「日の出みりん」で知られるキング醸造が、医療・福祉を通じた地域貢献のために兵庫県稲美町や加古川市に設立した「日の出福祉会」「博愛福祉会」「奉志会」は、医療、介護、保育、障がい福祉と幅広い事業を運営しています。この3法人が「社員法人(グループを構成する法人)」として参画し、組織されたのが「社会福祉連携推進法人 日の出医療福祉グループ」です。今回は、連携推進法人の事務局としてDX化を推し進める鷲尾卓也さん、吉岡悠太さん、榎本祥代さんに、freee導入の経緯についてお話を伺いました。
15年前からの挑戦。3法人のバックオフィス集結から始まった組織改革
まず、法人全体でのバックオフィスの役割分担について教えてください。
鷲尾 卓也さん(以下、鷲尾):日の出医療福祉グループには、社員法人として社会福祉法人が2つ、医療法人が1つあります。バックオフィス機能は各法人にありますが、スタッフは本社に集結しています。連携推進法人は3法人の業務効率化を図るため、社員法人と定期的に情報共有・意見交換を行っており、我々はその連携推進法人の管理業務を行っています。
吉岡 悠太さん(以下、吉岡): 総務、財務、人事、労務の担当者は法人それぞれにいますが、所属法人の仕事だけをしているわけではありません。特に人事や総務はグループ全体の採用を担当しています。会計については、社会福祉法人2つのシステムは1つですが、担当者は各法人にわかれています。
この3法人はなぜ連携を進めることになったのですか?
鷲尾: バックオフィス業務の担当者が一箇所に集結したのが2010年ごろ。そして今後の情勢を考え、ある程度の規模感で運営していくために、本格的に法人連携を深めることになったのが10年前です。
吉岡:2016年に、現在の社会福祉連携推進法人の前身となる一般社団法人ができました。当初はバックオフィスをすべて集結させた法人を作る予定でしたが、現在は一部のみが連携推進法人に在籍している状態です。社員法人を含めたグループ全体の従業員は非正規の方も含めて約3,300名、それに対して3法人のバックオフィスが約80名です。私たち連携推進法人のメンバーを除くと、実質60名くらいかもしれません。
システムの乱立と紙文化の限界。freee選定の決め手は「会計とワークフローの一本化」
組織が拡大し介護ニーズが高まる中で、バックオフィスの形も変容していると思います。約2年前のfreee導入以前の課題感について、詳しく教えていただけますか。
鷲尾:バックオフィスが集結したとはいえ、使っているソフトがバラバラであることが大きな課題です。会計は2種類、人事労務も2種類、しかも法人間で組み合わせが異なっていたりと非常に煩雑な状況です。法人間での出向も多いため、そのたびにシステムが違うのはオペレーション上のロスになります。また、自ら運用・管理するオンプレミスのシステムが残っていたため、BCP対策の手間や、古い仕組みによる機能不足も課題でした。保守更新時にも多額の費用がかかるため、3法人の横展開も視野に入れ、連携推進法人のシステムについてはクラウド化を前提に検討を進めました。
freeeの他に検討されたソフトはありましたか。
榎本 祥代さん(以下、榎本): 社会福祉法人会計に対応したシステム自体が少なく、選択肢は限られていました。以前は別のサービスを使っていましたが、電子帳簿保存法への対応を検討した際、費用が大幅に上がることや、ファイル保存が別契約になるなど、使い勝手の面で課題がありました。
吉岡:「社会福祉法人 with freee」の会計システムは現場の職員がオンラインで経費精算ができたり、請求書の振り分けやワークフロー(稟議)が一本化できる点が決め手になりました。人事労務についても、多くの入退職がある中で、入社手続きがすべて紙だったことが大きな負担でした。毎年発生する契約更新も電子化したいという要望があり、それらを満たせるfreeeを選びました。
稟議から経費精算までがシームレスに。検索性向上とペーパーレス化がもたらした恩恵
「社会福祉法人 with freee」を導入してみて、率直にいかがでしたか。
鷲尾: 一般職員側としては手続きがオンラインで簡潔にできるようになったので非常によかったと思います 。会計処理をする側としてはどうですか?
榎本: freeeは一度の取引入力をベースに裏側で資金収支の仕訳が自動的に作成されるので、入力の手間が格段に下がり、実務の負担軽減として非常に効果が大きいです。仕訳の入力漏れや、資金収支計算書との数字の不一致が起こらない点もかなりよいです。
また、以前使用していたソフトは会計と紐付いていなかったのですが、いまはfreeeの中で完結し、稟議や物品購入のワークフローを取り引きとして紐付けられるので、あとで見返すときに非常に便利です。以前のソフトは検索機能がほとんどなく、ExcelやCSVファイルに落としてから検索していましたが、いまは事前にメモタグなどを登録しておけばすぐに絞り込めます。
吉岡:そうした機能や入力画面は、顧客のニーズを取り入れた継続的なアップデートがされているために、いつでも使いやすい状態が保たれているのだと思います。OCRが非常に優秀で、ほとんど入力する必要がなかったことにも驚きましたが、この読み取り精度の向上も、自動アップデートによる恩恵が大きいように感じています。
カードやECサイト等での経費利用との連携についてはいかがでしょうか。
榎本: 以前はECサイトでの購入などは申請ベースで承認を得たあと、領収書や明細を確認して、同じ科目の合計金額を入力したり、「事務用品代」としてまとめていたこともあります。いまは電子申請の内容がそのまま入ってくるので、すべての品目を個々に登録することになり、その手間自体は増えました。ただ、あとから確認する際の粒度は格段に細かくなり、わかりやすくなりました。請求書も以前は膨大な量を保管していましたが、いまはfreeeにすべて取り込んでいるので、昨年実績について問い合わせを受けた際に探す手間が大幅に省けました。
外出の多い職員もいるので、席にいなくても承認や申請がスムーズに行えるようになった点もよかったです。交通費やガソリン代、物品購入の精算なども電子化のメリットが出ています。
「電子帳簿保存法への対応」が課題とおっしゃっていましたが。
榎本:領収書のデジタル保存や承認ワークフローが標準装備されているため、電子帳簿保存法への対応はfreee導入と同時に完了できました。紙の保存コストがなくなるだけでなく、証憑が各取引にデータで紐づいているため、監査等にもスムーズに対応できます。
顧問税理士がいつでもリアルタイムで仕訳や証憑を確認できる点も助かります。仕訳ごとに相手を指定してコメントを残せるので、確認事項のスムーズなやり取りが実現できています。配賦仕訳もこれまでは別途計算して入力していたのですが、あらかじめ科目やパーセンテージを入力しておくとワンクリックで該当する取引を探して仕訳が自動登録されるので便利です。
データ集約で「多法人連携における生産性向上」を実現
今後、freeeを軸にやっていきたいことはありますか ?
吉岡: いまはまだ紙で運用している部分も多いので、経費精算などを全事業所に広げていきたいです。ただ、全事業所の職員にアカウントを発行するとなると、ユーザー数に応じたコストの問題も出てくるので検討が必要です。
その他のシステムについても、DX化により業務自体はラクになるはずですが、担当者は「間違いがあってはいけない」と非常に慎重なので、現場の理解を得ながら一歩ずつ進めている状態です。
鷲尾:連携推進法人といっても全国では様々な形がありますが、バックオフィスの省力化は検討課題の1つです。システムを整備し、データを有効に活用していくことが必要です。規模が大きい分、やり方を変えるには様々な調整が必要ですが、DX化できれば業務は確実にラクになるはずです。今後もバックオフィスのDXを推し進め、現場のスタッフがより医療や福祉のケアに専念できる環境づくりをグループ全体で共有し、推進していきたいです。
