熊本県にて、保険調剤にも対応しつつ、通販事業に力を入れる合同会社エリミノ。効率のよいビジネスモデルで、少人数の薬局として十分と言える売上を達成しています。
今回は、独自のビジネスモデルやfreee導入の経緯、今後の展望について、薬剤師であり代表の狩野壮太郎さんにお話を伺いました。
調剤薬局の保険外収益の可能性を探る
「ゆらぎ薬局」は一般的な薬局とは異なるようですが、どのようなビジネスモデルなのでしょうか。
狩野 壮太郎さん(以下、狩野): ゆらぎ薬局は開業して3年になりますが、調剤を積極的に受け付けるビジネスモデルではなく、保険外収益に注力したいと考えています。保険調剤による収益だけでは経営が成り立たないという感覚です。SNSでも積極的に発信しているのはそのためです。
実際に、処方箋による保険調剤の売上は1%程度で、売上の大部分はインターネット通信販売(以下、ネット通販)事業です。ネット通販は国内外との取引があり、国内向けは食品や化粧品、洗剤や医薬品などで約50%、海外はホビーグッズを中心に約30%です。医薬品のネット通販には規制がありますが、ルールを守りながら、要指導医薬品や薬局でしか売れないものに注力していきたいと考えています。
一方で、病院が近くにないため、商店街の住民の方々が困ったときに買いに来てくれるような薬局を目指しています。ネット通販と地域密着型の薬局を組み合わせることで、保険調剤に頼らない経営を目指しています。
どのような理由から、現在のビジネスモデルにたどり着いたのですか?
狩野: 2013年の最高裁判決で医薬品のネット通販が認められましたが、薬剤師からの反対勢力はいまだに根強く、ネット販売に否定的な意見もあります。しかし、大手ネット通販サイトは薬局事業をどんどん拡大しています。
このままでは薬の販売や処方箋を取られてしまうので、むしろ一般の薬局がネット通販に対応することでそのパイを積極的に取りに行き、大手ネット通販サイトのパイを少しでも減らすことが、既存薬局を存続させることにつながるのではないかと考えています。
今年の決算では全体で1億円弱の売上となり、このビジネスモデルでやっていけると自信が持てるようになってきました。それに、皆が同じことをしていてはつまらないですし。
店舗はレトロな内装と現代的なロゴデザインが不思議なお店ですね。
狩野: 以前は近くの薬局に勤めていたのですが、70年続いた薬局だったこの店舗が閉店するタイミングでここを借りることにしました。改装は壁紙だけなど、できるだけ費用をかけずに行いました。
薬局は様々な活動の拠点になり、拠点があることで物販も在宅医療もできます。店舗を持っていると薬局製剤製造販売業の許可も取りやすいと聞きました。私はまだ許可は持っていませんが、将来的にはやってみたいです。物販の商品数も増やしていきたいと考えています。
freee会計は当たり前の存在。それによる業務効率化が重要
freee会計はいつから導入いただいているのでしょうか?
狩野: freee会計は、薬局に勤務しながら個人の副業として物販を始めたときから使用しています。ネット通販大手で商品を販売する際の管理画面との連携、カード連携なども含めて使っていました。
その後、法人を設立したのは2022年です。税理士の方に入ってもらったところ使いづらいと言われたこともありましたが、設立当初は一人で運営していたので、私にとっては自分でサクサクできて使いやすかったです。
導入された際の感想を教えてください。
狩野: freee会計はインターネットで調べて見つけました。最初は誰にも相談せず、自分で確定申告を行いました。金融機関で働いた経験があったので税についての基本的な知識はありましたが、仕訳など会計業務の具体的な部分はまったくわからない状態でした。
そのため使いこなすまでには至りませんでしたが、一人で申告する分には非常によかったと思います。初めてでもとりあえず申告することができましたし、やり直しも何回もできるのが助かりました。
使い続けていただいている理由は何ですか?
狩野: 使いやすく、慣れているためです。現場のスタッフにとっては当たり前のように使える存在になっています。それによって業務が効率化され、時間短縮につながっていることが重要だと考えています。
freee人事労務もご利用いただいていますが、こちらはいかがでしょうか?
狩野: 一昨年、業務拡大のために一人目を雇用しました。昨年は薬局勤務経験のある方が加わりました。一人雇用し始めたときから、freee人事労務も使っています。現在は従業員にモバイル版freee人事労務(スマホ・タブレット用アプリ)のタイムレコーダー機能で出退勤を打刻してもらっています。
システムも随時アップデートされており、タイムレコーダー機能は以前よりも使いやすくなりました。タイムレコーダーのデータがそのまま給与計算や補助金申請にも活用できるのは便利です。税理士の方とも共有できているので、連携もスムーズです。
プランは自分たちに必要な機能のみに絞ることで、安いものを選ぶこともできます。正直なところ、少人数の雇用なので費用をかけること自体に迷う部分もあります。でも、だからこそこのシステムで十分だと感じますし、人件費と比べればはるかにコスパがよいと考えて利用を続けています。
freeeの下支えとともに、業務の拡大を目指す
今後の展望をお聞かせください。
狩野: 今後はICT化を進め、特にオンラインの仕組みや在庫管理に予算をかけていきたいと考えています。仕入れ先が多岐にわたると業務負担が大きくなるので、卸業者を利用しています。他店舗と共同で仕入れなどを行うボランタリーチェーンも利用してみていますが、コスト削減につながっているかは検証が必要です。
一方で、医薬品の品揃えを増やし、分包機も購入したいと考えています。他の薬局が高齢化している中で、地域に根差した薬局として、お役に立てるのではないかと考えています。
それにともない、フロント業務も強化していきたいです。業務が増えていく中で、人員を増やすことも考えています。例えば、薬剤師を受け入れる体制を整えれば、店舗も増やしていけるでしょう。今後は事業が大きくなるにつれて、freee会計の価値がよりわかってくるだろうと思っています。
新しいかたちの薬局なので理解してもらえる人は多くはないかもしれませんが、とてもたのしいです。また海外では、ワクチン接種なども薬剤師が当たり前のように行っています。今後は日本でも薬剤師の業務範囲が拡大していくことが予想されますし、AIなども活用しながらこの薬局の業務を最適化していきたいです。

