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freee人事労務なら視覚障害のある職員もひとりで完結。 DXが推進する「働き方」の多様化

社会福祉法人 日本視覚障害者職能開発センター 伊吾田伸也さん
フリー株式会社 エンジニア 中根雅文

課題
初心者でも経理や労務を簡単にエクセル・紙管理からの脱却ユニバーサルな働き方

東京都で視覚障害者向けの就労支援サービスを行う、社会福祉法人 日本視覚障害者職能開発センター。視覚障害者を対象に事務系職種の職業訓練や就労支援、就労継続支援B型事業を展開しています。

これまでは職員の勤怠管理を紙媒体で続けており、視覚障害のある職員の記入については別の職員が代筆していました。職員全員が自分で勤怠管理できない現状を変えるべく、アクセシビリティ※1が高い製品であるfreee人事労務の導入を決定。全員が自分で使える勤怠管理システムの導入によって視覚障害のある職員にかかっていた時間的・心理的負担を軽減し、働きやすい環境づくりを目指しています。

※1年齢、性別、利用環境、障害の有無、その他さまざまな社会的属性などの違いに関係なく、所要時間、身体的負荷、精神的ストレスなどがない状態で利用できることを「アクセシビリティが高い状態」と表現します。例えば、画面を見ることができない視覚障害者がWebサービスを利用する際に、スクリーンリーダーで表示内容を理解しサービスを利用できるようにするといった操作性の充実などが挙げられます。

2025年4月から本格運用が始まるfreee人事労務選定の経緯と期待する効果について、社会福祉法人日本視覚障害者職能開発センターの施設長である伊吾田伸也様と、視覚障害当事者としてfreee人事労務の開発に携わった当社のエンジニアの中根雅文に話を伺いました。

課題

  • 勤怠記録や休暇申請を紙で行っており、視覚障害のある職員は代筆を依頼する必要があった
  • 出勤や休暇申請のたびに代筆の依頼が必要なため、時間的・心理的ストレスがかかる

導入の決め手

  • 視覚障害当事者が開発・検証に関わっており、スクリーンリーダー(画面読み上げソフト)で利用可能であるというアクセシビリティに対して信頼感ががあった
  • デモ画面で視覚障害のある職員がスムーズに操作できることが確認できた

期待する効果

  • 視覚障害のある職員も自分で打刻や休暇申請ができるようになり、代筆依頼する負担が減る
  • 視覚障害者が自分で勤怠管理できる事例をもって、就労支援時に企業へ提案できるようになる

紙とはんこが必須 ひとりで完結できない勤怠管理方法

――日本視覚障害者職能開発センターの特徴についてお聞かせください。

伊吾田さん(以下、伊吾田):視覚障害者を対象とした就労支援の中で、事務職に特化した支援を行っているのが特徴です。スクリーンリーダーを使ったパソコンの操作方法を少しずつ習得してもらい、その後の就職活動や就職後のサポートも実施しています。

施設の職員は常勤・非常勤を合わせて6名の視覚障害のある方が在籍しており、担当している業務はさまざまです。視覚障害の程度は弱視や全盲など、職員によって違いますので、必要に応じて介助者が補助できる環境は整えつつ業務を進行していただいています。

ソファーに腰掛けて話す伊吾田さん

――視覚障害のある方は、具体的にはどのような状況で作業に補助が必要になるのでしょうか?

伊吾田:印刷された資料の読み上げや筆記、はんこの押印などの作業です。特に勤怠管理は、出勤簿や休暇申請書に手書きで記入してはんこを押す必要があるため、そのたびに代筆等の依頼が必要な状況でしたね。

「自分だけではできない」から脱却!視覚障害者の前に立ちはだかる“紙”の壁

――勤怠管理は日常的に発生するものだからこそ、毎日のように代筆依頼するのは大変ですよね。

伊吾田:おっしゃる通り、「人に依頼する」ことには少なからずストレスが生まれると思います。これは時間的な問題だけではなく、心理的なストレスも含みます。だからこそ、視覚障害のある職員も含め、全員が自分で勤怠管理や休暇申請の作業ができる状態にしたいと考えていました。

当法人は視覚障害者向けの施設なので比較的代筆を頼みやすい雰囲気があると思いますが、一般企業だともっと負担になりやすいのではないでしょうか。

中根:私も普段生活していて「多くの人と同じことができない」という状況はストレスですね。人に依頼するストレスもありますが「自分はこんなこともできないのか……」と落ち込んだ気持ちになるんです。勤怠管理でいえば、休暇申請を人に頼むのは心理的に負担が大きいと思います。休みが取りやすい職場でも、休暇申請となるとなんとなく気を遣ってしまいますよね。

カメラに向かって微笑む伊吾田さん

――視覚障害のある方にとって、ストレスになるのはどういった作業なのでしょうか?

伊吾田:特に筆記を前提とした紙での作業は負担が大きいと思います。紙をスマートフォンで撮影すると、書いてある文章を読み上げてくれる「OCR」機能を持ったアプリなどもありますが、手書きの文字になると認識精度はぐっと下がってしまうんですよね。

デジタル機器であっても、現状ではスクリーンリーダーの使用を想定したソフトはそれほど多くはありません。配慮されていないソフトでスクリーンリーダーを使うと、画面上の情報が正確に読み上げられず、どこに何があるのかわからなくなってしまうこともあります。

視覚障害当事者が開発したから信頼できる。偶然から始まったfreee人事労務との出会い

――freee人事労務を知ったきっかけを教えてください。

伊吾田:施設で開催しているビジネスツール講座の講師として、中根さんが施設に来てくださったことがきっかけなんです。講座で中根さんがパソコン操作をされている様子を見ていて「すごく優秀な方だな」と思っていました。

そこで、講座後に雑談をしていたら「勤怠管理システムの開発に関わっている」と伺ったんです。しかも、視覚障害者でも自分で打刻や休暇申請ができるシステムだと聞いて、「これだ!」と。視覚障害当事者の方、しかも中根さんが開発や検証に関わっているシステムなら、きっと使えるはずだと思ったんです。

笑顔で話す伊吾田さん

――ツールを知ったきっかけは偶然だったんですね。導入はどのように進められたのでしょうか?

伊吾田:視覚障害のある職員が使えるかが重要だったので、デモ環境を用意していただいて、該当職員に操作を体験してもらうところから始めました。実際に試用してもらうと、ボタンの位置や機能がきちんと読み上げられるし、打刻する画面や休暇申請する画面も扱いやすい仕様になっているようで、職員たちはとてもスムーズに迷わず操作できていました。説明やサポートはほとんど必要ありませんでした。

視覚障害当事者の中根さんが開発に関わっているだけあり、スクリーンリーダーでの使用を想定して開発されたシステムだなと。「どこに何があるとわかりやすいか」「どういった流れで操作するのが自然か」という点が、とても細やかに検討されているのをあらためて実感しました。

――導入で工夫された点はありますか?

伊吾田:スマートフォンの操作に不慣れな高齢の職員は、勤怠管理システムの導入に不安がある方も少なくなかったと思います。全職員がスムーズに移行できるよう導入期間を長くとり、紙と併用しながら少しずつ電子化する形で導入を進めてきました。職員全体に向けた説明会や手順書だけでなく、操作が苦手な職員は個別でサポートしています。

ただ、新しいシステムに不安そうだった方からも「視覚障害のある方が働きやすくなるなら」と反対の声は上がらなかったですね。視覚障害者が働きやすい環境をつくるのが施設の目的ですから、視覚障害のある職員が使えるソフトを選ばない理由はありませんでした。

視覚障害者にも雇用の選択肢を、ペーパーレスな社会が広げる可能性

――freee人事労務導入にあたり、期待していることを教えてください。

伊吾田:視覚障害のある職員を含め全員が自分で勤怠管理ができるようになること、そしてそれを就労支援の際にも事例として紹介できる点ですね。勤怠管理は毎日のことなので「実際にうちの職員も使っていて、自分で操作できています」と伝えられると、受け入れ先の企業様も「環境さえ整えればひとりで完結できる作業も多い」と理解していただきやすいと思います。

こう思っていただける企業様が増えれば、結果的に視覚障害のある方の働く選択肢が広がりますよね。ひとつの解決策を事例として説明できるようになるのが、とてもうれしいです。

中根:企業が新しいシステムを検討するとき「使いやすさ」や「コスト」と一緒に「アクセシビリティ」という視点も、持ってもらえるようになると良いなと思います。

今はまだ、スクリーンリーダーを考慮して作られたシステムは選択肢が限られています。導入時の検討項目として一般的になれば、もっとアクセシビリティに配慮されたシステムが増えると思います。そうなると、ユーザーとしても開発者としてもうれしいですね。

ソファーに腰掛けて笑顔で話す伊吾田さんの横顔

――今後の展望を教えてください。

伊吾田:スクリーンリーダーをはじめ、アクセシビリティに配慮されたシステムはまだまだ少ないのが現状です。freeeのようにアクセシビリティに配慮されたシステムが増え、一般企業でも全員が同じシステムを使えるようになるのが理想ですね。

労務管理に限らず、世の中には事務部門で仕事をされている視覚障害の方もたくさんいらっしゃいます。一般企業で働きたい方の就労先の選択肢が増えるためにも、アクセシビリティの認知度がもっと高まってほしいです。

また、視覚障害者にとって一番のネックは紙の書類です。世の中のDXが進んで、視覚障害があっても問題なく働ける場面が増えてくるとうれしいですね。

社会福祉法人 日本視覚障害者職能開発センター

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