ベテランの知見とfreeeの融合 未経験2名が即戦力化する病院経理の形

医療法人むつみホスピタル

井上 秀之 理事長、新田 陽子様 (総合企画室 経理課 課長)、田中様、小川様(経理課)、税理士法人日本経営 辻様(ヘルスケア事業部 次長)

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徳島県で地域密着型の医療を支え続ける医療法人むつみホスピタル。同院のバックオフィスはかつて、手入力によるアナログな経理業務と、保管場所を圧迫する分厚い紙のファイルに忙殺されていました。

「医療業界は特殊だから」という言い訳を捨て、一般企業の「当たり前」を取り入れるべくfreee会計を導入。ベテランと未経験のスタッフが、次世代のバックオフィス体制を構築するまでの軌跡、決算対応速度と正確性を両立させた外部パートナーから見た劇的な変化について伺いました。

DXがはじまる前の、状況「後から届く請求書」と膨大な手作業。医療業界特有の”変わらなさ”への危機感

まずは、freee導入前のバックオフィスの状況と、抱えていた課題について教えてください。

井上理事長(以下、井上): 最大の課題は、医療業界全体に蔓延する「変わらなさ」に対する危機感でした。人手不足が年々深刻化する地方医療において、旧態依然とした手作業に頼り続けることは、経営の持続性を損なう大きなリスクです。「医療業界は特殊だから」という免罪符を盾にして古いやり方に固執するのではなく、一般企業で当たり前に使われている便利なツールを導入し、バックオフィスを根本から変革する必要があると考えていました。

新田さん(以下、新田): 当時の現場の経理業務は、まさに「手作業と間違い探し」の連続でした。 以前は日付をあらかじめ決めて、一気に手入力を進める運用をしていました。しかし、各部門から後になって請求書や領収書がバラバラと届くことが頻繁に発生します。その度に打ち込んだ数字が狂い、「一体どこで間違えたのか」「どの数字が最新なのか」を探すために、分厚い勘定元帳を何ページもめくって遡らなければなりません。原因究明だけで数時間が無駄に消えていく徒労感に、現場は常に疲弊していました。

また、紙の書類の量も膨大でした。毎年分厚いキングファイルが溜まっていき、書庫の保管場所を圧迫するだけでなく、監査や問い合わせの際に過去のデータを探し出すのにも、物理的な労力と時間を奪われるアナログな運用が続いていました。

DX推進の、第一歩「クラウド型って何?」オンプレミスからの脱却と、導入期に立ちはだかった「設定の壁」

新しいシステムへの移行にはハードルもあったかと思います。どのように乗り越えたのでしょうか。

新田: 実は、長年オンプレミスシステムで業務を行っていたため、最初は「クラウド型ってそもそも何?」という状態からのスタートだったんです。導入が決まった当初は、期待よりも「本当に使いこなせるのか」という不安の方が圧倒的に大きかったのを覚えています。

特に大変だったのが、「初期設定」と「データ移行」のフェーズでした。当時はまだデータ移行の自動化の仕組みが十分に整っておらず、すべて病院側(自社)で移行作業を行わなければならず、非常に苦労しました。

導入初期の設定作業では、どのようなお困りごとがありましたか?

新田: 正直、最初は「なんでここまで細かく設定しなきゃいけないの?」と戸惑い、設定のやり方自体もわかりませんでした。移行期限も迫るなかで焦りもありましたが、ここで活きたのがfreeeのサポート体制です。

わからない点が出るたびに、サポート担当の方と何度も複数回にわたって密なやり取りを重ねさせていただきました。営業目線・サポート目線の双方から、こちらの状況に合わせた手厚いカバーがあったからこそ、道に迷うことなく無事に開所を迎えることができたと感じています。

現在提供されているfreeeの移行サポートの仕組みであれば、今のユーザーさんはもっとスムーズに問題なく進められるのではないでしょうか。

面倒な設定の先で知った「やれば忘れていい」という解放感

最初の「設定の壁」を乗り越えた時、現場の意識はどのように変わりましたか?

新田: 苦労して設定を終え、実際に動き出した瞬間に「なんでここまで設定が必要だったのか」の理由が腑に落ちて、不安が「すごい!」という感動に変わりました。

一番驚いたのは、銀行口座との同期機能です。さらに診療報酬以外の部分である「未収金」や「前払費用」の振替処理など、これまでは毎月手作業で計算して起票していた面倒な仕訳が、一度設定してしまえば自動で処理されるようになりました。

「一度設定をやれば、あとはシステムがやってくれるから忘れていいんだ」と気づいた時、これまでの二重運用の手間や心理的負担から解放され、クラウドの圧倒的な優位性を確信しました。

TOPICS:経理未経験スタッフを支えた「自動登録」と「テンプレート」

freee会計の恩恵は、後からチームに加わった新人の即戦力化という形でも現れています。

小川さん(他部署から異動): 「別の部署から異動してきた私にとって、経理は右も左もわからない状態でした。しかし、freee会計のトップ画面(ダッシュボード)には『今日やるべきこと』が直感的に表示されるため、迷わずに業務をスタートできました」

田中さん(未経験で入職): 「引き継ぎ資料に加え、前任が事前に設定してくれていたfreee上の『取引テンプレート』や『自動登録ルール』に救われました。『この摘要が来たら、こう登録すればいい』と画面の案内に沿って入力するだけで処理が完結するため、未経験の私でも『これならできる!』とすぐに手応えを感じられました」

実地での導入サポートも。安心の導入支援。

freeeがもたらした、変化① Amazon200件の購買を自動化。証憑のペーパーレスを実現

freee導入後、現場の業務にはどのような変化が現れましたか?

新田: 最も劇的だったのは、購買フローの自動化です。 以前はリハビリ部門などの備品購入において、事前に現金を準備して手渡ししたり、スタッフが実店舗へ買い出しに行って後から領収書で精算したりと、非常に多くの手間が発生していました。

しかし現在では、Amazonのビジネスアカウントとfreeeを連携させることで、月に約200件もの購買データが手入力なしで部門別に自動的に取り込まれるようになりました。またリハビリ部門の職員も買出しに行く手間が減ったことで、患者さんに集中できる環境を整えられたかと思います。

定量的な業務削減効果はいかがでしょうか。

新田: 口座引き落としなど、ルール化されたルーチン業務の作業負担はなくなり、経理作業は体感でこれまでの「半分」にまで減少しています。あんなに現場を圧迫していた紙の山も完全にゼロになり、データ上でのスマートな管理による完全なペーパーレス化を実現できました。

井上: 経営の視点から見ても、リアルタイムで数字が把握できるようになった意義は非常に大きいです。現場の入力負担が減っただけでなく、経営判断に必要なデータが常に最新の状態で可視化されるスマートな体制へと生まれ変わりました。

freeeがもたらした、変化②【外部パートナーの視点】証憑が紐づく仕訳で、決算作業のコミュニケーションコストがゼロへ

顧問をされている税理士法人日本経営の担当者様から見て、むつみホスピタル様のfreee導入による変化はどのように映っていますか。

日本経営 辻様(以下辻): 会計データのチェックを通じて 、freeeの恩恵を非常に強く感じました。従来の会計ソフトでは、仕訳データを見ても手元に証憑がないため、「この取引の請求書を後で送ってください」「あの領収書のコピーをください」とお客様にわざわざ依頼する手間がどうしても発生してしまいます。

しかしfreeeの場合、一つひとつの仕訳データに請求書などの証憑が画面上で直接紐付いています。そのため、私たちから追加で書類を依頼する必要がなくなり、お互いに書類の「預かり忘れ」や「渡し忘れ」といったコミュニケーションのすれ違いが一切なくなりました。 決算の時に1年間の膨大な仕訳をチェックしていく際も、全てのデータに請求書がすでに付いているため確認作業が極めてスムーズに進み、私たち会計事務所の立場から見てもものすごく効率化ができていると実感しています。

『患者さんと向き合う時間』を創る、と語る井上理事長。

freeeとつくる、未来
病院の「ブラックボックス」を排し、テクノロジーで医療の質と「患者に向き合う時間」を高める

今後のバックオフィスの展望や、目指している未来についてお聞かせください。

井上: 理事長に就任して9年になりますが、医療業界にはずっと「病院だから」という免罪符のもと、組織作りや経営の透明性への意識がどこかおざなりにされているという、もどかしさがありました。ビジネスの世界では当たり前であるはずのタイムリーなレスポンスが、これまでの医療界には少なかったのです。

以前は、何か質問をしても「会議で持ち帰って1週間後に回答する」という状況で、経営者から見てもバックオフィスの中身が一種のブラックボックスのように思えていました。だからこそ、疑問に思った時に自分でも直接データを確認できるような、オープンでタイムリーな仕組みが絶対に必要だったのです。

もちろん、現場からすれば「今の慣れたやり方を変えたい」と自発的に思うわけではありません。そこは経営者としての決断で、トップダウンとしてこの変革を推し進めました。

現在はさらなるIT活用にも取り組まれていると伺いました。

井上: 当院では、バックオフィス業務と、電子カルテなどの診療の機微情報を扱うシステムを明確に切り分けています。機微情報は安全なローカルDBで堅牢に守りつつ、バックオフィス側は世の中のトレンドを追い、freeeをはじめとするAIやクラウドなどのテクノロジーを徹底的に活用する。この切り分けを正しく行うことこそが、病院という枠組みに縛られず、世の中の変化に柔軟に追随していくために不可欠だと考えています。

そのテクノロジーの先にある「医療法人としての理想の姿」とはどのようなものでしょうか。

井上: 私たちが目指すのは、単なる業務効率化ではなく「地方医療の質を高め続けること」にあります。当地域は全国平均の約2倍というスピードで生産年齢人口が減少が進んでおり、医療従事者の確保も年々厳しさを増しています。この厳しい人口動態や今後の診療報酬改定を見据えた時、限られた人材のなかでも一人ひとりの質を高め、強固な組織を作っていくことが生き残りの鍵になります。

だからこそ、当院を選んで集まってくれた貴重なスタッフたちが、「人間にしかできない医療の本質」に集中できる環境を整えたいのです。

医療の本質とは、患者さんとの「顔の見える関係」です。「もっと患者さんと話したい、寄り添いたい」と思っても、書類や入力作業に追われていては時間が足りません。だから今、私たちは診察記録(SOAP形式)を効率的に作成できるアプリの独自開発など、現場を支える次のテクノロジー投資にも挑戦しています。

機械に任せられる無駄な作業はすべてテクノロジーに委ね、人間は患者さんと向き合う時間を創り出す。freeeを起点としたバックオフィスの変革は、私たちがこの地で持続可能な医療を提供し、患者さんに選ばれる“質の高い組織”であり続けるための、揺るぎないインフラなのです。

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