150年続く理由は、変わり続けること。 出雲の食と文化を次代につなぐ坂根屋の「地域をつくる経営」をfreeeで支える

有限会社坂根屋

代表取締役 坂根 壮一郎 氏

150年続く理由は、変わり続けること。
出雲の食と文化を次代につなぐ坂根屋の「地域をつくる経営」をfreeeで支える

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明治5年、出雲の地で産声を上げた有限会社坂根屋。創業以来150年にわたり、出雲の食文化と伝統の味を大切に紡いできた老舗和菓子店である。

同社は「出雲大社の門前町」として知られる神門通りの賑わいを取り戻す活動に仲間とともに取り組み、自社のお菓子づくりにとどまらず、地元の農家が育てる小豆やもち米を大切に買い支えてきた。都会から訪れる人々に地元の魅力を届け、得られた豊かさを地域へ還元する循環型経営を少しずつ形作ってきたのだ。

しかし、多店舗展開や飲食事業など少しずつ事業を広げていく中で、先代から引き継いだ会計の仕組みや複雑な勤怠管理が、知らず知らずのうちに現場の負担となっていった。事業承継を果たした現代表・坂根壮一郎氏の前には、経営の数字が見えにくいという静かな課題が立ちはだかる。

「これからも地域に寄り添い、なくてはならない存在であり続けるために、できることから変えていきたい」──。

老舗としての歩みと地域への想いを胸に、同社が選択したのはクラウド会計・勤怠システム(freee)の導入だった。数字のブラックボックスを解消し、リアルタイム経営と業務の効率化を叶えた、歴史ある企業のあたたかな挑戦と変化の歩みを追う。

老舗和菓子店の葛藤と、先代から受け継いだ「読めない会計」の壁

明治5年創業という非常に長い歴史をお持ちですが、坂根屋様の事業の成り立ちや出雲の街との関わりについて教えてください。

有限会社坂根屋 代表取締役 坂根 壮一郎様(以下、坂根): 元々は明治5年に出雲市駅前の商店街で創業し、自分のところでお菓子を作って家の前で売るスタイルから始まりました。現在出店している出雲大社の門前町・神門通りへは、元々は釣具店の一角をお借りして販売を始めたのがきっかけです。その後、シャッター街だった通りを活性化させるべく地元の有志で「神門通り甦りの会」を立ち上げ、正面参道からの参拝の流れを取り戻す活動を通して、賑わいを作り出してきました。

事業が拡大し、製造だけでなく直営店舗や飲食など多角化を進めていく中で、当時の社内体制にはどのような変化が生じていたのでしょうか。

坂根: お菓子の製造販売を中心としながら、直営店が5店舗、飲食店舗も含めて少しずつ事業を広げていきました。売上規模も全体で5億円程度にまで成長し、スタッフも製造と販売を合わせて70名ほどを抱える組織になったんです。しかし、事業が多角化して現場の動きが複雑になる一方で、バックオフィスの管理体制は昔ながらの運用のままでした。

先代である現会長から事業を引き継ぐ「代替わり」にあたって、最初に向き合った壁とはどのようなものだったのでしょうか。

坂根: 父から私へ代替わりするにあたって、経営者として自社の経営数字をしっかりと把握しなければいけないと考えました。しかし、当時は「先代流」とも言える独特なルールで会計処理が行われており、数字の組み立てや処理の根拠が第三者には非常に分かりにくかったんです。前の会計ソフトのデータを覗いても、何がどう処理されているのか分からない状態でした。

独自の会計処理によって数字が見えない状態に対し、当時はどのような焦りや問題意識を抱いていたのでしょうか。

「妻の推薦」から始まった freee 導入。半年間の綿密な設定とサポート活用で開いたリアルタイム経営

先代の会計システムからの脱却を決意された際、どのようにしてfreee会計の導入にたどり着いたのでしょうか。

坂根: 実は、別会社を経営している妻からの強い勧めがきっかけでした。妻の会社では既にfreee会計を使っていて、「一目瞭然で本当に素晴らしいシステムだから、絶対に坂根屋もfreeeにした方がいい」と熱弁されたんです。私自身は当時クラウド会計の知識がほとんどなかったのですが、そこまで言うならと導入を決めました。

奥様のお勧めを受けて導入されたわけですが、実際の移行作業はスムーズに進んだのでしょうか。

坂根: それが全くスムーズではありませんでした。妻の会社は従業員も数名で非常にシンプルな事業構造だったため、すぐに運用に乗ったようです。しかし坂根屋は、製造、店舗販売、飲食など多角的な事業を展開していたため、データをfreeeに落とし込む作業が想像以上に複雑で、移行はスムーズにいったとはいえない状態でした。

設定作業が難航する中で、当時の坂根様は現場でどのような感情を抱かれていたのでしょうか。

坂根: 最初は「なんでこんなに苦労しなければいけないんだ」と、勧めてきた妻を恨みたくなるほど大変でしたね。設定が一向に終わらないまま決算の時期がどんどん近づいてきて、「このままでは決算書が作れないんじゃないか」「大変なことになってしまった」という焦りに押しつぶされそうになっていました。

そのような初期設定の難局を、どのようにして乗り越えられたのでしょうか。

坂根: 公式のサポートを半年以上受けながら地道に設定を進めました。しかしサポート期間だけでは終わらなかったため、補助金や追加サポートを活用したり、また別の会計士の先生にも入っていただき導入支援を徹底的に受けました。そうして一つひとつ自動化ルールや設定を組み上げていき、ようやく軌道に乗せることができました。

「リアルタイム数値」が引き出す確かな信頼。地元の銀行評価を高めた会計基盤

試行錯誤の末にfreee会計の運用が本格化し、最初に「これは便利だ」と大きな変化を実感されたのはどの機能だったのでしょうか。

坂根: とにかく驚いたのが「タグ付け」と「ドリルタウン」の機能でした。これまで売掛金の明細などを確認するには、毎回別の帳簿を開いて一つひとつ遡らなければならず、手間もかかり転記ミスも起きていたんです。それがfreeeなら、画面上から取引の根拠となる元帳まで一瞬で遡って確認できるようになりました。

クレジットカードや資材購入などの細かい取引データの管理に関しても、以前と比べて変化はありましたか。

坂根: 以前はクレジットカード決済の利用内容がブラックボックス化していて、追跡するのが非常に大変だったんです。しかし、自動連携(API連携)によって、カフェで使うストローや袋、Amazonで急遽調達した資材など、いつ何をいくらで買ったかが1点ずつリアルタイムで可視化されるようになりました。

売上や支出といった経営数値の可視化によって、日々の経営判断にはどのような影響があったのでしょうか。

坂根: かつては請求書が届いて集計するまで、利益や資金の状態がわかるのに2ヶ月ほどのタイムラグがありました。それがfreee販売との連携も相まって、今では全体の約80%の数値がリアルタイムで正確に追えるようになったんです。これにより資金計画や需要の予測が格段に立てやすくなりました。

そのリアルタイムな資金計画の可視化は、金融機関とのやり取りや関係性にはどのように作用していますか。

坂根: お付き合いのある地元の銀行への書類提出が劇的に変わりました。以前は税理士の先生に依頼して紙で用意してもらうのに2週間ほどかかっていましたが、今ではボタン一つでPDFを出力し、そのままメール送信できます。さらに、税理士の先生とも常に同じ画面・リアルタイムの数値を見ながら相談できるため、大きな安心感がありますね。こうして経営数値が常にクリアになったことで、銀行からも『しっかり管理されている』と高く評価され、信頼度が以前とは比べものにならないほど上がりました。

70名のスタッフと複数店舗を支える、労務・販売管理の裏側と未来への還元

店舗や製造で約70名のスタッフを抱え、店舗間の移動やヘルプも多いとのことですが、以前はどのように労務や勤怠の管理を行っていたのでしょうか。

坂根: 以前は各店舗で紙のタイムカードを押してもらい、それを本社にFAXや郵送で集計して手入力していました。女性が多い職場なので急な休みのカバーや店舗間のヘルプが発生し、確認の電話連絡も含めて、給料計算には毎月1〜2週間ほどの膨大な時間と労力がかかっていたんです。

その複雑な勤怠・労務管理は、freeeの導入によってどのように変化したのでしょうか。

坂根: 各拠点にタッチパネルを設置し、フリーの勤怠管理で打刻できるようにしました。誰がどこで何時間働いたかが一目で分かり、手当の集計も本人申請と承認だけで一瞬で計算されるようになったんです。あれほど時間がかかっていた集計・確認作業が、今ではわずか半日ほどで完了するようになり、業務負担が劇的に軽減されました。

販売管理や卸売などの業務においても、freeeを活用したどのような連携が進んでいるのでしょうか。

坂根: はい、県外発送や納品関係の取引には「freee販売」を活用しています。売上登録や請求書の発行を行うと、そのデータがそのまま自動で会計へ飛んで計上される仕組みです。入金処理も月締めですぐに消し込めるため、バックオフィスのフローが非常にスムーズになり、手作業による転記ミスやモレも一掃されました。

出雲の地で150年以上の歴史を紡いできた坂根屋様ですが、今回のバックオフィス刷新を経て、今後はこの地域でどのような存在を目指していかれるのでしょうか。

坂根: 地域の資源を活かし、都会から来られるお客様や全国に向けて出雲の良いものを届け、地元にお金を落としてもらう循環を作ることが私たちの使命です。地元の農家さんから小豆やもち米を適正な価格で直接買い取り、都会から得た利益を地元の生産者や社員へしっかりと還元していく。そのために今後も変化を恐れず、地域になくてはならない存在であり続けたいですね。

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