1947年の創業以来、三共電気株式会社は紫外線殺菌ランプのパイオニアとして、医療や食品衛生など広範なインフラを支えてきました。「良い製品をつくって社会に貢献しよう」との理念を掲げ、神奈川県平塚市の本社工場から世界各国へ高品質な製品を供給し続けています。
しかし、高度な製造技術を誇る一方で、管理業務はアナログの限界を迎えていました。毎朝、総務担当者は打刻と実態の不一致を確認するため、広い敷地内にある3つの工場を捜索。手書きの出勤簿、エクセルへの転記、そして従業員84名中20名もの不備が出る年末調整など、情報の分断が総務の工数を著しく圧迫していたのが実情です。
この状況を打破するため、同社はfreee人事労務の導入を決断します。最大の選定理由は、PCや会社用アドレスを持たない現場の環境を「そのまま受け入れられる柔軟性」にありました。今回は、全従業員と「1対1」で向き合うことでデジタル化をわずか1カ月で定着させ、現場の長が自ら部下を管理する「本来あるべき健全な組織」へと変化を遂げた、同社のDXの軌跡に迫ります。
打刻はあるのに、出勤簿は毎日手書き。
不備があれば現場へ。一人の捜索に30分かける日も
freee導入前に毎日行っていた作業があれば教えてください。
総務担当A:毎朝1時間ほどかけて「出勤状況の確認と出勤簿への手書き集計」を行っていました。休暇の申請書が出ていないのにタイムカードが押されていない人がいると、まずは現場の誰かが連絡を受けていないか確認に回ります。
それでも状況がわからない場合は、その人が本当に来ているのか、工場の現場まで直接探しに行っていました。敷地内に3つある工場を回り、一人を探すのにトータルで30分ほど費やしてしまうこともありました。
集めた勤怠データはどのように集計していたのでしょうか。
総務担当A:タイムカード、総務で手書きしている出勤簿、そして従業員から提出される有給や遅刻早退の申請用紙の3つを突き合わせていました。その後、エクセルの表に名前や出勤日数、欠勤、遅刻早退などのデータをそっくりそのまま書き写していたので、確認作業だけで、毎回3時間はかかっていました。さらにそこから給与ソフトへの入力作業があり、そちらも別途2時間ほどは要していました。
エクセルに集計した後、給与計算ソフトへはどのようにデータを反映させていたのでしょうか。
総務担当A:エクセルで作った集計表をもとに、給与ソフトへはすべて手入力で数字を入れていました。ソフト側には1ヶ月の合計日数や時間しか入れられなかったため、前段階としてエクセル側で「1日8時間勤務」といった日ごとの数字を一人ずつ積み上げ、トータル時間を算出する必要がありました。この集計と入力だけで、丸一日は余裕でかかっていましたね。
有給休暇の管理はどのように行っていましたか。
総務担当A:Excelで行っていました。有給は付与日が人によって異なるため、毎年「誰に何日付与するか」を計算してエクセルを更新するのが一苦労でした。前年の残日数に、規定の付与日数を足して、ちゃんと年に5日消化しているか確認するといった計算をすべて手作業でやっていました。間違いがないか見直す作業を含めると、有休管理だけでトータル2〜3日は費やしていたと思います。
PCのない現場、会社アドレスのない従業員。
現場を変えずに導入できるのが、freeeの決め手
freee導入のきっかけは何だったのでしょうか。
総務担当B:それまで使用していたインストール型の給与計算ソフトのサポートが終了するというアナウンスがあったことが、最初の大きなきっかけでした。もともと社長からも「全社的にDXを進めていくうえで、勤怠管理をデジタルにしてほしい」という方針ももらっていたこともあり、検討を開始しました。
社長が掲げられた「DX方針」の背景には、どのような課題感があったのでしょうか。
総務担当B:毎月、翌月分のタイムカードを全従業員分作成するために、機械に1枚ずつ入れて印字する作業を2時間ほどかけて行っていました。その様子を社長も見ており、紙のタイムカードそのものをなくし、システム化することで業務を効率化したほうがいいのではないか、というお話が事業計画の中でも出ていたようです。
システムを探し始めて、最終的にfreeeにした決め手はどこにあったのでしょうか。
総務担当B:一番の理由は、従業員のメールアドレスがなくてもIDを発行できる点でした。他社の多くは、ID付与に個人のアドレスが必須だと言われたんです。弊社の現場の人間には会社用のアドレスがなく、個人のアドレスを会社で管理するのも現実的ではないため、そこをクリアしていたというのが大きかったです。
利用する従業員様の観点で、意識していた選定軸はありましたか。
総務担当B:現場にはガラケーを使っている人や、スマホどころか携帯自体を持っていない年配の従業員もいます。そのため、全員にスマホアプリを強制するのではなく、スマホが無い方もタブレットで打刻できる環境が必要でした。freeeならアプリ、LINE、タブレットと、一人ひとりのリテラシーに合わせて手法を選べる点が非常に心強かったです。
「紙より面倒になる」抵抗感のあった現場が1カ月で一変
シンプルな操作性だからこそ「触ってみたら意外とできた」
システム導入にあたって、現場の従業員の方々の反応はいかがでしたか。
総務担当B:やはり最初は現場の方々から抵抗感がありました。「今まで紙だったのに面倒になる」「承認作業という手間が増えるのではないか」といった声は確かにありましたね。ただ、総務としては「最終的には現場のためになる」と考えていたので、まずは皆さんに受け入れてもらうための準備を徹底することにしました。
具体的に、どのような方法で説明や導入を進められたのでしょうか。
総務担当B:まとめて説明会を開くのではなく、従業員一人ひとりと「1対1」で使い方を教える場を設けました。総務担当2人でで手分けをして、84名全員と個別に対話する時間を作ったんです。大勢の前だと遠慮して質問できない方もいらっしゃいますし、個人の携帯画面を見ながらでないと進められない作業も多かったからです。
1人あたり、どのくらいの時間をかけてレクチャーされたのですか。
総務担当B:わかる人はすぐ終わりますが、不慣れな方の場合は1人につき30分ほど時間を取って対応しました。アプリのインストールから一緒に行い、自分の画面でどう打刻するのか、休暇の申請はどう出すのかを丁寧に説明しました。
ご年配の方や、スマートフォンをお持ちでない方への対応はどうされましたか。
総務担当A:60代以上の方も10名ほどいらっしゃいましたが、皆さん意外と普段からスマホを使いこなしていて、レクチャー後はすんなりと慣れていただけました。スマホを持っていない70代や80代の従業員については、無理にデジタル化せず、従来通りの紙での申請を認めています。
その分は総務が代行入力していますが、全体のごく一部ですので大きな負担にはなっていません。それぞれの状況に合わせ、タブレット打刻なども含めて柔軟な窓口を作ったのが良かったと感じています。
(工場内に置いてある打刻機)
運用を開始してから、現場の皆さんの様子に変化はありましたか。
総務担当A:導入して1ヶ月も経つと、皆さん当たり前のように使いこなしてくれるようになりました。当初は「自分で修正できるかな」と不安がっていた方も、実際に触ってみると操作がシンプルなので「意外とできるね」という反応でした。
年末調整も説明会なし・資料を渡すだけで完了
60代以上の方が10名以上いる現場からも大好評
導入後、毎朝行っていた勤怠チェックの時間はどのように変わりましたか。
総務担当A:以前はタイムカードと手書きの出勤簿を突き合わせる作業に、毎朝1時間ほど費やしていました。導入後はfreeeの画面一つで完結するため、確認作業が大幅に減り、今では20分程度で終わるようになっています。 作業時間が半分以下になったことで、朝の業務に精神的なゆとりが生まれました。
給与計算の時期に発生していた「集計工数」については、いかがでしょうか。
総務担当A:以前はエクセルへの転記や手入力に、丸1日から1.5日ほどかかりきりになっていました。現在は現場で承認されたデータが自動で集約されるため、手入力の工程がほぼゼロになりました。エラーマークが出る箇所だけを確認すれば済むようになり、確認作業を含めても半日程度で完了するようになっています。
有給休暇の管理業務についても、変化はありましたか。
総務担当A:以前はエクセルで誰が何日使ったかを1日ずつ手動で修正し、付与日には複雑な計算を2〜3日かけて行っていました。今はすべて自動計算されるので、その作業自体がなくなりました。「あと何日取らなきゃいけないか」という目視での確認や、部長への個別アナウンスの手間も大幅に削減されています。
残業代の計算や、手当の変更に伴うミスなどは減りましたか。
総務担当B:以前は勤務形態や手当の変更があると、エクセルと給与ソフトの両方を更新しなければならず、連携ミスが起こることもありました。freeeは数ヶ月先の予約設定ができるため、変更がわかった時点で入力しておけば、当月に自動で反映されます。この「先出し設定」(※)ができるおかげで、支払い漏れなどのミスが防げる安心感は大きいです。
※freeeは月単位で従業員情報を保持できるため、等級や住所変更等の予め決まっている数カ月先の情報変更をリアルタイムで入力できます。情報変更の反映忘れによる支払い漏れや反映ミスを防ぐ、freee独自の仕組みです。
今回のDXで、最も驚かれた「定量的な成果」があれば教えてください。
総務担当A:年末調整の「差し戻し件数」の激減には本当に驚きました。以前は紙での申請だったため、約80名のうち4分の1にあたる20名ほどに不備があり、その都度本人を探して書き直してもらう必要があったんです。それが今回、初めてシステムで行ったところ、差し戻しが必要だったのはわずか2名だけ。精度が上がり、総務の負担は格段に軽くなりました。
初めてのシステムによる年末調整でしたが、従業員の方々への説明などは大変でしたか。
総務担当B:実は、今回の年末調整にあたって説明会などは一切行っていません。freeeが提供している社員向けの解説動画や資料を「ここを見てやってください」と共有しただけで、全員がスムーズに完了できました。以前のように「書き方がわからない」といった混乱も起きず、総務側で個別にマニュアルを作成する手間も一切不要でした。
従業員の方々からは、freeeでの年末調整についてどのような反応がありましたか。
総務担当A:以前は手書きによる計算ミスが最も多い部分でしたが、従業員からも「保険料の金額などが勝手に入るから楽だ」と非常に好評でした。証明書などを写真で撮って添付するだけで済むため、出す側も「ちゃんとやっておこう」という意識に変わったようです。修正に追われることがなくなり、情報の正確性が格段に向上しました。
現場の長が自ら部下の働き方に責任を持つ、健全な組織の形へ。
導入後、操作の不明点などはどのように解消されていますか。
総務担当A:基本的にはfreee内のヘルプページやチャットを活用しています。ただ、初めての年末調整で手順がわからなくなった時は電話サポートも利用しました。文章だけでは頭に入らない場面でも、「次はここを押してください」と具体的なアドバイスをいただけたので、止まることなくスムーズに完了させることができました。
システム導入を経て、会社全体ではどのような変化がありましたか。
総務担当B:今回の取り組みで、製造現場を含めた全従業員が「デジタルで仕事を変えられる」という成功体験を得られました。現在はまだ一部に紙が残っていますが、この流れを止めることなく、さらに働きやすく効率的な環境づくりを進めていきたいです。総務が起点となって始めたDXが、会社全体の組織文化をより良く変えていく原動力になればと思っています。
掲載日:2026年5月7日
取材先:三共電気株式会社様
業種:製造業
所在地:神奈川県
創業:1947年
従業員数:84名
企業ホームページ:https://www.sankyo-denki.co.jp/
