1982年の開局以来、北海道初の民放FM局として地域に根差した音楽や情報を届けてきた「株式会社エフエム北海道(AIR-G')」。同社では、2023年のインボイス制度や電子帳簿保存法への対応を契機に「freee会計」を導入。さらに、放送業界の根強い商習慣によるコンプライアンスリスクの解消や下請法(現:取適法)・フリーランス法への対応を見据え、新たに「freee業務委託管理」を追加導入しました。 出演者やディレクターなど多くの外部パートナーが関わる複雑な現場において、どのようにシステムを定着させ、バックオフィス業務の劇的な効率化と強固なガバナンス体制を両立させたのか。経営管理部門 部長 梅木様、バックオフィスを支える牧野様、コンテンツ制作本部で制作現場を担う髙山様にお話を伺いました。
リスナーの生活にも寄り添うラジオ。信頼を大切にする放送事業
まずは、貴社の事業内容やラジオ局としての特性について教えてください。
髙山様(以下、髙山):私たちエフエム北海道は、「AIR-G'(エア・ジー)」の愛称で親しまれています。「G’」に込められているのは、Gee Great(なんて素敵なんだろう!)という言葉。リスナーの皆さんにたくさんの感動と歓びをお届けしたいという願いを胸に、私たちは北海道全域へ向けてFMラジオ放送を発信しています。ラジオは、リスナーの方々の生活に非常に近い距離で寄り添う特性を持っています。例えば、かつて北海道で大規模な震災・停電が起きた際、家の中でキャンピング用品を使ってテントを作り、怖がる子供たちと枕を並べて過ごしているという方からメールをいただきました。その方が綴ってくださったのは、ラジオから流れた『いつもの声、いつもの曲』への深い感謝の言葉でした。正確な報道を届けるだけでなく、不安な日々に寄り添い、日常の安心を届けること。これこそが、地域に根差したラジオという媒体ならではのかけがえのない価値だと確信しています。
テレビや他のネットメディアとはどのような違いがあるのでしょうか?
髙山:今は誰もが音声を発信できる時代ですが、私たちは国から法律に基づいて「放送免許」を付与されている放送局です。数年ごとに基準を満たしているか審査され、間違った報道をすれば免許を剥奪されるリスクもある。だからこそ、私たちが発信する情報には責任があり、リスナーの皆様からの確かな信頼をいただいています。そのため、私たちはゴシップなどを扱うことは好みませんし、、遺族の方が嫌がるような取材もしません。過去の大震災の際も、被災地への配慮を最優先した放送姿勢を貫きました。私たちは、安心感と信頼を提供し続ける独自の存在でありたいと考えています。
業界固有の「口頭発注」と法改正への危機感
今回、バックオフィスの管理体制の刷新に踏み切られた背景には、どのような課題があったのでしょうか?
牧野様(以下、牧野):2023年に向けてインボイス制度や電子帳簿保存法に対応しなければいけない時期、当時私たちが使っていた会計システムは、これらの法改正に対応しきれていませんでした。対応させるためには別途多額の改修費用を支払わなければならないという話になり、それならばこのタイミングで時代に合った「クラウド会計」へ全面的に移行しようと検討を始めたのがきっかけです。
髙山:会計システムの刷新と同時に、もう一つ解決しなければならなかったのが、出演者(パーソナリティ)やディレクターといった「業務委託(フリーランス)の外部パートナーメンバーの管理」でした。ラジオ業界はもともと出演交渉や発注が口頭や電話で行われることが多かったんです。「いつものあれで今月もよろしくね」という昭和時代からの慣習が残り、事後発注などのリスクもありました。 しかし、発注書を出さないまま進めてしまうと、経理や管理部門側から全体像が見えなくなります。改編期には単発のイレギュラーな業務が重なりやすく、外部パートナーとの間で案件ごとの確実な進捗把握が難しく、期日ギリギリで確認や精算の手続きに追われることもありました。さらに、下請法の遵守はもちろん、新たに「フリーランス法」が施行されることも決まり、発注書の即時交付や支払遅延の防止など、適正なシステム管理への移行が急務となっていました。
業界独自の基幹システム「営業放送システム」との連携の壁
新しいシステムの選定において、どのようなハードルがありましたか?
梅木様(以下、梅木):放送局には特有の「営業放送システム」という基幹システムがあり、売上データを会計システムと連携させる必要があります。いくつかの大手会計ソフト会社に「放送業界の基幹システムと連携させたい」と相談したのですが、特殊すぎる仕様のためか、どこからも「検討します」と言われたきり連絡が来なくなってしまいました。 そんな中で、唯一freeeの営業担当の方が、開発エンジニアの方とも協力しながらあらゆる方法を模索し続けてくださり、最後は「できます」と回答してくれたんです。
締め作業が丸1日から「1時間」へ。ガバナンス強化で行政調査にも動じない体制
新たに「freee業務委託管理」を導入したことで、実務はどのように変わりましたか?
牧野:以前はExcelを使って手作業で発注書を作成していたのですが、データが二重に入力されたり、消えてしまったりするトラブルがありました。また、月末になると、届いた紙やメールの請求書と、Excelの発注表を目視で一つずつ照合し、そこから手入力で会計システムへ取引登録を行うという膨大な手作業が発生していました。毎月150件近くある外部パートナーへの支払処理を、基本的には私1人で担当していたため、非常に負荷が高かったです。 それが「freee業務委託管理」を導入してからは、発注データがそのままワンクリックで請求書へ変換され、freee会計とも自動でデータが紐づくようになりました。確認の手間がほとんどなくなり、今まで丸1日、あるいは数日間に分けて張り付いていた月末・月初の締め作業が、現在では入力データをチェックするだけのわずか1時間程度で終わるようになりました。
髙山:現場の視点からも「言った言わない」のトラブルが完全に無くなりました。ネットショッピングをする感覚でスマホから2〜3分で簡単に承認手続きができますし、請求書が出されていない案件も一覧で視認できるため、リマインドの連絡もスムーズです。
梅木:また、コンプライアンスが強化されたことで、当局からの調査対応もスムーズになりました。近年、テレビ局がフリーランス法違反で公正取引委員会(以下、公取委)から指摘を受け、過去数ヶ月の書類の洗い出しや体制構築で総務も現場もてんてこ舞いになっているという話を耳にしていました。実は私たちのところにも昨年の秋に公取委と中小企業庁からの調査があり、100問近い記述式のアンケートが届いたのですが、freee業務委託管理について触れて「こういうシステムで適正に管理しています」と回答ができました。対外的にも説明できる強固なガバナンス体制が、freeeによって構築されていると実感した瞬間でした。
外部のパートナーの方々からの反応はいかがですか?
髙山:私たちの番組制作の約8割は外部のパートナーに支えられており、限られた地方市場の中で優秀な喋り手やディレクターは取り合いになります。お金を当たり前にきっちり支払うというバックオフィスの安定感やクリーンな体制こそが、信頼に繋がり、パートナーから選ばれる会社になるために重要な要素だと考えています。
これからも、リスナーとパートナーに選ばれる放送局でありたい
貴社の今後の展望を教えてください。
梅木:これからも無意識のうちに古い商習慣に縛られることなく、クリーンで適正なバックオフィス体制を武器に、リスナー、スポンサー、そして共に番組を届けている外部パートナーの全員から選ばれ続けるラジオ局でありたいと考えています。
企業プロフィール
会社名: 株式会社エフエム北海道(AIR-G')
従業員数: 正社員20+契約社員8名
開局: 1982年
所在地: 札幌市中央区北1条西2丁目 札幌時計台ビル14階
代表者: 代表取締役社長 近藤 浩
事業内容: 放送事業(主に北海道全域を対象とするFMラジオ放送)
URL:https://www.air-g.co.jp/

