2014年の設立以来、動画・SNSマーケティングのパイオニアとして業界を牽引し続けるワンメディア株式会社。大手ブランドのマーケティング支援や、TikTokをはじめとするSNS広告配信を手がけ、「メディアを通してムーブメントを起こす」プロフェッショナル集団です。
同社は、既存のfreee会計・freee人事労務に加え、2025年からは新たにfreee販売、freee工数管理、freee業務委託管理を一挙に導入。その背景には、多くのクリエイターや制作会社と協業する広告業界特有の「データ管理の難しさ」と「制作プロデューサーの業務負荷」という大きな課題がありました。
今回は、同社取締役COOの余頃沙貴さんにお話を伺いました。
受賞歴多数。SNS動画広告で革命を起こし続けるプロクリエイター集団
——はじめに、貴社の事業内容を教えてください。
余頃 沙貴さん(以下、余頃): 弊社は広告代理店事業 をコア事業として、マーケティング支援や動画制作、広告配信を手掛けています。
弊社のミッションは「メディアを通してムーブメントを起こす」こと。常に新しいメディアやプラットフォームに挑戦しており、今はTikTokをはじめとしたショート動画領域が伸びています。クリエイティブと実行力が強みで、2年連続でTikTokの広告賞を受賞、今年はグランプリをいただいています。
社内にはクリエイティブや営業などの各部門があり、動画広告の企画・制作からキャスティング、配信や分析まで一貫して行っています。現在の従業員数は30名ほどです。
赤字案件や請求漏れが発覚。重大なインシデントにつながる前にシステムによる改善を決断
——freee製品の追加導入に至るまでに、どのような背景があったのでしょうか。
余頃: 「事業の根幹を担う制作プロデューサーの業務負荷を、もっと削減できないか?」と考えたことがきっかけです。
制作プロデューサーは、弊社の根幹をなすポジションです。社内で最も人数が多く、お客様の窓口からあらゆる制作までを担っています。いつも忙しい彼女ら・彼らの業務負荷軽減は、常に課題でした。また、人件費まで含めてみると赤字になるプロジェクトを抱えていたことも課題です。
とはいえ、少人数の組織でしたし、無理にシステムを変 えなくても事業全体の売上は伸びていたので、システムの改善はどこか後回しになっていました。
——そんな中で、導入を決断されたきっかけは何だったのでしょうか?
余頃: 制作プロデューサーは、大きな裁量を持っています。責任が重い分、自由に動ける範囲も大きい。そんな環境で、マネージャークラスの担当者がプロジェクトの数字を良く見せようと、原価の数字を少し変えてしまっているのを発見したんです。
当時はスプレッドシートで案件を管理しており、担当者が原価を自由に編集できてしまう状態でした。その担当者に悪意があったわけではありませんが、自由度の高いシステムが不正につながるリスクを生んでしまいました。
また、ちょうど同じ時期に、同業他社で請求漏れを外部に告発される事件が起こったこともきっかけになりました。今の業務システムを放置すると致命的なインシデントになりそうだと危機感を覚え、公正かつ正確にデータを管理するために、システムの導入を決断したんです。
制作業に最適な管理の実現と、会計との連動が決め手
——さまざまなツールのなかから、freee製品を選ばれたのはなぜですか?
余頃: もともとfreee会計を使っていたので、連動性やUI/UXの面から、freeeに統一するのが良いだろうという考えがありました。社内の メンバーはfreee製品に慣れていたので、スムーズに導入できるのではないかと考えたんです。
念のため他のシステムも比較検討しましたが、制作業の収支管理に特化しておらず、構築やカスタマイズに大きな労力がかかると感じ、自然とfreee販売に決まりました。
——導入を決断されてから、社内の方を説得する難しさはありましたか?
余頃:導入前後は一時的に新たな負担が増えるので、それを納得してもらう難しさはありました。導入理由や他のシステムとの違いを説明したうえで、「現在使っている予算管理用のスプレッドシートがなくなって、freee販売に変わるんです」という流れで話をしたら、スムーズに受け入れてもらえました。
実際に新しいシステムが浸透するまでには難しさがありましたが、フローを作って細かく追いかけることを続けました。一時的に負担が増えたとしても、長期的に見れば業務効率が上がることは確信していました。将来新たに入社してくる人のことも考えると、誰もが楽に取り組める仕組みにしたほうが良いと考えましたね。
freeeで業務を再構築。標準化と請求書チェック時間ゼロを実現
——導入にあたって工夫されたことと、freee販売導入後の変化はありましたか?
余頃: 最初に、業務フローの可視化に取り組みました。独自の業務が多かったことから、全体像を把握するのに1ヶ月ほどかかりましたね。全体像が見えてくると、それまでの制作プロセスに粗さがあることがわかりました。
freee販売を導入してできることが格段に増えたことで、それに合わせてフローを作り変える必要があったんです。たとえば、それまで3つだったチェックポイントが、freee販売の業務フローに合わせると7つに増えました。従来は、厳密なチェック体制が築けていなかったんですよね。freee販売の導入により、レベルの高いプロデューサーが行っている基準に合わせ、正しい業務フローが組めたことは、内部統制の強化にもつながり大きな進化だと感じています。
また、実際に使ってみて分かったのは、受注前後を通じたヨミ管理を行う重要性です。例えば、SalesforceのようなSFAに特化したサービスは、受注前までのフェーズしか管理できません。freee販売であれば、引き合いから見積・受注までの管理はもちろん、納品・売上・請求といった受注後のプロセスも一気通貫で管理可能です。これにより、納期のズレをすぐに把握でき、営業と管理側で着地見込みの認識も自然に揃うようになりました。
——freee業務委託管理については、導入後の変化はありましたか?
余頃:
特に大きな効果として感じているのは、請求書周りの業務改善です。
弊社では1プロジェクトあたり平均6名の外部委託先に発注していますが、請求書に不慣れな方も多く、作成や確認に手間がかかっていました。さらに、月末にLINEなどのチャットツールで個別にリマインドするものの、どうしても請求書の回収漏れが発生していました。
freee業務委託管理を導入後は、発注内容に基づいて数クリックでフォーマットに沿った請求書が作成可能です。その結果 、ミスによる差し戻しや回収漏れが大幅に減り、月末に3時間ほどかかっていた照合作業も不要になりました。請求書回収にかかるストレスが大きく軽減されたことを実感しています。
時間の可視化で工数管理が「楽しい作業」に変わる
——freee工数管理については、導入後の変化はありましたか?
余頃: これまでは担当者が日報に業務内容を記入していたのですが、freee工数管理導入後は、システムに入力後、キャプチャを貼って報告する方法に変えました。今まで行っていた日報報告の置き換えのため負担なく導入できただけでなく、システムになったことで、入力自体もマネージャーの管理負荷もかなり楽になりました。
メンバーが「工数をつけるのが楽しい」と言ってくれるようになったのも嬉しい点ですね。毎日の業務内訳がラベルごとに色付けされて明らかになることで、自分がどれだけ企画に関わるコア業務に時間が使えたのか目に見えてわかり、達成感に繋がっているようです。
予算管理がクリエイティブの可能性を広げる!業界の新たなモデルケースへ
——ツールの導入により、今後変化しそうな点はありますか?
余頃: 予算の使途や動きが可視化されることで、支出について社内への説明責任が生まれ、結果的に予算管理の意識向上に繋がると思います。例えば、これまでは慣れている外注先にそのまま発注していたところを、同じ200万円という予算を今回はどう使おうか、ここを抑えて配信費を上げようか、LPを作ろうか・・・そういった発想が生まれていくと思うんです。予算を自分の資金として考えられるようになり、より良い買い物をしようという意識になるのではないでしょうか。そういった意識の改善が、最終的にクリエイティブの質の向上にもつながるはずです。
さらに、システムを使うことで発注先や納品物などの情報が社内に蓄積され、共有できるようになります。今後、他のプロデューサーが同じ業界や分野のプロジェクトに取り組む際、武器として使ってもらえると思います。
——最後に、今後の貴社の展望についてお聞かせください。
余頃:
組織全体としては、無駄なミスをなくしていきたいと考えています。
たとえば、本人のスキルではなくシステムが原因で起こる請求漏れや受注管理ミスを理由に、怒られたり謝罪をすることは心理的な負担が高いです。
安心してコア業務に集中ができて、できるだけ無駄な謝罪や心理的負担が起こらないフローにしたいですね。
一人の経営者としては、制作業界のスタンダード・モデルケースを率先して作っていきたいです。この業界には、明確な業務管理・予算管理のモデルケースがまだまだ少ないです。せっかくシステムを導入するからには、効率化を図るだけでなく、より利益に直結する予算や時間の使い方まで踏み込んでいきたいです。
掲載日:2025年10月23日
Company Profile
ワンメディア株式会社
従業員数:30名
URL:https://www.onemedia.jp/
事業内容
動画コンテンツの企画・制作・運用、およびそれらを活用した企業のSNSマーケティング支援