岩手県奥州市を拠点に、50年以上の歴史を持つ学校法人愛育学園 認定こども園ひがし幼稚園。「子どもたちひとりひとりの個性と向き合い、長所を伸ばす」を教育理念に掲げ、地域の子育てを一気通貫で支援しています。
2020年に事業を承継した理事長の相澤様は、札幌からの遠隔経営を行う中で、ベテラン職員に依存したアナログな管理体制を脱却し、現場の負担を軽減できる体制づくりを模索していました。そこで、誰もが働きやすい環境を整えるため、「freee人事労務」の導入を決断。
今回は、システム導入を機に進めた組織改革について、相澤理事長にお話を伺いました。
共有ドライブすらない
現場の情報すべてが”紙”だった5年間の葛藤
freee導入前、遠隔経営(札幌の理事長⇔岩手の園)においてどのような課題を感じていましたか?
相澤理事長(以下、相澤): 共有ドライブすらなく、すべての情報が現場に「紙」でしか存在しなかったことに課題を感じていました。
園の現状を知るために、郵送やPDFで少しずつ送ってもらう日々が続き、全容を把握するまでに5年ほどかかりました。しかし、把握はできても、具体的な「手助け」ができなかったんです。
たとえば、「面倒な補助金申請書の作成は私がやるよ!」と申し出ても、結局は現場に元データを揃えてもらう手間が発生します。現場に揃えて送ってもらう手間を考えると、「結局、現場でやってもらったほうが早いよね...」となり、もどかしさを感じることもありました。
大量のファイルの中から依頼された書類を探す様子
現場への依頼自体が、一つの高いハードルになっていたんですね。
相澤: そうなんです。最近は情報のやり取りに慣れ、最低限の情報さえあれば対応できるようになりましたが、それでも「今、頼んで大丈夫かな?」という配慮は常にあります。
園の状況を伺いながら「あ、今園長がデスクに座ったな!」というタイミングを見計らって、まとめて連絡を入れるような工夫をしていました。
そんな中で、なぜ今freeeの導入に踏み切ったのでしょうか。
鈴木園長(以下、鈴木): 私から相談したんです。理由は、給与明細の手渡しでした。保育園は職員によって勤務時間がバラバラですし、急なお休みもあります。給料日に全員に直接渡したいのに、どうしても渡せずに残ってしまう。
一週間後にようやく「先月の分、まだだったよね」と渡すようなこともあり、それがずっと心苦しかったんです。それで理事長に「スマホで明細が見られるようになりませんか?」と相談しました。
相澤: 以前から紙中心の運用には課題を感じていましたが、彼女の相談を受けて、あらためて事務作業を札幌で引き受けたいという想いが強くなりました。
私は事務作業の経験があり、PCに向かう時間も確保しやすいため、まずは私が実務を担うことで現場の負担を一時的にでも軽減したいと考えたんです。ただ、私がすべてを抱え込むことが目的ではありません。私が入ることで、業務を「標準化・マニュアル化」し、組織としての基盤を固めることを期待しています。
なぜ以前から紙中心のの運用を辞めたいと思っていたのでしょうか
相澤: 究極的には「誰かが欠けても園が回り続け、次へつなげられる状態」を作りたかったからです。
これまでは給与計算もシフト作成も、園長や特定の先生の頭の中にしか正解がなかったので「もし今、担当の先生が倒れたら……来月の給与は誰が払うんだろう?」という強い危機感がありました。
なので、freeeに園内のルールをしっかり落とし込むことで、誰が欠けても後につなげられることに魅力を感じています。
まずは「スマホ申請」ひとつから
デジタルに触れる経験が、次なるシステム導入を成功させるカギになる
freee導入の決め手を教えてください。
相澤: 以前freee会計のデモを見て、会計や経費精算の自動化の精度が高いことを知っていたので、今後のことも考え、迷うことなく4日で即決できました。
最初はQRコード打刻で運用
現場への浸透についても、迷いはありませんでしたか。
相澤: あまり、ありませんでした。実は以前、別のアプリを導入した際に機能不足で挫折した経験があります。ただ、そのおかげで先生たちの間に「QRで打刻をする」「スマホでポチッと申請をする」という文化だけは根付いていたんです。
今回はゼロから覚えるのではなく、今のスマホ操作を「置き換えるだけ」だったので、スムーズにいけるという手応えがありました。
コスト面での懸念はありませんでしたか?
相澤: むしろ逆でしたね。 前職のメーカー経理時代、基幹システム構築に数億円かかる世界を見てきたので、中小企業には手が出せない巨額投資だという固定観念がありました。
freeeの見積もりを見た時は「ゼロが一つ足りないのでは?」と疑うほどでした(笑)。なので、この金額なら中小企業でも導入できると確信しました。
「職員のためを思った独自制度なのに、設定ができない」
ライフサポート休暇を実現させた、導入支援の伴走
導入決定後、設定はスムーズに進みましたか?
相澤: いえ、そこで壁にぶつかりました。いざ設定しようとすると、当園のルールをどうシステムに落とし込めばいいか私一人では全くわかりませんでした。
そこで導入支援の方に相談しながら、「システムで管理できないなら、ルールの方を変えてしまおう」と、就業規則の大幅な改定に踏み切りました。
具体的に、どのようなルールを変えたのでしょうか?
相澤:
細かな見直しは多岐にわたりますが、まず「独自ルールの整理」で助けていただきました。
例えば、当園には生理休暇を前向きに捉え直した「ライフサポート休暇」という制度があります。「5日目までは有給、6日目からは無給」という少し複雑な運用なのですが、これまではシステム上でうまく設定できず、半ば諦めていました。
今回も無理だろうと思っていたのですが、支援担当の方が「どう設定すればこの制度を活かせるか」を一緒に突き詰めてくださり、結果、本当にやりたかった運用ができるようになったんです。
システムに合わせて有休付与日を入社日に統一
就業規則の見直しで実現した理想の運用
有給休暇の取得を紙で管理していた際の書類
有給休暇の管理についても、課題があったと伺いました
相澤: そうなんです、パート職員の有給管理も大きな悩みでした。1日の勤務時間が4時間の人もいれば4.5時間の人もいるのに、システム上は「残日数4日」としか出ないので、その残日数4日が実質「何時間分」なのか、全くわからなかったんです。また、事務負担を減らすために本来の入社日ではなく「4月か10月」に付与日を無理やり統一していたりと、実態に合わない無理な運用が続いていました。
その他、設定を進める中で見えてきた課題はありますか?
相澤: 実は「そもそも園にルールが存在していなかった」という事実に気づかされました。導入支援を通じて現場の働き方をパターン化しようとした際、「半日休暇を何時間とするか」という基本的な定義が就業規則にさえ明記されていないことが判明したんです。
これまでは曖昧なまま現場の感覚でやり過ごしてきましたが、システムに情報を当てはめようとしたことで、隠れていたルールの穴が次々と浮き彫りになりました。
freee人事労務の導入によって、それらの課題はどう解決されましたか?
相澤: 導入支援の方がバラバラだった運用を一つずつ紐解き、あるべき姿へ導いてくれました。まず、無理に統一していた有給付与日は、本来の「入社日」を基準に自動計算できるようになりました。設定の際も「この方の場合は?」と具体例を一つずつ一緒に確認してくれたので、複雑な付け替えも迷わず進められています。
また、時間休の設定を整えたことで現場のアナログな調整も解消されました。プロの視点で一つひとつ確認作業を進めたことが、結果として就業規則を改定し、園をより正しい状態へとアップデートする良いきっかけになったと感じています。
「現場に入らないと息ができない」
パソコンに向き合う時間を、子どもたちに向き合う時間へ。
園長先生は事務作業から解放されて時間ができたら、何をしたいですか?
鈴木: パソコンに向き合う時間が減ったら、子どもたちや保護者の方はもちろん、先生達も含めて、今まで声だけ聞いた部分をちゃんと目で見て関わりたいです。
先生たちの話を聞く時間も、取れているようで実は十分に取れていませんでした。子どもたちや保護者の方、そして先生たちの姿をしっかり見守ることも、私の大切な仕事だと思っています。今までパソコンに向き合っていた時間を、そうした「人に向き合うための時間」へ変えていきたいです。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
相澤: 現場で事務作業も頼んでいる鈴木園長や吉田主幹は、人の対応に出るべき人なんです。子供からお年寄りまでどの年代でも好かれる、そんな稀有な力を持つ人たちは、現場でその力をもっと使うべきだし、それが社会のためにもなると思っています。
だからこそ、私が引き取れる事務仕事はできるだけ引き取り、システムで楽にできる部分は徹底的に効率化したい。今回の導入は、まさに私たちのそうした想いにマッチしていました。
また、職員にも変化を期待しています。自分のスマホで勤怠や有給を管理することで、「自分の働き方は自分で管理する」という意識が育っていく。4月の本格稼働に向け、園全体が新しく変わっていくのが今から楽しみです。
掲載日 2026年3月19日
Company Profile
学校法人愛育学園
取材先:学校法人愛育学園様
従業員数:24名
URL:https://higashi-yochien.com/daily/
事業内容
福祉業(幼稚園の運営・学童保育)
