国内最大級の個別指導塾「明光義塾」を運営する明光ネットワークジャパン。同グループ初の社内ベンチャーとして2022年6月に誕生したのがGoGood株式会社だ。教育系のクライアントを中心にデジタルマーケティングの支援事業を展開する同社は、設立4期目で売上高11億円を突破。その躍進を支えているのは、高い専門性を持つスタッフと、freeeのプロダクトで構成された強固なバックオフィス基盤だ。今回はGoGood 代表取締役社長の谷口康忠氏と、フリーのアカウントマネージャー増山貴裕氏を取材。広告・クリエイティブ業界特有のバックオフィス課題を明らかにした上で、その解決策をうかがった。
教育業界を中心にマーケティング支援
はじめに、Go Goodの設立背景と事業内容をお聞かせください。
谷口(Go Good):当社は、個別指導塾「明光義塾」を運営する明光ネットワークジャパン初の社内ベンチャーとして設立されました。
Good 代表取締役社長 谷口 康忠氏
谷口(Go Good):特に学習塾業界において、データに基づいた事業活動、いわゆるDXは避けて通れません。私は以前、明光ネットワークジャパンの常務取締役として同社のDX戦略本部を率いていましたが、大きな組織の中でDXを推進しようとすると、どうしてもスピードに限界が生じてしまいます。そこで、業界全体のDXを加速させるための「出島」として設立したのが当社です。
主な事業は、学習塾や大学などの教育系クライアントを対象とするデジタルマーケティング支援です。今の小中高生のスマートフォン保有率は極めて高いものの、Google広告やYahoo!広告では未成年保護の観点から18歳未満へのターゲティングができません。少子化も進む中、明光ネットワークジャパンで培った業界知見を活かして、小中高生に効率良くアプローチするためのお手伝いをしています。
教育業界のデジタルマーケティングに見られる特徴を教えてください。
谷口(Go Good): 広範囲で実施するマスマーケティングが難しい点でしょうか。北海道内の中学校に通っている学生のニーズと、東京都内の中学校に通っている学生のニーズは明確に異なります。同じ東京都内の学生でも、エリアによってニーズは違うんです。つまり、全国に教室を持つ学習塾は、教室単位で狭小な広告キャンペーンを組んで展開する必要があります。大手の広告代理店では利かせづらい小回りを、業界を深く理解している当社が支援しています。
最近はメタバースやAR(拡張現実)を活用したデジタルコミュニケーションの支援にも注力しています。たとえば、スマートフォンのカメラで大学の公式キャラクターを現実世界に表示させることで、オープンキャンパスに参加した学生たちの間で話題化を促し、大学への関心を喚起する取り組みです。チラシなどの紙媒体とARを組み合わせて、反応率をトラッキングすることもできます。
ARを用いたプロモーションの例
“一人社長”の限界と設立3ヵ月で下した決断
Go Goodの設立当初、バックオフィス業務ではどのような課題に直面していましたか?
谷口(Go Good): 設立当初は、メンバーが私しかいない“一人社長”状態でした。そのため、取引先への支払いにあたっては自分の銀行口座から費用を立て替え、オンラインバンキングで振り込んでいたこともあったんです。
しかし、当社には「上場企業のグループ会社」というバックボーンがあります。設立3ヵ月後の9月には連結対象になることを前提として、J-SOX(内部統制)に基づいた厳格な可視化と記録が不可欠な状況でした。複数の会計システムを比較検討した結果、プロダクトの設計思想が我々のニーズにフィットしたフリーさんにお願いしました。
freeeの設計思想について紹介いただけますか?
増山(フリー):一般的な会計ソフトは「会計」「経理」「給与」「請求書発行」などが別々のアプリケーションとして存在し、それらを後から連携させるシリーズ型のアーキテクトです。これに対し、freeeは一つのデータベースの上に全ての機能が載っている統合型のシステムとして設計されています。
フリー SMB事業本部 SMB営業部 アカウントマネージャー 増山 貴裕氏
谷口(Go Good):「ワンデータ・マルチアプリ」の設計思想は、自社の事業拡大を見据えた際に不可欠でした。また、当社だけが便利になるシステムではなく、10以上の子会社を擁するグループ全体にとってバランスの良いシステムを考えた結果、freee会計が最適解だと判断しました。
4期目で売上11億円超え!煩雑を極める業務委託管理
freee会計の導入後、特に効果を実感したエピソードはありますか?
谷口(Go Good): 実は「freeeカード」に非常に助けられました。デジタル広告の世界では、クライアントに代わって広告枠を買い付ける「メディアバイイング」がともないます。これには多額の実費が必要ですが、設立間もない会社の場合は法人カードの上限額がネックになるんです。
谷口(Go Good): freeeカードはfreee会計のデータと連動しているため、状況に応じてカードの上限額を引き上げることができます。カードの支出データもfreee会計にダイレクトに入ってきますから、キャッシュアウトの状況がリアルタイムで可視化されるメリットは、資金繰りがシビアなスタートアップにとって計り知れません。
事業が急拡大する中で、次なる課題として「業務委託管理の煩雑化」が浮上したとうかがいました。
谷口(Go Good): はい。設立から4期目で売上高が11億円を超え、1ヵ月あたりの広告キャンペーン数は500~1,000件にまで増えました。各キャンペーンでは、当社が業務委託契約を結んでいる広告運用のスペシャリストに協力してもらっているため、キャンペーンの数が増えれば彼らから受け取る見積書や請求書の数が増えるのは必然です。契約から支払いまでのパイプラインを効率的に管理する必要が生じました。
そこで「freee業務委託管理」の導入を検討し始めたわけですね。
タレントプールとしての活用にも可能性が
freee業務委託管理はどのようなプロダクトなのでしょうか?
増山(フリー): 業務委託先との取引における契約、発注、請求、支払いを一元管理できるプロダクトです。発注書の作成・送付はもちろん、送付状況の確認や請求書の回収なども一つのプラットフォームで完結します。また、2026年1月に下請法から改正された取適法や、フリーランス法に対応した書類の発行・保存も可能です。
freee業務委託管理のどのような点に魅力を感じていますか?
谷口(Go Good):私が特に魅力を感じているのは、タレントプールとして活用できる点です。業務委託のスタッフも、我々にとっては重要な人的資本。リスティング広告の運用が得意な人もいれば、純広告が得意な人もいますし、北海道や九州など特定エリアのマーケットに詳しい人もいます。彼らがどのようなノウハウを持ち、過去に誰とどのような仕事をしたか、一覧で可視化すれば組織の機動力を高めることができます。
たとえば、広告キャンペーンの一環で広告の遷移先にあたるクライアントのWebサイトを当社が制作する場合、サイトのデザインやコーディングで業務委託のスタッフの力を借りることになります。スタッフによって得意な“トンマナ”は異なりますから、クライアントが目指す世界観と相性の良いスタッフを探す必要があるんです。freee業務委託管理なら、情報を基に最適なスタッフをアサインすることができます。
これはジャストアイデアですが「講師のタレントプール化」にもfreee業務委託管理の活用可能性がありませんか? 明光義塾は全国に3万人以上の講師がいます。これらの講師のデータを各教室に紐づけるのではなく、タレントプールとして一元管理するイメージです。
「東京都で講師ができる人」「この科目が得意な人」などの条件でプールから発注し「今日はこの教室」「次は別の教室」と講師を柔軟に配置できれば、生徒が塾を教室ではなく講師で選ぶ世界が実現できるかもしれません。労働生産人口が減っていく中、限られた人材をどう活かすか──この発想はますます重要になると思います。
増山(フリー):教育業界に限らず、広告、映像、アニメ、Web制作、イベント運営など、プロジェクト単位で人が集まるクリエイティブ業界全般でタレントプール化は有効ですよね。優秀な人ほど一つの会社や現場に固定されず、複数の案件をまたいで動いていますから。
だからこそ、業務委託のスタッフを「その場限りの人手」として扱うのではなく、経験や強み、関係が可視化された「タレント」として捉える発想が、これからの組織づくりやビジネスモデルの前提になっていくのではないでしょうか。
「売る前のお世辞より売った後の奉仕」
今後、freeeの各種プロダクトを組み合わせて活用することにより、どのような相乗効果が期待できるのでしょうか?
増山(フリー):最大のメリットは「データの二重入力の排除」です。freee業務委託管理で確定したデータは、そのままfreee会計に流し込まれます。手作業での転記やCSVのインポートといった工数が削減されるだけでなく、入力ミスというリスクも最小化できます。
谷口(Go Good):近江商人の言葉に「売る前のお世辞より売った後の奉仕」というものがあります。広告キャンペーンは実施して終わりではありません。実施した結果を受けて「なぜコンバージョンしないのか」を分析し、改善案を出し続ける。この「売った後の奉仕」こそ、私たちが大切にしている価値です。価値を提供し続けるためにも入力の工数を削減し、本来注力すべきクリエイティブな提案やクライアントワークに時間を割けるようにしたいと考えています。
また当社のような規模の企業の場合、経営者が現場の細かい数字を把握できない状態はリスクでしかありません。freee業務委託管理とfreee会計を使えば、各メンバーが動かしている個別案件の支出額がデータとして可視化され、月次でチェックできます。活用しない手はないですよね。
さらに、freeeのプロダクトはメンバーの会計リテラシー向上にも寄与すると考えています。たとえ社歴が長くても、PLを読めないメンバーや勘定科目を知らないメンバーはいます。freeeのプロダクトはUIがユーザーフレンドリーですから、触るうちに会計の感覚が養われると思います。社員の成長実感にもつながりますし、会計がわかるようになると自社が成長している手応えも感じやすくなるはずです。
増山(フリー):当社では「専門知識を持たない人でも使いやすいUI」を目指してプロダクトを設計しています。freeeを使っていただくことでデータが可視化され、数字を見に行く習慣や会計の知識が自然と身に付きます。その結果、freeeのプロダクトがもたらす効果を最大限感じていただくことが理想です。
バックオフィス初任者でも請求・入金業務が回せる
Go Goodのバックオフィス業務を担当する齊藤氏の声
2025年4月にGo Goodへ入社する前は、明光義塾やアフタースクール「明光キッズ」で現場の仕事をしていました。日商簿記の資格は保有しているものの、バックオフィス業務に関する知識を持たないままfreee会計を使い始め、現在は請求書の作成・送付やクレジットカードの入金消し込みなどを行っています。
freee会計は一つの画面で入金状況や請求書のステータスを管理できるため、非常に便利です。請求書を送付する際、以前はメールにPDF添付していましたが、今はURLで請求書を送付しています。取引件数が多いぶん、作業時間が大幅に短縮できていることを実感します。
特に利便性を感じているのは、入金消し込みの自動化です。予めルールを登録しておくと、入金された金額と勘定項目が自動で出てくるため、作業のスピードが格段に速くなりました。
最後に、両社の展望をお聞かせください。
谷口(Go Good): 当社の拠点は東京ですが、freee会計や「freee勤怠管理」を活用すれば、各拠点にバックオフィス担当を配置しなくても、最小限のリソースで営業の幅を広げられる気がします。さらに、freee業務委託管理を活用して自社のエコシステムを広げ、盤石な体制を築いていきたいです。いつかはIPO(新規上場)を目指せるくらい成長したいですね。
増山(フリー): 会社の成長に応じて求められる体制や生じる課題は変化すると思います。私としては「目の前の課題に対して解決策を提示する」だけで終わりにしたくはないんです。将来的に必要となる体制構築や、起こり得る課題の解決までサポートできるように、引き続きコミュニケーションを重ねながら貢献できればと思います。



