2年の試行錯誤で辿り着いた、「任せる経営」の本質 物流業4代目がデータの民主化で促す意識変革

株式会社コイケ

代表取締役 小池 創 様、執行役員 伴 様、総務経理部 星野 様、吉田様

2年の試行錯誤で辿り着いた、「任せる経営」の本質 物流業4代目がデータの民主化で促す意識変革

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株式会社コイケは、輸出梱包と国際物流に強みを持ち、中小メーカーの海外展開を支援する物流企業です。全国の4事業所に加え、海外にも複数拠点を展開。国内外に事業を拡大する中、先代社長の急逝を受け、2020年に小池様が代表取締役社長に就任しました。

属人化した業務、不透明な数字管理――目の前に横たわる課題に直面した小池社長は、freee会計・人事労務を活用し、従業員に共有する「データの民主化」による組織改革に着手した結果、現場が自ら課題を発見し、解決する組織へと変革を遂げつつあります。

今回は、事業承継を機にfreeeを活用した経営改革の軌跡と、組織文化を変えるために取り組んだ施策について、詳しくお話を伺いました。

入社直後に感じた違和感——組織の「元気のなさ」

小池様が入社された当時、会社はどのような状況でしたか?

小池創様(以下、小池): 2013年に大学を卒業して、父の会社であるコイケに入社しました。学生時代はアメリカンフットボールに打ち込み、学生主体で組織を運営してきたので、その感覚で会社に入って最初に感じたのは組織の「元気のなさ」でした。
挨拶がなく、やらされ感で仕事をしているように見えました。事業の状況についても、情報が上から降りてくるのを待つ組織文化で、「これは大丈夫なのか」と。

具体的にどのような課題があったのでしょうか?

小池: 全体で利益が出ていれば、個別の事業が赤字でも問題視されていませんでした。数字は経営層しか見ることがなく、業務は属人化してブラックボックス化していました。
若手社員の中には、この状況に違和感を持って辞めていく人もいました。成長意欲が高い人ほど、「この環境では成長できない」と気づいたのだと思います。

そして2020年に社長を引き継がれたのですね。

小池: はい。父の急逝を受けての事業承継です。就任当時は本当に何をすべきかわからず、見えている課題に次々と手を付けました。ミッション・ビジョン・バリューの定義、組織風土の改善、制度の見直し――。しかし対症療法的に動くだけでは、組織は変わりませんでした。

空回りの2年間で学んだ「任せる」重要性

最初の2年間は試行錯誤の連続だったのですね。

小池: ひたすら空回りしていた、というのが正直なところです。「経営者として何とかしなければ」という思いが強すぎて、周りを頼れていなかったし、メッセージも発信していませんでした。一人で手を動かしていただけだったんです。
そこで立ち戻ったのが、かつては理解できていなかった父の「任せる経営」でした。自ら動きたくなる気持ちを抑え、任せきる。その忍耐力と社員への信頼こそが、組織を強くするマネジメントの本質であると思い直したのです。

方針を転換されたのですね。

小池: はい。会社全体で取り組むべきDXなどの施策は自らが旗を振る。しかし日常業務については、執行役員や部門長に任せ、マイクロマネジメントをやめました。

freee導入で「データの民主化」を実現、経営情報を全社でオープンに

freeeを導入されたのはいつ頃ですか?

小池: 2019年にfreee会計と人事労務を導入しました。導入の決め手は、データの信頼性とリアルタイム性です。従来のオンプレミス型会計システムでは、特殊な経理処理も原因になり、業務とデータ管理が特定の担当者に集中する「属人化」が大きな問題となっていました。
処理の正確性やスピードを担当者に依存させてしまう深刻なリスクです。経理を「誰でも正確に、スピーディーに処理できる」環境へ変えるために、freeeを導入しました。

総務経理部の星野様、freee導入前の経理業務はどのような状態でしたか?

星野様(以下、星野): 以前は消し込み作業や仕訳に手間がかかっていました。また、基幹システムでは売上しか確認できず、個別の取引の正確な利益は月締めまで不明確。入力ミスも発生しやすく、決算期には残業が常態化していました。

freeeを導入して変化したことはありますか?

星野: 業務効率化が大きく進みました。決算期に常態化していた残業がほぼなくなり、定時で業務を終えられるようになりました。
さらに、業務効率化で生まれた時間を活用して、これまでアウトソーシングしていた入金確認を内製化できるようになり、情報を社内で直接管理することで、会計データの正確性を高めることに繋がっています。

部門長全員にfreeeのアカウントを付与されていると聞きました。

小池: はい、事業部長クラス全員にfreeeのアカウントを付与し、自部門の数字をいつでも見られるようにしました。会社の数字をオープンにするのは当然として、さらに自部門の損益計算書や製造原価報告書を、いつでも確認できるようにしたんです。
この数字を開示する方針は、「会計情報をもっとオープンにしませんか?」という、総務経理部長の吉田さんからの提案でした。

数字が見えるようになって現場が変わった——経営が「自分ごと」に

部門長の方々の反応はいかがでしたか?

小池: 以前は各事業所が把握できるのは合計値のみで、詳細の内訳を知るためには経理部に問い合わせる必要がありました。
しかし会計情報へのアクセスが容易になったことで、部門長の当事者意識が大きく向上しました。以前は「一般管理費200万円」といったように、中身が見えない数字しか知らされていなかった状態から、内訳を手軽に確認できるようになったことで、数字に対する興味と関心が深まっていきました。

執行役員の伴様は実際に使われてみていかがですか?

伴様(以下、伴): 正直、最初は「また仕事が増えるのか」と思いました。でも使い始めてみると、自分たちの部門がどれだけ稼いでいて、どこにコストがかかっているのかが一目瞭然。コスト意識が大きく変わりましたね。自分たちが使った経費の内訳まで見えるようになったことで、「この費用は本当に必要なのか」「もっと安い代替案はないか」と、自ら検討し始めるようになったんです。

具体的にどのような変化がありましたか?

伴: ある時、リース料の内訳を詳しく見たところ、思った以上にコストがかかっていることが判明したんです。そこで複数の業者に相見積もりを取り、コスト削減を実現しました。また、固定費として支払っていた外部パートナーへの費用についても、他に選択肢はないかと自ら考えるようになりました。「freeeで見たんだけどさ」という会話も出るようになり、収益性を重視する意識が浸透してきたと感じます。

経理側にも変化はありましたか?

吉田様(以下、吉田): 数字をオープンにすると、経理側にも緊張感が生まれます。間違った仕訳があれば、すぐに現場から指摘が来るんです。例えば、月次で粗利率に異常値が出たとき、以前なら経理が気づいた時点で修正していましたが、今では部門長たちが「おかしい」と気づいて、原因を確認するようになりました。
中には、数年越しの間違いを発見したこともあります。「これは自部門の費用ではない」といった指摘が上がってくるようになり、透明性があるからこそ、お互いに成長できていると感じます。

評価基準を「利益」に転換、売上主義からの脱却

組織の評価基準も変わったのでしょうか?

小池: はい。以前は会社全体で利益が出ていれば良いという「売上主義」の文化が強かったのですが、社長交代後に「各事業所が独立採算で利益を出す体制」を目指す方針に転換しました。評価軸に部門の営業利益を指標として加えたんです。

現場の意識はどのように変わりましたか?

伴: 評価基準が売上から利益に変わったことで、「難しい仕事、手間のかかる仕事は本当に儲かっているのか」という議論が生まれました。収益性を重視する意識が浸透してきたと感じます。極端な話ですが、役員の出張費ですら訪問先部門の費用として計上される慣例に対して、「費用がかかるから来なくていいですよ」と冗談を言えるほど、徹底したコスト意識が根付き始めています。

組織文化の変革にも取り組まれているのですね。

小池: はい。風通しの良い組織文化を醸成するため、「なんでもいいから言ってくれ」と、どんな些細な疑問でも上司に報告するよう、ほぼ毎週のように社内で呼びかけています。これにより、従業員が声を上げやすい環境を整えています。また、グループウェアを活用し、改善事例をビフォーアフター形式で共有する掲示板も設置しました。まだ積極的な共有は少なく、声かけが必要な状態ですが、少しずつ定着させていきたいと考えています。

意思決定のプロセスも変わったのでしょうか?

小池: 先代の時代は経営会議がなく、実質的な権限を持つ取締役と先代の間で最終的な話し合いが行われ、決定事項だけが現場に降りてくる形でした。プロセスは不透明だったんです。こうしたトップダウン方式から、役員3名で議論する体制へ移行しました。最終決定権は私にありますが、議論のプロセスを共有することで、他の役員の責任感を醸成し、考えの背景を共有することを意図しています。

伴: 私は先代社長の時代以前から在籍しているので、過去の会社の状態もよく理解しています。外部環境は劇的に変化しており、かつては営業がいなくても案件に困らない時代もありましたが、今は創意工夫が求められます。
加えて人材確保が厳しい現在においては、注力すべき領域を決断していく必要もあります。「何のために組織が存在し、各々がどのように働くべきか」という問いに基づいた行動意識が浸透し始めている今のコイケは、以前と比べて大きく変わったと思います。

社員と共に再定義したビジョンを通じて、中小製造業の海外展開のインフラに

これからの展望をお聞かせください。

小池: 「商流と物流の両面で、海外展開の安心を約束するインフラになる」これが当社の新しいビジョンです。
人手不足が深刻な現在、中小のメーカーは海外展開したくても、知識や人材が足りていません。ここに、貿易と物流の両方を手がける当社の強みが、お客様の不安を安心に変える大きな力となると確信しています。
このビジョンを実現するために、会計データなど組織に必要な情報を全社に共有します。経営と社員の間に「情報格差」を生じさせないオープンでフェアな環境がないと、社員ひとり一人の自律的な判断と行動は生まれません。

最後に、これから組織改革やDXに取り組もうと考えている経営者の方へ、アドバイスをお願いします。

小池: 以前は、経営層が決めたことを現場が実行するスタイルでした。でもそれでは現場に浸透しない。今は、立案から現場に任せています。最終決定は経営層が行いますが、「なぜこの施策が必要なのか」という情報を整理して上げてくるのは、事業部の責任です。
ここでも先代の「任せる経営」が大切だったのだと実感していますね。

2025年12月15日

Company Profile

株式会社コイケ
従業員数:80名
URL:https://www.koike.co.jp/

事業内容

包装資材販売、輸出梱包サービス、輸出入・貿易事業、倉庫サービスなど

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