「不動産オーナー様のキャッシュフロー最大化に貢献する」というミッションを掲げ、不動産に関わる設備やサービス導入の初期費用をゼロにする「BRO-ZERO」を軸に事業成長を続ける株式会社ブロードエンタープライズ。2021年12月の上場から約2年後、会計ソフトの刷新を行うために「freee会計エンタープライズプラン」を導入し、現在は「freee人事労務アウトソース」「freee勤怠管理Plus」と複数のプロダクトを活用いただいています。
なぜ上場後に会計ソフトを刷新することになったのか、当時の課題や成果も含めて、バックオフィスを統括する渡邊宗義さん(取締役/経理部長)に話を伺いました。
“手作業”の脱却をはじめ、会計・人事・総務を抜本的に変革したい
――貴社の事業内容を教えてください。
渡邊宗義さん(以下、渡邊) : 不動産オーナー様向けに、高速インターネットサービス「B-CUBIC」、IoTインターフォンサービス「BRO-LOCK」、ファイナンススキーム「BRO-ZERO」などの施設・設備・管理サ ービスを提供しています。
――IPO後にリプレイスを進められましたが、きっかけは何でしょうか。
渡邊: そもそものきっかけは会計システムの見直しです。実は、当社はIPO前とIPO後の二度にわたって会計システムをリプレイスしています。初めはIPO準備の段階で監査法人から「今使用しているシステムは承認機能が弱く、内部統制上問題がある」と指摘を受けたことが理由でした。
その後、監査法人から勧められたシステムを導入したのですが、これはこれで大きな問題がありました。とにかく紙での手作業が多かったのです。
――具体的には、どういった作業があったのでしょうか。
渡邊: 例えば仕入先から請求書が届くとしましょう。まず未払金としてシステムに仕訳を入力し、印刷し、請求書と突き合わせて上長に押印を求めます。支払いの際は、振込設定の画面を印刷し、先の伝票とセットにして、また上長の押印を求めます。さらに、未払金の消込仕訳も印刷してまた押印。一連の作業だけで5枚も書類を印刷し、セットにして押印するという、極めて煩雑な作業が必要でした。
IPO後は事業も拡大します。おかげさまで弊社は年120%ペースで売上を伸ばしており、取引先もどんどん増えています。それでも紙ベースの作業を続けていましたから、経理部のデスクは書類が山積みになり、終いには保管する場所にも困るようになりました。
あるときには、承認待ちの書類が入ったボックスが倒れて中身が散乱し、みんなで 日付順に並べ直すという出来事も。あるメンバーは、当時の状況を文字通り“地獄”だったと言っていましたね(笑)。
――IPO後に課題感が増していったのですね。
渡邊: 作業上の負担はもちろんですが、内部統制に対する課題感は特に大きくなっていきました。例えば決算短信等の作成は、月次処理さえ間に合えば滞りなく進められます。しかし、物理的な書類の回覧がとにかく多いせいで、その月次処理が遅れかねませんでした。
――二度目のリプレイス先として、「freee会計エンタープライズプラン」を選ばれた理由は何でしょうか?
渡邊:
freeeに惹かれた理由はいくつもあります。第一に、クラウドでシステムが完結することです。課題感の根本的な原因はシステムが紙ベースであることでしたので、ここは絶対条件でした。
第二の理由は機能面です。特に、銀行口座とのデータ連携は大きな魅力でした。当社のビジネスモデルは資金調達が非常に重要で、多くの金融機関と取引があります。しかし、以前のシステムは銀行口座との紐付けが不可能だったため、その都度銀行に行って記帳する必要がありました。手間ですし、過去のデータを追いかけることしかできません。freeeへのリプレイスを通じて、「今、会社にある資金」をタイムリーに可視化できるようになるのは願ってもないことでした。
第三の理由はコストです。他に候補としていたシステムもあったのですが、そちらは固定資産台帳の登録数に応じて料金が増える従量課金制でした。一方のfreeeはいくらでも登録ができる固定料金制。当社は事業の性質上、抱える固定資産が非常に多いので、固定料金制であるfreeeに惹かれるのは必然でした。
今回freeeを導入したきっかけは会計業務の刷新が目的でしたが、人事労務や勤怠管理にも課題はありました。freeeであればこれら人事労務や勤怠管理向けのプロダクトもあり、クラウド上の同一データベースで一元的な管理や運用が行えます。バラバラのシステムで管理する体制よりもずっと効率的だろうと、将来的なリプレイスを見据えて、まず2023年10月に「freee会計エンタープライズプラン」を導入しました。実際に、2024年6月には「freee人事労務アウトソース」も、2025年3月には「freee勤怠管理Plus」も、それぞれ導入しています。
――人事労務と勤怠管理に抱えていた課題感も教えてください。
渡邊: 人事労務は給与計算を外注していたのですが、委託先が多忙な時期になるとなかなかデータが連携されず、誤りがあった場合の対応にも時間がかかっていました。常々、「給与振込が間に合わないかもしれない」と不安を感じており、最低限、いつでも自社でデータを確認できるシステムにしなければと考えていました。
勤怠管理については、申請者で打刻時間の修正ができず、すべて管理者が操作するしかなかったのが一 番の不満でした。管理者にかかる負担を減らしたかったのが、リプレイスの大きな理由です。
――会計システムのリプレイスはハードルが高いと言われがちですが、どのように導入を進めましたか?
渡邊: 経理部のメンバーは以前のシステムや紙での運用に疲弊していましたので、みんな両手を挙げて歓迎しました。スイッチングコストよりも、減る業務の負荷の方がイメージしやすかったのでしょう。
他部署のメンバーには、経費の申請が簡単になる点を訴求しました。実はこの経費申請もアナログで…。領収書を台紙に貼り付けて大阪本社に送るという方法を取っていたんです。「これから紙でのやり取りはなくなります」というアナウンスをしたところ、経理部同様、喜んで受け入れてくれました。そのほか、年に一度、全社員が集まる研修のタイミングでfreee導入のメリットを伝えました。
また、キーパーソンである副社長もリプレイスを歓迎してくれました。手作業の多さや、そこから生じる残業代の多さといった課題はしっかり認識してくれていたからです。
総じて、社員全体が現状のシステムのデメリットを認識していたので、反対の声はほとんどありませんでしたね。
作業時間は約200時間も短縮!ノンストレスで働きやすいバックオフィス体制へ
――リプレイスの成果はいかがでしょうか?
渡邊: 経理部門の業務は劇的に効率化されました。例えば、請求書の仕訳や書類の作成にかかる時間について、リプレイス前は月間で240時間費やされていたのですが、リプレイス後は月間46時間まで短縮されました。一人分の月間工数に等しい削減量です。残業時間も、以前は平均で月30時間、繁忙期で40時間以上あったのですが、今は繁忙期でも15時間以内に収まっています。
メンバーにかかるストレスも大きく改善されました。以前の請求書の処理は、まるでババ抜きのような作業でした。何十枚もの請求書、仕訳の画面印刷、振込設定の画面印刷を突き合わせて、間違いないか確認し、ファイリングして回覧に回すのです。どこかでズレが生じると、芋づる式にズレが増えていきます。そんな神経を使う作業を締め日に追われながら行うのですから、プレッシャーを感じるのも当然です。今は仕訳の登録から支払いの登録まで、画面上ですべて完結するので非常に楽ですね。書類であふれていたデスクも、すっかりきれいになりました(笑)。
そのほか、債権管理もスムーズになりました。例えば、弊社はマンションのオーナー様向けに「B-CUBIC」というインターネットサービスを提供しています。入金漏れがあった場合はサービスを停止し、入金が確認できてから再開するのですが、以前はその都度インターネットバンキングを確認する必要があったので、再開までにラグが生じてしまっていました。今は「freee会計」上で入金が確認できるので、オーナー様の再開依頼にも迅速に対応できるようになりました。
――人事労務や勤怠管理の状況も教えてください。
渡邊: 人事労務は給与計算の確定が2営業日ほど短くなり、余裕を持って給与を振り込めるようになりました。勤怠管理についても、申請者自身が修正を行えるようになって、管理者の負担を大きく減らせています。
――freeeを統合的に利用するメリットは感じられていますか?
渡邊: バックオフィス全体の“つながり”が強化されました。例えば、アカウントの切り替えが不要なこともその一つです。メニュー画面から利用したいプロダクトを選択するだけで、会計から人事労務へと、瞬時に切り替えができます。考えや手を止めずにすむので、便利ですね。
それから、「freee人事労務アウトソース」で確定した給与計算の結果を、ボタン一つで「freee会計」に仕訳として取り込める点も魅力です。転記ミスなどのヒューマンエラーが起きづらく、手間もかかりません。ワークフローの連携も強力ですね。freee人事労務側に部署の設定をしておくと、「freee会計」の承認経路にも自動で反映されるので、無駄がありませんし、不正防止やガバナンス強化の視点からも効果的だと感じています。
DXによる効率化を加速し、業務をさらに創造的に
――今後の事業やバックオフィスの展望をお聞かせください。
渡邊: 現在当社が注力しているのが、インターネットやIoTインターフォンなど、様々な設備・サービスを初期費用ゼロで導入できるファイナンススキーム「BRO-ZERO」です。お客様からも大変好評で、これまでも民泊領域や内装工事と、対象物件や設備・サービスを拡大してきましたが、まだまだ伸びしろは残されています。外装工事や家具、家電、テナント向けの内装工事など、様々なお客様に、様々なサービスを提供できるよう、事業の拡大へ邁進していきます。
バックオフィスについては、単純作業を可能な限り減らし、会社の成長戦略を考えるといった付加価値の高い業務に集中できる体制を目指しています。freeeが貢献してくれるところは少なくないでしょう。実は、弊社は上場前後で経理部門の人数が変わっていないんですね。事業が拡大していく中でも、手が足りなくなるどころか、業務の精度を向上させてくれているfreeeのプロダクトには大変感謝しています。
――今後のfreeeに期待することは何でしょうか? ください。
渡邊: 弊社が利用しているように、freeeには金融機関と連携した、改ざんできないデータが大量に蓄積されていますよね。この確実で信頼性の高いデータはfreeeにとって大きな武器になるでしょう。
例えば、freee内のAIが「この仕訳は間違っている可能性がある」といったアラートを出したり、異常な取引を検知したり、前年同期比較や予実比較の増減分析を自動で行ったりする機能があれば、我々だけでなく監査法人や税務署の工数も削減できるでしょう。freeeを導入している企業同士の送金手数料を安くしたり、蓄積された財務データを活用して融資事業を展開したりすることも可能なはず。freeeが銀行業務まで担うようになったら、さらに面白い未来が拓けるのではないでしょうか。
Company Profile
株式会社ブロードエンタープライズ
https://broad-e.co.jp/