「誰もが安心して働ける環境を整えることで、従業員が長く働ける会社にしたい。」そう語るのは、他社での勤務を経て家業へ戻った専務取締役の古田 晃太郎さんです。
旧来の紙のタイムカードによる勤怠管理や給与明細の管理、そして大手製造業や物流企業がひしめく愛知という人材激戦区において、三栄工業株式会社はいかにして強固な基盤を構築しようとしているのか。
目先の業務効率化や急激な拡大にとらわれず、10年・20年先を見据えた「ロングターリズム(長期視点)」で組織の効率化を進める同社。後継者として古田専務が選んだ、現場を置き去りにしない「人に優しい経営」と、freeeとともに歩む変革についてお話を伺いました。
今回、freee人事労務およびfreee会計の導入を決定された動機についてお聞かせください。
古田 晃太郎さん(以下、古田): 弊社は1966年に愛知県で創業し、建設現場で使われる足場資材の販売とレンタルを展開しています。従来足場施工会社様は資材を自社で「所有」するのが一般的でしたが、昨今はコスト面から「レンタル」へ切り替える流れが加速しています。そうした業界構造の変化に適応し、事業を成長させていく一方で、社内の労務管理体制は、紙や手作業による運用が中心で、改善の余地が多く残されていました。
他社での勤務を経て数年前に家業へ戻った際、従業員情報は紙の履歴書のみでデータベース化されていませんでした。手続きの多くを社労士事務所にお願いしていたため、自社に情報が蓄積されず、勤怠も紙のタイムカードを使用。各拠点からFAXで届くタイムカードを集計し、給与明細の発行まで複数の工程を経る運用となっていました。
freeeの導入を決めた動機は、まさにそうしたバックオフィスを「可視化」し、従業員が安心して働ける環境を自社で整えることでした。
紙とFAXに頼った運用では、現場の従業員様にも影響があったのではないでしょうか。
古田:そうですね。手作業の工程が多く、例えば給与振込から実際の給与明細の配布までに1週間ほどかかっていました。支給額の根拠をリアルタイムで確認しづらい点は、運用の課題でした。
「有休はとれますか?」——求職者の一言がもたらした気づき
バックオフィスの抜本的な改革へと舵を切る、決定的なきっかけは何だったのでしょうか。
古田:中途採用の面接で求職者の方から「有休はとれますか?」といった質問を多くいただくものの、明確な回答ができないと現場の面接官から報告を受けたことがきっかけです。
法律上有休が存在しないわけがないのですが、社内で可視化されておらず、従業員自身が把握しづらい状態になっていたことから、求職者にも満足な説明ができない状況が続いていました。制度があっても伝わっていなければ意味がないため、誰もが安心して働けるよう、まずは自社でしっかりと情報を可視化する必要があると考えました。
拠点を置く愛知県という地域特有の環境も、改革を後押ししたそうですね。
古田:愛知は大手自動車メーカーやその関連企業、巨大な物流倉庫が集積する人材激戦区です。弊社が求めるフォークリフト経験者などの優秀な人材は、まさにそうした大手との熾烈な争奪戦になります。企業の規模や知名度だけで勝負しても勝てません。
現場の従業員にとって「働きやすい環境」や「透明性の高さ」を整えなければ、せっかく入社してくれた従業員もすぐに離職してしまう。バックオフィスのクラウド化は、単なる業務効率化にとどまらず、厳しい人材獲得競争を勝ち抜くための「人に優しい会社作り」の第一歩だったんです。
スマホ打刻とペーパーレス化。現場と経営の双方に訪れた「可視化」の成果
実際にfreee人事労務を導入されて、現場の運用や業務にはどのような変化がありましたか?
古田:もちろん「今までのやり方で特に困っていない」という声や戸惑いはありました。ただ、そこで「デジタル化が正義だ」と強引に進めてしまっては、これまで会社を支えてきてくれた従業員との信頼関係が壊れてしまいます。だからこそ「みんなの手間を減らすため」という目的を伝え、既存の業務フローをできる限り尊重することを意識しました。
実際に現場へ落とし込む際も、freeeのサポート担当の方に入ってもらい、現場の働き方に寄り添ったルールメイキングを一緒におこなっていきました。例えば、原則は拠点の端末で打刻しつつ、朝5時など早朝に出発する配送の担当者は個人のスマホから直接打刻できる仕組みを整えました。上から押しつけるのではなく、プロの力も借りながら、みんなが納得して自然についてこられるやり方とスピード感を大事にしましたね。
従業員様の安心感や信頼感という点での成果はいかがでしょうか。
古田:以前は給与支給から1〜2週間遅れて発行されていた給与明細が、支給日に自分のスマホで即座に確認できるようになりました。有給休暇の残日数や取得状況もアプリ上で一目で分かるようになり、有給申請を行える環境が整いました。
自分の働いた成果や権利がリアルタイムで可視化されたことで、社員の会社に対する信頼感が向上したと感じています。従業員に対して、より誠実で透明性の高い体制を構築できたことが、何よりの導入成果ですね。
キャッシュのリアルタイム把握で、建設業界の急変を生き抜く
労務管理だけでなく、「freee会計」の活用も進められている理由をお聞かせください。
古田:経営管理における一番の成果は、複数ある銀行口座の現預金残高がリアルタイムで一覧把握できるようになったことです。
以前は個別の通帳や紙で確認しており、会社全体で「今どれだけの資金があるのか」を即座に判断するのが困難でした。それがfreee会計を開けば一目で分かるようになり、口座残高を起点としたスピーディーな経営判断が可能になりました。銀行口座との自動連携で入出金の確認や仕訳効率が大幅に上がり、経費精算もスマホアプリやfreeeカードの活用でペーパーレス化が一気に進みました。
人手不足や資材高騰が深刻な建設業界において、財務状況の即時把握はどんな意味を持ちますか?
古田:建設業界は売掛金の回収リスクと隣り合わせです。だからこそ、キャッシュの動きをリアルタイムに把握し、リスクに対して万全の備えを講じておく体制が欠かせません。
「通帳を見て感覚で判断する」のではなく、正確な手元資金と資金繰りの見通しを常に把握できるようになったことで、レンタル足場資材の追加仕入れや拠点への設備投資に対しても、リスクを過度に恐れることなく、最適な判断を下せるようになりました。
最後に、三栄工業様が目指す今後の展望について教えてください。
古田:建設業界は今、人手不足や働き方改革という大きな構造変化の渦中にあります。だからこそ、バックオフィスの可視化を通じて従業員を大切にする組織作りを徹底し、「選ばれる会社」であり続けたい。そしてリアルタイムな財務基盤を武器に、変化の激しい時代を力強く生き抜いていきます。

