大手エレクトロニクス商社・株式会社RYODENの100%子会社として設立された、ブロックファーム合同会社。同社は、親会社の持つ冷熱・FAシステム等の技術を結集し、安定した品質と生産性を備えた省エネ型モデル植物工場を運営する。140名近くのパートスタッフや技能実習生など多種多様な人員が集う植物生産・加工・製造現場において、需要変動や高コストといった業界の壁を乗り越え、「持続可能な勝てる農業」の成功モデルを確立することが同社の目的だ。その挑戦を裏で支えるのが、創業初日から構築されたfreeeによるバックオフィスである。約160名規模の組織でありながら、管理部門わずか「2人」で給与締めを2日、月次決算を5日で完了させる。現場運用と最新のクラウド技術を利用し、経営の可視化と徹底的な省人化を両立させた同社の取り組みとお考えを副代表の満生さまに伺いました。
植物工場の持続可能なモデルを証明する——RYODENグループの挑戦
エレクトロニクスや冷熱システム等を扱うRYODENグループが、自ら植物工場の運営に乗り出した経緯をお聞かせください。
満生 篤様(以下、満生): RYODENはもともと三菱電機系の代理店として、空調冷熱システムやFAシステム、エレクトロニクス事業を展開してきました。2017年頃から、当社の持つ設備ノウハウや自社開発のIoTシステムが植物工場と親和性が高いことから、大型の植物工場向けに建設工事や機器システムを請け負ってきた経緯があります。
設備やシステムの施工支援にとどまらず、自社で「ブロックファーム合同会社」を設立してモデル工場を立ち上げたのはなぜでしょうか。
満生: 植物工場ビジネスは、高い設備投資や電気代といった固定費の重さに加え、需要変動の激しさが大きな課題となっていました。他社の施工を手掛ける中でコストや運営上の壁を目の当たりにし、設備を提供するだけでなく、「本当に利益が出る持続可能な成功モデル」を自ら証明する必要があると考え、モデル工場として立ち上げたのがブロックファームです。
「持続可能な成功モデル」を確立するために、具体的にどのようなビジネス構造を構築されたのでしょうか。
満生: RYODENのグループ会社であり、野菜の流通・販売に強みを持つ株式会社ファームシップと緊密に連携し、製販一体のバリューチェーンを構築しました。需要情報をリアルタイムに共有して無駄な生産ロスを極限まで抑える仕組みを整えています。さらに、工場にはメガソーラーなどの省エネ設備を多数導入し、電気エネルギーを大幅に削減するなど、徹底したコスト削減を図っています。
設立にあたり、最初からクラウドでのバックオフィス基盤構築を目指した意図を教えてください。
満生: 私はRYODENの新卒入社以来、長く経理や会計部門を歩んできました。植物工場という新しい事業をゼロから立ち上げるにあたり、後から規模が拡大した際にシステムを刷新するのは非常に大きな負荷がかかります。だからこそ創業初日から、将来の事業拡大に耐えうる使いやすいクラウド基盤で、経営の可視化と省人化を両立させたいと考えました。
約140名の現場スタッフを支える——誰でも迷わない現場づくりの工夫
工場では現在、どのような方々が働かれているのでしょうか。
満生: 正社員や出向者のほか、工場には約140名のパート社員や技能実習生が在籍しています。年齢層は20代から70代までと非常に幅広く、地域のお母さん方からベトナムからの技能実習生まで、多種多様な人員が集まって日々の生産作業を支えてくれています。
それだけ多様なスタッフが集まる現場では、勤怠管理やルール周知の苦労も大きかったのではないでしょうか。
満生: 人数が多くIT機器になじみのない方もいらっしゃるため、日々の打刻漏れや押し間違えはどうしても発生します。また、野菜の需要変動に合わせてシフトが切り替わることもあり、毎日誰がどの作業に入るかを細かく調整して配置表を作成する運用を行っています。
工場ならではの運用ルールとして、打刻タイミング等で工夫されている点はありますか。
満生: 衛生服への着替え前後の打刻ルールを徹底しています。私服から衛生服へ着替える「直前」に出勤打刻をし、作業が終わって衛生服から私服へ戻った「直後」に退勤打刻をしてもらう流れです。更衣室の壁にイラスト付きの分かりやすい手順案内を貼り出して掲示しています。
打刻端末の選定や、ITに不慣れなスタッフへの配慮についても教えてください。
満生: ICカード運用も検討しましたが、「忘れそう」「面倒くさい」という現場の声があったため、更衣室の壁に設置したiPadでの打刻を採用しました。マニュアルは最小限にし、直感的に操作できる画面デザインとルール周知によって、高齢の方や外国人の実習生でも迷わず日常的に打刻できる環境を整えています。
現場で打刻エラーや漏れが発生した場合は、どのようにフォローされているのでしょうか。
160名規模を「2人」で完結——人事労務と会計のシームレスな連動
160名近い組織規模に対し、管理部門はどのくらいの体制で対応されているのでしょうか。
満生: コーポレートの管理グループは、実質的に私と正社員2名で回しています。私が副代表と兼務していますが、実務の手を動かす現場の人数としては、これだけの小規模な人数で全体のバックオフィス業務を完結できています。
従業員約160名の勤怠集計から給与振り込みまで、月次の締め処理はどのように進められていますか。
満生: 月末に勤怠データを確認し、翌月の「2日」には給与締めを完了させています。日頃から現場社員が打刻エラーを日々修正してくれていることも大きいですが、freee人事労務上でデータがスムーズに連動するため、締め処理にかかる時間と負荷は最小限で済んでいます。
人事労務から給与計算、そして会計へのデータ連携における具体的なメリットを教えてください。
満生: 月初第二営業日までに給与が確定すると、そのまま会計データへ自動連携されます。手入力による転記作業が発生しないため、人的な転記ミスは完全にゼロです。また、年末調整に関してもマニュアルを共有して各自で入力してもらうことで、管理側の局地的な負荷を大幅に軽減できています。
売上管理や経費精算など、freee会計の日常的な活用状況はいかがでしょうか。
満生: 日常の経費精算から受発注にかかる売上・仕入、売掛・買掛管理までをfreee会計上で一貫して運用しており、月次決算は第五営業日までに完了させています。決算や報告に必要な枠組みを自由に設定・カスタマイズできる柔軟性の高さには非常に助けられています。
「2人」という最小限の体制でバックオフィスが機能していることへの実感をお聞かせください。
満生: 工場や生産ラインの拡大、加工商品の増加によって現場のスタッフが増えても、バックオフィスの人数を増やさずに回せています。無駄な転記や確認作業を極限まで減らし、ペーパーレスで月次処理が完結する仕組みを最初から構築できた価値は非常に大きいと感じています。
経営のリアルタイム可視化と今後の展望——さらなる業務効率化へ
freee会計の導入によって、数値のリアルタイム可視化や経営判断にはどのような変化がありましたか。
満生: 経営の「今」の数字がリアルタイムに把握できるようになりました。月次決算が迅速に締まることで、経営状況やコストの発生状況をタイムリーに確認でき、無駄な管理コストを抑えながら迅速な意思決定を下せる基盤が整ったと感じています。
バックオフィス全体の運用が安定した一方で、現状感じられている課題やさらなる効率化への期待はありますか。
満生: 受発注や仕入・販売管理の領域では、まだシステム間の連携やステータス管理に手作業が残っている部分があります。調達部門や卸売りも兼ね備えているからこそ、こうした周辺業務のデータ連携をさらに推し進め、手集計作業をなくしていきたいですね。また、製造業特有の原価計算についても、現在は別資料で計算をした結果をfreeeに反映するような形をとっていますが、今後もシステム化出来ればと思っています。
創業期からクラウド基盤を構築してきた経験を踏まえ、今後の事業展開とバックオフィスの目指す姿をお聞かせください。
満生: 今後、生産事業をフル稼働させ商品を拡大していく中でも、バックオフィスは単なる事務処理の場ではなく「経営判断の司令塔」として機能させたいと考えています。事業の急拡大や環境変化にも柔軟に対応できる攻めの体制を維持し、植物工場ビジネスの持続可能な成功モデルをさらに強固なものにしていきます。

