役割
お子様の育児や大学への通学も並行されている中で、朝はどのようなスケジュールで動かれているのでしょうか。
朝6時に起床し、子供たちを学校へ送り出した後、自宅でのリモートワークを開始する前にAIを起動させて、ログイン認証など人間が必要なトリガーだけを実行して「あとはよろしくね」と指示を流しておきます。
AIが自動で走っているその30分〜1時間を使って、大学の勉強や今日やるべきことの整理をしています。AIが自分の代わりに裏で働いてくれている時間を有効活用できるのが、非常に助かっています。
すべてが自動化されていく中で、バックオフィス業務において「人にしかできない領域」はどこにあるとお考えですか?
一つは「最終チェック(ダブルチェック)」です。AIが出した答えは必ずしも100%正解ではないので、重要な支払い前や決算確定時には、証憑と合っているか自分の目で最終確認を行います。
もう一つは「コミュニケーション」です。コーポレートの顧客は社内のメンバー。何かを依頼したり調整したりする際、AIに文章を作らせることはできても、お互いが気持ちよく働くための血の通った対人コミュニケーションには、やはり人間の力が必要不可欠だと感じています。
バックオフィスのAI活用は「小さく始める」
最後に、AI活用に踏み出せないでいる他社のバックオフィス担当者へメッセージをお願いします。
難しく考えないでほしいです。日々の業務をすべて一気にAI化しようとすると、忙しくて挫折してしまいます。
まずは月次決算の中の、本当に1つの仕訳、1つの単純な転記作業だけでもいいからAIにやらせてみる。うまくいったらそれを「スキル化(マニュアル化)」して記憶させ、少しずつ領域を広げていけばいいんです。私のようにシステムに詳しくなくても、人と話すように相談すればAIは応えてくれます。
そして、freeeのようなクラウドサービスを選ぶ上で大切なのは、「APIが公開されているか、MCPに対応しているか」だと思います。ここが閉ざされていると、どんなに優れたAIがあっても自動化の魔法は使えません。freeeには、これからもAIとシームレスに繋がる基盤として、どんどん連携の領域を広げていってほしいですね。
企業プロフィール
会社名: 株式会社スマートラウンド
従業員数:45名
事業内容:スタートアップと投資家間のやり取りを効率化するプラットフォーム「smartround」および、バックオフィス業務を代行するBPOサービスを提供
URL:https://jp.smartround.com/corporate


