院内会計士も納得のシステム!「あの人しかできない」を脱した病院改革

医療法人 真生会 真生会富山病院

法人事務局 事務部 部長 兼 人事課 課長 兼 経理課 課長 濱名 孝行さん 経理課 課長補佐(公認会計士) 佐々木 誠さん 総務企画課 課長 兼 人事課 副課長 中神 勇輝 さん

院内会計士も納得のシステム!「あの人しかできない」を脱した病院改革

医療法人 真生会 真生会富山病院

富山県射水市

導入前の課題

  • 実質1.6名体制による属人化と「経営停止」のリスク
  • 2年間「採用応募ゼロ」による内部解決の限界
  • 紙やExcelに頼る手作業と、金額不一致を調査する時間ロス

導入の決め手

  • 「医療福祉事業部」という専門チームへの信頼と深い業界理解
  • 「単一マスタの統合型ソフト」による本質的価値
  • 「泥臭いコスト試算」による説得力の高い上申

期待する効果

  • 紙・Excel作業の自動化による業務負担と原因捜索の解消
  • 創出された時間で「現場の棚卸し改善」「原価計算の精度向上」に着手
  • データに基づく経営提案と、患者さんへの「 安心と満足の医療」の提供

目次

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富山県射水市を拠点に、99床の病院本体を始め、3つのクリニック、有料老人ホーム、訪問看護ステーション、看護小規模多機能居宅介護まで幅広く展開し、地域医療の要として信頼を寄せられる医療法人 真生会 真生会富山病院。同法人は年間60億円規模の事業を展開する一方で、経理業務はベテラン公認会計士と派遣社員の「実質1.6名体制」という極限の状況にありました。さらに2年間にわたり採用応募はゼロという課題も抱えていたのです。同院で20年のキャリアを持つ公認会計士の頭の中にしか存在しない複雑な会計オペレーションと、紙やExcelに頼る手作業で現場が支えられていたものの、着任した事務部部長が「この専門的なオペレーションのままでは、とても他の人へ引き継ぎができない」と率直に危機感を抱きました。特定の個人へ業務と負担が集中している状態そのものを変える必要があったのです。

この「1人が倒れれば病院経営が止まる」という致命的なリスクを打破するべく、同院が着手したのが「freee会計」を中心としたバックオフィス改革です。導入前の葛藤から、細部に至るコスト試算による経営陣の説得、3ヶ月に及ぶ検証、そして業務の標準化と未来への展望について、法人事務局 事務部部長 兼 人事課 課長 兼 経理課 課長の濱名 孝行さん、公認会計士で経理課 課長補佐の佐々木 誠さん、総務企画課 課長兼人事課 副課長の中神 勇輝さんに詳しく伺いました。(事務部は、人事課・総務企画課・経理課の3部署です。)

応募ゼロ・実質1.6名体制「1人が倒れたら病院経営が止まる」

事務部全体の組織状況と、当時はどのような人員不足に直面されていたのでしょうか。

濱名さん(以下、濱名):かつて14名いた事務部員が育休や退職や異動で4年で8名に激減し、公認会計士1名と非フルタイム派遣職員の実質1.6名体制にまで追い込まれていました。年間収益60数億円規模の法人を支えるには限界を超えており、採用募集を2年間継続しても年間応募は「ゼロ」という手詰まりな状態だったのです。

事務部長として経理の現場に着任された際、実際の業務をご覧になってどう感じられましたか?

濱名:去年の6月に現場オペレーションを詳しくヒアリングしたのですが、あまりに職人技のような専門技能と複雑な手作業に依存していました。「とてもじゃないが、このオペレーションのままでは他の人へ引き継ぎができない」と強い危機感を抱きましたね。

引き継ぎをそれほど困難にさせていた、具体的な業務の煩雑さについて教えてください。

佐々木さん(以下、佐々木):仕訳自体はそれほど複雑なものではないですが、そのデータを整えるために請求書を集約したり、社保からの書類の特定部分を計算・入力し、別途調整資料を加味して仕訳を入れるまでの周辺業務が複雑だったのです。

当時、データのズレやミスが生じた際のアナログな作業負担はどれほどのものだったのでしょうか。

佐々木:総合振込などで金額のズレが出ると、五十音順で綴られた紙の請求書を1枚ずつ手でめくって原因を探す必要があり、1回の調査に1時間以上かかることもありました。医業未収金については、以前は診療点数や食事療養費などを種類ごとに個別に処理していたため、全体を通した確認作業に神経を使っていました。

ほぼ一人でその現場を守る佐々木さんを横で見ていて、濱名さんはどのようなリスクを感じていましたか。

濱名:20年のキャリアを持つ佐々木補佐ほぼ一人の頭の中と力技で決算業務を終わらせていたのが実態で、本当に大変な作業と重い責任を一人で背負わせていて申し訳ないと思っていました。佐々木補佐も「1年を通してみるとわずかな数字のズレが生じる怖さがあった」と振り返る通り、もし急な退職や長期休職があれば病院経営が麻痺してしまうという致命的な属人化リスクを感じていましたね。

現状維持か、未来への投資か。数字で経営陣を動かす

そのような危機感の中で、旧システムの更新時期を迎えられたのですよね。

濱名:オンプレミス型である旧システムのアップグレード費用に加え、サーバー費用が発生するタイミングでした。しかし、仮に更新費用がかからなかったとしても、旧システムを延命するという選択肢は私の中で一切ありませんでしたね。

なぜ、従来のシステムを延命させる選択肢は「ゼロ」だったのでしょうか。

佐々木:単なる経理の仕訳だけでなく、請求書の集約や収益データの取りまとめといった「会計業務」までシステム化しなければ、熟練性に頼る属人化は解消できないからです。統合ソフトへ移行して頭の中のロジックをシステムに組み込むことこそが不可欠でした。

経営層や幹部層に対して、どのように導入の必要性をアプローチされたのですか?

濱名:院長や副院長への事前提案を経て、課長職以上が集まる部課長会合や法人運営会議でプレゼンを行いました。高額な医療機器の購入などを決定する場ですが、単なる会計ソフトの入れ替えではなく、法人全体の業務に関わるインフラ投資であることを提示したのです。

上申にあたって、コスト面や費用対効果はどのように算出されたのでしょうか。

濱名:手作業の工程にかかる時間を人件費に換算し、投資対効果を緻密に試算しました。例えば、紙資料を外部倉庫に移動して保管し、取り寄せて捨てるという複数回の作業だけでも保管費を含めて年間約20万円に相当します。そうした隠れたコストを丁寧に洗い出してみると、従来のシステムを延命・維持する費用と比較しても、実質的な追加コストを大幅に抑えて導入できると示せました。

経営陣や管理職の納得を得る上で、最も決定打となったポイントは何でしたか?

濱名:試算の精度以上に、「コストと将来リスクを徹底的に考え抜いている姿勢」と「属人化の完全排除」という大義名分が響きました。12月中に契約を決めなければ4月稼働に間に合わないというタイトなスケジュールでしたが、全2回の会議を経て無事に承認を得ることができました。

「医療あるある」が通じるfreee専門チーム。深い現場理解が導入を後押し

複数のシステムを比較検討される中で、選定の大きな決め手となったのは何だったのでしょうか。

濱名:他社ソフトと比較検討する中で決定打となったのは、freeeに「医療福祉事業部」という業界に特化した専門チームが存在していたことです。当院のような医療機関が抱える課題に本気で向き合ってくれている営業をはじめとした方々の姿勢が何よりの決め手でした。

具体的に、専門チームとのやり取りでどのような点に信頼を感じられたのですか?

濱名:病院特有の「医療あるある」をすっと理解してもらえたことです。医療機関ならではの複雑な業務体系や現場の苦労を深く汲み取り、システムと病院のオペレーションをどう合わせるか粘り強く伴走してくれました。

機能面や価格面といった比較を超えた、社風や思想への共感もあったのでしょうか。

濱名:単なるツールの比較以上に、企業理念に共感しました。目先の利便性だけでなく、医療業界や中小企業の非効率な現場を本気で変えていこうとする熱量や姿勢に、当院としても一緒に歩んでいきたいと感じたのです。

公認会計士である佐々木さんの目から見て、システムとしての選定理由はどこにありましたか?

佐々木:実は2年ほど前に、請求書電子化ソフトの導入を検討した経験がありました。そこで判ったのは、単体のソフトではどの製品もやがて同じような機能に収束していき、それほど差がつかないということだったのです。

そうした単体ソフトの検討経験を経て、freeeのどのような点に本質的な価値を感じられたのですか?

佐々木:単体ソフトの機能比較では本質的な差はつきません。freeeの強みは、単一マスタで全体を把握できる統合ソフトである点です。本来、経理と会計は分断されがちですが、そこを一体化してシステム化できる。個人の熟練技術で属人化していた周辺業務までシステムに任せられる構造だと確信できたことが、導入の大きな決め手でした。

変化への不安を抱く幹部と「紙にこだわらない」現場。スモールスタート戦略が成功の鍵

全社的な導入に向け、他部署の幹部層からはどのような意見が上がっていたのでしょうか。

濱名:幹部層からは「そこまで必要なのか」「1年延ばして慎重に熟慮すべきだ」といった声や、長年慣れ親しんだ紙での運用が変わることに対する不安や懸念が上がっていました。

そうした懸念の背景には、どのような心理があったと思われますか?

佐々木:合理化によって仕事そのものがなくなった時、これまで時間をかけて紙でやってきた現場のアイデンティティを奪ってしまうのではないかという恐れですね。また、「経理だけが楽になるのではないか」という警戒感もありました。

その状況に対して、どのようにアプローチを行っていったのですか?

佐々木:幹部だけでなく現場のスタッフレベルまで直接ヒアリングを行いました。するとスタッフ側は「そこまで今のやり方にこだわりはない」と感じており、上司と現場の間に温度差があることが分かったのです。

「経理だけが楽になるのか」という疑問に対しては、どう説明されたのでしょうか。

濱名:単に楽をするためではなく、日々の定型業務に追われて手につかなかった「緊急ではないが重要なテーマ」に取り組むためだと伝えました。具体的な業務としては、現場での棚卸し状況の確認や原価計算の精度向上など、病院経営を支える本来の業務に注力することができると説得したのです。

現場の心理的ハードルを下げ、院内を巻き込んでいくための具体的な工夫について教えてください。

濱名: デジタル化を一律で強要せず、「紙とデジタルの併用OK」というスモールスタート戦略をとりました。まずは希望する部署から試してもらい、「こちらの方が便利だ」と実感してもらいながら徐々に広げていくスタンスで安心感を作ったのです。

プロの目で厳しく評価~泥臭い検証プロセス

公認会計士の視点から、新システム導入にあたって最も慎重にならざるを得なかったポイントは何でしたか?

佐々木:会計士として、従来型の会計ソフトと違った、会計と経理とを一体化して運用する仕組みを理解しようと努めました。自分で入れたデータがどのように経理データに変換されているのか、1処理ずつ確認していきました。特に医業未収金は構造が複雑なため、長年慣れ親しんだ複式簿記や旧来の処理手順をfreeeの仕組みに変えることには、当初大きな戸惑いと不安がありましたね。

その複雑な「医業未収金の再構築」とは、具体的にどのような作業だったのでしょうか。

佐々木:以前は診療点数や食事代などの種類ごとに、別々の振替伝票で個別に入力していたんです。そのためお金が入ってくるたびに、いくつもの伝票から数字を集めて打ち消し(反対仕訳)の計算をするという、面倒な作業が発生していました。これを社保や国保といった「振込単位」で情報を集約し、ひとつの取引として入力する内容をテンプレート化したんです。消込のたびに行っていた手集計が不要になり、ワンクリックで正確に処理が終わる仕組みへと生まれ変わりました。

元々あった仕組みを変えるのはかなり大変だったかと推察します。どのようにして乗り越えていかれたのですか?

佐々木:稼働までに約3ヶ月間の検証期間を設け、当院のデータ構造を一つひとつ紐解きながら検証を進めました。当時を振り返ると、メールやチャットなどを通じて「どう解決すべきか」を即座に提示してくれる手厚いサポート体制があったのは大きな支えでしたね。何度も同じ内容を尋ねてしまった時でも、丁寧に答えてくださり、迷うことなく移行を乗り越えられました。

3ヶ月に及ぶ泥臭い検証と手厚いサポートを経て、現場の作業負担はどう変化しましたか?

佐々木:数字の不一致原因を探すために大量の紙請求書をめくり、1時間以上かけて探し回る作業はゼロになりました。freeeの元帳や仕訳帳と何度も照合を重ねて「これなら大丈夫だ」と確信に変わり、スタッフも記憶や勘に頼らない手順に移行することができました。

プロの目による厳格な検証を経て稼働を迎えたことで、組織としてはどのような成果が得られましたか?

濱名:3ヶ月かけて佐々木補佐が厳格に検証し、業務手順をすべてシステム上で標準化したことで、決算業務の早期化が大きく進みました。特定個人の経験と勘に依存していたブラックボックスが解消され、少人数でも安全かつスムーズに病院経営を支えられる基盤を整備しました。

「作業」から「患者さんへの価値」へ循環する未来

freeeの導入を経て、事務部・経理課の本来の役割や立ち位置にはどのような変化がありましたか?

濱名:単に過去の数字を集計・整理するだけの「後処理の経理」から、リアルタイムなデータを活用して病院経営の次の一手を考える「経営の司令塔」へと役割が進化しつつあります。

業務効率化によって時間が生み出されたことで、現場の意識や仕事への向き合い方はどう変わりましたか?

佐々木:日々の請求書探しや複雑な前処理に追われて後回しになっていた「原価計算の精度向上」や「各部門の棚卸しの厳密化」など、病院経営の質を根本から高める本来の重要課題にじっくり時間を割けるようになりました。

総務企画課の中神さんは、今回のバックオフィス改革が職員や患者さんにもたらす価値についてどう捉えられていますか?

中神さん:目の前の手作業から解放されて誰もが安心して働ける環境ができると、職場にゆとりが生まれます。バックオフィスを整えることが、結果的に患者さんへの確たる安心と信頼につながり、病院全体に良い循環を生み出していくのだと実感しています。

病院のバックオフィス改革に向けて、新しく描いている未来の展望について教えてください。

濱名:会計基盤の構築にとどまらず、今後は人事労務や勤怠管理や人事評価なども含めた統合的なデータ連携を進めていきたいですね。

バックオフィス全体の非効率を徹底的に排除し、標準化された仕組みを作ることができれば、部署を超えたジョブローテーションも実現できます。特定の作業に縛られず、チーム全体で多角的な経験を積むことで、「どこに行っても通用する人材」を育てていきたい。そうやって一人ひとりの価値を高め、病院全体のパフォーマンスを最大化させるインフラへと育てていくのがこれからの展望です。

最後に、当院と同じように属人化やアナログな業務構造に悩む全国の医療機関へメッセージをお願いします。

濱名:医療業界特有の複雑さに対して諦める必要はありません。最初は不安があっても、信頼できるパートナーと共に泥臭く業務を再構築していけば、必ず道は拓けます。変革の先には、現場と経営の双方を守る確固たる未来が待っています。

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