「残業ゼロ」と「90%超リピート」の秘訣とは?:持続可能なIT企業経営とバックオフィス効率化がもたらす戦略的価値

株式会社ロジック 代表取締役社長 可知 匡彦様

課題
経営の課題をリアルタイムに把握分散しているツールを一元化バックオフィスの体制構築・効率化

逆風を追い風に変えた36年:「信頼関係」がロジック社の原点

――多くのIT企業が人材不足や激しい競争といった課題に直面する中、御社は36年にわたって成長を続けてきました。まずは創業の経緯と、事業の基盤についてお聞かせください。

私たちは平成元年に創業し、この浜松の地で36年以上、お客さまと共に歩んでまいりました。元々は名古屋のSI系の会社に所属しており、そこから独立した形になります。36年前というと、まだメインフレームが主体の時代でした。


地方都市である浜松で事業を展開する上で、私たちが何よりも重視してきたのは、お客さま、そして地域社会との「信頼関係」です。首都圏とは異なり、地方では人と人とのつながり、いわば「関係資本」がビジネスの生命線となります。「田舎へ行くほど地元の人にしか頼まない」という傾向があり、ある意味で「一見さんお断り」のような雰囲気もあるわけです。この信頼を地道に築き上げてきたことが、現在の顧客リピート率90%超という結果につながっているのだと思います。まさに「信頼がすべて」なのです。


ロジック


なぜ「完全自社開発」なのか?品質・セキュリティー・信頼で選ばれる理由

――御社の事業の核となる強み、特に「完全自社開発」へのこだわりについて、その戦略的意図と効果をお聞かせください。

私たちの事業の根幹は、お客さまの真の課題を解決するためのソリューション提案です。ITに関するコンサルティングから、オーダーメイドのシステム開発、そして導入後の保守サポートに至るまで、すべてのプロセスに責任を持つ体制を構築しています。ウェブシステムやクラウド関連、モバイルアプリの受託開発も主力事業の一つです。


その中でも、お客さまであるエンドユーザーと直接対話し、お取引をさせていただくことを絶対的な方針としています。お客さまの潜在的なニーズまで深く掘り下げ、本質的な価値を提供するためには、直接的なコミュニケーションが不可欠であると考えています。


そして、その価値提供を確固たるものにするのが「完全自社開発」です。以前は協力会社への委託や派遣社員の活用も試みましたが、品質の維持やコンプライアンス、そして何よりもお客さまの情報資産を守るセキュリティーの担保に限界を感じました。これは私たちにとっての大きな教訓であり、すべての開発工程を正社員で担う現在の体制へと舵を切る決定的な要因となりました。


この体制はお客さまに「すべてロジックの社員が責任を持って対応します」という安心感を提供し、揺るぎない信頼へとつながっています。電話サポート一つとっても、担当者が直接対応することで安心感が格段に違います。浜松という地域において、提案から開発、保守までを一貫して自社で完結できる企業は多くはなく、これが私たちの競争優位性の源泉となっています。もちろん、私たちのキャパシティーには限りがあるため、大規模な案件の場合はフェーズを分けるなど、お客さまにご相談させていただくこともあります。


「残業ゼロ」はこうして実現する!徹底した工数管理と柔軟な組織運営の実態

――IT業界の大きな課題である長時間労働とは無縁の「残業ゼロ」を、どのように実現されているのでしょうか。その具体的な仕組みについてお聞かせください。

「残業ゼロ」は、私たちにとって単なるスローガンではなく、経営の根幹に関わる重要な戦略です。社員のワークライフバランスを尊重すると同時に、限られた時間内で最大のパフォーマンスを発揮するための仕組みづくりを徹底しています。


その心臓部とも言えるのが、緻密な工数管理です。「工数管理が、すべてなんです」と申し上げるほど重視をしています。誰が、いつ、どの業務にどれだけの時間を投入しているのかをリアルタイムで把握し、プロジェクトの進捗と採算性を常に可視化しています。半年先、1年先まで見通せる形で管理しています。私たちは「ヘルシー度」と名付けた独自の採算管理指標を導入しており、これはプロジェクトごとの損益分岐点を示すものです。この「ヘルシー度」には、社員のスキルレベルに応じた単価なども加味されています。「ヘルシー度」が悪化傾向を示す場合は、プロジェクトに「火がついてくる」サインであり、早期に問題を発見して対策を講じることができます。


この徹底した工数管理を支えるのが、柔軟な組織構造です。以前は営業部やシステム部といった部門別の縦割り組織でしたが、現在はプロジェクト単位でチームを組成する「コロニー型」と呼ばれる体制を採用しています。これにより、社員は特定のプロジェクトや部門に縛られることなく、状況に応じてダイナミックにリソースを再配置できます。いわゆるワークシェアリングを高度に実践することで、個々の社員の負荷を平準化し、組織全体の生産性を最大化しています。


また、会議や研修はすべて業務時間内に完結させることも「残業ゼロ」を支えるための重要な決め事です。忘年会など会社の懇親行事についても、17時には業務を終わらせスタートし20時には解散といったように、プライベートに配慮しながら開催。社員は終業後の時間を、確実に自身の生活のために使うことができます。定時で帰るならコストパフォーマンスを上げる。その代わり、仕事が終われば自由に帰る。このメリハリを徹底しています。


――多くの企業がIT人材の獲得と定着に苦慮する中、御社が高いエンゲージメントを維持できている秘訣は何でしょうか。採用戦略や育成方針についてお聞かせください。

私たちが採用において最も重視するのは、スキル以上に価値観への「共感」です。「残業ゼロ」の実現、お客さまの顔が見える「完全自社開発」、ワークシェアリングや徹底した工数管理といった働き方、そして社員の成長を本気で支援する姿勢。こうした点に魅力を感じ、共に成長したいと願う人材に仲間になっていただいています。特別な採用活動、例えば求人広告を大々的に出すようなことはほぼないです。


そして私たちは、社員を顧客先に派遣・常駐させるビジネスモデルは採用していません。このような働き方は、会社の一体感を重視する私たちの方針とは異なったスタイルだからです。社員一人ひとりを尊重し、働きがいと成長を実感できる環境を提供すること。それが、結果として高い定着率と、30年以上にわたり会社を支えてくれているベテラン社員の存在につながっているのだと信じています。


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――これまでのオーダーメイド開発に加え、新たな事業展開としてどのような戦略をお考えでしょうか。

長年培ってきたシステム開発の知見と、多くのお客さまと接する中で見えてきた業界特有の課題。これらを融合させ、特定の業界が共通して抱えるペインポイントを解決するソリューション開発に、新たな成長の可能性を見出しています。特に、物流・運送業界や倉庫業界が直面する「2024年問題」への対応や、今後ますます重要性が高まる医療・介護分野などでは、私たちが貢献できる余地が大きいと考えています。これらの業界では多くのお客さまが共通の課題を抱えており、そのソリューションを一つ一つ個別につくっていては工数がかかりすぎます。まとめて開発を行い、SaaS(Software as a Service)形式、すなわちサブスクリプションモデルでの提供を視野に入れて検討を重ねています。


この挑戦は、より多くのお客さまに私たちの価値を手軽に届けられるようにすると同時に、プロジェクトベースの収益構造から、より安定的かつ継続的な収益基盤へと転換を図るための戦略でもあります。現状では工数管理を徹底しても人件費率が高く、利益率はギリギリです。新しいモデルの導入によって、利益率も上げていく必要があると考えています。


経営のアクセルを踏むために:バックオフィス効率化がもたらす戦略的価値

――freeeのようなクラウドツールの導入は、御社の経営にどのようなインパクトをもたらしましたか。

freeeの導入は、私たちのバックオフィス業務の効率化に大きく貢献してくれました。特に会計、人事労務といった領域において、顕著な効率向上を実感しています。以前は他社製の会計、販売、給与ソフトなどをそれぞれバラバラに使っていて、データ連携が非常に難しく、手作業での二重入力やミスが頻発していました。販売で入力したデータを、経理担当者が会計ソフトに手入力し直すといった具合です。また、入力中に他の担当者がファイルを開けないといった不都合もありました。


freeeによってこれらのデータが一元管理されシームレスな連携が可能となったことで、作業時間は大幅に短縮し、業務の正確性も格段に向上しました。「マスターも一つでいいし、すべての連携が簡単」と聞いて導入しましたが、まさにその通りだと感じています。また、クラウドサービスならではのメリットとして、手間のかかる会計や人事労務の法改正に随時対応できる点が挙げられます。以前は法改正への対応を忘れてしまい数字が合わないこともありましたが、freeeでは頻繁な法令改正(例えば雇用保険料率の変更など)にも迅速かつ自動で対応してくれるので、抜け漏れのリスクも少なくとても安心です。


バックオフィス業務の効率化や経営に関する数字の見える化は、単に間接コストを削減する以上の意味を持ちます。それによって捻出された時間とリソース、さらには経営判断に役立つデータ分析を活用すれば、新たなソリューション開発を実現する創造的なコア業務への集中や、戦略的な意思決定が可能となります。まさに、経営のアクセルをスピーディーに、力強く踏み込むための重要な基盤となっています。


※freee販売では、2025年5月から新しいレポート機能をリリースし、受注金額ベース、実売上ベースともに「顧客別」「案件別」「案件担当者・部門別」で期間ごとに可視化することが可能となりました。気になる数字があれば、そのままクリックすることで原因分析もでき、特に長期でプロジェクトを進行する受託開発業種の企業さまにとって必要な意思決定をサポートします。


――最後に、情報通信業界で奮闘されている経営者の皆さまへ、メッセージをお願いいたします。

私たちが36年にわたって、この厳しい業界で成長を続けることができた根底には、お客さま、地域社会、そして何よりも社員からの「信頼」があります。短期的な利益や規模の拡大を追い求めるのではなく、社員が心身ともに健康で、誇りを持って働ける環境を整備し、お客さまに対して真に価値のあるソリューションを提供し続けること。これこそが企業の持続的な成長、そして社会への貢献につながる道だと確信しています。


特に地方に拠点を置く企業にとっては、地域社会との深い絆を育み、お客さま一人ひとりと誠実に向き合う姿勢が、大手企業にはない独自の競争優位性となり得ます。そして、私たちロジック社がfreeeの導入で経験したように、バックオフィス業務の徹底的な効率化は社員の働きがいの向上、ひいてはお客さまへの提供価値向上という好循環を生み出していく、極めて有効な戦略投資といえます。


適当な仕事をしてソフトウエアの信頼を失うようなことは、絶対にあってはなりません。物価高で大変な時期ではありますが、お客さまから「高価でも、この会社に頼んでよかった」と心から納得していただけるような、真摯なものづくりを続けることが一番大切だと考えています。これは、過去も今も、そしてこれからも変わらない私たちの思いです。


変化の激しい時代ではありますが、お互いに知恵を絞り切磋琢磨することで、業界全体の未来をより明るいものにしていけることを願っております。


ロジック


インタビューの全文は以下のWEBサイトにて公開しています。
https://go.freee.co.jp/interview_logic


Company Profile

株式会社ロジック
従業員数:43名
URL:https://www.logic-soft.jp/


事業内容

ITサービス業

株式会社ロジック